市役所の公務員試験は難しい?試験問題・試験日程・倍率・試験対策などを知ろう
- 更新日:2023/07/19
市役所職員は、市民生活をサポートする公務員として人気があります。しかし、身近な存在であるにもかかわらず、どのようにして市役所職員になるのか、どのような試験が実施されているのかを、知らない人も多いのではないでしょうか。この記事では、市役所で働きたい人に向けて、市役所の試験の概要や難易度、教養試験・専門試験・集団討論・面接試験それぞれの内容や、学習ポイントについて解説しています。市役所の公務員試験に合格するための参考にしてください。
このページを簡潔にまとめると・・・
- 市役所の公務員試験は、行政業務(政策の実行や会計処理など)を担当する事務系と、電気・機械・土木・建築などを担当する技術系に分けられる。
- 市役所の公務員試験の一般的なパターン(事務系)は、1次試験が「教養試験」「専門試験」「論文試験」、2次試験が「面接試験」「適性検査」など。
- 試験難易度は自治体の人気度によって異なり、人気の市役所は20倍、一部の地方の市役所は2倍程度と倍率にも大きな差がある。
市役所の公務員試験の概要
ここでは、市役所の公務員試験の区分や受験資格、試験日程、試験科目などの概要を解説します。
試験の区分
市役所の公務員試験は、行政業務(政策の実行や会計処理など)を担当する事務系と、電気・機械・土木・建築などを担当する技術系に分けられます。一般的に、技術系の募集は少なめであり、事務系の募集人数の方が多い傾向にあります。
市役所の公務員試験は、仕事内容と試験の難易度によって区分が異なります。
上級:幹部候補となる職員の採用区分。求められる学力レベルは大卒程度。
初級:一般事務職員の採用区分。求められる学力レベルは高卒程度。
市役所によっては、区分に「中級」(短大卒程度)を設けています。
受験資格
地方自治体の大部分が、日本国籍を持つことを条件にしています。また、30歳前後といった年齢制限を設けているのが一般的です。ただし、24歳までという市役所や、また、50歳以上でも受験可能な市役所もあります。「大卒程度」「高卒程度」などの区分は、あくまで学力の目安であり、学歴は不問です。受験時点での居住地も問われませんが、採用後に市役所のある自治体への移住が義務付けられているところもあります。
試験日程
市役所の公務員試験は、1次試験の日程によって主に3タイプに分けられます。
A日程:6月下旬
B日程:7月下旬
C日程:9月下旬
傾向としては、A日程は、いわゆる地方上級試験と同日であり、政令指定都市が多く、B日程、C日程は全国の市役所で採用されています。他に独自の日程で行うところもありますが、数はわずかです。
試験内容
市役所の公務員試験の一般的なパターン(事務系)は、1次試験が「教養試験」「専門試験」「論文試験」、2次試験が「面接試験」「適性検査」などです。なお、1次試験で専門試験が課されない市役所も多いです。また、3次試験を実施する自治体もあるなど、市役所によって内容には多少の違いがあります。事前に過去の実施内容を、確認しておきましょう。
教養試験の科目
教養試験の科目は「知能分野」と「知識分野」に分けられます。自治体によって科目や科目別の出題数は異なりますが、一般的に、知能分野が20問、知識分野が20問で構成されています。
区分 | 科目 | 内容 |
---|---|---|
一般知能 | 数的処理 | 数的推理、判断推理、空間把握、資料解釈 |
文章理解 | 現代文と英文 | |
一般知識 | 人文科学 | 高校の「地理歴史」に相当 |
自然科学 | 高校の「理科」や「数学」に相当 | |
社会科学 | 高校の「政治・経済」や「現代社会」に相当 |
専門試験の科目
専門試験の科目は、行政系、経済系、法律系に分けられます。科目と多肢選択型の問題数の一般的なパターンは以下のとおりです。なお、大卒程度の試験であっても、前述のように専門試験がない市役所も数多くあります。
区分 | 内容 | 問題数 |
---|---|---|
行政系 | 政治学 | 2 |
行政学 | 2 | |
国際関係 | 2 | |
社会政策 | 3 | |
経済系 | 経済原論 | 11 |
財政学 | 3 | |
法律系 | 憲法 | 4 |
