国家総合職とは?試験概要や難易度、仕事内容を解説
- 更新日:2024/07/02
国家総合職とは、「キャリア官僚」と呼ばれる国家公務員で、政策の企画立案等の高度な知識、技術または経験等を必要とする業務に従事する職員です。各府省で政策の企画立案や調査、研究、法案の作成、それらの大臣や議員への説明・根回し、予算編成などの業務に携わることで、さまざまな経験を積めるため、自身の成長にもつながります。中央省庁の幹部候補生として、行政の中枢を担うようなスケールの大きな仕事ができ、やりがいのある仕事です。
本記事では、国家総合職の特徴や国家一般職との違い、合格のコツなどを解説します。国家総合職を目指す人は、ぜひ参考にしてください。
国家総合職とは
国家総合職は下記2つに区分されます。
- 事務官
- 技官・技術職
ここでは、国家総合職の仕事内容や必要なスキルについて解説します。
国家総合職の仕事内容とは
国家公務員総合職は、「事務官」と「技官・技術職」の2つに分かれています。国家公務員総合職採用試験には幅広い受験区分が設けられていますが、大きく分けて法文系と理工系があります。事務官と、技官・技術職のどちらの職務に就くかは受験区分で決定され、試験合格は必須条件です。
事務官に採用されれば、入庁する省庁によって呼称が異なります。法務省に入省すれば、「法務事務官」であり、外務省に入省すれば「外務事務官」などと呼ばれることが 一般的です。入庁した省庁で、予算の編成や法律の作成などの総合事務的業務を担当します。技官・技術職は、入庁した各省庁内の理工系知識を活かせる仕事に就く国家公務員の呼称です。薬学や化学生理学など、それぞれ有する理工系分野での専門知識を活かした仕事に従事します。
例えば、厚生労働省技官なら新薬開発業務であったり、文部科学省技官であれば、宇宙開発に携わる業務に就任したりするなどです。国家総合職は、所属する省庁の業務について幅広く担当しますが、他省庁との連携や調整にも高度な成果が求められます。国家の将来設計を行っていくのでゼネラリストと呼ばれる場合もあります。
国家総合職に必要なスキルとは
国家総合職に求められるスキルは多種多様ですが、心構えとして国民に奉仕する仕事であることを認識しなければなりません。自分の仕事が、世の中の役に立っているかを自認して働き、公的使命感を持つことが必要な仕事です。国家総合職として求められる代表的なスキルは、正義感の強さや協調性の高さ、向学心、忍耐力などが挙げられます。
国家総合職となればゼネラリストとしての視野の広さと、専門性を持つスペシャリストとしての両方の活躍が期待されます。このため、リーダーシップや心身共にタフであることも大切です。朝早くから夜遅くまで仕事をしなければならない場合も多く、ミスが許されない仕事です。引き締まった雰囲気の職場環境のなかでも、力を発揮しなければなりません。
正しく伝え、正しく聞ける能力も必要です。思い込みや勘違いがあれば、大事な仕事を円滑に進めることが難しくなるでしょう。公共的な仕事であるため、国民の公僕として働くという意識を持つことも大事です。仕事に関する事象については常に探求し、学習して知識や知見を深める努力も必要となります。国家総合職として認められるためには、このような資質を持ち、真に社会貢献のために努力することが大事です。
国家一般職と国家総合職との違い
国家公務員には一般職と総合職があり、業務と役割が異なります。大きな違いは下記のとおりです。
- 仕事内容
- 勤務先
- 給料
違い1:仕事内容
国家総合職と国家一般職では、同じ国家公務員でも業務と役割が異なります。国家一般職は、各府省において、事務業務を中心に担当します。中央省庁においては、国家総合職とともに政策の立案企画をする機会も少なくありませんが、基本的には政策を実際に運用し、企画立案を支える役割を持ちます。総合職以上に、専門分野に特化する傾向があることも特徴の1つです。
一方の国家総合職は、将来の幹部候補生として、政策の企画・立案や法律条文の素案作成、他省庁との調整・連携など、幅広い業務を担当します。
違い2:勤務先
国家総合職の勤務地は、中央省庁がある東京(霞が関)が中心となります。理由は、政策の企画や立案が中央省庁で行われるためです。なかには、海外に派遣されたり、出先機関や地方自治体に出向したりするケースもあります。国家一般職は、中央省庁勤務の場合はそのまま定年まで勤務するケースが少なくありません。
始めから中央省庁勤務であれば、東京勤務で終始するケースが多いのが特徴です。出先機関勤務の場合も、都道府県単位やブロック単位での勤務となるため、基本的に転居がない人事異動が通例となっています。民間でいえば、地域限定従業員と似た人事異動の仕組みです。
違い3:給料
国家総合職と国家一般職は、どちらも国家公務員のため、行政職俸給表で給料が決まります。内閣官房内閣人事局の「国家公務員の給与(令和5年版パンフレット)」によると、大卒程度の学歴の場合の初任給は、総合職で月額23万6,440円、一般職で月額22万9,440円です。
総合職は、国家の方針に従って海外勤務もありますが、一般職では外務省以外の省庁で海外勤務の機会はほとんどなく、ブロック外の異動も受け入れていません。国家公務員としての貢献度に差が生じるため、国家総合職の方が昇進スピードは早くなり、昇給も早くなります。
