薬剤師資格とは|資格取得までのステップや仕事内容・登録販売者との違いも解説
- 更新日:2024/02/16
薬剤師資格とは、薬に関する専門知識を持っていることを証明する国家資格です。薬剤師資格を取得できれば、病院や調剤薬局、ドラッグストアなど、薬を取り扱うさまざまな場所で活躍できます。この記事では、調剤薬局やドラッグストアでの勤務に興味がある人に向けて、薬剤師資格の難易度やメリット・デメリット、受験までのステップなどをわかりやすく解説します。ぜひ、資格取得のために役立ててください。
薬剤師とは
薬剤師の資格は、国家資格の1つです。薬剤師になるためには、薬剤師法を熟知し、処方箋に応じた薬の調剤や薬ごとの適切な管理、患者の状態に合わせた服薬指導が可能でなければなりません。病院やドラッグストアなどを利用する地域住民にとって、健康維持や公衆衛生の管理のために、薬剤師は必要不可欠な存在です。
また、薬剤師はさまざまな場所で活躍できるので、自分のやりたいことを追求できるのも特徴です。医療関連施設では、患者の健康や命を守るため、ドラッグストアでは近隣住民とコミュニケーションをとるためなど、やりがいを見つけやすい仕事です。製薬会社など、最先端の薬の知識やスキルを吸収できる職場もあります。
薬剤師・登録販売者・調剤薬局事務の違い
薬剤師のほか、薬に関わる職として「登録販売者」や「調剤薬局事務」がありますが、それぞれ仕事内容は異なります。
登録販売者の場合、薬剤師のように処方箋による調剤はできません。市販薬の中でも第2類または第3類にあたる医薬品を取り扱うための資格です。また、調剤薬局事務に関しては、薬の取り扱いを行う仕事ではなく、調剤薬局で発生する事務作業に特化した職を指します。
詳しくはこちらの記事でも解説しているので、ぜひ一読ください。
薬剤師資格を取得するためには
薬剤師の資格は、国家試験に合格したうえで、薬剤師名簿への登録が必要です。国家試験を受験するには、薬学部を卒業しているまたは卒業見込みがある必要があります。
これから薬剤師資格の取得を目指すなら、まずは薬科大学や薬学部への進学が必要で、卒業までには6年の時間を要します。すでに社会人として活躍している人の場合、仕事を辞めざるを得ないため、取得難易度の高い資格です。
薬剤師資格の難易度
令和5年(2023年)に実施された薬剤師国家試験の合格率は、全体で69.0%、新卒者で84.9%でした。13,915名の受験者に対して、9,602名の合格者が出ています。薬剤師の国家試験は、近年だと約7割の合格率で推移しているため、試験自体の難易度は優しめです。
しかし、国家資格の受験資格を得るためには6年制の薬科大学や薬学部への入学・卒業が必要となるため、受験するまでの難易度が高くなっています。進学を希望する大学によっては、受験時の倍率が4倍以上になるケースや、ストレートでの卒業が難しいケースもあるので留意しておきましょう。
- 参考:第108回薬剤師国家試験の合格発表を行いました|報道発表資料|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000199343_00010.html)
薬剤師資格を取得するための費用
薬剤師の国家試験にかかる受験料は、6,800円です。合格した場合はさらに、免許発行料が30,000円かかります。
薬剤師の資格取得にかかる費用は、国家試験の受験料だけではありません。受験資格となる6年制薬科大学や薬学部へ入学した場合の学費もかかります。進学希望の大学により学費は前後するので以下を参考にしてください。
国立大学:【入学金】28万2,000円、【授業料】53万5,800円/年
私立大学:学校によって大きく差がある
国立大学の場合は、6年間で350万円程度の学費が必要です。私立になれば、国立に比べると学費が増えるケースが多く、6年間の目安で1,200万円以上は必要になるでしょう。
薬剤師資格試験を受験するまでのステップ
薬剤師の資格試験の受験には、以下の4ステップが必要です。
- 1.試験資格が得られる大学への入学
- 2.薬学共用試験の合格
- 3.病院や薬局での実務実習
- 4.卒業・資格試験対策
ここからは、受験ステップごとに詳しく解説します。
①.6年制の薬学部や薬科大学に入学する
薬剤師を目指すなら、6年制の薬学部や薬科大学への入学が必要です。薬学部や薬科大学には4年制も存在しますが、薬剤師の受験資格を得るには6年制大学を選ぶ必要があります。
