新人教育の目的とは
新人教育の目的は、新入社員に業務上必要な知識と組織の文化、自身の果たすべき役割への認識を促し、組織に必要な人材に成長してもらうことです。組織のミッション・ビジョン・バリューに共感してもらうことで、企業の一員としての意識を高めることも目的に含みます。また、新人教育では社会人意識の醸成や基礎スキルの習得、キャリアデザインをイメージしてもらうことも大切です。組織において、新人教育は次世代のリーダーや戦力を育成し、長く発展を続けるうえでの重要課題です。組織の成長に貢献する人材を育成すれば、予測の難しい時代を乗り切るための力になるでしょう。
新人教育を成功させる5つのポイント
新人のモチベーションを高め、成長を促すための新人教育を成功させる5つのポイントを解説します。
1、働きやすい環境を作る
新人は業務内容やスキル・人間関係などが未熟で、不安を抱えながら仕事をしています。
新人教育は知識とスキルを身に付けてもらうことを目的にしていますが、新人が学びを生かしやすい環境を作ることも成功には重要なポイントです。新人が声をかけやすい雰囲気や人間関係の構築はもちろんのこと、ミスをしても許容する環境作りも大切です。新人が心理的に萎縮してしまえば、本来発揮できるはずの実力を発揮できず、学びを生かしたチャレンジにも消極的になります。部署やチーム全体で、新人が働きやすい環境を意識的に作ることが成功の鍵です。
2、仕事の全体の流れ・背景を伝える
新人教育をしていく際は、何のためにひとつひとつの仕事をしているのか、仕事全体の流れと背景を伝えることも重要です。新人は先輩社員から「ここはこうする」と言われてしまえば、意味や目的を考えず、言われた通りに実行する人が大半です。しかし新人教育は仕事全体の流れを把握し、仕事の意味を理解してこそ効果があります。仕事へのモチベーションを高めるためにも、自分の仕事が何のためにあるのか、どんな役割を担っているのか伝えることが大切です。
3、新人の目標や価値観を把握する
新人教育で正しい成長へと導くには、それぞれの新人がどんな目標を持ち、重視している価値観を把握することも重要です。新人はそれぞれ個性があり、得意分野も異なるため、個性に合わせた教育を意識する必要があるからです。全体教育はそのまま続けるとしても、OJTのような1対1では価値観や目標を意識して教育しましょう。また目標に応じて管理者がフォローアップし、達成状況を逐一把握する取り組みも必要です。
4、問題解決のためのヒントを与える
組織で活躍する人材を育てるには、言われたことだけをやっている人材を育成するのではいけません。新人教育では単なる知識とスキルを定着させるだけでなく、自分から考えて行動に移せる人材に育てることが重要です。そのためには、悩みや課題に対する答えを教えるのではなく、解決につながるヒントを与えることがポイントです。与えられたヒントから自分なりの解決策を導き出し、それを実践してもらうことに意味があります。大切なことは、導き出した答えが正しいか否かにかかわらず、その意見や対策を尊重することです。そのうえで正しい方向に導くようフォローすることで、新人の学びになるとともに、モチベーションアップにもなるでしょう。
5、定期的にフィードバックする
新人教育では、業務内容と成果をフィードバックし、良かった点・悪かった点を振り返ることが大切です。ただしフィードバックする際は明確な根拠を示し、評価項目も設定しておくと理解しやすくなるでしょう。
チェックシートを使うと効果的
フィードバックを行う際は、評価項目と評価基準が明確化されたチェックシートの利用が効果的です。チェックシートを利用すると、新人は業務上必要なポイントが明確になり、行動を決定する際の指針になります。また、フィードバックを行う上司や先輩の立場からは、どのポイントを押さえて指導すればよいか判断しやすくなるでしょう。
※関連リンク:制度の目的からフィードバックまで一連の流れが学べる人事評価講座
具体的な新人教育の方法
新人教育では1つの方法を採用するのではなく、新人に合わせて複数を組み合わせることで効果的な新人教育が可能になります。
OJT
OJTとは、実際の業務を通じて行う新人教育です。新人教育の担当者から、実用的な知識や経験をリアルタイムで学べます。新人の特性に合わせたトレーニングができ、現場で教育できるため教育費用を抑えられます。業務中心の毎日で視野が現場に偏り、企業の全体像や組織としての考え方が教えにくいことがデメリットです。
