仕訳とは?貸借対照表と損益計算書との関係や仕訳の手順を解説
- 更新日:2023/07/05
取引を帳簿に記載することを仕訳といいます。経理に携わったり個人事業主として事業を行ったりしている場合には、欠かせない業務です。この記事では、仕訳の概要や手順についてわかりやすく解説します。あわせて、貸借対照表と損益計算書の概要、仕訳を正確に行うポイントも解説するため、ぜひ参考にしてください。
このページを簡潔にまとめると・・・
- 仕訳とは、すべての取引を簿記のルールに沿って帳簿に記録すること。
- 「確定申告書」や「株主などに提示する決算書」の作成のために、企業にとって欠かせない業務。
- 仕訳を正確に行うために、貸借対照表と損益計算書との関係や仕訳の手順など、基本のルールや専門用語を正しく把握することが重要。
- 経理や個人事業主には不可欠な知識であり、簿記の勉強を通じて身につけることができる。
仕訳とは何か
仕訳とは、すべての取引を帳簿に記録することを指します。簡単にいえば、どのような取引を行ってどのようにお金が動いたのかを分類、記録する作業です。取引を帳簿に記載する際には簿記のルールに従って記録する必要があります。
ここでの取引とはお金の増減のことを指しており、企業間で行われるような交渉や商談を指すわけではありません。商品を仕入れて現金を支払った、商品を販売して現金が増えたというような、お金の動きを指します。
取引を帳簿に記載する際は、借方と貸方に分類し、勘定科目と金額を記録します。たとえば、商品を仕入れて現金で代金を支払ったとしましょう。商品を仕入れて現金5,000円を支払った場合は、以下のように仕訳をします。
借方 | 貸方 |
仕入 5,000 | 現金 5,000 |
このように、借方と貸方それぞれの欄に、どのような取引をしたのか、増減した金額を記載する作業が仕訳です。勘定科目と借方、貸方については後述するため、そちらを参考にしてください。
仕訳が必要な理由とは
仕訳が必要な理由は主に2つ挙げられます。「税務署に提出する確定申告書を作成するため」と「株主などの利害関係者に提示する決算書を作成するため」です。
一般的に、企業では経理担当者などが仕訳を行い、確定申告書を作成します。確定申告書とは、納めるべき税金の金額を報告するための書類です。申告すべき所得があるのに確定申告をしていない場合、無申告加算税の対象となる可能性があるため、確定申告書を作成し提出しなければなりません。
また、正しい仕訳ができていないと正しい確定申告書の作成が難しくなります。利益を過少に計上する、実際に使った経費より多く計上するなどすると、悪意がある脱税とみなされる可能性があります。正しい確定申告書を作成するためには、日々の仕訳は欠かせません。
また、株主などに提示する決算書などの財務諸表が間違っていると、企業としての信頼失墜につながります。正しい決算書作成にも仕訳が欠かせないため、経理や会計において仕訳は重要な業務です。
勘定科目とは何か
勘定科目とは、取引の内容を表す分類名のことで資産勘定、負債勘定、純資産勘定、収益勘定、費用勘定の5つのグループに分けられます。
それぞれの勘定科目は以下を意味します。
資産勘定 | 現金や売掛金、土地など、会社が保有する財産 |
負債勘定 | 借入金や買掛金、支払手形など、会社が支払う義務のある債務 |
純資産勘定 | 資本金や利益剰余金など、会社の純粋な資産 |
収益勘定 | 売上や受取手数料、受取利息など、事業などで得た収入 |
費用勘定 | 仕入や給料、消耗品費など、収益を生み出すためにかかった支出 |
基本的に、収益から費用を差し引いたものが利益となり、資産から負債を差し引いたものが純資産となります。資産・負債・純資産・収益・費用はそれぞれ、以下のような関係になっています。
借方 | 貸方 |
---|---|
資産 | 負債 |
純資産(資産-負債) |
借方 | 貸方 |
---|---|
費用 | 利益(収益-費用) |
収益 |
借方と貸方とは何か
仕訳をする場合、前述した勘定科目を借方と貸方に振り分け記載します。借方は資産の増加と費用の発生を計上するもの、貸方は負債や純資産の増加と収益の発生を計上するものです。借方、貸方という言葉自体には特別な意味はありません。借方は左側に記載し、貸方は右側に記載すると覚えておきましょう。
