• 更新日:2024/05/22

キャリアプランとして司法書士資格の取得を検討しているものの、具体的な仕事内容や適性などの詳細を把握できていない人もいるかもしれません。この記事では、司法書士を目指す人に向けて、司法書士の仕事内容や適性について解説します。あわせて、司法書士になる方法についても紹介するので、キャリアプラン実現のためにぜひ役立ててください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 司法書士は、司法や法律に関する業務で、書類作成・手続き代行などを行う「登記のスペシャリスト」。
  • 法律に関する専門家で、単に手続きを進めるだけでなく、依頼者から法律に関する相談を受けることも多い。
  • 几帳面な人や努力家、独立志向の強い人が司法書士に向いている。
  • 司法書士の活躍の場は、司法書士事務所や企業、独立・開業など様々だが、個人事務所として開業するのが最も一般的。

司法書士とは?

司法書士は、司法や法律に関する手続きを専門に行う法律家です。主に不動産登記や供託手続きの代理、法務局・裁判所・検察庁に提出する書類の作成などを担います。これらの場面においては法律の専門知識が必要なため、個人や法人から依頼を受け、司法書士が手続きを代行します。

司法書士の役割

司法書士は、法務局、裁判所、検察庁などへ提出するための書類を作成します。特に、登記や供託の手続きを依頼されることが多いです。また、審査請求の手続きを依頼者の代理で行う場合もあります。依頼者にとって必要な手続きを、適切かつスムーズに進めることが司法書士の役割です。

司法書士と弁護士との違い

司法書士は法律に関する業務を扱うため、弁護士と混同されることもあります。しかし、司法書士と弁護士では、扱える業務の範囲に違いがあります。弁護士が法律に関する業務のすべてに対応できるのに対し、司法書士が対応できるのは書類作成や登記など一部の業務に限られているのです。

司法書士と行政書士との違い

どちらも法律を用いた仕事をする業務独占の国家資格であり専門職ですが、違いもあります。
司法書士の仕事は、個人や企業からの依頼で法律の知識に基づいて、関連する書類の作成や手続きの代行です。主に、不動産登記や商業登記などの登記業務を代行します。
一方で、行政書士は主に役所に提出する書類を作成します。飲食店の営業許可や、建設会社の建築許可など、各種手続きや申請の書類は1万種類以上も。そのため、専門知識を持つ行政書士の力が必須です。

司法書士の仕事内容

司法書士は具体的にどのような仕事を行っているのでしょうか。ここでは、仕事内容について詳しく説明します。
「登記のスペシャリスト」とも呼ばれる司法書士ですが、登記業務以外にも多くの仕事があります。
一方、司法書士にはできない業務もあるためしっかり理解しておきましょう。

登記業務

司法書士の仕事のなかで最も多いのは、登記手続きです。登記とは、行政上の手続きを踏むことで、権利関係について公に示すための制度です。

登記手続きには、大きくわけて不動産と商業(法人)の二つがあります。たとえば、家や土地などの不動産を購入した際には、不動産登記によって権利を示します。また、新しく会社を設立するときは、法人としての登記が必要です。


供託業務

司法書士は供託業務を行うことも多いです。供託とは、有価証券や金銭を供託所である法務局に預け、それらを渡すべき相手に適切に分配する手続きのことです。供託にはさまざまな種類がありますが、特に司法書士がよく扱うものとして、支払うべき金銭を相手に受けとってもらえない場合に行う弁済供託があります。



供託業務において司法書士には出来ない業務

住人と大家さんの間で家賃支払いを巡るトラブルが起き、裁判による紛争解決となった場合には弁護士の領域となります。
認定司法書士であれば、訴訟額140万円以下であれば仲介可能ですが、それ以上の額は立ち入ることができません。


書類作成

司法書士は、専門知識が必要な行政機関、法務局または地方法務局へ提出するための書類を作成するだけでなく、依頼者が手続きを滞りなく進めるためのアドバイスも行わなければなりません。また、検察庁や裁判所への申立書の提出する書類の作成なども行います。


