公務員の職種の1つとして、昨今「法務省専門職員」に注目が集まっています。法務省専門職員になるための方法や試験対策を確認することが、就職につながる一歩となるでしょう。本記事では法務省専門職員の基本や試験の概要、効率のいい勉強方法について解説します。

法務省専門職員とはどんな職業?

法務省専門職員とは、犯罪を犯した人に対する更生の援助や教育を行う職業です。法務省専門職員には「矯正心理専門職」「法務教官」「保護観察官」といった3つの職種があり、それぞれに役割が定められています。以下では、法務省専門職員に含まれる3つの職種について解説します。

  • 矯正心理専門職は、非行や犯罪の原因分析を実施し、社会復帰につながる手段を見つけだす法務省専門職員
  • 法務教官は、非行を犯した少年などに対して矯正教育を実施する法務省専門職員
  • 保護観察官は、受刑者や非行少年が出所してからの生活を支援する法務省専門職員

矯正心理専門職について

矯正心理専門職とは、更生プログラムを考える法務省専門職員のことを指します。非行や犯罪の原因分析を実施し、社会復帰につながる手段を見つけだすのが主な仕事です。なぜ犯罪に手を染めたのか、何が原因となって行動につながったのかを分析し、そこから社会復帰の手がかりとなるヒントを見つけ出します。

そのほか、矯正心理専門職は少年院などを訪れて、さまざまなサポートをするのも仕事の一環です。例えば対象者の心理学的な支援を行い、罪の意識に押しつぶされないようにケアをしたり、社会復帰に向けて具体的な話をしたりと、あらゆる方面から支援を行うのが矯正心理専門職の役割です。

法務教官について

法務教官とは、非行を犯した少年などに対して矯正教育を実施する法務省専門職員のことです。基本的には面接や行動観察を通して、非行少年が抱える問題の発見や解決を目指します。ただ決められた教育を施すのではなく、相手に合わせたプログラムを組み立て、更生につながるサポートを実施します。

また、法務教官は刑事施設で働くこともあります。刑事施設で仕事をする際には、受刑者の指導を担当します。こちらでも非行少年にするのと同様に、矯正教育における業務を担当するケースが多いです。受刑者の心情や過去に寄り添いつつ、社会復帰を目指して行動します。

保護観察官について

保護観察官とは、受刑者や非行少年が出所してからの生活を支援する法務省専門職員です。生活におけるサポートをしたり、再犯防止に必要な対策を取ったりといった仕事を担当します。罪を犯した人のなかには、自暴自棄になったり、犯罪に対するリスクを軽視したりして、再犯をするケースもあります。

保護観察官はそういった事態を止めるために、生活を根底から支援する役割を担います。保護観察所に勤める場合には、生活調査や就職先の斡旋などを行います。地方更生保護委員会に勤める場合には、面接などから仮退院・仮釈放の時期が妥当か判断する仕事をします。

法務省専門職員になる方法

法務省専門職員として働くには、就職のための条件を満たす必要があります。以下では、法務省専門職員になるための方法について解説します。

  • 法務省専門職員(人間科学)採用試験に合格する
  • 法務省専門職員(人間科学)採用試験の受験資格は職業ごとに条件がある

法務省専門職員(人間科学)採用試験を受験する

法務省専門職員になるには、「法務省専門職員(人間科学)採用試験」を受験する必要があります。試験を受けて合格ラインを超えることで、法務省専門職員として働ける能力を有する人材として認められます。そのため法務省専門職員を目指すのなら、まずは採用試験の合格が目標になります。法務省専門職員の試験内容を把握したうえで、合格に向けた準備を進めることが求められるでしょう。

法務省専門職員(人間科学)採用試験の受験資格について

法務省専門職員(人間科学)採用試験を受験するには、上記で紹介した各職業ごとに条件があります。具体的には、以下の条件が受験資格として提示されています。


1 矯正心理専門職A及び矯正心理専門職B

  • (1)1993(平成5)年4月2日~2002(平成14)年4月1日生まれの者
  • (2)2002(平成14)年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの
    • ア 大学(短期大学を除く。以下同じ。)を卒業した者及び2024(令和6)年3月までに大学を卒業する見込みの者
    • イ 人事院がアに掲げる者と同等の資格があると認める者
  • (3)(1)又は(2)に該当する者のうち、矯正心理専門職Aは男子、矯正心理専門職Bは女子に限る。

2 法務教官A及び法務教官B

  • (1)1993(平成5)年4月2日~2002(平成14)年4月1日生まれの者
  • (2)2002(平成14)年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの
    • ア 大学を卒業した者及び2024(令和6)年3月までに大学を卒業する見込みの者並びに人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者
    • イ 短期大学又は高等専門学校を卒業した者及び2024(令和6)年3月までに短期大学又は高等専門学校を卒業する見込みの者並びに人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者
  • (3)(1)又は(2)に該当する者のうち、法務教官Aは男子、法務教官Bは女子に限る。

