研修とは? 意味・目的や種類、実施する手順や成功のポイントまで解説

  • 研修とは? 意味・目的や種類、実施する手順や成功のポイントまで解説

    公開日:2022.09.26

    更新日:2023.11.07

    研修は、企業の人材育成において欠かせない手段です。この記事では、研修を実施することを検討している企業の担当者に向けて、研修の概要や目的について解説します。研修の種類、実施の手順や成功のポイントまで解説しますので、自社の研修を実施する際に役立ててください。

研修とは

研修とは、業務上必要な知識やスキルを身に付けるために、講師の指導や勉強会に参加して学習することです。研修には社内で開催する社内研修と、社外にアウトソースして開催する社外研修があります。社内研修の代表例はOJT、ロールプレイなどです。社外研修はOFF-JTやe-ラーニングなど、社外で行うセミナーや外部機関によるオンライン学習などが代表的です。社内研修は自社内で業務のノウハウ指導、客観的な視点で講義ができる能力のある担当者がいる場合に有効な方法です。
コストを抑えながら学習を促すため、研修にコストをかけられない中小企業、膨大な教育費がかかる大企業に向いています。社外研修は会社外で専門知識、技術を高められ、専門の外部講師に依頼することになります。コストはかかりますが専門性が高く、効果的な学習を促したい場合におすすめの方法です。

社内研修と社外研修の違い

研修には社内研修と社外研修の2種類があり、それぞれ特徴が違います。社内研修は主に人事課や総務課が主導し、社内の会議室や研修室を利用して行われます。研修内容は新人向けの研修やキャリア毎の研修、スキルアップなど、それぞれの段階に合わせた研修などを行うのが一般的です。社内研修は企画から実施までがすべて社内で行われることから、自社の内情・社員構成・業務内容に合わせた研修を実施できる点がメリットです。特に、新人研修では社風や仕事への価値観、組織としてのビジョンを統一しやすく、自社に必要な人材育成をするのに向いています。次に、社外研修はeラーニングやアウトソーシングを利用して、独自のサービスを提供する事業者に研修を任せる方法です。外部から専門家を招いて講演をしてもらうほか、オンライン講座、社外の研修施設に出向いて研修を受ける方法などがあります。社内研修よりもコストは高くなりますが、より専門的で質の高い内容、最新の知見に基づくカリキュラムやプログラムを受講できるため、専門性の高い人材を養成するのに役立ちます。

研修を実施する2つの目的

研修を実施する目的は、主に2つあります。ここでは、研修を実施する目的について、企業側と従業員側に分けて解説します。

企業側「人材育成」

研修を実施する目的として、企業側にとって一般的なのは人材育成です。新人研修、管理職研修、職種別研修などにより、それぞれの階層に合わせた知識と専門性の向上を目指します。
例えば新人向けにはビジネスマナー研修やOJTなどを行い、業務上必要な基礎知識やノウハウを磨くことが目的です。また次世代のリーダーを社内から育成するために、若手や中堅社員向けに管理職研修を行う企業もあります。研修を通してキャリアアップへの意識を高め、企業に貢献してくれる人材育成を行うことが企業にとっての利益になります。

従業員側「自己成長」

従業員側の目的には、自己成長が挙げられます。自己成長には、自分に不足している知識や技術の習得、キャリアアップやキャリアチェンジを意識した主体的な研修が欠かせません。
企業から与えられる研修やセミナーだけでなく、自主的に開催を企画し、成長の機会につなげることが重要です。自分の関心がある内容を習得するとともに、自分と同じニーズを持つターゲットを対象にすることで、組織全体のスキルアップにつながります。
企業にとっても自己成長の意欲が高い人材は貴重です。企業の企画する研修だけでは階層や職種によって偏りがでることもあります。研修を通して従業員が自ら学び、成長意欲を高める効果が期待できます。

研修の種類とメリット・デメリット

研修は、主に3つの種類に分けられます。ここでは、研修の種類とそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。

OJT

OJTとは「On the Job Training」の頭文字をとった言葉であり、職場での実践経験を通して振り返りを行い、業務に必要なノウハウを習得する研修方法です。基本は新入社員と指導者がマンツーマンとなり、実際の業務で起こった事例から実務に則した指導を行うものです。新入社員の理解度に合わせてステップアップ可能で、理解の状況に応じて柔軟に変えられます。自社の先輩社員が指導を担当するため、コストがほとんどかからない点が特徴です。
参考:OJTとは? 導入する目的やメリット・デメリット、成功に導く3つのポイントも解説

