宅建士の法定講習とは?内容や更新の流れを解説
宅建士とは、不動産の取引に関する専門的な資格です。特別な条件に該当する人を除き、宅建士になるには法定講習の受講が必須となっています。この記事では、宅建士の法定講習の内容について詳しく解説します。更新時の流れについても解説するため、ぜひ役立ててください。
宅建士として働くために必要な「法定講習」とは
法定講習とは、新規で宅建士証を申請する一部の人や、すでに宅建士として活動していて宅建士証を更新する人が受講する講習です。法定講習を受けると、宅建士として働くために必要な宅建士証が交付されます。
新規で宅建士証を申請する場合、条件を満たしていれば法定講習を受講する必要がありません。以下では、法定講習が必要なケースと法定講習が免除されるケースを解説します。
法定講習が必要なケース
法定講習が必要なケースは、以下のとおりです。
- 試験に合格して1年を超えてから宅建士証を取得する場合
- 宅建士証を更新する場合
宅建士として働き続けるうえでは、特別な場合を除いて必ず法定講習を受講しなければなりません。必要なタイミングで忘れずに受講しましょう。
法定講習が免除されるケース
法定講習が免除されるケースは、以下のとおりです。
- 試験に合格してから1年以内に宅建士証を取得する場合
- 登録を他の都道府県へ移転する場合
宅建業法における法定講習の受講と免除について解説
法定講習の受講と免除については、宅建業法第22条の2第2項において以下のとおり規定されています。
“宅地建物取引士証の交付を受けようとする者は、登録をしている都道府県知事が国土交通省令の定めるところにより指定する講習で交付の申請前六月以内に行われるものを受講しなければならない。ただし、試験に合格した日から一年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする者又は第五項に規定する宅地建物取引士証の交付を受けようとする者については、この限りでない”
このように法律の定めがあるため、宅建士証の申請や更新においては条件に応じて法定講習を受講する必要があります。
- ※参考:宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC1000000176)
法定講習の内容とは
法定講習は講義形式で行われ、修了後の試験やテストはありません。ただし、6時間以上かけ、宅建士に必要な最新の知識を学びます。法定講習の科目やスケジュールは、以下のとおりです。
法定講習の科目
法定講習では以下の4科目について学びます。
- 宅地建物取引士の使命と役割
- 法令改正の主要な改正点と実務上の留意事項
- 紛争事例と関係法令および実務上の留意事項
- 改正税制の主要な改正点と紛争事例および実務上の留意事項
法定講習の内容は、このように法令改正や実務上の留意事項などが中心です。宅建士証を一度取得すると5年ごとに更新が必要であり、法定講習では過去5年間の主要な変更点をまとめて扱っています。実務に役立つ内容が多く盛り込まれているため、法定講習を受ける際は集中して知識を身につけましょう。
法定講習のスケジュール
法定講習のスケジュールは会場や実施時期によっても異なりますが、たとえば以下の流れで実施している会場があります。
時間 | 内容 |
---|---|
9:30 | 受付 |
9:55 | 事務説明 |
10:00~12:00 | 講習 |
12:40~13:30 | 休憩 |
13:30~17:10 | 講習 |
17:10 | 宅建士証の交付 |
受付では受講料の確認をし、古い宅建士証が回収されます。講習は午前と午後に分かれており、午前に「宅地建物取引士の使命と役割」「法令改正の主要な改正点と実務上の留意事項」、午後に「紛争事例と関係法令および実務上の留意事項」「改正税制の主要な改正点と紛争事例および実務上の留意事項」について学びます。すべての科目を受講すると、新しい宅建士証の受け取りが可能です。
自宅学習になる場合もある
新型コロナウイルスの影響により、法定講習を会場での集合研修ではなく、自宅学習で実施しているケースもあります。法定講習の実施方法は管轄の都道府県によって異なり、時期によっても変化する可能性があります。法定講習を受講する際は事前にホームページを確認し、実施方法についてチェックしましょう。
宅建士の法定講習の費用はどれくらい?
