生活相談員とは?職場別の仕事内容や必要な資格、給料などを解説
- 更新日:2023/06/15
生活相談員とは、介護福祉施設などで利用者の相談に乗り、利用者と施設の関係を取り持つ仕事です。生活相談員は、利用者やその家族の不安や悩みに寄り添いつつ、施設の円滑な運営を支えます。この記事では、生活相談員になる方法や仕事内容、給料の目安や資格要件などを解説します。生活相談員になるために、お役立てください。
このページを簡潔にまとめると・・・
- 生活相談員とは、施設の利用者や家族を対象に相談・連絡・連携・調整などを担う仕事で、ソーシャルワーカーとも呼ばれる。
- 生活相談員の仕事内容は職場ごとに異なり、特別養護老人ホームの場合は、利用者の入退所時の手続きや説明、案内、利用者や家族からの相談などを行う。
- 生活相談員の資格要件として、社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事任用資格が挙げられる。
- 生活相談員の平均月収は、30万~34万円程度。
生活相談員とは
ソーシャルワーカーとも呼ばれる生活相談員は、主に介護福祉施設で働いています。生活相談員とは、施設の利用者や家族を対象に、相談・連絡・連携・調整などを担う仕事です。生活相談員は、施設で働く介護職員・看護師・ケアマネジャー・栄養士などと連携を取りつつ、利用者の入退所の手続き・利用者や家族との面談・関連機関との連携などにかかわります。
生活相談員の職場
生活相談員は、介護を求める人が利用する施設でさまざまな業務を担います。生活相談員の主な職場は、以下のとおりです。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護付き有料老人ホーム
- 短期入所生活介護施設(ショートステイ)
- 通所介護施設(デイサービス)
- 医療機関
生活相談員の配置基準
介護福祉施設では、施設の規模や目的に応じて人員体制が決められています。自治体によっても少々差はありますが、利用者100人に対する生活相談員の配置基準は以下のとおりです。
- 介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護付き有料老人ホーム:常勤で1人以上
- 短期入所生活介護施設:1人以上で、うち1人は常勤
- 通所介護施設:生活相談員または介護職員が1人以上で、うち1人は常勤
ケアマネジャーとの違い
ケアマネジャーも、介護福祉施設で働いています。ケアマネジャーとは、介護支援専門員の資格をもつ人を指します。ケアマネジャーは、利用者や家族と面談してケアプランを作成した上で、適切な介護保険サービスが受けられるように利用者をサポートする仕事です。なお、生活相談員ではケアプランを作成できません。
生活相談員の仕事内容
生活相談員の仕事内容を、職場ごとに紹介します。1日のスケジュールも参考にしてください。
職場ごとの仕事内容
特別養護老人ホーム・短期入所生活介護施設・通所介護施設の3つの職場に分けて、仕事内容を解説します。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、要介護3以上の人が入居できる公的な介護保険施設です。特別養護老人ホームで働く生活相談員は、利用者の入居や退所時の手続きや説明、案内などを行います。利用者や家族からの相談・苦情などへの対応も、生活相談員の役割です。
さらに、生活相談員はケアプランの達成に向けて、施設や医療機関・行政・外部の関連機関などと連絡・連携を取り、サービス担当者会議にも参加します。
短期入所生活介護施設(ショートステイ)
短期入所生活介護施設とは、日常生活上の介護や機能訓練を行う施設です。短期入所生活介護施設に勤める生活相談員は、利用日の調整や入退所の手続きを実施します。ケアマネジャーとの連絡・連携や、介護職員のサポートもこなします。なお、施設見学者への対応も生活相談員の仕事です。
通所介護施設(デイサービス)
通所介護施設の目的は、介護する家族の負担軽減や、利用者の孤独感を緩和することです。利用者に、リズム体操などのレクリエーションを提供する施設も少なくありません。
通所介護施設の生活相談員は、サービスの利用開始や終了の手続き、利用者や家族の相談対応に従事します。また、通所介護計画を作成し、サービス担当者会議などでケアマネジャーと連絡・連携を取ります。
生活相談員の1日のスケジュール
特別養護老人ホームなどの入所施設で働く生活相談員について、1日の主な流れを以下にまとめました。
時間 | 仕事内容 |
---|---|
9:00 | 出勤後朝礼・メールや業務の確認 |
10:00 | 利用者や家族の相談対応・事務作業 |