OJTのメリット

OJTのメリットには次の点が挙げられます。

  • ●低コストで教育できる
  • ●人間関係の構築に繋がる
  • ●社員の個性に合わせてトレーニングできる
  • ●即戦力に育成ができる

コスト面で考えるなら、会場の設営や資料作成、講師の依頼などの手間とコストがないため、非常に安価で教育できるというメリットがあります。また実務を通して教育できることから、人間関係の輪が広がりやすく、ひとりひとりの個性を把握しながらトレーニングできる点もメリットです。上手くトレーニングが進めば、実践的なスキルが磨かれ、即戦力として活躍することも期待できるでしょう。

OJTのデメリット

メリットの多いOJTですが、デメリットもあります。

  • ●トレーナーによって内容にバラつきが出やすい
  • ●トレーナーの業務負担が大きくなる
  • ●仕事の全体像を理解しにくい

一番大きなデメリットは、OJTはトレーナーとのマンツーマンになることから、トレーナーの指導方法や指導能力によって、教育の質にバラつきが出やすい点です。名プレーヤーが名監督になるとは限らないように、業務遂行能力が高くても、指導能力にも長けているとは限りません。またトレーナーは通常業務にプラスして、社員の指導に当たることになるため、業務負担が大きくなります。トレーナーへのサポート体制も考える必要があるでしょう。社員側へのデメリットとしては、仕事で必要なスキルを磨きやすい反面、スポットでの指導になることから、仕事の全体像が見えにくくなる点です。3つのデメリットをカバーしていくことが、OJTを成功させるポイントになります。

OFF-JT

OFF-JTとは「Off the Job Training」の頭文字をとった略称で、職場外で講演やセミナー、e‐ラーニングなど外部講師を招いて開催する学習方法です。いわゆる一般的な外部研修やセミナーがOFF-JTに該当し、一か所でまとめて実施する集合型研修と、オンラインを利用した通信教育・e-ラーニングに分けられます。階層や職種、目的に応じて使い分けるのが基本で、新人向けには集合型研修でのビジネスマナーやコンプライアンス研修を行うのが一般的です。管理職や専門職向けにはオンラインを利用したe-ラーニングを活用することが多く、研修内容に応じて最適な方法を選択する必要があります。
参考:off-jtとは? OJTとの違いやメリット、デメリットを解説

OFF-JTのメリット

OFF-JTのメリットは次の点です。

  • ●教育の質を均一化できる
  • ●専門家から高度な知識を学べる
  • ●階層別教育が進めやすい
  • ●社内のコミュニケーションに繋がる

OFF-JTでは、学校のように一か所に集まり、同じ教育を受けることができます。そのためOJTのようにトレーナーの質によってバラつきが出にくく、教育の質を均一化しやすいというメリットがあります。また指導するのは専門の講師であり、学べる内容は専門性の高い知識・スキルです。新入社員・若手・中堅・ベテラン・管理職など、それぞれの階層別での教育も受けやすく、それぞれの段階で必要な知識・スキルを学べる点もメリットです。何より、OFF-JTでは他部署に配属された社員とも交流ができるため、部署間でのコミュニケーションが生まれやすくなります。社員同士の情報交換も活発になり、会社の生産性向上が期待できます。

OFF-JTのデメリット

OFF-JTのデメリットは次の点です。

  • ●費用が掛かる
  • ●社員の業務が中断される
  • ●実務に必要な知識が学べないことがある

最も大きなデメリットは、開催するにあたっては場所の確保、スケジュール調整、講師の依頼費用など大きな費用がかかる点です。また開催の準備にかかる諸々の手間もあるため、人事・総務のOFF-JT担当者には大きな負担になります。OFF-JTの開催にあたっては、社員が業務時間を活用して受講するため、その間の業務が中断せざるを得ません。管理職や中堅・ベテランが業務を一時的に抜けることから、部署内の業務遂行に支障をきたす可能性は否定できません。そして、OFF-JTでは専門的な内容を学べる反面、実務に不要な知識や実践に結びつかない教育を受けることもあります。そうしたデメリットを理解したうえで、自社に本当に合ったOFF-JTを選択すべきです。

eラーニング

eラーニングは、インターネットを利用してパソコンやスマホ、タブレットで動画や教材を視聴する学習方法です。通常の研修や書籍学習とは違い、オンライン環境さえあればどこでも、誰でも受講できる点が特徴です。そのため多人数の同時受講や在宅ワーカーも学習でき、従業員の学習効率を高められます。eラーニングはサービス提供事業者によってカリキュラム、プログラム内容が異なるため、それぞれの専門性を生かした学習が可能です。 少人数から多人数まで幅広く対応可能なことから、企業規模や業種を問わず利用しやすいサービスです。
参考:eラーニングとは? 導入するメリット・デメリットや成功させるコツを解説

