• 更新日:2024/09/06

簿記1級とは、一般的に「日商簿記1級」のことであり、難易度が高い資格です。この記事では、簿記1級の取得を検討している人向けに、簿記1級の概要、試験の概要、合格率、資格取得のメリットなどを解説します。合格するために必要な勉強時間の目安や勉強方法にも触れていますので、ぜひ役立ててください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 一般的に簿記1級といえば「日商簿記1級」を指す。この他に全経簿記1級と全商簿記1級がある。
  • 簿記1級の合格率は10%ほど。試験範囲が広く深い専門知識が必要な非常に難易度の高い資格。
  • 簿記1級の合格に必要な勉強時間は800時間~2000時間程度。
  • 簿記1級合格で税理士試験の受験資格が取得できるため、公認会計士や税理士などの国家資格への登竜門ともいわれる。

簿記1級とは

簿記1級の資格としては、国内では日商簿記1級、全経簿記1級、全商簿記1級の3つの資格があります。ただし、先にも触れましたが、簿記1級といえば、日商簿記1級を指すことが一般的です。

この簿記1級のレベルについて、日本商工会議所では次のように定義しています。

“極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル”

合格することで、税理士試験の受験資格も取得できるため、公認会計士や税理士などの国家資格への登竜門ともいわれています。

簿記1級を取得するメリット

簿記1級は非常に難易度が高い資格ですが、取得するとさまざまなメリットがあります。ここでは、簿記1級を取得するメリットを紹介します。

税理士試験の受験資格が与えられる

公式ホームページの「合格者の特典」にも記載されていますが、簿記1級に合格すれば、税理士の受験資格を得られます。税理士試験の受験資格として、「学識による受験資格」「職歴による受験資格」もありますが、それらの条件を満たさない場合でも、簿記1級に合格すれば税理士試験の受験が可能です。

職業能力開発促進法の指導員資格試験の一部科目が免除される

簿記1級に合格すれば、職業能力開発促進法の指導員資格試験の事務科の試験科目の一部が免除されます。商工会議所の簿記のホームページにも記載されているメリットです。職業訓練指導員になれば、公共職業能力開発施設で、職業訓練指導員として働けます。

大学の推薦入学で有利になる

簿記の資格を保有していれば、大学の推薦入学が有利になります。国内78校の大学が日商簿記資格保有者を大学入試で優遇しており、公式ホームページで大学名を確認できます。1級に限らず日商簿記資格を持っていると優遇される傾向がありますが、なかでも最難関の1級はより有利です。

就職・転職時に有利になる

簿記1級を保有していれば、履歴書の資格欄に、簿記1級と記載でき就職や転職に有利です。簿記1級の保有者は、大企業の経理が務まるレベルです。上場企業が、四半期ごとに提出を義務付けられている財務諸表も、実務経験のある簿記1級の保有者なら問題なく作成できるため、たくさんのニーズがあります。

資格手当支給・昇進につながる

簿記1級を取得すれば、勤務先から資格手当が支給される場合があります。また、簿記1級の知識を有していることを評価してもらえば、昇進する可能性も少なくありません。

独立・起業する際に役立つ

簿記1級の資格があれば、独立・起業する際に役立ちます。資金計画書や損益計算書など、独立・起業の資金を集めるために必要な書類を自分で作成できます。独立後の各種申告書も税理士などに依頼する必要がありません。

日常生活や資産形成にも役立てられる

会計の知識は、仕事だけでなく日常生活でも役立ちます。住宅ローンの返済計画を自分で作成できれば、適正な物件選びも難しくなくなるでしょう。投資などでの資産形成にも、簿記1級の知識は役立ちます。

簿記1級合格に必要な勉強時間は800~2000時間

簿記1級合格に必要な勉強時間は、800時間~2,000時間程度とされています。1年間、毎日3時間から6時間勉強することに相当する時間です。ただし、簿記の勉強をすでに始めていて、簿記3級、簿記2級と順に取得済みの人は、もっと短い勉強時間でも合格できるでしょう。簿記2級の保有者と、簿記の知識がほとんどない人では、必要な勉強時間は異なります。

簿記1級の試験概要

簿記1級を受験するためには、試験概要を理解しておく必要があります。基本的なことですが、紹介します。

試験科目・試験時間

簿記1級の試験科目と試験時間は次のようになります。

【簿記1級の試験科目と試験時間】

試験科目 試験時間(途中で休憩があります)
商業簿記 90分
会計学
工業簿記 90分
原価計算

商業簿記は、購買・販売活動などの企業外部との取引を記録し、計算する技術が主に出題されます。会社の関係者に対し、正確な報告(決算書作成)をしなければならないためです。工業簿記は、企業内部で部門別や製品別の材料・燃料・人力など、資源の投入を記録・計算する技能です。経営管理には欠かせない技能となります。

配点・合格基準

簿記1級試験の配点は、4つの科目(商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算)それぞれ25点です。合格基準は、70%以上の得点ですが、1科目でも10点未満を取ると不合格になります。苦手な科目を作らないことが合格の近道です。

受験資格・受験料

簿記1級の試験は受験資格がなく、誰でも受験できます。簿記の3級や2級を取得していなくても簿記1級の試験を受けられますが、まず3級や2級の合格を目指すのが一般的です。1級の受験料は8,800円(税込)となっています。