3 法務教官A(社会人)及び法務教官B(社会人)

  • (1)1983(昭和58)年4月2日~1993(平成5)年4月1日生まれの者
  • (2)(1)に該当する者のうち、法務教官A(社会人)は男子、法務教官B(社会人)は女子に限る。

4 保護観察官

  • (1)1993(平成5)年4月2日~2002(平成14)年4月1日生まれの者
  • (2)2002(平成14)年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの
    • ア 大学を卒業した者及び2024(令和6)年3月までに大学を卒業する見込みの者並びに人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者
    • イ 短期大学又は高等専門学校を卒業した者及び2024(令和6)年3月までに短期大学又は高等専門学校を卒業する見込みの者並びに人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者

年齢や学歴が受験条件となるため、事前に自分が該当するか確認しておきましょう。

法務省専門職員の試験概要について

法務省専門職員の試験に合格するためには、試験の概要を正確に把握することがポイントです。どのような問題が出題されるのかを確認し、対策を取ることが、合格への近道になります。以下では、法務省専門職員の試験概要を解説します。

  • 法務省専門職員の試験は1次試験に合格することで2次試験を受験できる
  • 1次試験は基礎能力試験(一般知識)と専門試験(心理学・教育学・福祉など)を問われる
  • 2次試験は個別面接や身体検査、身体測定が実施される

法務省専門職員の1次試験範囲

法務省専門職員の1次試験では、筆記試験を受ける必要があります。試験範囲は「基礎能力試験」「専門試験(多肢選択式・記述式)」に分けられます。基礎能力試験では一般知能・一般教養が出題され、専門試験では心理学・教育学・福祉などの問題を解きます。どちらの範囲でも的確に点を取れるように、網羅的に学習を進めるのがコツです。

法務省専門職員の2次試験の内容

1次試験に合格すると、続いて2次試験を受験します。法務省専門職員の2次試験では、面接による人物試験が実施されます。個別面接によってコミュニケーション能力や、心理臨床場面における判断力の有無などを試されます。そのほか、身体検査や身体測定も実施され、問題がなければ2次試験も合格できます。

法務省専門職員の試験難易度

法務省専門職員になるための試験に合格するには、試験難易度を客観的に把握するのもポイントです。どの程度の試験難易度なのか知ることで、必要な学習時間に目安をつけられます。以下を参考に、法務省専門職員の試験難易度がどの程度なのか確認してみてください。

  • 法務省専門職員採用試験の2023年における合格倍率は約2.8倍(1,320人が受験、472人が合格)
  • 法務省専門職員は7つの区分に分かれており、それぞれ合格倍率が異なる

法務省専門職員採用試験の合格倍率は約2.8倍

法務省専門職員採用試験の合格倍率は、約2.8倍となっています。2023年度では1,320人が受験し、472人が合格しています。1/3しか合格できないため、比較的難易度は高めの試験だといえるでしょう。しっかりと試験対策を実施し、合格の確率を高める努力をする必要があります。また、受験者の1,320人中600人、および合格者の472人中215人は女性となっています。

受験者と合格者の半数近くが女性である点は、法務省専門職員採用試験の特徴の1つです。

試験区分によって合格倍率は変わる

法務省専門職員は試験区分によって、合格倍率が大きく変わります。具体的な数値としては、以下のように発表されています。

試験の区分 申込者数 第1次試験
(受験者数)
第1次試験
(合格者数)
第2次試験
(受験者数)
最終合格者数 合格倍率
矯正心理専門職A 112 92 85 77 51 0.45
矯正心理専門職B 288 212 141 120 78 0.27
法務教官A 782 510 290 261 169 0.21
法務教官B 367 239 181 156 91 0.24
法務教官A
(社会人)
96 45 38 35 20 0.2
法務教官B
(社会人)
24 11 10 7 3 0.12
保護観察官 321
(205)
211
(138)
107
(70)
97
(63)
60
(43)
0.18
(0.20)
1,990
(884)
1,320
(600)
852
(402)
753
(346)
472
(215)
0.23
(0.24)
  • ()内の数値は女性の人数

2023年度の数値を参考にすると、法務教官Aが最も合格者数が多く、法務教官Bの社会人枠が最も少ないことが分かります。社会人枠は法務教官Aも合格者数が少ないため、勉強時間の確保が難しいことなどが、原因として考えられます。

法務省専門職員になるメリットとは?