研修を実施する際の手順

研修を実施する際の手順について、順を追って説明します。

  • 1.研修の目的と方向性を決定する
  • 2.研修に必要なものを書き出す
  • 3.担当者や運営スタッフを選定する
  • 4.社内研修・社外研修の決定
  • 5.研修内容の決定
  • 6.受講者の募集と確認
  • 7.研修前のチェック
  • 8.研修の実施
  • 9.研修の振り返り

研修の目的と方向性を決定する

研修を実施するには、まず何のために研修を行うのか目的を明確にすることと、どのような研修を行うのかという方向性を決定しましょう。例えば研修の対象は誰か、どういったスキルを身に付けてもらいたいのか、OJT・OFF-JT・eラーニングのどれが最適か、期間はどのくらいかというものです。目的と方向性が不明確なまま進めると、ただ研修を実施しただけで終わってしまいます。研修によって狙う効果、どのような人に参加してもらうのかなど、後で混乱を招かないように基本的な内容をすべて決定してください。

研修に必要なものを書き出す

目的と方向性が決定したら、次は研修で何が必要になるかひとつひとつ書き出しましょう。OJTを行う場合は、どの部署のどの社員をトレーナーとするのか、社員との相性も考えながら考えなければなりません。OFF-JTの場合は、カリキュラムの設定や講師、会場の準備、資料、スクリーン、予想されるコストなどを計算してください。eラーニングの場合も、社員ひとり当たりどのくらいのコストが発生するか、どんなプログラム、カリキュラムを選ぶべきかなどを総合的に判断すべきです。研修方法によって得られる効果、メリット・デメリットが全く違うため、自社の研修に最適な方法を選ばなけれなりません。

担当者や運営スタッフを選定する

次に、研修を実施するにあたって、担当者や運営スタッフも選定してください。基本的に、研修の進行は担当者または運営スタッフが実際に動き、スケジュールに従って進めていくことになります。また担当者はひとりにすべてを任せるのではなく、講師との交渉を行う担当者、資料を用意する担当者、会場の手配・準備を行う担当者など、それぞれに分担した方が負担は少なく済みます。研修の担当者になったことで業務に支障が出れば本末転倒ですから、ひとりに大きな負担が掛からないように配慮が必要です。担当者自身も迷いながら進めることが予想されるため、いざという時の報告・連絡・相談体勢も整備しておきましょう。

社内研修・社外研修の比較

社内研修なら自社独自の教育ができる反面、効率的な研修ができるかどうかは講師の指導力によります。社外研修は高度な専門性を学べる一方で、社内研修よりも大幅にコストが掛かります。研修を計画するには、社内研修と社外研修のメリット・デメリットを比較し、選ぶべきプログラムをしっかりと検討してください。
大企業であれば資金力を活かして豊富なカリキュラムを用意できますが、中小企業ではそうもいきません。研修方法を決定する際は、最初に行った目的・方向性・必要なものを参考にしつつ、自社の教育に最適な方法を考えましょう。

研修内容の決定

研修内容は、目的・方向性・必要なものなどを参考に、どのような研修を行うのか具体的に決定する段階です。実際に研修を主導する担当者がチームを組み、社内の各部門の責任者から必要な研修内容をヒアリングし、意見を集約してカリキュラムを決定します。新入社員向けか、管理職向けか、全社員対象かなどの違いで選択すべきものが変わるため、総合的に検討して決定してください。

受講者の募集と確認

研修内容が決定したら、次は受講者の募集と確認です。 募集方法はさまざまなものがあり、各部署から対象者を選抜する方法、社員全員が受講する方法、希望者を募って受講してもらう方法などがあります。 募集を行う際は期日も指定し、期日までに何人から返信があったか確認してください。 そして、参加人数に応じて選択する研修方法も変更しましょう。 例えば、各部署から1名ずつならOJT、希望者や階層別に行うならOFF-JT、全社員に受講してもらうならeラーニングの方法がおすすめです。 参加人数や実施方法など、すべてが決定したら改めて社内に通知を行います。 ただし募集から決定通知までに期間を置くと、社員のモチベーション低下に繋がります。 募集期日から正式発表まではなるべく早めに進めてください。

研修前のチェック

研修が決定したら、研修実施前に全てのチェックを行いましょう。 基本的なことですが、次のような内容を確認します。

  • ●研修内容に間違いはないか
  • ●講師への依頼はできているか
  • ●開催日時・場所
  • ●参加人数
  • ●参加者への通知は行っているか
  • ●期日に遅れて参加希望を出した社員はいないか
見落としがないかしっかりチェックし、研修日に備えましょう。