※関連リンク:OJTとは? 意味や目的、成功に導く3つのポイントを解説
Off-JT
Off-JTとは現場を一時的に離れて行う教育方法です。OJTでは教えることが難しいビジネスマナーや会社の概要、専門用語を教えられることがメリットです。特別に時間と場所を用意して行う研修になるため、集中して学べます。ロールプレイで疑似的な体験はできるものの、実用的な学びが得にくいことはデメリットです。
※関連リンク:off-jtとは? OJTとの違いやメリット、デメリットを解説
マニュアル
マニュアルは、業務に必要な事柄や手順がまとめられたものです。いつでも疑問に思ったことを調べられ、知りたいことが学べる点がメリットです。記憶だけに頼らず、社内ルールや正しい知識を得られます。ただし実際の業務では、マニュアルに記載されている以上のことが起こる可能性があり、すべてに対応しきれない点に注意が必要です。
集合研修
集合研修とは、1つの会場に従業員を集めて行う研修です。新人たち同士の交流が生まれ、一体感が醸成され、同期の絆を深められます。研修中に疑問があればすぐに質問して解決でき、理解が深まるのもメリットです。翌日から業務に活かすことも可能です。一方、大人数を集めるため、通常業務を圧迫するリスクがあります。
eラーニング
eラーニングは、パソコンやタブレットを使ってオンライン上で行う研修です。反復学習ができるため、しっかりと知識を定着させられること、時間や場所にしばられずに自分のペースで学習できることがメリットです。一方新人同士の交流機会が減少すること、モチベーションを保つことが難しいことがデメリットです。
※関連リンク:eラーニングとは? 導入するメリット・デメリットや成功させるコツを解説
新人の教育係に必要なスキル・マインド
新人を教育係となるにあたって、社員に求められるスキルとマインドについて紹介します。
コーチングスキル
コーチングスキルとは、コーチを受ける新人能力を引き出しながら、自らの考えで課題を解決できるようサポートするスキルです。コーチングスキルには傾聴力、質問力、表現力といった能力が必要とされています。スポーツのトレーナーを「コーチ」と呼ぶように、新人と二人三脚で目標へ向かっていくためのスキルです。コーチングは単に答えを教えるのではなく、新人が自分なりの解決法を見出せるように支援することが本質です。OJTでも必要なスキルであり、新人教育以外の場面でも活用できることから身に付けておきましょう。
フィードバックスキル
フィードバックスキルとは、業務の結果に対して評価を行い、次回に向けてスキルアップや改善点を伝えるスキルです。業務の結果を評価するだけでは、新人の成長にはつながりにくいです。フィードバックスキルで「なぜその結果になったのか」「どこに改善点があるのか」「どうすれば上手くいくのか」を伝えることで、新人の成長へとつながります。フィードバックで大事なことは失敗を責めることではなく、上手くいった部分を褒めることです。
新人のモチベーションを引き出し、成長への意欲を高めるためにも必要なスキルの1つです。
コミュニケーションスキル
教育係はコミュニケーションスキルを磨くことも求められます。コミュニケーションはどんな仕事にも求められるものであり、人間関係構築の基本となります。新人との信頼関係構築はもちろん、新人とチームメンバーの橋渡し役となることも教育係の役割です。良好な人間関係を構築することで、新人との報告・連絡・相談もスムーズになります。また、人間関係の悩みは離職につながる直接的な原因でもあるため、普段からコミュニケーションを取ることは重要です。教育係には、新人と上司・同僚の人間関係構築をサポートする能力も求められます。
個性を理解する
新人の教育を担当するには、人にはそれぞれ個性があることを理解する必要があります。
例えば、自分が新人の頃にできたことであっても、すべての新人が上手くできるとは限りません。また新人社員同士を比較し、できないことを批判したり、落胆したりするのもやめましょう。新人が成長できるように、できるようにサポートするのが教育係の役割です。「一人ひとり個性は違う」という点を理解し、一人の人間として向き合う意識が大切です。
失敗から学ぶ
新人の多くは社会経験がなく、働くこと自体が初めてという人も珍しくありません。最初は上手くいかなくても、失敗を責めることは避けましょう。失敗したら一緒に原因を考え、次は成功するように指導することが大切です。また新人が同じ失敗を繰り返すと、教育係として自信を喪失することもあるでしょう。しかし新人にも個性がありますから、常に同じ方法が通用するとは限りません。さまざまな方法を試しながら、教育係も新人とともに失敗から学ぶ姿勢を持つことです。