行政法 | 5 | |
民法 | 4 | |
刑法 | 2 | |
労働法 | 2 | |
合計 | 40 |
技術系の試験では、電気や機械、土木、建築、福祉など、それぞれの専門分野を中心に出題されます。
論文試験
論文試験では、800~1,200文字の論文を、60~90分の試験時間で作成します。出題テーマは、国や地方自治体の行政を取り巻く課題や問題についてや、住民や企業と自治体の関係について、市役所職員としてどのような役割を担いたいのか、などです。具体的には、「少子高齢化と社会福祉について」「地域ブランドの活性化」「チームワークとは何か」などといったテーマで出題されています。
集団討論
集団討論は、1つのテーマについて5~9人で30~60分間、ディスカッションを行う形式です。決められた席に着いた後、テーマについて考える時間や役割分担、討論終了後の発表の有無などについて説明されます。その後の進行はグループに委ねられ、自発的に討論を行います。テーマは「地域活性化」や「ワーク・ライフ・バランス」など、さまざまです。
面接試験
2次試験は人物評価を目的に、個別面接や集団面接が行われます。一般的には3~5人の面接官による個別面接が多く、15~30分の時間内で5~10項目の質問に回答する形式です。面接官は、市役所の部長級の職員であることが多いようです。ただし、最終面接を市長や副市長が行う自治体もあるため、緊張しないように事前に心構えをしましょう。
配点について
配点については一概にはいえませんが、すべての試験に均等に割り振られているか、あるいは、専門試験または面接試験の配点が高く設定されていることが多いです。近年では人柄重視の傾向があり、面接試験が重視されています。自治体によっては、教養試験の得点をボーダーラインとして使い、2次試験に加点しないところもあります。
市役所の公務員試験の難易度
市役所の公務員試験の難易度は、どの程度なのでしょうか。資格試験などとの違いや倍率について解説します。
自治体によって違う
市役所の公務員試験の難易度は、募集人数と志望者の数にも左右されるため、各自治体によって異なります。この点が、合格点を取ればいい資格試験などとの違いです。また、論文試験や面接試験には一定の合格基準があるものの、数値化できない要素も含まれます。一般的には、国家公務員や地方公務員(上級)などよりも難易度は低めとされています。
倍率の目安
事務系の倍率は、1次試験が3~10倍前後、2次試験で2~5倍が目安です。ただし、人気の高い市役所と、そうではないところとでは大きな差があります。また、他の公務員試験との併願受験をする人や民間企業が本命の人もいるため、実際の倍率はこれよりも低くなります。いずれにしても、市役所職員になるには、筆記試験で合格水準に達することが重要です。技術系の多くは、試験全体で3~5倍ですが、募集内容によって大きく変わることもあります。
市役所の公務員試験を有利に受験する方法はある?
公務員試験のなかでは比較的難易度が低めとはいえ、市役所職員への採用は簡単ではありません。有利に受験する方法はあるのでしょうか。
地方の市役所の試験は受かりやすい?
市役所試験の倍率は自治体により様々です。受験者と合格者の数から倍率を比べると、人気の市役所は20倍、一部の地方の市役所は2倍程度と、大きな差があります。一生働く場所を、難易度だけでは決められませんが、公務員になるための戦略として検討するのもいいでしょう。
日程による難易度の違いはあるの?
A日程は、筆記試験の倍率が高く、面接の倍率が低い傾向があります。B日程とC日程はその逆で、筆記試験の倍率が低く、面接の倍率が高いことが特徴です。このような違いが出るのは、B・C日程で行う市役所の多くは中小規模で、教養試験のみを実施するケースが多いためです。専門試験がないぶん、面接で自己アピールをする必要があります。
地元以外の市役所を受けると不合格になりやすい?
受験者が地元居住、または地元出身であるかどうかは採点には関係なく、公平に評価されるルールです。ただし、面接で地元愛をアピールできると有利になるかもしれません。地元に無関係な人は、「なぜその市役所で働きたいのか」「自治体の課題や問題点」などについて準備しておかないと、面接で回答に困る可能性があります。
併願受験は可能?