- 参考:「国家公務員の給与」(令和5年版パンフレット)|内閣官房内閣人事局(https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/r05_kyuyo.pdf)
国家総合職になる方法を解説
国家総合職になる方法は下記のとおりです。
- 国家総合職試験に合格する
- 官庁訪問で内定をもらう
国家総合職試験に合格する
国家総合職試験受験資格が設けられています。2023年度の例では、以下のようになります。
【国家総合職試験 受験資格例】
- 1993年4月2日~2002年4月1日生まれの者
- 2002年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの
- 大学を卒業した者及び2024(令和5)年3月までに大学を卒業する見込みの者
- 人事院が上記に掲げる者と同等の資格があると認める者
国家総合職試験は教養区分以外の受験区分が細分化されているため、確認を怠らないようにしましょう。TOEICやTOEFLなどの英語試験のスコアなどを保有する受験者に、加点措置が取られているので有利です。合格後は官庁訪問へと進みます。
官庁訪問で内定をもらう
国家総合職試験に合格すれば、内定をもらうために官庁訪問を行わなければなりません。国家総合職として入省すると、各省庁で日本の将来を担う幹部候補生として活躍が義務付けされます。人事担当者や現場担当者は、長期的なビジョン、責任を背負う覚悟があるかなどを確認しなければなりません。
そのため、40分~60分程度の面接を1日に複数回行います。組織を束ねる者として、適切な人物であるかも慎重に見極められます。この一連のプロセスが官庁訪問であり、官庁によって詳細な内容が異なるため、あらかじめホームページなどで確認しておきましょう。
国家総合職試験の試験概要
国家総合職試験の試験概要とはどのようなものでしょうか。ここでは、2023年度の大卒程度、教養区分以外の採用試験をもとに解説します。
試験のスケジュール
国家総合職試験では、スケジュールの確認が重要です。ここでは、2023年度の採用試験(大卒程度、教養区分以外)の実施スケジュールを例として表にまとめますので、参考にしてください。
【2023年度採用試験実施スケジュール】
出願 | 3月 |
---|---|
1次試験 | 4月9日(日) |
1次試験合格発表 | 4月21日(金) |
2次試験(筆記) | 5月7日(日) |
2次試験(人物) | 5月15日(月)~5月31日(水) |
最終合格発表 | 6月8日(木) |
官庁訪問 | 6月12日(月)~6月22日(木) |
内々定解禁 | 6月22日(木) |
2023年試験より国家総合職日程が前倒しされています。
試験範囲
国家総合職試験は、区分ごとに試験範囲が異なります。ここでは、法律区分を例として表にまとめますので参考にしてください。
【 総合職(法律区分)の試験内容】
試験科目 | 試験時間 | 内容 | 配点 | |
---|---|---|---|---|
第1次試験 | 基礎能力試験 (多肢選択式) |
3時間 | 40題中40題解答 知能分野 文章理解11、判断・数的推理16 知識分野 自然・人文・社会13 |
2/15 |
専門試験 (多肢選択式) |
3時間30分 | 49題中40題解答 [必須解答科目] 憲法7、行政法12、民法12 [選択解答科目](18題中9題解答) 商法3、刑法3、労働法3、国際法3、経済学・財政学6 |
3/15 | |
第2次試験 | 専門試験 (記述式) |
4時間 | 以下より3科目選択 憲法・行政法・民法・国際法・公共政策 |
5/15 |
政策論文試験 | 2時間 | 1題 政策の企画立案に必要な能力その他総合的な判断力及び思考力についての筆記試験 |
2/15 | |
人物試験 | ― | 人柄、対人的能力などについての個別面接 | 3/15 |
国家総合職の区分で、最も難易度が高いとされているのが法律区分です。 過去7年間の平均倍率が15.9倍となっていて、いかに難関であるかを数値が物語っています。
試験の難易度
国家総合職試験の難易度は、高いといえます。2023年度の倍率は18.1倍でした。筆記試験や面接試験に加え、各省庁の官庁訪問にも合格しなければならないためです。最終合格までの倍率は、過去4年間の平均が16.6倍です。
国家一般職の関東甲信越の倍率が過去2年間で3.4倍でした。比較すれば、国家総合職試験がいかに難関であるかも分かります。しかし、この難関を乗り越えた先には、魅力あふれる職務に就けるため、多くの人々が競っています。
国家総合職として働く魅力とは
国家総合職として働く魅力は次のとおりです。
- 異動先でさまざまな経験を積める
- スキルアップの道が用意されている
- スケールが大きい仕事ができる
- 安定した給料・充実した福利厚生が得られる
異動先でさまざまな経験を積める
国家総合職は、一般職と比べて人事異動のペースが早く、さまざまな経験を得られることが魅力の1つです。多くの公務員は、3年~5年で部署異動が行われ、経験を積み重ねていきます。しかし、国家総合職の場合は、短期間でさまざまな部署を経験できるため、幅広い視野を備えられます。
