国家公務員とは?試験概要や職種について徹底解説
国家公務員には府省庁の職員から専門職まで、幅広い職種があります。この記事では、総合職・一般職・専門職それぞれの試験概要や、職種の特徴、給料・年収も解説しているので、参考にしてください。
公務員は安定した職業の1つとして人気です。その安定性に魅力を感じ、公務員を目指そうと考えている人も多いでしょう。とはいえ、公務員になるには公務員試験に合格することが必要です。
そこで今回は、公務員試験を受けてみたいと考えている人に向けて、試験科目や合格のためのポイントなどを詳しく解説します。ぜひ、試験対策をする際の参考にしてください。
公務員試験では、「筆記試験」と「面接試験」があります。面接試験は筆記試験合格者を対象として実施され、志望理由などに関する質問に対して適切な回答が求められます。筆記試験は出題範囲が幅広いことが特徴であるため、どのような科目が出題されるのか事前に把握しておくことが重要になります。
次の段落から、筆記試験の科目について解説していきます。
公務員の筆記試験は、「教養科目」と「専門科目」の2つです。受験先により、教養科目のみの試験と専門科目もある試験があります。教養科目と専門科目の違いは、出題範囲にあります。教養科目は高校で学ぶ範囲、専門科目は大学で学ぶ範囲とされています。
筆記試験の出題範囲はかなり幅広いことが特徴です。具体的には、教養科目と専門科目を合わせて約30科目から出題されます。選択できる場合もありますが、広範囲からの出題になるため、すべて学習しようとすると相当な時間がかかってしまいます。そのため、事前に的を絞って、対策をしっかり立てることがポイントになります。
公務員試験の教養科目は、職種にかかわらずほぼ必須となっており、警察官、消防官、多くの市役所職員、皇宮護衛官など、教養科目のみの試験もあります。事前に確認しておきましょう。
公務員試験の教養科目は、主に数的処理や文章理解といった「一般知能」と、社会科学や人文科学などの「一般知識」に分けられます。自治体によっては、一般知識の出題をとりやめたところもあり、出題数や出題範囲は異なる可能性があるので確認しておきましょう。教養科目合格には6割程度の得点が必要といわれています。
「国家一般職」「地方上級」「市役所」の教養科目の出題数は以下の表を参考にしてください。
教養科目 | 科目一覧 | 国家一般職 | 地方上級(全国型) | 市役所(A日程) |
---|---|---|---|---|
文章理解 | 現代文 | 6 | 3 | 3 |
英文 | 5 | 5 | 3 | |
古文 | 0 | 1 | 1 | |
数的処理 | 判断推理 | 8 | 9 | 7 |
数的推理 | 5 | 6 | 5 | |
資料解釈 | 3 | 1 | 1 | |
社会科学 | 政治 | 1 | 1 | 0 |
経済 | 1 | 3 | 1 | |
法律 | 1 | 3 | 2 | |
時事(社会) | 3 | 4 | 4 | |
自然科学 | 数学 | 0 | 1 | 1 |
物理 | 1 | 1 | 1 | |
化学 | 1 | 2 | 1 | |
生物 | 1 | 2 | 1 | |
地学 | 0 | 1 | 2 | |
人文科学 | 日本史 | 1 | 2 | 2 |
世界史 | 1 | 2 | 2 | |
地理 | 1 | 2 | 2 | |
文学・芸術 | 0 | 1 | 1 | |
思想 | 1 | 0 | 0 | |
合計 | 40 | 50 | 40 |
教養科目は、文章理解、数的処理、社会科学、自然科学、人文科学の5科目です。すべてを網羅するには範囲が広すぎるため、まず優先順位をつけて学習しましょう。以下で科目ごとの学習方法を説明します。
文章理解については、大学入試レベルの力があれば難しくはありません。そのため、高校の教科書や参考書などを活用して、しっかり復習しておくことが大切です。
現代文や英文が苦手な人は、ある程度時間をかけて学習する必要があります。可能な限り多くの問題を解き、文章を読むことに慣れておきましょう。
数的処理は教養試験のなかでも問題数が多い科目になります。たとえば、地方上級(全国型,中部・北陸型)の試験の場合は、50問のうち16問程度出題されます。そのため、数的処理は重点的に学習しておくようにしましょう。
数的処理では、「判断推理」「数的推理」「資料解釈」が出題されます。これらの科目は、何度も過去問を解き、解法に慣れておくことがポイントです。たとえば、判断推理では、複数の条件から確実に言えることを判断する問題などが出題されます。問題を繰り返し解いていくと、解法パターンがわかってくるので暗記しておきましょう。
社会科学から出題される「政治」「経済」「法律」は、専門科目の内容と重複する形になります。そのため、専門科目が課されている場合は、専門科目の学習で理解を深めながら、教養科目の学習とのあわせ技でカバーしておくことがポイントです。
また、「時事(社会)」については、国際関係や社会問題、時事などを中心に出題されます。これらは問題集だけでは十分に学習できないため、時間をつくって新聞やニュースなどに目を通し、制度の改正や最新の時事情報などをチェックしておきましょう。
