• 更新日:2023/07/03

医療や福祉などさまざまな現場で活躍の場が広がっている社会福祉士は、年代を問わず注目されている職業です。社会福祉士になるためには、社会福祉士の国家試験に合格する必要がありますが、その前に受験資格を得なければ試験を受けることができません。

この記事では、受験資格を得る12通りの方法を中心に、社会福祉士になる方法を詳しく説明します。資格取得を目指す際に、参考にしてください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 社会福祉士になるには、受験資格を得て、社会福祉士の試験を受け、社会福祉士として登録申請を行うことが必要。
  • 社会福祉士試験の受験資格を得るには、福祉系大学等での指定科目の履修・卒業や、短期養成施設等または一般養成施設等での修学など、12通りの方法がある。
  • 実務経験として認められる職種として、児童分野、高齢者分野、障害者分野などが挙げられる。

社会福祉士とはどんな仕事?

社会福祉士は、福祉の仕事に携わる国家資格で、ソーシャルワーカーとも呼ばれることもあります。社会福祉の専門職として、今後ますます需要が高まると考えられている資格の一つです。その特徴を具体的に紹介しましょう。

さまざまな福祉分野で活躍できる資格

福祉とは、生活上の困難を抱えている人に、公的扶助による支援や介助を行うことです。支援や介助を必要とする人は、病院や保健所、児童相談所、障害者養護施設、特別養護老人ホームなど、あらゆる場所にいます。社会福祉士は、主にこうした場所で対象者への支援や介助を行うのが役目です。

また、職場によっては肩書きが異なります。たとえば、特別養護老人ホームなど、高齢者を対象とした福祉施設の場合は先に紹介したソーシャルワーカーのほか、生活相談員や生活指導員と呼ばれるのが一般的です。また、児童相談所では児童福祉司や児童指導員と呼ばれることもあります。

社会福祉の専門職

社会福祉士が支援の対象とするのは、高齢者や障害者、貧困に陥っている人など、自分自身の力や家族の支援だけでは通常の生活を送るのが難しい人たちです。こうした人たちやその家族からの相談を受けて、生活に関する問題や不安を解消するための支援策を提案するのが、社会福祉士の仕事です。

現在、日本の福祉制度や内容は複雑化しており、一般の人がその全を把握するのは容易ではありません。福祉全般に精通し、相談者ごとに適切な支援策を提案できる社会福祉士は、まさに社会福祉の専門職といえるでしょう。

今後ますます需要が高まる仕事

先に触れたように、超高齢化社会に突入している現代において、福祉サービスを必要としている人は数多くいます。そのため、社会福祉士の仕事は今後ますます需要が高まり、あらゆる現場で活躍できるでしょう。

実際、高齢者を対象とした施設を中心に求人募集が多く出ています。また、社会福祉法人や医療法人の職員として採用されるケースも多く、一般の会社員よりも安定性は高いといえるでしょう。

社会福祉士になるには?

社会福祉士の試験は、毎年2月上旬頃に実施されます。実施は年1回なので、合格のチャンスを逃さぬように照準を合わせた準備が必須です。試験に合格して登録を受けると、晴れて社会福祉士を名乗れるようになります。

実施要項は、公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページ(http://www.sssc.or.jp/index.html)などで、最新のものを確認しておくといいでしょう。受験にあたっては、受験資格を満たしていることを確認する必要があります。以下で、受験資格を得る方法や試験概要等を説明します。

  • 参考:社会福祉国家試験|公益財団法人社会福祉振興・試験センター(http://www.sssc.or.jp/shakai/shikaku/index.html)

受験資格を得る

社会福祉士試験の受験資格を得る方法は、第34回(2021年度)時点で、全部で12通りあります。詳細は後述しますが、代表的な方法は、福祉系の4年制大学・短大、短期養成施設等、一般養成施設等のいずれかを卒業(修了)することです。

どの学校や養成施設を卒業(修了)したとしても、それだけで社会福祉士の資格が得られるわけではありません。卒業(修了)はあくまでも受験資格を得る手段であり、その後は独学や通信講座、スクール等で試験本番に備え、合格を目指しましょう。

2025(令和7)年2月実施の試験より新カリキュラム対応に

2019年に厚生労働省から社会福祉士の教育内容の見直しが発表され、2021年度から福祉系の大学・短大などの教育機関で社会福祉士を目指している方は、新カリキュラムに基づいて学習しています。

新カリキュラムの背景は、国が目指す「地域共生社会」実現のため、その中心的な役割を担う社会福祉士の養成カリキュラムの見直しで、主に次のような変更点があります。

◆科目名「相談援助」が「ソーシャルワーク」に変更
従来、社会福祉士の仕事のメインの相談援助が、ソーシャルワークの専門職としてより幅広くスキルを活用することになります。

