社会福祉士として公務員になるには|仕事内容やなり方・公務員試験のポイント・公務員のメリットを解説
- 更新日:2024/03/15
社会福祉士は、福祉関連の国家資格の1つです。福祉に関する相談や援助のために必要な知識を有し、さまざまな福祉の現場で活躍しています。国や地方自治体の公務員など、社会的なニーズは続々と広がっているため、将来のために資格取得を目指すという人も多いでしょう。この記事では、社会福祉士を目指している人に向けて、社会福祉士のなり方や公務員試験のポイント、受験の注意点、公務員として働くメリットなどを解説します。ぜひお役立てください。
福祉職の公務員とは
社会福祉士が公務員として働く場合、福祉職に就くケースが多くあります。公務員の仕事は多岐にわたりますが、社会福祉士はそのなかでも、国や自治体が提供する健康維持・増進に関するサービスや、児童虐待や家庭内暴力、家庭問題の相談対応などの「福祉業務」に就くのが一般的です。
また、公務員が担う福祉職は、当人や家族にとってデリケートな問題に直面するため、社会福祉士の有資格者でなければ就けないというケースが一般的です。
福祉職を配置している公務員には、主に国の機関で働く「国家公務員」と都道府県や市区町村の役場などで働く「地方公務員」の2種類があります。役場や児童相談所などの地方公務員の福祉職と比べて、国家公務員の福祉職は、専門的な知識が必要とされる業務が多いため、より高度な専門知識が必要とされます。
さらに、国家公務員は採用試験の倍率が高く、狭き門としても有名です。
社会福祉士の資格を活かすなら「地方公務員」
社会福祉士の資格を取得し、公務員として働きたいと思っているなら、「地方公務員」がおすすめです。前述した通り、国家公務員の福祉職は難易度が高く、採用先が限定されてしまうため、社会福祉士の資格を活かしたくてもなかなか実現できません。
地方公務員は、自治体ごとに福祉職があるため、国家公務員よりも難易度は下がります。
「地方公務員上級福祉職」とは
地方公務員には、自治体によってさまざまな区分がありますが、社会福祉士として働くなら、「福祉職」や「社会福祉職」などの「地方公務員上級福祉職」と呼ばれる採用区分を目指しましょう。
福祉職を担う「地方公務員上級福祉職」は、ほとんどの自治体で配置されていますが、自治体によって呼び方が異なるケースもあるので、あらかじめ確認が必要です。
社会福祉士の公務員のなり方と公務員試験を受験するポイント
社会福祉士の資格を取得して公務員を目指すなら、なりたい公務員の種類や働きたい職場に合わせて公務員試験を受ける必要があります。公務員のなり方として、以下のポイントが重要です。
- 国家公務員なら「人間科学」の区分での受験が必要
- 地方公務員なら「地方上級試験」の受験が必要
- 社会福祉士資格の資格が必須になるケースもある
- 自治体によっては受験に年齢制限がある
- 1次試験では一般教養、専門知識、論文の対策が必要
- 2次試験で面接があるため、人柄も重要
国家公務員の福祉職のなり方
国家公務員として、福祉職に就くためには、国家公務員の総合職試験のなかで、「人間科学」区分を選択して受験が必要です。「人間科学」では、福祉に関する知識だけでなく、心理学や社会学、教育学や心理などの幅広い専門知識も必要となるため、難易度が高くなっています。
総合職試験の「人間科学」に合格すると、文部科学省や厚生労働省の福祉職への就職が可能です。また、法務教官や保護観察官、矯正心理専門職などの法務省の福祉職に就きたい場合には、「法務省専門(人間科学)職員試験」の受験が必要です。
地方公務員の福祉職のなり方
地方公務員として福祉職に就くには、地方上級試験の「福祉職」や「社会福祉職」などの区分で受験が必要です。受験の条件として、社会福祉士をはじめとした福祉関連の資格取得が必要となる自治体が多くあるので注意しましょう。
試験では、教養試験だけでなく、福祉や心理に関する専門知識も出題範囲に含まれるので、対策が必要です。
社会福祉士資格を持っていれば受験資格をクリア
前述の通り、福祉職に就くための地方上級試験では、受験資格として福祉関連の資格が求められるケースが多くありますが、多くの場合、社会福祉士の資格があれば問題ありません。
また、受験時に取得していなくても、年度末までに対象資格の取得見込みがあれば受験は可能です。ただし、受験条件に関しては自治体によって異なるため、必ず確認しておきましょう。
年齢制限を確認する
自治体によっては、受験資格として各種資格だけでなく、年齢制限がある場合があります。年齢制限は、20〜30代と設定されているケースが一般的です。
ただし、昨今の需要拡大により、児童関連の施設では、45歳まで引き上げて人員確保を図っている自治体もあります。準備が無駄にならないように、試験案内などで確認しておきましょう。
試験問題は対策が必要?
