新人育成を行う際に知っておきたい新入社員の傾向や特徴とは?
新人育成を行う際は、常に同じ教育内容を提供するのではなく、その時代の新入社員の傾向や特徴を把握しておく必要があります。公益財団法人日本生産性本部が平成部が平成31年に行った調査によると、新入社員の「働くことの意識」には次の傾向があるとわかりました。
・働く目的は「楽しい生活をしたい」楽しい生活のために働く
・働き方は「人並みで十分」
・「プライベートより仕事を優先」が多数派だが減少傾向
・若いうちは進んで苦労すべきか?「好んで苦労することはない」
・能力や個性を活かせる会社を選びたい
こうした結果から、 近年の新入社員は仕事とプライベートのバランスを大切にしており、仕事は豊かな私生活を送るためと考える傾向があるとわかります。 また、調査結果の中にはデートの約束があったとき、残業を命じられたら、あなたはどうしますか」という質問では、「ことわってデートをする」が過去最高の36%となっています。平成27年には19%だったことと比較すると、およそ5年で2倍近く上昇しています。ほかにも会社を選んだ理由で「自分の能力、個性が活かせるから」が29.6%、「仕事が面白いから」が18.4%という結果が出ており、新入社員が仕事を選ぶポイントとして「自分」という個性を活かせるかどうか、自分自身が仕事を楽しめるかが重要になっていることがわかります。こうした新入社員の傾向や特徴を理解したうえで、新人育成の計画を立てましょう。
参考:公益財団法人日本生産性本部https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/R12attached.pdf
新人育成に取り組むメリット
新人育成に取り組むことで、どんなメリットがあるのか詳しく紹介します。
生産性向上につながる
生産性の高さには社員の能力やスキルが大きく関係しており、一定の時間内で高い成果をあげる技術を習得できれば更に向上するでしょう。特に新入社員は仕事へのモチベーションと学習意欲の高さから教育による成長も早く、即戦力になる可能性も高いです。また近年の新入社員は企業のMVV (ミッション・ビジョン・バリュー)に共感して入社するケースも多くなっており、仕事において自分の興味・関心を発揮したいと考えているようです。新人育成には時間とコストがかかりますが、長い目で見れば長期的な活躍が期待でき、将来的な生産性向上にもつながるでしょう。
モチベーションが上がる
新人育成に取り組むことは、新入社員が早期にスキルや能力を身につけられるだけでなく、社員のモチベーションアップにもなります。 新入社員の多くは初めての仕事に不安を抱えています。しかし新人教育を通して知識やスキルを習得できれば、自信を持って仕事に取り組めるようになるでしょう。スキルが身につけば仕事でも自己の成長を実感でき、モチベーションアップにつながります。他の社員にとっても、業務の目的や流れを改めて学ぶ機会になります。新入社員の働きが刺激となり、モチベーションアップにつながることも期待できます。そのため会社は新人教育を進めると同時に、新入社員が新人教育で学んだことを活かせる環境を用意することも重要です。学びを現場で実践することで、新入社員は自分の成長を実感しやすくなり、成功体験を重ねて自己肯定感も向上します。
エンゲージメントが高まり、離職率が低下する
新人教育に取り組むことは社員のモチベーションアップだけでなく、エンゲージメント向上につながり、離職率低下の効果もあります。近年、企業で問題になっているのが新入社員の早期離職です。入社から3年以内に離職する社員は3人に1人とされており、社員のエンゲージメントを高めることが企業にとっての重要課題です。そして新人教育の体制や内容が整っている会社は、社員にとって働きやすい環境となっていることが多く、離職率も低くなります。自社に優秀な社員を定着させたいなら、新人教育に力を入れ、働きやすい環境を作りましょう。
新人育成を行う手順
新人育成に着手する際は、自社の成長に貢献できる人材が育つよう支援する必要があります。 どの企業でも共通する好ましい人材とは、主体性と自発性の高い傾向があります。優れた人材を育成するための手順について、6つのステップで紹介します。
現状把握
新人育成で最初にすべきことは、新入社員の現状把握です。必要なトレーニングや教育を特定するため、対象の社員が持つスキルや知識を分析し、現状を把握します。スキル習得にかかる時間は人それぞれなので、どのくらいの時間が必要か把握する意味でも重要です。研修の方向性や習得してもらうスキルの種類も明らかになり、カリキュラムを設計しやすくなります。
目標の明確化