偏差値が高い国公立大学は、私立に比べて学費が抑えられるものの、入学試験の合格は難関です。一方私立大学は、大学により偏差値に大きな差があるため狙いやすい大学もありますが、薬剤師の資格試験の合格率にも影響します。
最終的に薬剤師の資格取得を目指すなら、大学選びから慎重に行いましょう。
②.4年次に薬学共用試験に合格する
6年制の薬学部や薬科大学を卒業するには、4年次に実施される「薬学共用試験」に合格しなければなりません。
薬学共用試験は、次のステップとなる実務実習に必要な知識やスキルを身につけるための試験です。パソコンで実施される「CBT」と「OSCE」と呼ばれる2種類の試験で、これまでに大学で学んできた知識や技能が試されます。合格しなければ、次年度に予定されている実務実習には進めません。
③.5年次に実務実習を受ける
薬学共用試験の合格者は、実務実習に進みます。病院や調剤薬局などで実施され、実務可能なスキルを身につけます。
4つの期間に分けて、病院実習と薬局実習がそれぞれ実施されます。実際の患者との関わり方や、現場での薬の取り扱い、チームワーク、地域連携などを身につけます。
④.6年次に卒業論文と国家試験対策に取り組む
大学6年目は、卒業するための卒業論文作成と、資格試験に合格するための準備を始めます。卒業見込みが立たなければ薬剤師資格の試験は受けられないので、まずは前半で卒業論文を作成し、卒業見込みが得られたら、国家試験の対策に取り組むといいでしょう。
薬剤師資格取得の注意点
薬剤師の資格取得を目指す際には、以下の2点に注意が必要です。
- 社会人の資格取得は難易度が高い
- 海外の薬剤師資格取得者は受験が容易
それぞれの注意点について、以下で詳しく解説します。
薬剤師の主な就職先
薬剤師は、さまざまな職場で活躍しています。一般的な就職先は以下の4つです。
- 地域の調剤薬局
- 病院などの医療機関
- 市販薬を販売するドラッグストア
- 薬を開発・販売する製薬会社や一般企業
それぞれの職場での仕事内容について、以下で簡単に解説します。
調剤薬局
全国各地にある、医療機関やケアマネジャー、ヘルパーなどと連携する調剤薬局での勤務が可能です。調剤薬局で働く薬剤師は、医療機関が発行した処方箋を基にした調剤や、在宅医療が必要な患者に合わせた服薬指導、薬歴管理などを行います。
調剤薬局では、病院での診察内容や検査結果などの聞き取りが必要になるケースもあるので、薬剤師としての知識はもちろん、円滑なコミュニケーション能力も求められます。
医療機関
医療機関では、外来の患者をはじめ、入院患者の状況に応じ、医師と連携して調剤・服薬指導などを行います。病院でしか取り扱わない薬剤があったり、チーム医療に参加したりなど、病院特有の業務に携われます。
ドラッグストア
市販薬などさまざまな商品を取り扱うドラッグストアでも、薬剤師が勤務しています。市販薬や医薬品を求めて来店した人の薬に関する相談を受けたり、漢方などその他の提案を行ったりします。
薬以外にも、介護用品や化粧品、その他生活雑貨などの販売を行っているケースも多いので、臨機応変な対応が求められるでしょう。
製薬会社や一般企業
製薬会社では、薬を開発・研究しているため、薬剤師の力が必要です。また、一般企業でも医薬品を取り扱っていたり、化粧品や食品など薬品に関する知識が必要となったりする場合は、薬剤師を採用しているケースもあります。
社会人になってから薬剤師を目指すのはハードルが高い
社会人として働いている人は、これから6年制の薬科大学や薬学部に入学する必要があります。たとえ、4年制の薬系大学や大学を卒業していたとしても、さらに6年間学びなおさなければなりません。
大きな学費がかかるほか、通信制で通える薬科大学や薬学部はないため、働きながら6年制の大学に通うのはとても大変です。ただ、大学によって編入試験が実施されているケースもあるので、学校選びの際にしっかり確認しておきましょう。
海外の薬剤師資格を持っている人は受験資格を与えられる
海外の薬科大学を卒業していたり、海外ですでに薬剤師資格を取得していたりする場合、国家試験の受験が可能になるケースがあります。
受験資格を得るには、厚生労働省の掲げる認定基準を満たす必要があります。詳しくは参考の、厚生労働省のホームページをご確認ください。