◆新科目「地域福祉と包括的支援体制」が追加
地域共生社会の実現のために必要な、地域福祉の考え方、多職種連携、地域ネットワーク構築などの知識を習得します。

◆実習の名称・時間数の変更、実習先の追加
実習の名称が「相談援助実習」から「ソーシャルワーク実習」に変更。実習時間が180時間から240時間以上と60時間増え、1ヵ所以上から2ヵ所以上の事業所・施設・相談機関で実習を行うことに。

社会福祉士試験は、2025(令和7)年2月実施の試験より新カリキュラム対応となり、試験科目が大幅に変わります。また、事例問題の出題が増えることが予想されています。
社会福祉士試験の合格を目指す方は、新カリキュラムに対応した対策が必要です。
なお、受験資格、試験の実施時期、合格基準点などは従来通りで変更はありません。

  • 試験内容は変更される場合があるため、必ず最新情報をご確認ください。


社会福祉士の試験を受ける

受験資格を取得したら、受験の準備に入ります。試験日は年1回、2月上旬ごろであり、申し込みは9月上旬~10月上旬、受験費用は19,370円です(いずれも第34回(2021年度)時点)。試験はマークシート形式で行われます。併せて精神保健福祉士も受験する場合や、共通科目免除が適用される場合は、受験費用が異なるので注意しましょう。


出題範囲について

社会福祉士試験では、以下の19科目が出題範囲として提示されています。

1)医学概論
2)心理学と心理的支援
3)社会学と社会システム
4)社会福祉の原理と政策
5)社会福祉調査の基礎
6)ソーシャルワークの基盤と専門職
7)ソーシャルワークの理論と方法
8)地域福祉と包括的支援体制
9)福祉サービスの組織と経営
10)社会保障
11)高齢者福祉
12)障害者福祉
13)児童・家庭福祉
14)貧困に対する支援
15)保健医療と福祉
16)権利擁護を支える法制度
17)刑事司法と福祉

  • 新カリキュラム対応の試験では、「ソーシャルワークの基盤と専門職」と「ソーシャルワークの理論と方法」は、共通科目と専門科目でそれぞれ出題されるため、科目数は19科目となります。

社会福祉士としての職務は、さまざまな状況における人々の相談を受け、適切なサポートを行うことであり、そのためには幅広い知識が必要です。そのため、出題範囲も多岐にわたりますが、社会福祉士として活躍するためには必要な知識だと心得ておきましょう。



難易度について

社会福祉士試験は、60%程度の正解率が合格ラインです。合格率は30%程度で、難関試験といっても過言ではありません。

合格率が低い背景には、科目数が多いうえに出題範囲が広いため、学生や社会人の受験生には勉強時間の確保が難しいことが挙げられます。時間的に余裕を持った計画を立てると同時に、より効率的で自分に合う勉強方法を見つけることが重要です。

社会福祉士として登録申請を行う

社会福祉士試験に合格した後は、実際に社会福祉士として働くために登録申請を行います。登録手順は以下のとおりです。

1)定められた必要書類を簡易書留で、公益財団法人社会福祉振興・試験センターに提出する
2)試験センターで受理後、審査・登録簿への登録が行われる
3)登録証が交付される

提出した書類等に不備がなければ、1カ月程度で登録証が発送されます。必要書類の中には、登録免許税15,000円の収入印紙と登録手数料4,050円の振替払込受付証明書も含まれているため、不備のないよう準備することが大切です。

また、外国籍である場合や介護福祉士養成施設を卒業している場合は、必要書類が多くなる点にも注意しましょう。

社会福祉士試験の受験資格を得る方法とは?

ここからは、先に触れた社会福祉士試験の受験資格を得る12通りの方法について説明します。今から社会福祉士を目指すためにはどうすればいいのか、自分にとって最適な方法を選択するための参考にしてください。

ルート一覧

福祉系の大学・短大等での指定科目履修によって

受験資格を取得する場合

短期養成施設等での修学によって

受験資格を取得する場合

一般養成施設等での修学によって

受験資格を取得する場合

福祉系大学等(4年)で指定科目を履修・卒業する 福祉系大学等(4年)で基礎科目を履修・卒業し、短期養成施設等で6カ月以上必要な知識及び技能を修得する 一般大学等(4年)を卒業し、一般養成施設等で1年以上必要な知識及び技能を修得する
福祉系短大等(3年)で指定科目を履修・卒業し、相談援助実務を1年以上経験する 福祉系短大等(3年)で基礎科目を履修・卒業し、相談援助実務を1年以上経験し、短期養成施設等で6カ月以上必要な知識及び技能を修得する 一般短大等(3年)を卒業し、相談援助実務を1年以上経験し、一般養成施設等で1年以上必要な知識及び技能を修得する
福祉系短大等(2年)で指定科目を履修・卒業し、相談援助実務を2年以上経験する 福祉系短大等(2年)で基礎科目を履修・卒業し、相談援助実務を2年以上経験し、短期養成施設等で6カ月以上必要な知識及び技能を修得する 一般短大等(2年)を卒業し、相談援助実務を2年以上経験し、一般養成施設等で1年以上必要な知識及び技能を修得する
社会福祉主事養成機関(2年以上)を修了した後、相談援助実務(2年以上)を経験し、短期養成施設等で6カ月以上必要な知識及び技能を修得する 相談援助実務を4年以上経験し、一般養成施設等で1年以上必要な知識及び技能を修得する
指定資格の実務を経験4年以上経験し、短期養成施設等で6カ月以上必要な知識及び技能を修得する

以上が社会福祉士試験の受験資格を得る12通りの方法です。以下では、これらの方法の詳細を説明します。
  • 参考:受験資格(資格取得ルート図)|公益財団法人社会福祉振興・試験センター(http://www.sssc.or.jp/kaigo/shikaku/route.html)


実務経験として認められる職種とは?

