精神保健福祉士になるには?仕事内容や将来性、資格の取得方法などを解説
- 更新日:2024/03/15
精神保健福祉士とは、日本の社会福祉士の一種であり、主に精神保健分野で活動する専門職です。精神疾患や心の健康に関する支援やケアを提供し、患者や利用者の社会復帰や生活の質の向上を支援します。心の病や悩みをもつ方からの相談に応じ、助言や指導を行い、日常生活や社会復帰を援助する国家資格です。この記事では、精神保健福祉士の仕事内容、将来性、資格を取得する方法などについて解説します。精神保健福祉士を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
精神保健福祉士(PSW)とは
精神保健福祉士とは、心の病や悩みをもつ方からの相談に応じ、助言や指導を行い、日常生活や社会復帰を援助する専門職であり、「精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)」とも呼ばれています。精神保健福祉士の特徴としては以下が挙げられます。
- 精神保健福祉士は国家資格
- 社会福祉士との違いは、精神疾患や心の健康に関する支援やケアに特化しているところ
精神保健福祉士の位置づけ
精神保健福祉士は国家資格です。精神障がい者の生活支援に関する専門的な知識・技術を有する、精神保健福祉分野の専門家としてその役割が期待されています。主に、心の病や悩みを持つ方たちの日常生活をサポートし、社会復帰を促す役割を果たします。
社会福祉士との違い
精神保健福祉士と似た国家資格として、社会福祉士があります。精神保健福祉士と社会福祉士の違いは、サポートする対象です。精神保健福祉士は、精神障がい者に特化して支援を行います。一方、社会福祉士は精神障がい者だけでなく、高齢者、生活困窮者、身体障がい者、知的障がい者など幅広い方を対象としています。
精神保健福祉士の仕事内容は?
精神保健福祉士の仕事内容としては以下があげられます。
- スムーズに日常生活を送れるように支援する
- 医療施設の受診や入退院をサポートする
- 住まいの確保を手助けする
- 就労や就学の手続きを行う
- 病気や障がいについて家族や周囲に説明する
- 精神障がい者の支援事業を推進する
日常生活のサポート
精神に障がいがある方が日常生活を円滑に営めるよう、支援します。たとえば、家事や買い物などをサポートする場合もあります。
医療施設の利用に関するサポート
精神保健福祉士は、精神に障がいがある方が医療施設をスムーズに利用できるように支援します。医療施設の受診や入退院を援助するだけでなく、退院後に必要な手続きや準備などもサポートします。
住まいのサポート
病院を退院したり施設を退所したりした後に暮らす住まいを確保するための支援も精神保健福祉士が行います。住まいの確保を手助けし、それぞれの人にとって必要な福祉サービスを受けられる環境を整備します。
就労や就学のサポート
精神に障がいがある方が就労や就学する際に必要な手続きについても、精神保健福祉士がサポートします。また、就労を目指す訓練施設において、就職の相談を受ける場合もあります。
家族や関係機関との調整
精神保健福祉士は、対象者の病気や障がいについて家族に説明して理解を促します。また、関係機関と調整しながら、家庭環境の改善に向けたアプローチを行うケースもあります。
行政機関での仕事
行政機関では、精神保健福祉士が精神障がい者の支援事業に携わっています。精神障がい者本人の関するサポートの業務だけでなく、地域住民に向けたメンタルヘルスの啓発活動に取り組む場合もあります。
精神保健福祉士はどんな場所で活躍できる?