研修の実施

次は研修の実施にあたり、最終的なチェックと機材トラブルの確認、テキストの配布などです。 社内で行う場合は受付を設置し、参加者リストへの記名やチェック、テキストの配布、席の確認まで行いましょう。 また、当日は業務で急遽参加できなくなるケースもあるため、参加リストに名前がない人は連絡して状況確認も必要です。 研修は業務時間外に行うことが多いため、タイムキープも重要です。 eラーニングは動画を流すだけでOKですが、定期的に担当者が様子を確認し、受講状況の確認を行いましょう。研修後にはアンケート用紙を渡し、改善点や意見ももらってください。

研修の振り返り

研修後は、担当者同士で研修の状況や運営の改善点、アンケートの意見などを振り返ってください。 この際、議事録を残しておくと、次の開催でも改善点が明らかにできるため、スムーズな運営に役立ちます。 そして、すべての振り返りが完了したら、人事・総務・管理職に結果を報告し、参加者にも情報をフィードバックしましょう。 特に定期的に開催が予定されている研修であれば、振り返りで改善点を模索していくステップが非常に重要です。

研修を成功させるポイント

企業での研修を成功させるポイントをご紹介します。

研修で発生するコストを計算する

研修を成功させるには、研修に必要な費用を計算し、過大にならないよう注意すべきです。
社内・社外を問わず、コストをかければ研修が成功するわけではありません。どれだけコストをかけても、対象者となる従業員が学びを実践し、専門性を高められなければ成功といえないからです。例えば社外研修は依頼する研修機関によって、カリキュラム、実績、費用もさまざまです。有名なサービスだとしても、自社の研修目的と合致しているとは限りません。その場合は費用に対して大きな効果が期待できず、目標を達成できない可能性も考えられます。研修の予算を考慮し、複数のサービスと比較して自社のニーズに合うものを選びましょう。

スケジューリングは慎重に

研修のスケジューリングも慎重に行わなければ、研修の成果が減少してしまいます。例えば新人研修は1~3カ月程度が基本ですが、6カ月や1年間をかける企業もあります。しかし時間をかけすぎると対象者のモチベーションが低下し、スキルの習得状況にも差が生じる可能性が高くなります。実務のスキルを習得するなら短期間、マネジメントやリーダーシップに関するスキルは長期的な育成が向いています。またどのくらいの頻度で実施するか、合宿形式で集中的に研修を行うのか、インプットとアウトプットを何回行うかなども検討が必要です。詰め込みすぎれば受講者の負担が大きくなり、離職率が高まるリスクもあります。無理のない範囲で学べるスケジュールにすることが重要です。

社内研修と社外研修を使い分ける

研修を成功させるには、社内研修と社外研修のメリットを理解した使い分けもポイントです。社内研修はコストが比較的安価で、スケジューリングもしやすい点がメリットです。
一方、社外研修はコストこそ高くなるものの、専門性の高い内容を論理的に学習でき、高い学習効果が期待できます。それぞれのメリットを理解したうえで、足りない部分を補うように活用するのが効果的です。そのため社内研修と社外研修はそれぞれのスケジュールを調整し、どちらもバランスよく受講してもらうよう配慮しましょう。

現場・個人まかせにしない

研修を成功させるには、研修担当者が適宜研修の成果や受講者の理解度を確認することも重要です。特にOJT研修では、指導を受ける側と指導者との関係性、指導者の指導力が研修の成果に大きく影響します。そのため研修を現場や個人に任せきりにしてしまうと、研修の進捗が部署によって変わってしまう懸念があります。研修の成果を最大限まで発揮するには、研修の形式や社内・社外を問わず、随時研修の効果を確認することが重要です。

研修全体の振り返りを実施する

研修全体を通して学んだことを身に付けてもらうには、振り返りを実施することが非常に重要です。エビングハウスの忘却曲線という研究によると、人間は学習後1時間で覚えた内容の半分以上を忘れ、1日で4分の3を忘れてしまうとされています。つまり、時間の経過とともに自然に学習内容を忘れていくため、定着させるには定期的な振り返りが重要ということです。研修実施後にそのまま放置して終わっている企業は多く、意外に意識されていないポイントです。効果的な研修にするためには、学んだ内容を振り返る機会を必ず設けましょう。

まとめ

研修は、企業の人材育成、従業員の自己成長において欠かせない手段です。研修は、実施したら終わりではなく、事後の状況を把握することが大切です。

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