11:00 | ケアマネジャーとの打ち合わせ・運営会議出席 |
12:00 | 休憩 |
13:00 | 新規入所者への対応(説明や手続き) |
14:00 | 利用者や家族の相談対応 |
15:00 | 行政や他機関・施設との連絡 |
16:00 | 事務作業・調整業務 |
17:00 | 各種記録や報告書の作成 |
18:00 | 退勤 |
施設の種類や規模などにより、生活相談員の働き方は異なります。詳しいスケジュールは個別に確認しましょう。
生活相談員のやりがい
生活相談員のやりがいを紹介します。社会を支える一員として、生活相談員はかけがえのない仕事といえます。
役に立っていることを実感できる
生活相談員は、利用者や家族と顔を合わせる機会が多いものです。ときには感謝の言葉をかけられ、自分が必要とされているという実感をもてるでしょう。生活相談員は大変な仕事ですが、大変さを上回る大きなやりがいを感じられます。
キャリアアップを目指して働ける
生活相談員として5年以上勤務すると、ケアマネジャーの受検資格が得られます。また、実務経験や施設の運営知識を身につけると施設長を目指すことも可能です。施設の種類により、施設長に求められる資格や要件は変わります。例えば、特別養護老人ホームの施設長になるには、社会福祉事業に2年以上従事する必要があります。
不安や悩みを解決してあげられる
介護福祉施設の利用者や家族は、さまざまな不安や悩みを抱いています。しかし、介護しながら適切なサービスや支援を探すとなると、自力では難しいかもしれません。生活相談員は、介護保険法などに関する専門知識やこれまでの経験を基に、利用者や家族の不安や悩みを解決できます。
生活相談員に適性がある人とは
生活相談員に適性がある人は、以下のとおりです。
- 人の役に立ちたいと考えている人
- 責任感の強い人
- 円滑なコミュニケーションを取れる人
生活相談員の給料の目安
厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、生活相談員の平均月収は、常勤者で338,370円、非常勤者で290,820円でした。また、パート、アルバイトとして働く生活相談員の平均時給は、常勤者で1,090円、非常勤者で1,120円です。
- 参考:令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/21/dl/r03kekka.pdf)
生活相談員になる方法
生活相談員になる方法を、社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事任用資格に触れつつ紹介します。資格取得の方法も解説します。
生活指導員とは職種の名称
「生活相談員」という資格や検定試験はありません。生活相談員に採用されるには、自治体が定める資格要件を満たす必要があります。詳しくはのちほど解説しますが、無資格でも応募できる自治体もあります。
生活相談員の資格要件
自治体などが定める生活相談員の資格要件として、社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事任用資格が挙げられます。以下では、それぞれの資格の取得方法を解説します。
社会福祉士
社会福祉士は国家資格です。社会福祉士は、日常生活が困難な人の相談援助・指導・他機関との連携などを担う介護関連の専門家です。社会福祉士の試験を受けるには受験資格を得る必要があります。受験資格の一例を以下に示しました。
- 福祉系大学で指定科目履修
- 3年制の福祉系短大で指定科目履修+実務経験(1年)
- 2年制の福祉系短大で指定科目履修+実務経験(2年)
- 福祉系大学で基礎科目履修+短期養成施設等(6か月)
- 一般大学を修了+一般養成施設等(1年)
精神保健福祉士
精神保健福祉士は、精神的障がいをもつ人の相談援助を行います。精神保健福祉士は、社会福祉士と同様に国家資格です。精神保健福祉士の受験資格の一例を、以下に示しました。
- 保健福祉系大学で指定科目履修
- 福祉系大学で基本科目履修+短期養成施設等(6か月)
- 一般大学を修了+一般養成施設等(1年)
- 社会福祉士+短期養成施設等(6か月)
社会福祉主事任用資格
社会福祉主事任用資格とは、福祉事務所で相談・支援・指導などの業務に就くための資格です。社会福祉主事任用資格には試験がなく、資格条件を満たすと取得できます。資格条件の一例を以下に示しました。
- 大学などで指定科目を3科目以上履修して卒業
- 所定の学校の通信課程を修了
- 中央福祉学院の社会福祉主事認定通信過程など、指定の養成機関を修了
- 都道府県等講習会を受講
- 社会福祉士もしくは精神保健福祉士
資格や経験がなくても生活相談員になれる?