新人とともに成長する
新人の教育係だからといって緊張し続けるのではなく、新人と一緒に成長する気持ちを大切にしましょう。教育係として新人に教える立場であると同時に、自分も新人から教わり、見習うべき点を見習う意識を持つことが重要です。また、新人だからこそできる柔軟な発想力や創造性があれば、その点を受け入れると自分の成長にもつながります。主体性がある新人社員を育てるための6つのステップ
主体性のある新人社員を育てるには、計画的に育成を進めることが大切です。6つのステップに分けて、育成の流れを紹介します。
達成したい目標を設定する
主体性のある新人社員を育てるには、仕事を通してどんな目標を達成したいのか、一人前になった姿をイメージしてもらうことが大切です。未来の自分を明確にしてもらうことで、成長の方向性が決まるとともに、学びへの意欲を高められます。部署や研修担当者、上司の決めた目標ではなく、新人社員とともに目標を設定しましょう。その過程で正しい目標が設定できるように指導者が軌道修正を行い、最終的にチーム全体で目標を共有することが重要です。
教育計画を立てる
目標を設定したら、次は具体的な教育計画を立てます。教育計画を立てる際は、思い通りに進まない可能性も考慮して、ある程度余裕を持たせたカリキュラムにしましょう。会社として提供する研修内容だけでなく、各部署でのOJTと組み合わせて計画することも大切です。
また新人社員にとって初めての業務も多いことから、部署での教育には複数人を担当者としておくとよいでしょう。
仕事を任せてみる
新人社員に成長してもらうには、簡単な仕事から任せてみることも必要なステップです。
業務の全体を説明し、何のために行う業務なのか、どのような手順で行うのかも指導してから任せてみましょう。指導する社員はあえて口出しはせず、新人社員に自分で考えさせることがポイントです。危険なミスにつながる場合は中断し、後でフィードバックすれば社員の成長につながります。
業務結果を報告させる
新人社員が業務を完遂したら、その結果も報告させます。報告する際は5W1Hを意識すること、最初に結果から報告することなどを徹底させましょう。また報告するタイミングが適切か、過不足なく伝えられているかも重要なポイントです。報告の途中で指導を行ってしまうと、新人社員が伝えたい情報が伝えきれないこともあります。そのため、報告内容を一通り確認してから良い点・悪い点を指導すると効果的です。
評価・フィードバックを行う
業務結果の報告を受けたら、業務の内容や報告まで含めて良い点・悪い点を評価し、フィードバックを行いましょう。業務遂行でどの部分に課題があったのか、実際にやってみてどう感じたかも一緒に振り返ると成長の機会になります。また仲間との連携ができているか、コミュニケーションが取れているかどうかも確認します。業務を円滑に遂行するには、仲間との連携は不可欠です。実際に業務をやってみての課題、改善策をフィードバックし、業務効率を高められるようにサイクルをつくりましょう。
課題解決の方法を考える
新人社員にフィードバックを行ったら、まずは自分で課題解決の方法を考えさせることが大切です。指導する社員が最初から答えを与えてしまうと、新人社員に考える力が身につきません。どんな課題があるか提示したうえで、課題解決の方法を主体的に考えてもらいましょう。どうしても解決策が出ない場合は、ヒントを与えて考えさせることが重要です。 主体性を育てるには、あくまで自分の考えを持たせることを重視し、指導者は最低限の手助けに留めることを意識してください。新人教育のことなら法人向けユーキャン
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まとめ
今回は新人教育の目的や成功させるポイントなどを解説しました。
どの企業も新人研修に力を入れており、優秀な人材を自社で育てることの重要性は高まっています。若手人材はどの企業でも少なくなっており、長く会社に貢献してくれる新入社員の存在は貴重です。新入社員が長く働きたいと思える職場環境を作るには、しっかりとした教育体制と自己成長につながる機会を与えることが大切です。ご紹介したポイントや新人教育の方法も参考に、独自の研修内容を提供し、活躍できる新入社員の育成を進めましょう。