宅建士の法定講習を受ける際にかかる費用は以下のとおりです。
- 法定講習の受講料:12,000円
- 宅建士証の交付手数料:4,500円
法定講習を受講したうえで新しい宅建士証を受け取るため、法定講習の受講料と宅建士証の交付手数料の両方がかかります。現金で支払えるよう、事前に用意していきましょう。
なお、宅建士証の交付について郵送を希望する場合は、返信用封筒用の切手代として404円が追加で必要です。
法定講習の開催場所や持ち物を確認
ここでは、法定講習の開催場所と持ち物について詳細をそれぞれ解説します。
開催場所
法定講習の開催場所は、都道府県ごとに決められています。各都道府県の宅地建物取引業協会のWebサイトを閲覧し、どこで開催されるか確認しましょう。各都道府県のWebサイトには、法定講習の開催日についても記載されています。開催場所と開催日をチェックし、必要なタイミングで着実に法定講習を受けられるように準備してください。
持ち物
法定講習の際に必要な持ち物をまとめると、以下のとおりです。
- 認印
- 証明写真
- 法定講習の受講料と宅建士証の交付手数料
- 宅建士証(更新の場合)
さらに、更新のために法定講習を受ける人は、更新前の宅建士証も持参します。万が一、宅建士証を紛失している場合は、紛失届の提出が必要です。
宅建士証の更新手続きの流れを解説
宅建士証の更新はどのように行うのでしょうか。ここでは、更新手続きの流れを解説します。
- 宅建士証の有効期限が残り7ヵ月頃になると宅建業協会から案内ハガキが届く
- 法定講習は予約制のため、希望の開催場所と開催日を書類に記載して郵送
- 必要な教材は当日配布
- 講習後に新しい宅建士証が交付
1:案内ハガキが届く
宅建士証の更新時期が近づくと、各都道府県の宅建業協会から案内ハガキが届きます。時期は、宅建士証の有効期限の7ヵ月頃です。宛先は宅建士登録先の住所と名前となるため、時期が近づいたら確認しましょう。
2:予約する
法定講習は予約制であるため、受講を希望する際は事前に予約する必要があります。予約方法は郵送の場合が多いですが、各都道府県の宅地建物取引業協会のWebサイトで開催場所と開催日を確認し、希望を書類に記載して郵送しましょう。
なお、法定講習の予約は先着順となっており、申込む時期が遅くなれば希望通りに受講できない可能性もあります。予定がわかったら、早めの申込みをおすすめします。
3:講習を受講する
予約に合わせて受講場所に行き、講習を受けましょう。必要な教材は当日配布され、その内容にそって講義が行われます。試験や実習などはありませんが、集中して講義を聞きましょう。
4:宅建士証を受け取る
すべての科目の受講を終えると、宅建士証を受け取れます。更新の場合、即日で宅建士証の受け取りが可能です。講習の後に交付されるため、忘れずに受け取って持ち帰りましょう。
宅建士には登録講習や登録実務講習もある
宅建士に対しては、法定講習以外にも、登録講習や登録実務講習が実施されています。名称が似ていて混同されやすいため、それぞれの違いを正しく押さえておくことが大切です。ここでは、宅建士の登録講習と登録実務講習について解説します。
宅建士の登録講習とは
宅建士の登録講習とは、宅建試験の前に実施される講習です。通称で「5点免除」や「5問免除」とよばれています。宅建業者に勤務している場合に受講でき、本試験の全50問のうち5問(46~50問目)の問題について免除されます。登録講習を受講するには、勤務先の宅建業者が発行した宅建業従業者証明書が必要です。
登録講習は50時間の学習と1時間の修了試験で構成されています。免除を受けられる宅建試験の実施時期は、登録講習を終えてから3年以内までです。
宅建士の登録実務講習とは
宅建士の登録実務講習とは、宅建試験の合格者の一部が対象となる講習です。通常、宅建の登録をするには2年以上の実務経験が必要です。2年以上の実務経験がない合格者が宅建士として働きたい場合は、宅建士の登録実務講習の受講が必須となっています。
宅建士の登録実務講習に必要な時間は50時間です。まず通信講座が行われ、その後スクーリングが実施されます。修了試験に合格すると、2年以上の実務経験がなくても宅建士の登録ができます。
宅建士の登録実務講習に関するQ&A
ここでは、宅建士の登録実務講習に関してよくある質問と回答を紹介します。
法定講習を受けないとどうなりますか?