異動の期間は、短くて1年未満であり 長くても2年までです。入省後、10年間で10箇所以上の部署を経験する人も少なくありません。30代前半で、課長補佐級として、ある程度の部下を束ねる立場に就くのが一般的な国家総合職です。
スキルアップの道が用意されている
国家総合職は、国費で留学するなどのスキルアップやステップアップの機会が準備されていることも大きな魅力です。国際的な知見を得たり、語学力を向上させたりするために、数多くの海外経験を積む機会が与えられます。
人事院の長期在外研究制度を利用すれば、海外の大学院に派遣されたり、研究に従事したりすることが可能です。研究内容は、官庁によって異なります。例えば、文部科学省であれば、宇宙関係や原子力関係などであり、農林水産省なら環境対策などです。
スケールが大きい仕事ができる
先にも少し触れましたが、国や国民に貢献するスケールが大きい仕事ができることも、国家総合職の魅力です。例えば、持続可能性という言葉がさまざまなケースで取り上げられています。国家総合職であれば、日本全体の持続可能性を考えながら制度設計を行うことが可能です。
このように、1つの言葉からの政策であっても、社会全体だけでなく国家や国際社会に影響を与える政策を立案できます。このようなスケールでの仕事は、日本が誇る世界的企業であっても存在しません。
安定した給料・充実した福利厚生が得られる
国家公務員の給料は、行政職俸給表で定められているため、安定した給料を得るだけでなく、何歳で何級になれば給料がいくらになるか分かり、人生設計も立てやすいことが特徴です。民間企業と比較すれば、住居手当や通勤手当、扶養手当なども充実しています。
国家公務員試験に合格するためのコツとは
国家公務員の試験に合格するには3つのコツがあります。
- 早めに対策を始める
- 独学と通学のどちらで学ぶか検討する
- 過去問の研究に力を入れる
早めに対策を始める
国家公務員を目指すのであれば、遅くとも試験日の1年前から準備をスタートしましょう。公務員試験は科目数も多く、出題範囲が広い上に論文・面接の対策も必要となるため、長期的な計画を立て、余裕を持って勉強を進める人が多くみられます。筆記試験だけではなく、官庁訪問対策も必要になります。1日に複数回行われる面接が何日も続きます。このため、万全の準備がなければ国家公務員試験に合格しても、国家総合職の内定を得ることが難しくなるかもしれません。
独学と通学のどちらで学ぶか検討する
国家公務員試験に向けた対策方法の1つは、公務員試験対策の専門学校へ通う方法があります。的を絞った試験対策に加えて、プロフェッショナルからのアドバイスを受けられ、モチベーションも維持できるでしょう。通信講座の受講や独学は、コストを抑えて学習ができ、自分のペースで進められるメリットもあります。自分に適した方法で学ぶことが大事です。
過去問の研究に力を入れる
国家総合職試験の対策は、過去に出題された問題(過去問)の研究から始めるのが効果的です。過去問を研究することによって、出題されやすい分野や問題が分かったり、出題の傾向を理解できたりしやすくなります。過去問を研究することで自分が苦手とする分野や弱点も明確になるため、無駄のない学習計画を立てやすくなるでしょう。
まとめ
国家総合職とは、スケールの大きな仕事に臨めて、魅力ある国家公務員です。求められるスキルは多種多様ですが、心構えとして国民に奉仕する仕事であることを忘れてはなりません。国家一般職とは仕事内容や勤務先、給料で大きな違いがありますが、国家公務員であるため安定した収入が約束されています。
国家総合職を目指すのであれば、試験日の1年前には対策を講じて、学びを始めることが重要です。国家公務員試験の専門学校もあり、通学するメリットも少なくありません。独学では難しいため、通信講座を選択する人も年々増えています。国家総合職を目指し通信講座に興味があれば、ユーキャンを検討してください。ユーキャンには国家総合職を目指す講座が充実しています。
- この記事の監修者は生涯学習のユーキャン
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1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。
よくある質問
- 国家公務員試験の難易度は?
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一概には言い切れないが、国家公務員試験の難易度は高いと言えます。国家公務員の倍率をみると、国家総合職の倍率は10.8倍と高く、国家一般職(行政職)では3.8倍と比較的低いことが分かります。 また、同じ国家一般職でも行政職以外は2.1倍とさらに低い倍率となっています。
- 国家公務員試験は併願できる?
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日程が重ならなければ国家公務員試験を併願が可能です。。たとえば、国家総合職と裁判所事務官一般職(大卒程度)の併願などが考えられます。国家公務員の試験は、たとえ職種が違っていても出題傾向が似ていることが特徴です。また、国家公務員一般職と地方上級公務員試験を併願する人もいます。
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