生活相談員の資格要件は、自治体ごとに異なります。また、無資格であっても生活相談員になれる可能性はありますが、福祉施設で働いた経験が重視されます。
生活相談員の資格要件が異なる自治体もある
厚生労働省が定める資格要件の解釈は、自治体によって異なります。例えば、北海道札幌市・茨城県・千葉県・大阪府などで生活相談員になるには、介護支援専門員・介護福祉士の2種類の資格が必要です。
資格がない人でも生活相談員になれると明言している自治体もありますが、資格がない代わりに実務経験を求めている事例が目立ちます。
資格がなくても生活相談員になれる自治体の例
資格がなくても生活相談員になれる自治体を一部紹介します。その他の自治体で働く場合は、個別に資格要件を確認しましょう。
東京都
東京都では、介護支援専門員・介護福祉士に加え、以下の実務経験も生活相談員になるための資格要件として認められます。
- 特別養護老人ホームなど老人福祉施設で、介護に関する計画作成の実務経験が1年以上
- 老人福祉施設の施設長としての実務経験が1年以上
宮城県仙台市
宮城県仙台市では、「生活相談員の資格要件」で解説した3つの資格に加え、介護支援専門員も生活相談員の資格要件として認められます。また、指定施設で3年以上の実務経験がある人も生活相談員になれます。
指定施設とは、老人デイサービスセンター・特別養護老人ホーム・障害者福祉施設・児童相談所・保健所・保育所などです。実務経験とは、相談援助や看護・介護業務経験などです。
福岡県
福岡県では、「生活相談員の資格要件」で解説した3つの資格に加え、介護支援専門員・介護福祉士も資格要件として認められます。他にも、社会福祉施設で勤務経験が3年以上ある人も生活相談員の資格要件と見なされます。
社会福祉施設とは、児童養護施設・養護老人ホーム・老人デイサービスセンター・障害児支援施設などです。
まとめ
生活相談員は、介護福祉施設で利用者や家族をサポートし、利用者が納得するサポートを受けられるために他の従業員や機関と連携を取る仕事です。生活相談員になるには、自治体ごとの資格要件を確認しましょう。
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- この記事の監修者は生涯学習のユーキャン
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1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。
よくある質問
- 生活相談員の就職先って?
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具体的に生活相談員が活躍できる就職先としては、通所介護施設、介護老人福祉施設、介護付き有料老人ホームなどが挙げられます。3箇所それぞれ特徴が異なりますのでしっかりと把握しましょう。
- 社会福祉士の合格率・難易度は?
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社会福祉士国家試験の合格率は福祉系国家資格の中で最も低い30%ほどであり、試験の難易度は高いと言えます。難易度が高い理由としては、出題範囲が広いことや、受験資格を得るために実務経験や福祉関連の学校を卒業する必要があることが挙げられます。
- 社会福祉士試験合格に必要な勉強時間は?
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社会福祉士の試験に合格するための勉強時間は300時間程度が目安だといわれています。実際に300時間勉強するためには、1日2時間勉強すれば約5ヵ月、 1日1時間勉強すれば10ヵ月ほどかかります。
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