法定講習を受けなくても、処分や罰則の対象にはなりません。ただし、宅建士として業務に従事するには、法定講習の受講後に交付される宅建士証が必要です。
宅建士証が有効期限切れになったらどうすればいいですか?
宅建士証の有効期限が切れたら、都道府県知事へ返納する必要があります。東京都の場合、有効期限が切れた宅建士証は担当部署に提出すると返納できます。簡易書留での郵送もしくは直接持参して返納しましょう。
まとめ
法定講習は、宅建士証の交付や更新のために行われています。宅建士証は5年に1回の更新が必要であるため、宅建士として働き続けるうえでは、必ず法定講習を受講するタイミングがあります。忘れずに受講し、宅建士証を更新しましょう。
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- この記事の監修者は生涯学習のユーキャン
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よくある質問
- 宅建士と行政書士では、どちらが難しいですか?
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一般的には、宅建士試験に比べて行政書士試験の方が難しいとされています。近年の合格率では、行政書士が10~15%、宅建士が合格率は15~17%と、宅建士のほうが合格しやすい試験といえます。
- 宅建試験は独学でも目指せますか?
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独学で宅建試験の合格を目指すことは可能ですが、出題範囲が広いため、学習方法に工夫が必要です。
効率的な対策には、優先順位をつけ、配点・出題数が多い科目を優先的に学習します。特に出題範囲も広く配点も多い「宅建業法」を優先して取り組み、十分に対策することがポイントです。
勉強の進め方は、参考書を読み全体を把握し、試験に出題される4科目の特徴を理解します。過去問対策や模試の活用も重要です。 - 宅建試験の5点免除とは?
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宅建試験の5点免除とは、50問ある試験問題のうち46~50問目が免除になる制度です。
この制度の利用には、国土交通大臣が指定する講習を受講し「登録講習修了者証明書」の交付を受ける必要があります。登録講習の受講には「宅地建物取引業に就いている」「従業者証明書を持っている」の2つの条件があります。
合格率は一般受験が約15%前後、5点免除が約20%前後と、5点免除の方が合格率が高く、本試験に合格できる可能性が高まります。宅建の本試験は合格基準点に1~2点の不足で不合格になるケースがよくあるので、5点免除には大きなメリットがあるといえます。 - 試験で間違えやすい、35条書面・37条書面の有効な対策方法とは?
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宅建試験では宅建業法が大きな得点源で、50問中20問も出題されますが、中でも、特に35条書面・37条書面の違いは間違えやすい要素の1つで、よく出題される傾向があります。
35条書面・37条書面の違いを理解し、確実に得点できることがポイントです。対策は、条文を単に暗記するのではなく、共通点や違いなどを分類・比較したり、実際の仕事の場面をイメージして学習することが有効です。
講座との相性を確かめよう
不動産関連の仕事に直結するエキスパート資格である宅建。不動産売買や賃貸の仲介に不可欠な国家資格です。宅建資格取得によって、物件の取引条件や手付け金、登記、不動産に関する条件など重要事項の説明や、重要事項説明書への記名、契約後のトラブル防止となる37条書面の記入など、不動産関連の職種での重要な手続きに携わることができます。
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