保育士は国家資格|保育士試験の詳細や資格取得の方法を解説
- 更新日:2024/02/16
保育士は、国が認める国家資格の1つであり、保育園や幼稚園などをはじめとした、子どもを預かり育てる職場では欠かせない資格です。保育や教育に携わる職業は、大切な子どもを安全に育てていくためにも、専門的な知識やスキルが求められます。この記事では、保育士の取得を目指す人向けに、保育士国家試験の試験内容や合格率、国家資格になった経緯などについて解説します。ぜひ参考にしてください。
保育士は国家資格である
保育士は、法で定められている国家資格です。「児童福祉法」の第18条の4では、子どもへの適切な保育と保護者への保育指導を行うために必要な資格とされています。
- 参考:児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)|e-GOV(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000164)
保育の資格は、もともと民間資格でしたが、現在は国家資格となっており、目指す人も増えています。その経緯については後述しますので、そちらも参考にしてください。
ここからは、国家資格となっている保育士とはどういう職業なのかについて以下の2点を解説します。
- 保育士の主な仕事内容
- 幼稚園教諭との違い
保育士の仕事
保育士は、保育を必要としている未就学児を、保護者から一時的に預かり、その間保護者に代わって生活の補助や教育などを行います。
未就学児にとって、生活に欠かせない基本の生活習慣を身につけたり、他人とのコミュニケーションをとることは集団生活においてとても大切なことです。保育施設で働く保育士は、子どもの心身の発達を促し、社会で生きていく力を身につけるためには、必要不可欠な存在といえます。
保育士と幼稚園教諭の違い
保育士と似た資格に、「幼稚園教諭」があります。どちらも子どもを対象とする職業ですが 、勤務場所や必要となる資格、国の管轄、目的などが異なります。
保育士と幼稚園教諭の違いを以下の表にわかりやすくまとめたので、参考にしてください。
保育士 | 幼稚園教諭 | |
---|---|---|
仕事の目的 | 保育が必要な乳児や幼児を預かり、基本的な生活習慣の習得をサポートする | 就学に備えるために、年齢に合った環境で教育を実施する |
必要な資格 | 保育士 | 幼稚園教諭免許 |
対象となる子どもの年齢 | 0歳から小学校就学前まで | 満3歳から小学校就学前まで |
預かる時間 | 8時間が標準 ※延長保育有り |
4時間が標準 |
勤務場所 | 保育園、児童養護施設、託児所など | 幼稚園 |
職業の管轄 | 厚生労働省 | 文部科学省 |
保育士は、保護者に代わって子どもの保育を実施するのに対し、幼稚園教諭は、文部科学省の「幼稚園教育要領」に基づいた幼児教育が目的です。
また、保育士の資格は国家資格ですが、幼稚園教諭は民間資格となっています。
保育士が国家資格となった経緯
保育士に必要な資格が国家資格となったのには、以下のような経緯があります。
- 1948年から資格制度が開始
- 保母から保育士に名称が変更
- 民間資格から国家資格に変更
順を追って詳しく解説します。
1948年保母資格の始まり
児童福祉法が1948年に定められた際に、保育の知識とスキルの証明として、保母資格の証明書が発行されるようになりました。この資格は女性に限られており、資格所有者を「保母さん」と呼ぶようになりました。
保母資格ができてからは、児童福祉施設で保母として勤務するには、保母資格の証明書の取得が求められます。さらに1977年には、男性も取得できるようになり、「保父」として保育施設で勤務できるようにりました。
1999年名称が保母から保育士へ変更
1999年には、児童福祉法が改正され、これまで主に女性がメインとなっていた「保母さん」という呼び方を「保育士」という名称に変更し、男女区別なく使いやすくなりました。
名称が変更された背景として、男性の資格取得者の増加があります。これまでの「保母」という名称だと女性の職業を連想させるため、資格を持つ男性から多くの意見が寄せられ、名称の変更につながりました。
2003年に保育士資格は民間資格から国家資格に変更
さらに2003年に児童福祉法が改正されると、保母資格の証明書だけでは保育士として働けなくなりました。現在では、保育士として働くには国家資格の試験への合格が必要です。
民間資格であった保育士の資格を国家資格に変更したのには、より保育士の質を向上させ、保育環境を充実させる狙いがあります。
保育士になるには
保育士になるためには、保育士の資格が必要です。国家資格である保育士資格には、以下の2種類の取得方法があります。
- 保育士を養成する都道府県知事の指定校やその他施設で、指定のカリキュラムを履修し卒業する
- 試験を受けて合格する
保育士を養成する学校を卒業するには、時間やコストの負担がかかります。そのため、社会人から目指すなら、試験合格が現実的です。