精神保健福祉士が活躍できる場所としては以下が挙げられます。
- 精神科病院や診療所・総合病院の精神科などの医療機関
- 障がい者支援施設や高齢者施設などの福祉施設
- 自治体、保健所、福祉事務所、精神保健福祉センターなどの行政機関
- 保護観察所や矯正施設などの司法機関
- 小学校、中学校、高校、大学といった教育機関
- その他の一般企業やハローワーク
医療機関
精神保健福祉士は、精神科病院や診療所・総合病院の精神科などの医療機関で活躍できます。医師や看護師などと連携しながら、主に精神療法の提供や退院後の生活のサポートをします。
福祉施設
障がい者支援施設や高齢者施設などの福祉施設で活躍している精神保健福祉士もいます。福祉施設では、主に相談支援、生活介護、回復支援などを精神保健福祉士が担当しています。
行政機関
精神保健福祉士のなかには、自治体、保健所、福祉事務所、精神保健福祉センターなどの行政機関に勤務している人もいます。主な仕事内容は、相談支援や情報提供などです。
司法機関
保護観察所や矯正施設などの司法機関に勤務して精神障がい者をサポートする精神保健福祉士もいます。社会復帰に向けた訓練や更生などを支援しています。
教育機関
精神保健福祉士は、スクールソーシャルワーカーとして小学校、中学校、高校、大学といった教育機関に勤務するケースもあります。教育機関で働く場合は、主に児童や生徒のいじめや不登校などの相談に応じ、ケアやサポートをします。
企業・ハローワークなど
産業ソーシャルワーカーとして企業に勤め、ストレスケアや相談支援などを行っている精神保健福祉士もいます。また、ハローワークで働く精神保健福祉士は、主に精神障がい者の就労をサポートします。
精神保健福祉士としての働き方は?
精神保健福祉士としての働き方の特徴としては以下が挙げられます。
- 病院勤務の場合、午前は病棟での業務、午後は退院前訪問指導や会議など
- 平日のみの場合もあれば、シフト制の場合や夜勤がある場合もある
1日の流れ
病院に勤務する精神保健福祉士は、朝礼から1日の仕事がスタートします。午前は病棟での業務に対応するケースが多いです。その後、昼休憩をはさみます。午後は病棟での業務をはじめとし、退院前訪問指導、会議、デスクワークなど状況に応じてさまざまな業務をこなします。終礼を終えると退勤です。
精神保健福祉士の勤務形態
精神保健福祉士の勤務形態は、勤務する施設の規定によって異なります。平日のみの固定勤務の施設もあれば、土日勤務があってシフト制の施設もあります。また、施設によっては夜勤もあり、勤務形態はさまざまです。
精神保健福祉士の給料はどのくらい?
精神保健福祉士の給料の目安は以下のとおりです。
- 福祉系全体の平均年収は404万円(男性は463万円、女性は377万円)
- 正規職員の場合、「300万円以上400万円未満」の割合が最も多い
性別・年代別の年収
公益財団法人社会福祉振興・試験センターが公表している「精神保健福祉士就労状況調査実施結果報告書」によれば、2019年の福祉系全体の平均年収は404万円でした。性別でみると、平均年収は男性が463万円、女性が377万円となっています。
- 参考:精神保健福祉士就労状況調査実施結果報告書 | 公益財団法人社会福祉振興・試験センター(https://www.sssc.or.jp/touroku/results/pdf/r2/results_04.pdf)
雇用形態別の年収
雇用形態別に年収をみると、正規職員は「300万円以上400万円未満」の割合が26.3%で最多です。別の雇用形態では、契約社員は「200万円以上300万円未満」の割合が28.9%で最多、パートタイム職員は「103万円未満の割合」が21.4%で最多となっています。
- 参考:精神保健福祉士就労状況調査実施結果報告書 | 公益財団法人社会福祉振興・試験センター(https://www.sssc.or.jp/touroku/results/pdf/r2/results_04.pdf)
精神保健福祉士の将来性
精神保健福祉士に対するニーズは高く、資格を取得すれば医療、福祉、行政、教育など幅広い分野で活躍できる可能性があります。一般企業のなかでも従業員の労働環境の改善に取り組む企業が増えており、産業ソーシャルワーカーとして精神保健福祉士を採用するケースも多くなっています。精神保健福祉士は、今後さらに需要が高まる職業です。
精神保健福祉士になるには
精神保健福祉士になるためには、以下の3つのルートがあります。
- 保健福祉系大学で指定科目を学ぶ
- 必要なカリキュラムを短期養成施設で履修する
- 一般の大学や短大を卒業後、必要なカリキュラムを一般養成施設で履修する
保健福祉系大学ルート
保健福祉系の大学や短大に入学して精神保健福祉士を目指す方法があります。大学や短大で指定科目の単位を取得し、国家試験に合格すると精神保健福祉士の資格を取得できます。
短期養成施設ルート
大学や短大で基礎科目の単位のみを取得し、短期養成施設で精神保健福祉士になるために必要なカリキュラムを履修する方法もあります。必要な科目の履修を終えて国家試験に合格すれば、精神保健福祉士の資格を取得可能です。
一般養成施設ルート
一般の大学や短大を卒業したうえで、必要なカリキュラムを一般養成施設で履修して精神保健福祉士になる方法もあります。必要な科目を履修して国家試験に合格すると、精神保健福祉士の資格を取得できます。
精神保健福祉士の資格を取得するには?
