• 更新日:2024/08/26

保育士不足が深刻化している一方で、待機児童問題のみならず、隠れ待機児童問題までもが発生しています。そのことを考えると、保育士は今後ますます需要が高くなる仕事の一つといえるでしょう。

今回は保育士として働いている人たちの給料・年収がどれくらいなのか、その他給与水準や求人状況など、保育士の実態について解説していきます。今後予想される給与事情まで詳細に解説していくので、ぜひ職業選択や資格取得の際に役立ててください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 保育士の平均年収は382万円ほど。必ずしも保育士の給与水準が高いとはいえない。
  • 保育士の年収は、地域・勤続年数・勤務形態・役職によって、給与アップが目指せる。
  • 保育士の平均年収は10年間で50万以上上昇しており、今後も給料が上がる可能性は十分にあるといえる。
  • 保育士は慢性的な人材不足といわれており、これから保育士を目指す人にとっては就職や転職に有利な状況。

保育士の給料・年収は?

保育士の平均年収は382万円


保育士の年収は、20代で約300~350万円、30代で約370~380万円、40代で約390万円、50代で約430万円、60代で約360~390万円です。定年前は年齢が上がるごとに収入も増加傾向にあり、役職に就いていることの多い50代が年収のピークとなっています。地域・勤続年数・勤務形態・役職によって年収は異なります。

きまって支給する現金給与額(月額)① 年間賞与その他特別給与額(年額)② 年間給与額 (①×12+②) 年齢 勤続年数
保育士 25.6万円 74.4万円 382.2万円 38.1歳 8.8年
幼稚園教諭 25.6万円 78.9万円 386.6万円 36.6歳 8.8年

保育士の給与水準は高い?安い?

厚生労働省が公表した「令和3年賃金構造基本統計調査の概況」によると、女性一般労働者の平均賃金は約25.3万円(令和3年)となっています。

女性労働者全体の平均賃金と保育士の平均給与を比べてみると、必ずしも保育士の給与水準が高いとはいえません。女性の社会進出が推進されているとはいえ、男女合計の平均賃金と比較すると、さらにその差は開きます。ただし、業種や役職などによる様々な違いもあるので、保育士だけが低いというわけではありませんし、保育士のなかでも平均賃金を超えている人もいます。

また、保育士は保育の専門職なので、一度資格を取得してしまえば、結婚や出産などのライフイベントによっていったん職場を離れても、復帰できる可能性が高い仕事の一つです。実際、一度職場を離れた後に、パートや臨時職員として復帰する人も少なくありません。そのような観点からみると、給与水準だけで処遇が悪いと判断しない方が良いでしょう。

様々な条件で異なる年収

保育士の年収は様々な条件によって差が生じます。そのため、給与面を考慮するなら、様々な観点から就業先を探す必要があります。条件による違いを以下にまとめました。


地域による違い

日本では人口や経済力などの違いから、同じ職業でも都道府県や市区町村ごとに給与水準が変わり、それによって最低賃金にも差があります。保育士の年収も地域で差があり、地方より都市部のほうが高くなる傾向にあります。


勤続年数による違い

同一園での勤続年数が長くなるほど基本給が上がるケースが一般的です。2017年における厚生労働省の発表によれば、大学や短大・専門学校の新卒~第二新卒者について、20~24歳時点の基本給は280万円程度ですが、30~34歳になると50万円ほど上がり、約338万円になります。


勤務形態による違い

保育士には、正職員や臨時職員の他、契約・派遣社員、パートなど、様々な勤務形態があり、それぞれ年収が異なります。契約内容や労働時間にもよりますが、年収はパートが約160万円、派遣社員と臨時職員がどちらも230万円、契約社員が320万円ほどとなっています。


役職による違い

政府の保育士処遇改善施策によって、新しく「副主任保育士」や「専門リーダー」という役職が生まれました。それらの役職に就く場合には、さらに給与アップが見込めます。


その中でも1番高待遇と考えられるのは?

保育士には大きく分けて、公立保育園勤務と私立保育園勤務の2つがあります。(※児童福祉法に基づく正式名称は「保育所」)公立保育園勤務の場合、職員は公務員にあたるため、給与や福利厚生に関しては私立保育園勤務よりも高待遇といえます。勤続年数や年齢、昇進による昇給もあり、年齢が高いほど給与も高いのが特徴です。地方自治体の運営する公立保育園で働く保育士のことを公立保育士と呼ぶことがあります。

そのため、公立保育士を目指す人も少なくありません。公立保育士として働くには、自治体の採用試験を通過する必要があります。試験日や受験資格、募集の有無などは自治体ごとに異なるので、勤務を希望する自治体のホームページなどをこまめにチェックしましょう。

ただし、公立保育士は、保育士といっても公務員なので、受験には年齢制限がある点に注意が必要です。また、目指す人が多い分倍率も高く、ときには何十倍という倍率になることもあります。加えて、正職員の募集は全国的に減少傾向にあり、臨時職員の募集が増加しているため、公立保育士になるのは簡単ではないことを理解しておきましょう。

保育士の給料・年収は今後上がる?

保育士の平均年収・給与は年々上昇傾向!