書類作成において司法書士には出来ない業務

法務局や裁判所に提出する書類の多くは司法書士が作成可能ですが、税務署に提出する書類は税理士、建設業許可申請、飲食店営業許可申請などは行政書士と、書類作成といっても法律系資格とのとの業務棲み分けがあります。



訴訟代理・支援

認定司法書士であれば、訴訟の代理や支援も行えます。簡易裁判所での手続きにおいて、司法書士は依頼者の代理人として活動することが可能です。代理人として争う以外にも、訴訟に関するさまざまな支援を行うことも。


訴訟代理・支援において司法書士には出来ない業務

前述の通り訴訟額が140万円を超過する際には弁護士の領域となるため、司法書士は代理人として活躍することができません。



企業法務

司法書士は、企業法務を対象とした活動も可能です。企業法務とは、企業の運営にかかわる法律上の規制を把握し、トラブルを防いだり解決したりする業務です。外部の司法書士として複数の企業へアドバイスするだけでなく、企業に就職して法務担当者として働くケースも増えています。


企業法務において司法書士には出来ない業務

裁判を行う場合は弁護士の領域となります。認定司法書士であれば、訴訟額140万円以下であれば仲介可能ですが、通常、企業が外部とのトラブルを起こしてしまった際には、法務部を通すか、または顧問弁護士等に依頼し対処法務を行うことが多く、実際裁判を担当することは多くないでしょう。



相続・成年後見業務

司法書士は相続に関する相談も受けることができます。正式な遺言書の作成や、相続による不動産の移転登記の手続きだけでなく、成年後見制度を利用するための手続きやサポートもできます。成年後見制度とは、判断能力が不十分な人の財産を適切に管理するための制度です。


相続・成年後見業務において司法書士には出来ない業務

相続トラブルの交渉や相続税の申告は司法書士では対応できず、それぞれ弁護士と税理士が対応するべき業務です。



司法書士のやりがいとは?

司法書士はさまざまな人の法律に関する相談に乗り、問題解決に導く仕事です。ここでは、司法書士のやりがいについて具体的に紹介します。

法律の知識を活かして活躍できる

司法書士になれば、法律の専門知識を活かして活躍することが可能です。司法書士には、登記などの独占業務があります。司法書士ならではの立場から、法的なトラブルに対応したり解決に導いたりすることができます。知識を活かし、市民と国の橋渡し役として活躍できるのです。

依頼人から感謝される

司法書士のもとへ相談にくる依頼者は、複雑な法律上の手続きに困惑しているケースも多いでしょう。そのような場合でも、司法書士なら適切に手続きを進められるので、依頼者の抱える問題もスムーズに解決できます。依頼者から感謝の言葉をかけられたとき、「司法書士になってよかった」と実感できるでしょう。

司法書士に向く人とは?

司法書士にはどのような人が向いているのでしょうか。向いている人の特徴を紹介します。

几帳面な人

司法書士は、重要な書類を正確に作成することが求められるため、几帳面な性格の人が向いています。作成した書類にミスがあれば、最悪の場合、依頼者が重大な損失を被る恐れもあるのです。

努力家

司法書士になるためには、法律に関する専門的な知識が必要です。晴れて司法書士になった後も、法律の新設や改正に対応できるよう、努力を続ける必要があります。よって、司法書士には、努力家で勉強熱心な人が向いているでしょう。

独立志向の強い人

司法書士の場合、将来的な独立・開業も可能です。司法書士の業務は、基本的に1人で進められます。独立・開業し、個人の能力を発揮したいと考えている人に向いているといえるでしょう。

司法書士になる方法とは?

司法書士になるには、主に2つのルートがあります。ここでは、それぞれのルートについて解説します。

ルート1:司法書士試験に合格

司法書士になる一般的な方法としては、国家試験である司法書士試験に合格することがあげられます。合格後は全国のいずれかの司法書士会に入会して司法書士名簿に登録し、研修を受講する必要があります。

ルート2:法務大臣の認可

一定の条件を満たしていれば、試験に合格しなくても司法書士を目指せます。一定の条件とは、裁判所書記官や法務事務官などとして10年以上、または簡易裁判所判事・副検事として5年以上の経歴がある場合で、限定的なルートといえるでしょう。このような経歴を持つ人は、法務大臣の認可を受ければ司法書士の資格を得ることができます。