地方公務員の上級試験で福祉関連区分を受験する場合、一般の公務員試験と同様に第1試験と第2試験の2回試験が実施されます。第1次試験は一般教養・専門試験・論文試験からなる筆記試験、第2次試験では面接試験が実施されるのが一般的です。
筆記試験での一般教養では、大卒程度の教養、専門試験では社会福祉に関する知識が問われるので、十分に対策しておきましょう。
「人柄」が重視される
社会福祉士として公務員の福祉職に就くと、基本的に福祉関連の相談・援助業務を担当します。福祉業務を円滑に行うには、相手に寄り添った対応や相談ができるかどうかが重要です。
そのため、第2次試験の面接を通過するためには、話し方や表情などの人柄やコミュニケーション能力をアピールする必要があります。
最近では人柄を重視して採用する自治体が増え、第1試験から軽い面接を実施するところもあるので、筆記試験とあわせて事前に対策しておきましょう。
社会福祉士が公務員になった場合の勤務先と仕事内容
社会福祉士として地方公務員になった場合の勤務先には、以下のような場所が挙げられます。
- 児童の未来を守る「児童相談所」
- 児童の生活を助ける「児童福祉施設」
- 福祉や保健サービスの窓口となる「市区町村役所」
- ソーシャルワーカーとして活躍する「その他の施設」
ここからは、それぞれの勤務先での仕事内容について詳しく解説します。
児童相談所
各自治体が管轄する「児童相談所」では、多くの社会福祉士が公務員として活躍しています。主な児童相談所の職務内容として、児童の家庭や周辺環境の調査や現状把握、状況に応じた適切な指導があります。
児童の将来を左右する重要な職務なので、難しさややりがいを感じる仕事でもあります。
児童福祉施設
各自治体に設置されている「児童福祉施設」でも、社会福祉士の力が必要とされています。児童福祉施設では、家庭環境などの事情により入所している児童の生活援助や教育を実施します。
複雑な事情を抱え、精神的に負担を感じている児童も多くいるため、相談やカウンセリング、出所後の生活支援なども必要です。
市区町村役所
公務員の福祉職として、市区町村の役所に就職した場合、「地域福祉課」「保健福祉課」「障がい者支援課」などの福祉関連窓口の対応にあたるケースがほとんどです。担当課の名称は、自治体によって異なります。
市区町村役所での業務は、窓口対応のほか、担当施設や住宅の訪問など担当課によってさまざまです。
その他
社会福祉士として公務員になった場合、ソーシャルワーカーとして福祉関連施設で働く可能性もあります。ソーシャルワーカーとして働く勤務先には、以下のような施設があります。
- 保健福祉事務所
- 精神保健福祉センター
- 公立病院
- 公立の介護老人保健施設
社会福祉士が公務員になる3つのメリット
社会福祉士として公務員を目指すと、以下の3つのメリットが期待できます。
- 安定した収入が期待できる
- 民間企業よりも充実した福利厚生が期待できる
- 社会的信用の向上が期待できる
ここからは、3つのメリットそれぞれについて、詳しく解説します。
経済面で安定している
社会福祉士は、福祉系の資格のなかでも高い年収が目指せる傾向にありますが、公務員として採用されれば、さらに高い収入が期待できます。さらに、公務員だと終身雇用制度があるため、民間企業に比べると職を失うリスクも低くなるので安心して働き続けられるでしょう。
また、再任用制度を利用すれば、定年後も65歳まで継続して働けます。将来働けなくなるというリスクを防ぎ、安定した収入が期待できるのは大きなメリットです。
福利厚生が手厚い
公務員は、福利厚生が手厚いのが特徴です。自治体によって内容は異なりますが、各種休暇の充実や共済組合の加入は大きなメリットとなります。
特に、有給休暇や育児休暇制度などは、民間企業と比べて充実している傾向にあります。共済組合の加入していれば、ホテルや施設利用料の割引などが受けられるため、休暇制度とあわせて活用すれば、プライベートの充実にも役立つでしょう。
高い「社会的信用」が得られる
社会福祉士は国家資格でもあり、もともと社会的な信用が高い資格です。そのため、公務員として採用されれば、より高い社会的信用の獲得につながります。