精神保健福祉士の資格取得についてまとめると、以下のとおりです。
- 精神保健福祉士の国家試験は年1回
- 受験資格を得る方法としては、保健福祉系大学ルートが基本
- 試験は、専門科目と共通科目の2種類
- 例年の合格率は60%前後
試験概要
精神保健福祉士の国家試験は、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが実施しています。年1回実施されており、受付は10月、試験は2月です。
受験資格、実務経験
精神保健福祉士の国家試験の受験資格を得る方法は、保健福祉系大学や短大で指定科目の単位を取得するルートが基本です。それ以外の方法として、短期養成施設ルートや一般養成施設ルートなどが存在します。
また、4年以上の実務経験がある場合、社会人であっても精神保健福祉士の国家試験の受験資格を得られる場合があります。
試験科目
精神保健福祉士の試験内容は、以下のとおりです。
【専門科目】
- 精神疾患とその治療
- 精神保健の課題と支援
- 精神保健福祉相談援助の基盤
- 精神保健福祉の理論と相談援助の展開
- 精神保健福祉に関する制度とサービス
- 精神障害者の生活支援システム
【共通科目】
- 人体の構造と機能及び疾病
- 心理学理論と心理的支援
- 社会理論と社会システム
- 現代社会と福祉
- 地域福祉の理論と方法
- 福祉行財政と福祉計画
- 社会保障
- 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
- 低所得者に対する支援と生活保護制度
- 保健医療サービス
- 権利擁護と成年後見制度
試験の合格率
2023年に実施された第25回の精神保健福祉士の試験の合格率は、71.1%でした。例年の合格率は60%前後であり、2023年の合格率は例年と比べて高くなりました。
まとめ
精神保健福祉士は、精神疾患のある方をさまざまな角度からサポートできる国家資格です。需要が高くて将来性もあり、幅広い職場で活躍できます。保健福祉系大学を経て資格取得を目指すルートが一般的ですが、条件を満たせば他のルートでも資格の取得が可能です。
精神保健福祉士と同じく精神疾患のある方たちを支援できる国家資格としては、社会福祉士もあります。ユーキャンの「社会福祉士講座」は、過去10年間で合格者数が4,100名を突破しました。新しいカリキュラムの試験対策も可能です。働きながら学べ、サポート体制も充実しています。資格取得のためにぜひご活用ください。
- この記事の監修者は生涯学習のユーキャン
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1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
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よくある質問
- 生活相談員の給料はどれくらい?
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生活相談員の平均月収は、常勤者で338,370円、非常勤者で290,820円程度。また、パート、アルバイトとして働く生活相談員の平均時給は、常勤者で1,090円、非常勤者で1,120円です。
- 生活相談員のやりがいは?
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生活相談員のやりがいとしては、役に立っていることを実感できる、キャリアアップを目指して働ける、不安や悩みを解決してあげられることなとが挙げられます。社会を支える一員として、生活相談員はかけがえのない仕事といえます。
- 社会福祉士の合格率・難易度は?
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社会福祉士国家試験の合格率は福祉系国家資格の中で最も低い30%ほどであり、試験の難易度は高いと言えます。難易度が高い理由としては、出題範囲が広いことや、受験資格を得るために実務経験や福祉関連の学校を卒業する必要があることが挙げられます。
福祉サービスの専門家として、老人ホームや在宅ケアなどの分野で活躍したい方におすすめの資格が「社会福祉士」。社会福祉士の仕事はソーシャルワーク(相談援助)と呼ばれ、①障害や病気などの理由により福祉サービスを必要とする人々からの相談を受け、②他の福祉サービスの提供者・医療機関と連携し、③相談者の自立に向け、専門的な知識と技術で的確な助言や指導、その他の支援を行います。