借方と貸方のルールとは
取引を借方・貸方のどちらに分類するかは明確なルールがあります。前述したように勘定科目は5つに分類されますが、それぞれのグループごとの増減によって、借方・貸方どちらに記載するかが決まります。借方と貸方への分類方法は、以下のとおりです。
資産 | 増えれば「借方」、減れば「貸方」 |
負債 | 増えれば「貸方」、減れば「借方」 |
収益 | 増えれば「貸方」、減れば「借方」 |
費用 | 増えれば「借方」、減れば「貸方」 |
純資産 | 増えれば「貸方」、減れば「借方」 |
仕訳は貸借対照表と損益計算書のもとになる
決算書は仕訳をもとに作成します。決算書となる貸借対照表と損益計算書について詳しく解説します。
1.貸借対照表
貸借対照表とは、会社の財政状態がまとめられた表のことです。決算時点の勘定科目ごとの残高が記載されているもので、企業の経営状態が健全かどうかなどを確認できます。貸借対照表の左側(借方)には資産を記載し、右側(貸方)には負債と純資産を記載するという形です。貸借対照表が正しく記載されていれば、左右の値が同じになります。
2.損益計算書
損益計算書とは、一定期間の会社の経営成績を表したものです。貸借対照表が企業の経営状態や健全性を確認するための表であるのに対して、損益計算書は企業がどれくらいの利益を上げているかを確認するための表です。損益計算書の左側(借方)には費用と純利益、右側(貸方)には収益を記載します。
仕訳帳とは何か
仕訳帳とは、すべての取引が日付順に記載されている帳簿で,金銭や金銭にかかわる権利や義務の増減を伴う取引すべてが記録されています。会計業務においては重要な帳簿として位置づけられており、総勘定元帳と仕訳帳の2つが主要簿として扱われています。仕訳帳は日付順に記載するため、毎日書き込む必要があります。
仕訳の手順とは
仕訳は「勘定科目を決定する」「勘定科目を5つのグループに分類する」「借方と貸方に金額を記載する」という手順で行います。それぞれについて詳しく解説します。
1.勘定科目を決定する
まずは、取引内容に合った勘定科目を選びましょう。たとえば、現金での売上が10万円あったとします。この場合に注目すべきポイントは、「現金での売上」「10万円」という点です。つまり、この場合の勘定科目は「現金」と「売上」になります。このように、取引内容を分解して適した勘定科目を決定しましょう。
2.勘定科目を5つのグループに分類する
勘定科目は5つのグループのうちどれかに当てはめられます。そのため、決定した勘定科目がどのグループに該当するのかを確認しましょう。先の例では、「現金」と「売上」という勘定科目に当てはめられます。この場合、現金は「資産」グループに売上は「収益」グループに該当するというように、各勘定科目の該当グループを確認します。
3.借方と貸方に金額を記載する
取引内容に合った勘定科目を決定し、5つのグループのうちどれかに分類したあとは、それぞれの勘定科目を借方と貸方に分けて金額を記載します。先の例のように、現金での売上が10万円あったとしましょう。この場合には、以下のように記載します。
借方 | 貸方 |
---|---|
現金 100,000円 | 売上 100,000円 |
仕訳の具体例とは
勘定科目は「資産」「費用」「負債」「収益」「純資産」の5つに分けられますが、各グループの具体的な仕訳例を解説します。
資産
- 商品を売り上げて、代金として5,000円を現金で受け取った場合
借方 | 貸方 |
---|---|
現金 5,000 | 商品 5,000 |
- 店舗用の建物を1,000万円で購入し、代金は現金で支払った
借方 | 貸方 |
---|---|
建物 10,000,000 | 現金 10,000,000 |
商品や建物、現金はどれも資産に分類されます。そのため、増えた資産である現金と建物を借方に、減った資産である商品と現金を貸方に記載します。
費用
- 事務所の光熱費として30,000円を現金で支払った
借方 | 貸方 |
---|---|
水道光熱費 30,000 | 現金 30,000 |
現金は資産に、水道光熱費は費用に分類されます。この場合には、減った資産である現金を貸方に、増えた費用である水道光熱費を借方に記載します。費用は基本的には借方に記載されます。