保育士の試験は、年に2回実施されています。試験内容は、筆記と実技で、6割以上を得点すると合格となります。実技試験では、楽器の演奏や造形スキル、言語スキルの中から、2つを選んで実施されます。例年の合格率は20~30%程度です。
保育士資格の取得手順に関する詳しい内容は、以下の記事も参考にしてください。
保育士になるには?資格取得までの流れ
また、保育士試験についての詳しい内容は、以下の記事で解説しています。
保育士試験の内容とは?筆記や実技試験の対策も解説
保育士試験とは?試験概要・合格率・難易度などを解説
保育士試験が免除となる条件
保育士試験は、以下のように免除となる条件があります。
- 幼稚園教諭資格を取得している場合
- 福祉系資格を取得している場合
それぞれの条件について詳しく解説します。
幼稚園教諭資格の所有者
幼稚園教諭の資格を持ち、実務経験が3年以上かつ4,320時間以上あれば、保育士の国家試験で特例制度が受けられます。
免許には段階があり、それぞれの条件は以下の通りです。
【全科目免除】
- 指定の保育士養成施設で、特例教科目8単位を取得
【一部免除】
- 指定の保育士養成施設で、特例教科目4単位を取得
- 参考:保育士試験の実施状況(令和4年度)|こども家庭庁(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/418776d5/20230401_policies_hoiku_21.pdf)
社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士の資格所有者
すでに、「社会福祉士」「介護福祉士」「精神保健福祉士」のいずれかの資格を取得している人も、一部科目の免除対象です。どの資格でも同様に以下の3科目が免除されます。
- 社会的養護
- 子ども家庭福祉
- 社会福祉
保母資格から保育士資格への切り替え方法
現在取得できるのは保育士資格ですが、法改正前の保母資格も、保育士として働く資格として役立ちます。ただし、保母資格のままでは使えないため、資格の切り替え手続きが必要です。
保母資格を保育士資格に切り替える手続きは、以下の手順で行いましょう。
- 1.「保育士登録の手引き」を保育士登録事務処理センターから取り寄せる
- 2.保育士資格の登録手数料を支払う
- 3.必要書類を用意・作成する
- 4.準備した書類を保育士登録事務処理センターへ提出する
書類の取り寄せや準備が必要なため、保育士として働く予定があるなら、早めの準備が必要です。
保育士が働ける場所
保育士が働ける場所は、主に以下の2か所です。
- 公的に運営する保育施設
- 民間企業が運営する施設
それぞれについて詳しく解説します。
公的機関の施設
保育士が活躍する公的施設には、以下のような所があります。
- 保育園
- 児童養護施設
- 児童福祉施設
- 乳児院
- 認定こども園
- 参考:幼保連携型認定こども園で勤務する保育教諭に係る保育士資格 取得の特例について|保育士養成課程等検討会(https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000949772.pdf)
民間の施設
昨今は公的施設以外にも、民間の企業が運営する保育施設が増えており、保育士が必要とされています。
- 託児所
- 病児保育
- 企業内保育所
- ベビーシッター
- インターナショナルスクール
まとめ
保育現場では、子どもを預かるという仕事の特性上、十分な知識とスキルを有した保育士の存在が必要です。これから保育士になりたいという人は、年2回実施される国家試験の合格を目指し、保育に関する専門性を高めていきましょう。
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よくある質問
- 社会人や主婦でも保育士を目指せる?
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社会人や主婦でも、保育士になるのは不可能ではありません。保育士になるには複数のルートがあり、勉強して資格を取得することで保育士を目指せます。忙しい社会人や主婦の多くは通学するのが困難ですが、通信教育を活用した勉強や独学なら資格取得が可能です。
- 保育士の年収は?
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保育士の平均年収は382万円となっています。保育士の平均年収は10年間で50万以上上昇しており、今後も給料が上がる可能性は十分にあるといえるでしょう。
- 保育士資格を取得するにはどのくらいの費用がかかる?
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保育士試験合格に向けて養成学校へ通学する場合、専門学校で200万円以上、短期大学で250万円以上、4年制大学は400万円以上の学費が必要です。それに対して通信講座の受講費用は、およそ5~10万円程度で済みます。独学で勉強する場合は、教材費として5,000円から1万円程度です。
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