社会福祉士試験の受験資格において、重要なポイントとなるのが実務経験です。一部の方法を除いて、1年以上の実務経験が必要となり、実務として認められる職種が多いという特徴があります。実務経験として認められる職種として挙げられるのは、児童分野、高齢者分野、障害者分野、その他の分野、現在廃止事業の分野です。

児童分野では、保育士や児童指導員等の職種の実務経験が該当します。高齢者分野では生活相談員や支援相談員等、障害者分野では身体障害者福祉司等の実務経験が認められます。その他にも数多くの職種が該当するため、あらかじめ詳細を確認しておきましょう。

特に、これまでに社会経験がある人は、現在廃止事業の分野も確認する必要があります。社会福祉士は、40代以上の社会人が実務経験を活かして活躍できる職種である一方、過去に働いていた事業が現在は廃止されている可能性もあるためです。自分に該当する実務経験がないか、しっかりと把握しておきましょう。

  • 参考:社会福祉国家試験|公益財団法人社会福祉振興・試験センター(http://www.sssc.or.jp/shakai/shikaku/s_11.html)

実務経験として認められない職種とは?

社会福祉分野の職種は多岐に渡り、一見実務経験として認められそうな職種でも、社会福祉士試験においては認められないケースもあります。

指導員のうち「介護等の業務を行なう指導員」である場合、児童指導員のうち「入所者の保護に直接従事する児童指導員」である場合は、実務経験として認められません。保育士のうち「入所者の保護に直接従事する保育士」である場合は、実務経験として認められません。

他にも、障害者福祉サービス経験者、包括的支援事業に係る業務を行う職員、第一号通所事業を行う施設での生活相談員、生活指導員などが実務経験として認められない職種に該当する可能性があります。「社会福祉分野の事業所で働いていた経験があるから実務経験として認められる」とは限らないので注意しましょう。

社会福祉士の資格は働きながらでも資格取得できる?

社会福祉士を目指そうと思っても、現在の仕事を辞めるのは難しいというケースは多くあります。学校や養成施設への通学が必須となれば、資格取得を断念せざるを得ないと考える人も多いでしょう。

しかし、実際には働きながらでも勉強することは可能です。大学への編入を検討している場合は、通信制という選択肢があります。また、養成施設では夜間コースなどの設定もあり、資格取得へのサポートは比較的充実しているといえるでしょう。

そうはいっても、これまでの生活スタイルを変えることなく社会福祉士の資格を取得するのは難しいのが実情です。先述のとおり、難関の試験でもあるため、勉強の効率化を図りながら、時間の使い方を検討していく必要があります。

社会福祉士の資格取得におすすめの勉強方法は?

19科目の試験科目があり、総得点の60%以上の得点が必要な社会福祉士試験は、全科目をまんべんなく勉強することが必要です。福祉分野の法改正は頻繁に行われており、古いテキストでは現状にそぐわない勉強となってしまう可能性もあるため、教材はできるだけ最新のものを使用するようにしましょう。

教材の選び方から勉強の時間配分まで、すべてを自分ひとりの力で行うのは限界があります。確実に合格するためには、最新のテキストと最適なカリキュラムで、合格までサポートしてくれる通信講座の受講をおすすめします。難関の試験を突破するための心強い味方となってくれるでしょう。

まとめ

社会福祉士として活躍するためには、社会福祉士試験に合格することが大前提です。社会福祉士試験は、合格率が30%程度という難関試験で、受験資格を取得した後にも勉強が重要です。

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この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。

よくある質問

社会福祉士の合格率・難易度は?

社会福祉士国家試験の合格率は福祉系国家資格の中で最も低い30%ほどであり、試験の難易度は高いと言えます。難易度が高い理由としては、出題範囲が広いことや、受験資格を得るために実務経験や福祉関連の学校を卒業する必要があることが挙げられます。

社会福祉士の年収は?

公益財団法人社会福祉振興・試験センターが令和2年に実施した調査によると、社会福祉士の平均年収は403万円(男性473万円、女性365万円)です。平均月収に換算すると30~35万円程度、手取りは24万~28万円程度となります。

社会福祉士試験合格に必要な勉強時間は?

社会福祉士の試験に合格するための勉強時間は300時間程度が目安だといわれています。実際に300時間勉強するためには、1日2時間勉強すれば約5ヵ月、 1日1時間勉強すれば10ヵ月ほどかかります。

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