自然科学のなかで、「生物」と「地学」は暗記科目になります。試験直前に暗記する時間をつくり、必要な知識を暗記しておきましょう。理系科目が苦手な人は、比較的得点がしやすい生物と地学から取り組んでみるのもおすすめです。
「数学」「物理」「化学」は高校で学習するレベルの問題が出題されます。理系科目が苦手な人にとっては得点しにくい分野ですが、基礎的な問題は解けるようにしておくことが大切です。計算問題を解けるように、過去問などを活用して、それぞれの公式と知識をおさえておくようにしましょう。
人文科学の「世界史」「日本史」「地理」については暗記科目です。自然科学の「生物」「地学」も暗記科目ですが、理系科目が苦手なら自然科学よりも、こちらを優先して学習するのがおすすめです。
「思想」は、思想家とその思想を示すキーワードの組み合わせを答える問題が出題されます。文学・芸術も著者や芸術家とその作品の組み合わせを答える問題が中心ですので、過去問を解いて、知識を身につけておくようにしましょう。
公務員試験の専門科目は、大卒程度の国家公務員及び都道府県、政令指定都市の公務員試験の大半で必須科目になります。市役所職員の試験に専門科目が課される自治体もあるので、事前に確認しておくことが大切です。専門科目についてはどの区分を受験するかによって出題科目が異なります。専門科目を突破するには、7割の得点を目指しましょう。
国家一般職、地方上級、市役所の専門分野の主な出題科目と出題数の配点表は以下のとおりです。
専門科目 | 科目一覧 | 国家一般職 | 地方上級(全国型) | 市役所(A日程) |
---|---|---|---|---|
行政 | 政治学 | 5 | 2 | 2 |
行政学 | 5 | 2 | 2 | |
社会政策 | 0 | 3 | 3 | |
国際関係 | 5 | 2 | 2 | |
法律 | 憲法 | 5 | 4 | 4 |
行政法 | 5 | 5 | 5 | |
民法 | 5+5 | 4 | 4 | |
労働法 | 2 | 2 | 2 | |
刑法 | 0 | 2 | 2 | |
経済 | ミクロ経済学 | 5 | 9 | 11 |
マクロ経済学 | 5 | |||
財政学 | 5 | 3 | 3 |
公務員試験の専門科目ごとの学習方法を以下で解説していきます。教養科目と同様にポイントをおさえながら学習を進めましょう。
行政系の「政治学」「行政学」は、暗記がポイントになる科目です。比較的取り組みやすい科目ですので、まずは、この2つの科目を確実におさえましょう。「行政学」は時事的な視点から出題されることも多いため、合わせて時事対策もしておくことがポイントです。「社会政策」は、労働政策や社会保障を中心に押さえていきましょう。
「国際関係」は範囲が広いため、学習に時間がかかる可能性があります。余裕があれば学習に取り組むようにするといいでしょう。
法律系は、専門科目のなかでも出題数が多い科目です。また、先ほど説明したように法律に関する問題は、教養試験の「社会科学」でも出題されます。そのため、しっかりと時間を割いて学習しておくようにしましょう。特に「憲法」と「行政法」については、公務員試験のなかでも確実に得点しておきたい科目だといわれています。また、「民法」は条文数も多く難しいですが、頻出分野だけでも押さえていくようにしましょう。
法律系科目の学習方法は、過去問を活用しながら、条文や判例の理解を深めておくことがポイントです。
経済系は、経済原論である「ミクロ経済学」「マクロ経済学」などが出題されます。経済原論は公務員試験のなかでも重要な科目だといわれており、教養試験でも出題される内容になります。経済原論は基本的な知識を問う問題以外に、計算問題も出題されるので、解法を理解しておくようにしましょう。
「財政学」は、税財政制度や時事データなどを把握しておくことが大切です。経済原論の延長ともいえる科目なので、まずは経済原論の学習に力を入れるといいでしょう。
公務員試験における教養・専門科目の科目ごと・全体の学習優先順位を以下で解説します。優先順位を決めてから学習し、確実に得点できるようにしましょう。
教養科目では、「数的処理→英文→その他」の順で学習を進めるようにします。数的処理を最優先とする理由は、出題数が多く、配点の約3分の1を占めるところもあるからです。数的処理で確実に得点を稼いでおくことで、試験に合格できる可能性が高まります。そのためにも、できるだけ多くの問題を解き、解法を身につけておく必要があります。
数的処理の次に英文を優先する理由は、英文も問題数が多いためです。問題は長文形式で、覚えることが少ないため、暗記はさほど重要ではありません。一方、暗記中心の科目は、早いうちに学習に取り組むと、忘れてしまう可能性が高くなります。そのため、そのような科目は数的処理と英文の後に取り組むのがおすすめです。
法律系科目は、憲法から学習を進めましょう。憲法を最優先とする理由は、行政法や、行政学、政治学などの分野は、憲法の基本的な知識がないと理解しにくいためです。また、判例問題が多く、具体例とセットで覚えれば忘れにくいことも理由の1つです。忘れにくい科目や基礎科目については先に学習するのがポイントです。そして、憲法の基礎知識を前提に、行政法を続けて学習しましょう。