試験日

簿記1級の試験は、6月と11月の年2回実施されます。なお、簿記の2級と3級は2月にも実施されるため、年に3回の試験があります。2024年の簿記1級試験は、第167回が6月9日(日)、第168回が11月17日(日)に実施されます。試験の開始時間は、午前9時からです。

申込受付期間

2024年11月17日(日)に実施される簿記の試験申込みは、例年通りであれば、2024年9月下旬頃から受付を開始します。受付の日程は、各商工会議所や申込み方法(窓口・郵送・インターネット)によって異なるため、確認が必要です。「商工会議所検索サービス」を利用すれば、近くの商工会議所の連絡先や申込受付日程、申込方法等を検索できます。

合格発表日

合格発表の時期や方法は、各商工会議所によって異なります。合格した場合の証書の受け渡し方法も同様です。試験を申し込む際に確認してください。

簿記1級の難易度・合格率

簿記1級は合格率が10%ほどと低く、非常に難易度が高い資格として知られています。簿記2級と比較して、試験範囲も広くて、深い専門知識も必要です。「大学等で専門的に学ぶ者に期待するレベル」と公式HPにも明記されているほど、高いレベルが求められます。

簿記1級の合格率は約10%

日商簿記1級の合格率は約10%です。10%という数値は安定しており、合格者数にして毎回1,000名程度です。 簿記3級の合格率が約40〜50%、毎回3~4万人の合格者を輩出していることを考えると、極めて価値の高い資格であることが分かります。
以下は過去5回の簿記1級試験の申込者数、受験者数、合格者数、合格率をまとめたデータです。

   
申込者数 実受験者数 合格者数 合格率
167回(2024.6.9実施) 11,798名 9,457名 992名 10.5%
165回(2023.11.19実施) 12,886名 10,251名 1,722名 16.8%
164回(2023.6.11実施) 11,468名 9,295名 1,164名 12.5%
162回(2022.11.20実施) 12,286名 9,828名 1,027名 10.4%
161回(2022.6.12実施) 11,002名 8,918名 902名 10.1%

独学でも簿記1級合格を目指せる?

簿記2級まで独学で合格した人であっても、簿記1級を独学だけで合格することは難しいのが現状です。不可能というわけではありませんが、厳しいハードルがあります。

簿記1級は、「大学等で専門的に学ぶ者に期待するレベル」と公式ホームページにも明記されているほど、高いレベルが求められています。試験範囲も広くて、難易度も高く、深い専門知識も必要です。受験者たちのレベルも高く、合否が相対評価で決まるため、効率的に勉強する必要があります。

簿記の資格取得は通信講座がおすすめ

簿記の資格取得を目指すのであれば、1級だけに限らず、2級や3級であっても通信講座の受講がおすすめです。市販のテキストや問題集では、最新の出題傾向に沿っているか疑問が残るからです。通信講座であれば、簿記試験のプロフェッショナルが、出題傾向を調べ、効率的な勉強方法や要領を教えてくれます。

予備校よりも費用を抑えることができ、添削指導などのサポートが受けられるため、安心して簿記の勉強に専念できるでしょう。

まとめ

簿記の資格は、1級と2級、3級などがあります。1級は、2級や3級と比較して格段に難易度が上がります。受験資格に制限がないとはいえ、1級から受験して合格するのは難しいでしょう。まずは、2級、3級で簿記スキルの下地をしっかり作ることがおすすめです。

簿記の資格取得を目指しているなら、ユーキャンの「簿記2級講座」「簿記3級講座」をぜひ検討ください。合格に近づくポイントをしっかり盛り込んだカリキュラムになっているため6ヵ月で合格を目指せます。

生涯学習のユーキャン
この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。

よくある質問

簿記1級の取得者の平均年収は?

簿記1級の取得者の平均年収は、大手企業の経理になった場合で約616万円です。日本全体の平均年収より約170万円高い年収です。

簿記1級が就職・転職に有利な理由とは?

簿記1級の試験は合格率が低く、取得自体が難しいため、優秀な人材として社会的に評価されやすくなり、就職や転職で有利です。簿記1級合格には、専門性の高い簿記の技能に加えて、会計学や原価計算の高度な知識が必要です。大手企業の経理をはじめ、財務やマーケティング、営業のほか、会計事務所やコンサルティングファームなど、さまざまな需要があります。

初学者が、いきなり簿記1級の合格を目指すことは可能?

簿記1級は、2級や3級と比較して格段に難易度が上がります。受験資格に制限がないとはいえ、1級から受験して合格するのは難しいでしょう。まずは、2級、3級で簿記スキルの下地をしっかり作ることがおすすめです。

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簿記とは、帳簿をつけるために必要な技能のこと。実務で役立つ経理、会計の基礎知識が習得できるので、会計や財務の知識を得ようというときの、はじめの一歩にぴったりの資格。将来的に、簿記2級へとステップアップも見込めるため、経理・会計のスペシャリストへの第一歩になる資格です。
簿記の有資格者はニーズが安定しているので、職・転職が有利に!資格は生涯有効なので、出産・子育て後の再就職にも役立ちます。

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