社会的信用が高くなれば、各種ローンやクレジットカードなどの審査に通りやすくなるなどのメリットがあります。ライフプランのなかでも重要な、住宅の購入や子育て・教育資金、老後の資金確保などの計画が立てやすくなるでしょう。
社会福祉士として公務員を目指す際の注意点
社会福祉士の資格を取得し、さらに公務員を目指す場合、以下の2点に注意が必要です。
- 採用される自治体によって年収が異なる
- 希望の職種の採用試験が実施されないケースがある
ここからは、2つの注意点について詳しく解説します。
年収は自治体により大きく異なる
社会福祉士として公務員になれば、ある程度高い年収が期待できますが、働く自治体によって大きく異なるので注意が必要です。所属する自治体によっては、思ったより収入が高くならない可能性もあります。
たとえば、平均年収で比べると、都道府県・特別区・政令指定都市などは、一般的な市町村に比べて高い傾向にあります。また、東京23区の特別区では、月給そのものは都道府県ほど高くはありませんが、地域手当が割高に設定されているため、年収は高いのが特徴です。
定期的に募集があるわけではない
公務員の採用試験は、基本的に年1回の実施です。さらに、地方公務員の福祉職の場合は、採用試験は不定期開催であるケースもあります。自治体によっては人員が不足した際にだけ募集していたり、経験者だけを募集したりするケースもあるので注意が必要です。
採用試験が実施された際に見逃さないように、希望する自治体の採用・求人情報はこまめに確認しておきましょう。
まずは「社会福祉士」合格を目指そう
社会福祉士の資格を取得して、さらに公務員になるためには、最低でも4年以上の期間が必要です。養成カリキュラムを修了し、社会福祉士国家試験に合格した後に、公務員採用試験に合格しなければなりません。
福祉職の公務員採用試験は、前述の通り不定期開催の自治体もあります。受験の機会を逃さないためにも、まずは効率よく勉強して社会福祉士の資格取得を目指しておくといいでしょう。
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まとめ
社会福祉士として公務員として働くには、社会福祉士の資格を取得したのちに、国家公務員または地方公務員の採用試験に合格する必要があります。
国家公務員の採用試験は難易度が高く、専門性の高い知識が必要とされるため、社会人から目指すなら地方公務員がおすすめです。採用試験を受けるには前もって資格取得が必要となる自治体も多いため、まずは社会福祉士の資格取得から目指して学習しましょう。
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- この記事の監修者は生涯学習のユーキャン
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1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。
よくある質問
- 生活相談員の給料はどれくらい?
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生活相談員の平均月収は、常勤者で338,370円、非常勤者で290,820円程度。また、パート、アルバイトとして働く生活相談員の平均時給は、常勤者で1,090円、非常勤者で1,120円です。
- 生活相談員のやりがいは?
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生活相談員のやりがいとしては、役に立っていることを実感できる、キャリアアップを目指して働ける、不安や悩みを解決してあげられることなとが挙げられます。社会を支える一員として、生活相談員はかけがえのない仕事といえます。
- 社会福祉士の合格率・難易度は?
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社会福祉士国家試験の合格率は福祉系国家資格の中で最も低い30%ほどであり、試験の難易度は高いと言えます。難易度が高い理由としては、出題範囲が広いことや、受験資格を得るために実務経験や福祉関連の学校を卒業する必要があることが挙げられます。
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