司法書士資格の活かし方

試験に合格して資格を取得したら、司法書士会に入会し司法書士名簿に登録する必要があります。司法書士は実務経験がないと業務を行うことが難しい職業です。そのため、合格後も日本司法書士会連合会や各司法書士会が主催する研修を受けて、実務を身につける必要があります。

それでは、実際に司法書士として働くと、どのようなキャリアを積んでいくのでしょうか。
司法書士の活躍の場は、司法書士事務所や企業、独立・開業などさまざまです。
ここでは、合格後の働き方を分類してご紹介します。資格取得後のご自身のイメージに是非お役立てください。

独立・開業

司法書士試験に合格した後、一人の司法書士で個人事務所として開業する最も一般的なパターンです。
開業は司法書士事務所などで実務経験を積んだ後に行うのが一般的ですが、初めから個人事務所で開業することも可能です。

開業には、パソコンや一定の書籍があれば仕事ができること、自宅を事務所として開業できることといったように、初期費用が他の仕業と比較して安いというメリットがあるでしょう。
また、開業に伴って試験に合格したが司法書士登録をしていない有資格者や、司法書士試験の受験生を補助者として雇うこともあります。

一般企業に所属

独立前の司法書士は企業に所属して実務経験を積むこともできます。
一般企業に所属すると法務部などに配属され、司法書士試験合格で得た法律知識を生かしながら、法律問題の処理、様々な契約書の作成・管理、会社の商業登記申請書の作成などを行います。
一般の求人と違って法律専門職としての採用になるため、専門のエージェントなどを経由することが多いです。
また、一般企業に所属しているため、所属する企業によっては他の司法書士の働き方と比較して給与や福利厚生面での優遇が受けられることもあります。

司法書士法人に所属

近年、“独立開業は望まない”“組織内でキャリアアップを目指したい”という考え方が増加し、司法書士法人への就職をキャリアとして選ぶ人も増えています。
また、個人での開業となると、一人でやれる業務には限界があります。しかし、法人として組織を作ることで複数の事務所を持つことが可能になり、仕事の幅が広がっていくといったメリットもあります。

合同事務所に所属

合同事務所に所属するメリットは最初から個人での開業は不安といった不安の解消や、独立・開業に伴う費用の削減といったメリットがあります。
さらに、所属した後もお互いに経験を共有できること、身近に相談できる同業他社がいる心強さといった所属後のメリットもとても魅力的です。

司法書士試験とは?

司法書士試験は、年齢・性別・学歴などの制限はなく、どなたでも受験が可能ですが、合格率は例年3~4%前後で、超難関資格とされています。そのため、試験に合格するためには非常に多くの勉強時間が必要です。一般的に合格までにかかる勉強時間は3,000時間前後といわれており、11科目ある試験範囲を効率よく学習することが合格のポイントになります。

以下の関連記事にて、司法書士試験の概要、試験科目、合格率・難易度、試験対策などについてまとめておりますので、ぜひ参考にしてください。

まとめ

司法書士は法律に関する専門知識を活用し、さまざまな人をサポートする仕事です。個人と法人のどちらからも依頼を受け、さまざまな相談に対応します。司法書士の資格を取得すれば、よりやりがいのある仕事ができるでしょう。

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生涯学習のユーキャン
この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

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近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。

よくある質問

司法書士になるには?

司法書士になるためには、司法書士試験に合格し、司法書士名簿に登録し、司法書士会に入会する必要があります。年齢制限はなく、高校生などの未成年者でも受験できます。

司法書士試験の難易度は?

司法書士試験の難易度は非常に高く、最難関国家資格のひとつ。合格率は3~4%台で他の国家資格試験と比較しても合格率は低いです。合格者数は例年500人~600人台となっており、狭き門と言えるでしょう。

司法書士は独学でも合格できる?

司法書士試験に独学で合格する人は多くありませんが、不可能ではありません。ただし、難易度が高い国家試験なので、相当の努力が必要になります。実際に、短期間学習してみて、独学が自分に合っているか、合格する見込みはありそうかなどを検討してみてもいいでしょう。

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