負債
- 銀行から50万円を借り入れて当座預金に入金した
借方 | 貸方 |
---|---|
当座預金 500,000 | 借入金 500,000 |
この場合、増えた資産である当座預金は借方、増えた負債である借入金は貸方に記載します。
- 借入金50万円と利息1,000円を現金で返済した
借方 | 貸方 |
---|---|
支払利息 1,000 | 現金 501,000 |
借入金 500,000 |
この場合、減った負債である借入金と増えた費用である支払利息は借方に、減った資産である現金は貸方に記載します。
収益
- 商品を売り上げて現金10,000円を受け取った
借方 | 貸方 |
---|---|
現金 10,000 | 売上 10,000 |
売上は収益に分類され、現金は資産に分類されます。この場合には、増えた資産である現金を借方に、増えた収益である売上を貸方に記載します。
純資産
- 事業の資本金として現金100万円を元入れした
借方 | 貸方 |
---|---|
現金 1,000,000 | 資本金 1,000,000 |
現金は資産に分類され、資本金は純資産に分類されます。この場合、増えた資産である現金は借方に、増えた純資産である資本金は貸方に記載します。
仕訳を正確に行うポイントとは
仕訳は正確に行うことが重要です。仕訳を正確に行うためのポイントとしては「借方と貸方の合計額を確認する」「借方と貸方の合計額を確認する」「補助簿をつくる」ことが挙げられます。
1.勘定科目の分類とグループを理解する
正しい仕訳を行うためには、勘定科目の分類とグループについてしっかりと把握しておくことが重要です。取引内容に応じた勘定科目を選び、各勘定科目がどのグループに分類されるかを理解しましょう。また、勘定科目が借方と貸方のどちらに分類されるかを理解しておくことで、仕訳業務が効率的に行えるようになります。
2.借方と貸方の合計額を確認する
1つの仕訳ごとに借方と貸方の金額が一致するか確認しましょう。基本的に、借方と貸方の合計額は同じになります。借方と貸方の合計額が一致しない場合には、数字を書き間違えるなどのミスが発生していることが考えられます。数字が一致しない場合には、ミスがないかを再度確認して正しい数値を記載するようにしましょう。
3.補助簿をつくる
補助簿を作成することで、ミスを防ぎやすくなります。補助簿とは、現金出納帳や売掛帳、買掛帳などのことです。補助簿を作成しておくことで、記帳ミスや記帳漏れなどを確認しやすくなるため、正しい仕訳をしやすくなります。特に、取引先が多い場合には計算や管理に手間がかかるため、補助簿を作っておくと効率的です。
仕訳帳は保存が義務づけられている
仕訳帳は法律によって保存が義務付けられています。原則として、対象となる事業年度の確定申告書提出期限の翌日から7年間は保存することと定められているため、適切に保存しておきましょう。保存が必要な帳簿と書類の代表例は以下のとおりです。
「帳簿」
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
- 現金出納帳
- 売掛金元帳
- 買掛金元帳
- 固定資産台帳
- 売上帳
- 仕入帳
「書類」
- 棚卸表
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 注文書
- 契約書
- 領収書
仕訳の必要がない場合がある
基本的に、企業では取引を適切に仕訳する必要がありますが、仕訳の必要がないケースもあります。個人事業主として事業を行っており、白色申告や10万円の青色申告特別控除を利用する場合には、仕訳の必要がありません。ただし、55万円または65万円の青色申告特別控除を利用する場合には仕訳が必要になります。
まとめ
仕訳とは、すべての取引を簿記のルールに従って帳簿に記録することです。確定申告書の作成や決算書の作成には仕訳が必要となるため、正確に仕訳を行わなければなりません。勘定科目の分類や勘定科目が属するグループ、借方・貸方のどちらに記載するかなどを理解しておくことで、正確かつ効率的な仕訳が行えます。
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