法務省専門職員になることには、多くのメリットがあります。就職によって得られるメリットは多数あり、将来に大きな影響を与えると期待できるでしょう。以下では、法務省専門職員になることで得られる主なメリットについて解説します。

  • 法務省専門職員は国家公務員であるため、景気に左右されず、倒産のリスクがない
  • 非行少年や受刑者のサポートなど、直接的に人を支援できる仕事が多いため、貢献できた際の達成感も得られる

安定した給料で働ける

法務省専門職員は国家公務員であるため、安定した給料で生活が可能です。一般企業のように景気に左右されず、倒産のリスクがありません。そのため職場の経済状況などを気にすることなく、目の前の仕事に集中できる点はメリットになります。また、利益の低下などによるボーナスのカットが発生する可能性が低いため、計画的にライフプランが構築できます。

安定度の高さから将来設計を立てやすく、さまざまなプランで未来をイメージできる点は、法務省専門職員になるメリットです。一方で、給料が安定しているメリットは、公務員全般に当てはまります。そのため、安定した給料で働きたい人のなかには、法務省専門職員以外の公務員職を候補に入れる場合もあります。

やりがいを実感できる業務が多い

法務省専門職員は非行少年や受刑者のサポートなど、直接的に人を支援できる仕事が多いのが特徴です。自分の仕事にやりがいを実感しやすく、貢献できた際には達成感も得られます。法務省専門職員の仕事内容に興味があるのなら、高いモチベーションを維持して働きやすい点もメリットになるでしょう。

法務省専門職員は専門性が高く、ほかの職業では体験できないことも多いです。そのため法務省専門職員で働いたという実績が、将来の自分をつくる要素になる可能性も高いでしょう。社会貢献につながる仕事でもあるため、日常のあらゆる場所で自分の職業の必要性を実感できます。それはやりがいを感じると同時に、仕事に誇りを持つきっかけにもなるでしょう。

法務省専門職員を目指す際の勉強方法

法務省専門職員を目指して受験を志す際には、具体的な勉強方法を確認しておくのがポイントです。勉強方法によって、合格に必要な知識を習得する時間は変わります。効率的な勉強方法を以下で確認し、実際に試してみるのがおすすめです。

  • 試験全体の難易度が高いため、目安として1年程度の長期にわたる勉強スケジュールを組む
  • さまざまな書籍を活用し、繰り返し勉強を続ける
  • 独学でも合格は目指せるが、専門の試験対策講座を使わないため、合格への難易度は高くなる

勉強時間の目安

法務省専門職員は1次試験と2次試験があるため、合格に必要な勉強時間も多くなります。全体の難易度も高いため、長期間の勉強を見据えてスケジュールを構成する必要があります。必要な勉強時間は環境などによって変わりますが、だいたい1年程度が目安になるでしょう。法務省専門職員を目指すのなら、早めに勉強を始めて、試験対策に取り組むのが重要です。

参考書や問題集による勉強

参考書や問題集による勉強が、試験突破に向けた基本となります。法務省専門職員の試験対策に使えるさまざまな書籍を活用し、繰り返し勉強を続けることが合格につながります。関連書籍は複数あるため、自分に合った本を探すのもポイントです。合わない参考書を使い続けるよりも、勉強の主軸となる本を一新した方が、成果が出るケースも多いです。

まずは図書館や書店などで多くの本に触れて、どんなタイプが自分の勉強に馴染むのか確かめてみましょう。

法務省専門職員は独学でも合格可能?

法務省専門職員は独学でも、合格を目指せます。独学なら大学や専門学校に通わなくても、就職を叶えることは可能です。しかし、その場合の難易度は高く、よほどの自信と多くの勉強時間を確保できないと、合格は困難となるでしょう。また、独学をする際には、勉強のモチベーション維持や効率化などについて、きちんと考える必要があります。

自分1人でそれらをコントロールするのは難しいため、独学で勉強を始めても、早々に脱落してしまう人も多くいるようです。法務省専門職員の試験の合格率を高めるのなら、専門の試験対策講座を利用し、独学でもスムーズに知識を身につけられる環境の構築がおすすめです。

まとめ

法務省専門職員は罪を犯してしまった人たちに対して、さまざまなサポートをする専門的な職業です。矯正心理専門職、法務教官、保護観察官の3つの職種がありますが、どの職種も採用試験に合格しなければなりません。強いやりがいを実感できる職業であるため、業務内容に興味があるのなら、この機会に法務省専門職員になる方法と試験勉強のポイントをチェックしてみてください。

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この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

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近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。

よくある質問

国家公務員試験の難易度は?

一概には言い切れないが、国家公務員試験の難易度は高いと言えます。国家公務員の倍率をみると、国家総合職の倍率は10.8倍と高く、国家一般職(行政職)では3.8倍と比較的低いことが分かります。 また、同じ国家一般職でも行政職以外は2.1倍とさらに低い倍率となっています。

国家公務員試験は併願できる?

日程が重ならなければ国家公務員試験を併願が可能です。。たとえば、国家総合職と裁判所事務官一般職(大卒程度)の併願などが考えられます。国家公務員の試験は、たとえ職種が違っていても出題傾向が似ていることが特徴です。また、国家公務員一般職と地方上級公務員試験を併願する人もいます。

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