- 参考:外国の薬学校を卒業した方|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakuzaishi-kokkashiken/gaikoku.html)
薬剤師資格を取得するメリット・デメリット
薬剤師資格の取得に関して悩んでいる場合、メリットとデメリットを比較してみるといいでしょう。
- 取得後の年収や手に職が就くメリット
- 取得難易度やコストによるデメリット
メリット・デメリットについて、以下で詳しく解説します。
薬剤師資格を取得するメリット
薬剤師の資格を取得し、薬剤師として働くと、比較的高収入が期待できます。また、出産や育児、病気、家族の介護などで休んだ場合でも、職場復帰しやすいでしょう。
正社員などのフルタイム勤務ではなく、パートや派遣として復帰した場合でも、比較的高い時給が見込めます。
薬剤師資格を取得するデメリット
薬剤師資格は、取得に時間がかかるというデメリットがあります。海外の薬剤師資格を取得しているなどの例外を除き、最短でも6年は必要です。
また、6年制大学への入学には、学費もある程度かかります。働きながら大学卒業を目指すのは難しいので、学費やその間の生活費はあらかじめ確保しておかなければなりません。
さらに、国家試験対策はもちろん、資格取得後も薬剤師としての知識をアップデートし続けていく必要があります。
資格の取りやすさなら「登録販売者」もしくは「調剤薬局事務」
薬剤師は、高収入が期待できる魅力的な仕事ですが、国家資格取得のために6年制の大学に通う必要があるなどのハードルがあるため、社会人が目指すのは難しいといえます。
薬を取り扱う仕事としては「登録販売者」や「調剤薬局事務」があり、薬剤師よりも資格が取りやすいため、社会人からでもおすすめです。それぞれの資格の特徴とメリットは以下の通りです。
登録販売者 |
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調剤薬局事務 |
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薬剤師を目指すのは厳しいが、薬の取り扱いに携わりたいという人は、ぜひ登録販売者や調剤薬局事務の資格取得も検討してみてください。
まとめ
病院や薬局で働く薬剤師になるには、6年制薬科大学や薬学部の卒業が必要な国家資格の取得が必要です。社会人として活躍しながら、薬剤師の資格を取得するのは困難であり、時間も費用も膨大にかかってしまいます。
薬局やドラッグストアなどで働きたいなら、「登録販売者」や「調剤薬局事務」もおすすめです。どちらも薬剤師に比べると資格取得のハードルが低く、社会人でも挑戦しやすい職種です。
ユーキャンの「登録販売者講座」や「調剤薬局事務講座」では、初心者でも楽しく学べるための優しいテキストを使って、資格取得を目指せます。登録販売者は最短6ヵ月、調剤薬局事務なら最短3ヵ月で合格が狙えるのもメリットです。
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- この記事の監修者は生涯学習のユーキャン
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1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。
登録販売者とは、ドラッグストアや薬局などで一般用医薬品の販売ができる医薬品販売の専門資格です。資格保有者がいれば、一般用医薬品の多数を占める第二類・第三類医薬品の販売が可能になるため、企業にとって大きな戦力に。国による医療費抑制の施策によりセルフメディケーションが推進されるなか、地域医療のサポート役として、ニーズも高く、医療関係の事務職のほか、小売業やドラッグストア、薬局などへの就職・転職を考えている方に人気の資格です。
登録販売者の仕事内容は医薬品の販売のほかにも、お客様への情報提供やご相談に対する対応・アドバイスも重要な仕事の1つ。購入者の視点に立って、医薬品の適切な選択を行えるように手助けすることも求められます。
登録販売者になるには、例年8~12月頃に行われる各都道府県で実施される登録販売者試験に合格する必要があります。全国どこで受験してもOK、受験資格もありませんので、どなたでもチャレンジできます。