保育士の平均年収は10年間で50万以上上昇しており、給与・年収は上昇傾向にあるといえます。今後も必ずしも上がるとはいい切れませんが、国や自治体は保育士のさらなる処遇改善を進めており、保育士は給与面でも将来性のある仕事と考えられます。

以下は保育士の年収の推移です。

保育士の給与・年収の推移
調査年 年齢 勤続年数 毎月の給与 年間賞与 平均年収
2021 38.1 8.8 25.7 74.0 381.8
2020 37.6 7.7 24.9 74.7 373.5
2019 36.7 7.8 24.4 70.0 362.8
2018 36.8 8.1 23.9 70.7 357.5
2017 35.8 7.7 22.9 66.2 341.0
2016 36 7.7 22.3 58.8 326.4
2015 35 7.6 21.9 60.3 323.1
2014 34.8 7.6 21.6 57.3 316.5
2013 34.7 7.6 21.3 53.9 309.5
2012 35 7.8 21.4 57.9 314.7
2011 34.7 8.4 22 59.8 323.8

保育士の平均年収・給与は今後上がる?

深刻な保育士不足の問題となる中、政府・国や自治体は給与を含む保育士の処遇改善は進めており、今後も給料が上がる可能性は十分にあるといえます。

具体的には「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」として2022年2月から9月まで教育・保育の現場で働く方々の収入の引上げに必要な費用を補助する事業が実施されました。補助金額としては収入を3%(月額9,000円)程度を目安としており、総額7万円ほどの金額となります。2022年10月には特例期間の対象外となりますが、「2022年10月以降においても、本事業により講じた賃金改善の水準を維持すること」と記されており、公定価格の見直しにより同程度収入を引き上げる措置が継続される可能性があります。

保育士の求人状況は?

保育士は慢性的な人材不足といわれており、これから保育士を目指す人にとっては就職や転職に有利な状況です。過去5年間の有効求人倍率をみると、幼稚園教諭は平成25年の1.22倍から、平成30年には3.19倍まで上昇しています。保育士は平成25年の1.49倍から、平成30年には3.3倍まで上昇しています。

有効求人倍率とは、ハローワークに登録された企業の有効求人数を有効求職者数で割ったものです。有効求人数に対して有効求職者数が少ないほど、有効求人倍率は上昇します。

もっとも理想とされるのは、有効求人倍率が1倍のときです。たとえば、100件の求人数に対して100人の求職者がいる場合、有効求人倍率は1倍となり、求職者全員に就転職のチャンスがあることを意味します。一方で、有効求人倍率が高い、つまり、求人数に対して求職者数が少ない状況は、企業の採用活動がより活発化する予兆です。

保育士の求人倍率を見ると、全職種の倍率と比較して、非常に高い数値となっています。園の求人に対して求職する保育士が少ない状態が続いているためです。それゆえに、募集条件が改善されたり、採用がすぐに決まったりして、応募者としては有利な状況であるといえます。

国や自治体だけでなく、それぞれの保育園が独自に保育士を集める施策も行っています。なかでも重要視されるのが、潜在保育士の存在です。

潜在保育士とは、保育士資格を取得しており、なおかつ現在保育園などに勤務していない人を指します。厚生労働省の調査によれば、全国に約76万人(2013年時点)いるとされています。そのうち、保育士としての勤務経験のある人は80%以上です。

潜在保育士の多くが給与面の不満を退職理由にあげています。ただし条件が合えば復帰したいと考える人は、潜在保育士全体の60%と、決して少なくありません。そのため、管理職向けの研修や、雇用管理マニュアルの作成・徹底といった、潜在保育士にとって復職したいと思える職場環境構築のための対策(次項「保育士確保のための対策」参照)が講じられ始めています。

結果的にこれまでの職場環境が改善される可能性が高く、新たに保育士資格の取得を目指す人にとってもプラスの状況といえるでしょう。

保育士確保のための対策

2015年に「保育士確保プラン」を厚生労働省が開始しました。2017年度末までに、必要な保育士の確保を目的として行われた政策です。この結果、保育士試験は年2回となり、給与は月額6,000円上昇しました。潜在保育士の再就職支援も強化されましたが、保育士の供給数は必要レベルには達しませんでした。

待機児童問題の解消を目的とし、2019年には「保育士確保集中取組キャンペーン」を厚生労働省が実施しました。2020年度末までに、約32万人の保育を目指しています。具体的な取組は、保育士の給与を最高月額4万1千円を改善、職場復帰のための研修実施、就職準備金の貸付(上限40万円)、勤務環境の改善などとなっています。

まとめ

保育士は、給与面から見ても今後さらに魅力的な仕事になると考えられます。保育士の資格取得を目指すなら、学校に通ったり独学で学んだりする他、通信教育で学ぶ方法もあります。

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生涯学習のユーキャン
この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。

よくある質問

保育士試験の合格率・難易度は?

保育士試験の合格率は約23%と、難易度は高いといえます。ただ、保育士試験は年2回開催されていたり、筆記試験は合格した年を含めて3年間有効であるなど、合格のチャンスが多い試験なので、コツコツ勉強して準備すれば、合格できる可能性は十分あります。

保育士になるには?

保育士になるための方法はいくつかありますが、保育士試験を受験する場合のステップは以下の通りです。
①保育士資格の情報収集
②(受験資格がない場合は)受験資格の獲得
③保育士資格のための勉強
④保育士試験の受験申込
⑤試験受験
⑥試験合格後、保育士登録手続き
⑦保育士証取得

保育士資格を取得するにはどのくらいの費用がかかる?

保育士試験合格に向けて養成学校へ通学する場合、専門学校で200万円以上、短期大学で250万円以上、4年制大学は400万円以上の学費が必要です。それに対して通信講座の受講費用は、およそ5~10万円程度で済みます。独学で勉強する場合は、教材費として5,000円から1万円程度です。

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子どもが好きな方には天職ともいえる仕事で、出産や子育ての経験も活かせます。共働き世帯の増加や待機児童の増加により社会的ニーズも高く、保育所をはじめとした児童福祉施設など、活躍の場も多彩です。
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