公務員試験の日程は自治体によって異なるため、ほとんどの人が併願受験をします。国家公務員試験や、市役所以外の地方公務員試験、民間企業との併願受験をする人も少なくありません。複数受検すればそれだけチャンスも増えることになります。公務員試験に受験回数の制限はなく受験料は原則無料ですが、日程を考えると5~7カ所が上限でしょう。
市役所の公務員試験開始までのスケジュール
ここでは、市役所の上級試験を例に、学習スタートから試験開始までのおおまかなスケジュールについて解説します。
9~12月:教養試験の出題範囲は広いため、まずは重要な分野である一般知能を中心に学習を始めます。また、専門試験がある場合は、択一式の出題内容から取り組みましょう。専門試験の科目は、教養試験の範囲と重複する部分もあるため、この時期から平行して学習するのが合格の秘訣です。
1~3月:専門科目や教養科目の一般知能の学習と並行して一般知識と論文試験を行います。時事問題は、多くの科目の他、面接や論文テーマなどにも関係する傾向があるため、前年分も含め、早い時期から情報収集が必要です。
4~6月:筆記試験対策の総復習や問題演習などと合わせて、面接対策と集団討論対策を始めます。一般の参考書ではなく、市役所の公務員試験専用の教材を使った対策が効果的です。
6月下旬~:市役所の公務員試験が開始されます。
市役所の公務員試験に合格するための対策
ここでは、市役所の公務員試験に合格するための対策について、上級試験を例に試験の内容別に解説します。
教養試験
教養試験は、出題範囲が広いことが特徴です。知識分野は高校時代の勉強に似ているため学習しやすいですが、知能分野は学習しにくい面があります。特に判断推理、数的推理、資料解釈の3つは、コツがつかめないと、解答に時間がかかるでしょう。
独学の場合、教養試験については学習スケジュールすら立てられない人も、少なくありません。学習時間が不足しないように、出題傾向が分析されていて効率的に学べる、通信講座などの活用がおすすめです。あえて高得点ではなく、60%以上の得点を目指し、的を絞った学習をすると、初学者でも6カ月程度で合格レベルに達します。
専門試験
専門試験では、大卒レベルの知識が求められます。大学で所属した学部・学科によっては有利になりますが、初学者でも公務員になるための学習次第で採用試験に合格できる人も多いため、あきらめる必要はありません。専門試験まで学習する時間的余裕がない場合は、専門試験がない自治体を選びましょう。なお、専門試験と教養試験で重複する部分は、専門試験から先に学習すると、教養試験でも正答できるようになります。
論文試験
論文試験は、「テーマに合致した内容になっているか」「テーマについての正しい知識があるか」「論理的な構成」「正しい文法や漢字の使用」など、基本的な項目をもとに評価されます。「要点を押さえて短く言い切る」「文末を同じにしない」など、文章の読みやすさも採点の対象とされます。
客観的な自己採点は難しいものの、過去の頻出テーマで論文を作成し、模範解答と比較するのが基本的な学習方法です。文章の組み立て方のポイントなどが、公務員試験に特化して書かれている教材も活用しましょう。添削指導を受けるのが理想的です。
集団討論
集団討論がある場合の対策としては、頻出テーマに関する知識の習得のほか、ディスカッションの方法についても学ぶ必要があります。近年は人物評価を重視する傾向があり、筆記試験の成績がよくても、コミュニケーション能力の不足で不合格になる人もいるため、十分な対策が必要です。議事進行役を引き受けるなど、自ら役割を選んだりする場合もあります。できる範囲でシミュレーションしておきましょう。
面接試験
市役所の面接試験では、形式的な質問も多いので、定番の質問をまとめた想定問答集で、練習しておきましょう。一方で掘り下げた質問もされますので、市役所の詳細な情報をホームページで調べて、自分なりの意見にまとめておくとよりでしょう。面接では人柄や人当たりの良さのみならず、的確な回答ができるかも評価されますが、訓練により合格レベルに達することができます。面接前に面接カードを書くこともあるため、書き方にも慣れておきましょう。なお、市長、副市長が最終面接を担当する市役所もありますが、あまり不安には思わずに、緊張しすぎないで臨みましょう。
まとめ
市役所の公務員試験には、事務系と技術系、上級・初級などの区分があり、それぞれ試験科目が異なります。また、自治体によって試験日程や難易度(倍率)にも違いがあります。志望する職場や職種に応じて、受験先を検討しましょう。
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- この記事の監修者は生涯学習のユーキャン
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1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。
よくある質問
- 市役所職員の給与・年収は?
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市役所職員の年収は、政令指定都市の職員かどうかでも変動します。政令指定都市での勤務の場合、年収例としては約703万円で、うちボーナスが約156万円です。政令都市以外では年収629万円ほどで、そのうちボーナスは約144万円になっています。また、町村役場ではさらに若干下がり、年収約570万円、そのうちボーナスは約134万円です。
- 公務員試験の受験資格は?年齢制限・学歴は関係ある?
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公務員試験の受験資格における必要条件には、「欠格条項」「年齢制限」「学歴」「資格」「身体的条件」がある。年齢制限としては、高卒程度の試験の上限は20代前半、大卒程度の試験なら30歳前後が一般的。「高卒程度」「大卒程度」という区分があるが、あくまで試験問題の難易度を示す目安で、実際の学歴は不問。消防官・警察官・法務教官・皇宮護衛官・航空管制官など公安系職種では、身長や体重、視力や体力などの身体的条件が受験資格に含まれる。
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