新人教育の効果を高めるには、新人教育の目標やゴールを定めましょう。無駄のないカリキュラムを組むことができ、受講者は目標を達成しやすくなります。新人教育ではスキルや知識の習得に加え、社会人としてのマインドセットや倫理観、コンプライアンス意識などさまざまなスキルが大切になります。そのため、組織に所属する社会人として、組織に貢献する人材を育てるという視点も考えるべきです。望ましい人物像へと育成するために、SMART法やランクアップ法なども用いて、育成目標を設定するのがよいでしょう。
研修内容の選定と計画
目標を明確化できたら、目標達成に必要なスキルの洗い出しと時期別の計画を立てましょう。新人教育では多くのスキルを学ぶ必要があり、必要なスキルは社員の状況に応じて優先順位も変わります。基本的なスキルから始まり、徐々に専門的スキルを学ぶカリキュラムにすることで、段階的にスキルアップできます。研修内容の選定には経験と知識、多角的視点が必要になるため、必ず複数人で検討することが大切です。
カリキュラムの設計
スキルの洗い出し研修内容の選定ができたら、次はスキルの優先順位に従って研修カリキュラムを設計します。すぐに習得できるものは短く、習熟に時間のかかるものは長めに期間を設定するのがよいでしょう。また 専門性の高いスキルや知識に関しては、外部の研修サービスに依頼するのもおすすめです。 カリキュラム設計では同時に目標達成状況を評価するための項目を作成し、研修しながら現状把握できるようにすることも押さえておきましょう。
研修期間の決定・実行
カリキュラムを決定したら、研修期間を決定して周知し、教育を開始しましょう。平均的な期間は1〜3か月ですが、企業によっては1か月以内で終了することもあります。新人育成のゴールに合わせて期間を設定してください。
振り返り
新人育成のカリキュラムが終了したら、あまり期間を空けずに振り返りを行いましょう。実際に新人教育を受けて良かった点、課題と感じた点を1on1またはオープンな場で話し合って評価します。1on1なら上司に悩みがある場合にも直接相談でき、一緒に解決の糸口を見つけることができます。オープンな場であれば、研修を受けた社員と講師で自由に意見を交換し、コミュニケーションを図りながら改善策を話し合えるでしょう。新人育成を成功に導くポイント
新人育成を成功させるには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。成功へと導くための6つのポイントについて紹介します。
新入社員に合わせた目標設定
新人育成の成功には、目標設定が非常に重要です。陥りがちな失敗パターンとして、教育担当者が部署の上司や先輩の意見、一般的な基準を参考にしてしまい、新入社員がついていけないケースがあります。既に自律して働いている社員は、自分の能力やをスキル基準にして、新入社員にも高いスキルや業務遂行能力を求めがちです。しかし誰もが新人時代を経験しており、新入社員の頃にはできなかったことも多いはずです。 新入社員は「できないことが当たり前」という前提に立ち、同じ目線で具体的な目標設定を行いましょう。また指導する際もできないことを叱るのではなく「どうすれば改善するのか」「同じミスを繰り返さないために何ができるのか」を一緒に考えることが大切です。教育担当者や指導者が同じ目線に立つことで、新入社員も不安が少なくなり、仕事へのモチベーションアップにつながります。
支援体制を構築
新入社員の教育を行う際は、1人の新入社員に対して複数人の教育担当者または指導者をつけることも成功のポイントです。新入社員1人に対して担当者が1人の状況では、スキルや評価が偏りやすくなります。また担当者が1人で新入社員の面倒を見ることになり、本来の業務と同時並行することで負担が過大になるおそれがあります。複数の社員が担当し、指導することで、スキルや考え方の偏りがなくなり、新たな気付き得られるでしょう。担当者にとっても教育方法や方針について相談できるため、肉体的・心理的負担が軽減されるメリットもあります。他にも指導担当者が負担する業務量を減らすなど、チーム全体で新人育成を支えていく体制を構築することが大切です。
全体像の把握と段階的な教育
入社員が業務をこなせるようになるには、まず業務の全体像を掴み、仕事の流れを理解することが重要です。 新業務の全体像が分からないまま知識やスキルを詰め込んでも、意味や重要性を理解するのは困難です。結果、言われたとおりのことしかできなくなり、新入社員のモチベーションを下げる可能性すらあります。そのためまずは業務の全体像を説明したうえで、スキルの習熟度や知識の定着状況に合わせ、段階的に支援するのが効果的です。新入社員が自律した人材として働くには、自分自身で判断できるように仕事の意味を理解する必要があります。新入社員の学びを支援できるように、段階的に指導を行う教育体制を構築しましょう。
成功体験の積み重ねができる環境