また、民法は、私たちの生活に身近な法律だけに事例問題も多く、十分な理解が必要な科目です。事例とあわせて、具体的に理解していきましょう。
経済系科目では、「ミクロ経済学→マクロ経済学→財政学」の順がおすすめです。まず、「ミクロ経済学→マクロ経済学」の順で学習する理由は、抽象度の高いマクロ経済学は、経済学の基礎的な考え方が備わっていない段階では理解するのが難しいので、ミクロ経済学で先に経済学の基礎的な考え方を学ぶためです。また、マクロ経済学は国全体といった抽象的な視点で経済を分析しますが、それには個人や企業といったミクロ経済学の視点が前提になります。
経済学のあとに財政学を学習する理由は、財政学には経済学で学ぶ論点を、さらに深く掘り下げる分野があるためです。先に経済学を学んでおくことで、財政学の学習をスムーズに進めることができます。
専門科目の行政系は、「政治学→行政学→社会政策・国際関係など」の順で学習を進めるようにしましょう。政治学を最優先とする理由は、政治学の理解があることで、教養科目の社会科学や時事(社会)も理解しやすくなるからです。さらに政治学は、行政学や社会学と重複する分野もあるため、先に学習しておくと効率的です。
政治学の次に行政学を学習する理由は、政治学とも関係が深い科目だからです。社会政策と国際関係については、政治学や行政学に比べて出題数が少ないため、最後に学習しましょう。しかし、教養科目や時事とも関連があるため、これらについても理解を深めておくと、スムーズな学習につながります。
公務員試験の科目全体で考えると、出身学部等にもよりますが、「憲法・行政法・民法」→「ミクロ・マクロ経済」を「数的処理」と並行する形で学習するのがいいでしょう。これらの科目を優先的に学習することで、全体的に偏りなく知識を身につけられ、ある程度点数も稼げるでしょう。 試験に落ちてしまう人の特徴として、一度に多くの科目に手を出してしまうことが挙げられます。全体のポイントとしては、上記の優先順位を意識し、基礎を先に固めておくことです。そうすれば、復習に多くの時間をかける必要もないため、過去問を解くことに集中することができます。
公務員試験は、とにかく試験科目が多く出題範囲が広いため、優先順位をつけ、ポイントを絞って学習することが重要です。また、合格のためには教養科目で6割、専門科目で7割の得点を稼ぐ必要があるため、短期間の学習で受かるほど簡単な試験ではありません。
最近では面接試験や論文試験も重要視されているので、こちらもしっかりした試験対策が必要です。何の対策もなく漫然と学習するだけでは公務員になるのは難しいということを意識して学習に取り組みましょう。また、なるべく早く学習にとりかかることも大切です。
国家総合職試験には、平成24年度の国家公務員試験制度の改正によって、「法務区分」(院卒者試験)と「教養区分」(大卒程度試験)という新たな試験区分が誕生しました。法務区分は司法試験合格者を対象とした試験で、教養区分は広く大卒者を対象とした試験です。
法務区分は「政策の企画立案・調査研究に関する事務を職務とする係員のうち、法曹に必要な学職・能力を必要とする業務に従事する係員を採用するための試験」とされています。教養区分は、「既存の試験区分以外の専攻分野の学生や外国の大学卒業者など多様な人材の確保を目的として、企画立案に係る基礎的な能力を測るための試験」になります。
通常の公務員試験は春に実施されますが、この2つの区分のみ秋に試験が実施されます。
公務員の試験科目は多く、事前に優先順位を明確にして学習のスケジュールを立てておくことが合格のためのポイントになります。試験科目が多いなかで効率よく学習を進めるためには、通信講座の活用もおすすめです。
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様々な職種があるため、一概には言い切れないが、合格のために800時間以上勉強する必要があり、公務員試験の難易度は高いと言えます。
公務員試験の採用の流れは一次試験(筆記)、2次試験(面接)に合格後、個別面談で最終的な意思確認が行われるという流れが一般的です。併願が可能なため、スケジュール調整しながら併願するのもいいでしょう。学習をスタートさせるタイミングは遅くとも受験の1年前がベストです。
市役所試験の試験難易度は自治体の人気度によって異なり、人気の市役所は20倍、一部の地方の市役所は2倍程度と倍率にも大きな差があります。試験の一般的なパターン(事務系)は、1次試験が「教養試験」「専門試験」「論文試験」、2次試験が「面接試験」「適性検査」などです。
市役所職員の役割は、市民のより良い暮らしを実現すること。福祉・教育・観光など幅広い仕事を担い、住みよいまちづくりの実現を目指す、やりがいあふれる人気職です。福利厚生や給与面など、公務員としての安定した待遇も魅力。景気に左右されることなく、長く安定的に働くことができます。ユーキャンの市役所コース(大卒公務員受験対策講座)は、公務員試験専門塾の全面監修! 教養試験はもちろん、論文試験・面接試験の対策もバッチリ。初めてでも効率よく合格力を養うことができます。