新入社員の成長を促すには、社員が成功体験を積み重ね、自信をつけられるようサポートすることも欠かせません。特に新入社員に多い傾向として、1つのミスに心を囚われて過剰に落ち込み、いつまでも立ち直れないことがあります。失敗することも大切な経験ですが、新人育成を成功させるには、まず小さな成功体験で自信を持ってもらうことが何よりも重要です。仕事の成功は自信とモチベーションにつながり、仕事への自発性や学習意欲向上へと発展します。新人育成を行う部署・チームは、一丸となって成功体験を積みやすい環境を整え、早期に自信を持てるように支えることを意識しましょう。
心理的安全性の確保
心理的安全性とは、特定の集団に属する人が集団内で失敗やリスクをおそれずに自分の意見を表明したり、思ったとおりの行動をしたりできる状態を意味します。心理的安全性の確保は社員のチャレンジ精神を高め、社員間での活発な意見交換や相互の支援体制の構築、失敗を許容する環境を作る効果があります。新入社員にとって、上司や先輩ばかりの環境で意見を表明し、自分の考えで行動するのは困難です。しかし心理的安全性を確保できれば、新入社員も安心して働けるようになり、チャレンジ精神を持って仕事に取り組めます。また、チームに新しい価値や視点を与えてくれる可能性もあるため、イノベーションの創出や生産性向上の観点からも心理的安全性への意識は重要です。
社員の特性を理解した指導
新人育成を成功させるために意識すべきポイントとして、社員それぞれの特性を理解した指導が必要という点は外せません。新入社員にはそれぞれ得意分野や能力の差異があり、性格も全く違います。そのためAという社員には効果的な指導方法でも、Bという社員にはうまくいかないことも珍しくありません。重要なのは新入社員の特性を見極め、良い部分をそのまま伸ばし、苦手な部分を少なくしていくことです。従来の企業の指導方法やマネジメント手法では、社員の特性よりも会社独自のやり方を押し付けるのが一般的でした。しかし、近年の人材不足、早期離職の増加した日本社会では、新入社員の特性を無視するのは失敗の原因になります。教育担当者は担当する社員の個性や特性を理解し、適切な接し方や指導方法をチーム内で共有しましょう。新人育成に関するよくある質問
新人を育成する際、教育担当者が抱えやすい悩みや疑問について解説します。
新人育成では何を教えればいいですか?
新人を育成する際、まず教えるべきことは企業の理念や経営方針、業務の全体像と具体的な進め方です。 新人のうちに自社の企業理念や事業内容を深く理解すれば、会社に貢献するためにできることを主体的に考え行動できるようになります。また、業務遂行能力を高めるために、業務の全体像と各工程での具体的な進め方も教育しましょう。そして新入社員は一人ひとり違う個性や成長速度であり、個性に合わせた教育を行うことも念頭に置くべきです。新人教育に悩んだときは、上司や先輩社員にも相談し、より良い教育方法を考えることが大切です。
報連相の苦手な新人にはどう対応すればいいですか?
報連相(報告・連絡・相談)が苦手な新人は、その背景に先輩社員への遠慮や評価されることへの不安、自分への自信のなさがあります。社会人の多くは報連相の重要性を認識し、些細なことでも社員同士で教育するのが当たり前という考えが根底にあります。しかし新入社員は「他人にどう思われるか」を気にする傾向があり、それが報連相を邪魔する要因になることが問題です。報連相のできる人材へと成長してもらうには、心理的安全性の確保と仕事への自信をつけてもらうのが効果的です。新入社員の報連相には時間を取り、正しい情報の伝え方を指導するとともに、できたことをほめてモチベーションアップを狙いましょう。
新人研修の計画の立て方や実施期間の目安はありますか?
新人研修の計画を立てる際は、まず研修の目的の明確化、次にどのような知識・スキルが必要かという情報を基にして進める必要があります。企業の業種や職種によっても研修期間の目安は異なりますが、大企業なら1カ月、中小企業なら1~2カ月程度とされています。長すぎると中だるみがおきてしまう可能性もあるため、目的や必要な知識・スキルに合わせて適切な内容・期間を設定するようにしましょう。
人材育成のことならユーキャンへ
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まとめ
新人を育成するには、即効性の高い方法はありません。 新入社員の傾向を分析し、その傾向や特徴を踏まえた上で、研修カリキュラムを設計することが成功の鍵となります。 人材育成の担当者は現場の社員がどんなスキル、人材を求めているかを調査し、戦力となる人材を育成し、業績向上することを目標にしましょう。そのためにはスキルアップの研修を行い、成長につながるフィードバックを繰り返していくことが重要です。