eラーニングとは
eラーニングとは、インターネットを利用したオンライン学習のことです。パソコンやタブレット、スマートフォンなどのデバイスを使って学習を行います。オンラインで講義を受講できるため、多数の社員の同時教育や研修などへの活用が可能です。学習の場所や時間を選ばないことで、社員に対する教育の効率を高められます。
eラーニングの潮流
eラーニングが一般的に普及してから長い時が経ち、時間の経過の中でさまざまなeラーニングの手法が登場しています。eラーニングに対しては、一般的にオンデマンド形式の講義による長時間のインプット学習をイメージする人が多いでしょう。しかし近年のeラーニングは長時間のインプット学習だけでなく、ライブ講義による双方向での交流ができる学習スタイル、数分から学べるマイクロラーニング、ゲーム要素を取り入れたゲーミフィケーションなどさまざまなものがあります。こうした形式はeラーニングそのものが時代のトレンドに合わせて変化してきた結果です。eラーニングのトレンドで注目されているものとして、次のものがあります。
・リスキリング
・ブレンディッドラーニング
・アクティブラーニング
・反転学習
リスキリングとは、企業がDXに対応するために既存人材の再教育を行い、IT技術の習得を目指すものです。リスキリングは既に会社で働いている人材を対象として行うことから、社員が研修のために集合するのが難しいという難点があります。しかしeラーニングなら社員が自由なタイミングで学習時間を設けられ、日々のルーティンに組み込むことも可能です。また社員の学習状況はLMS(学習管理システム)で把握できるため、企業としても導入するメリットが大きく、リスキリングを進めたい企業から注目されています。ブレンディッドラーニングは、eラーニングのほかにも対面研修やOJTなどのさまざまな学習方法を組み合わせた方法です。対面研修に参加できない人はライブ講義やeラーニングで学習するなど、社員が自分に合わせた学習スタイルを選べる点が特徴です。時間や場所、生活スタイルにも囚われずに学習できることから、ダイバーシティの推進にも貢献する方法といえます。アクティブラーニングは従来のように講師による知識の提供を受ける形ではなく、参加者が能動的に参加する学習方法です。グループワークやディスカッション、ケースメソッドなどの形式が該当します。反転学習は演習や実演などの実践的な学習を行ってから、知識のインプットを行う学習方法です。業務で実践してから、eラーニングで学習するという方法が効率的とされています。これらの学習方法が注目される背景には、時代の変化とともに同じ内容を学習する一斉学習が個別化学習へ、インプット中心の学習が体験型学習へと変わったことが影響していると考えられます。市場競争力を高めるには、知識が求められるだけでなく、即戦力として幅広い能力を身につけなければなりません。社会情勢の変化に伴って、eラーニングの世界にも変化が起こり、いつでもどこでも学習できるよう種類・形式を増やし、自主的に学び続ける人材を育成する方向性にトレンドが変わっています。
eラーニングの歴史
eラーニングは近年、どこの企業でも取り入れられていますが、歴史を遡るとかなり以前から原型が存在していました。インターネットの普及やスマホ・タブレットなどのデバイスの多角化により、利用者が急速に増えています。eラーニングの歴史はどのようなものか、詳しく解説していきます。
eラーニングのはじまり
eラーニングのはじまりとされるコンピュータを使用した学習方法は、1950年代にアメリカでCAIという考え方が出てきたことから始まりました。CAIは「コンピュータを利用した学習支援」という考え方で、従来の集合型研修の問題点を解決し、効率化を図るものでした。従来はインストラクターと学習者が一か所に集まり、長時間話を聴いて、その内容を逐一上司や会社に報告しなければならないという非効率な方法でした。ビデオ教材という方法も後に登場しますが、根本的な課題解決にはならないことが課題とされていました。そのため学習する場所を選ぶ必要がなく、インストラクターへの依頼費用を抑え、管理者側が学習内容を管理しやすいというメリットから、CAIの考え方が注目を浴び始めます。しかし当時はインターネットはおろか、コンピュータがようやく普及を始めた段階で、現代のようなシステム構築は困難という問題点がありました。そのため、この時点ではCAIに基づいた教育支援は、スムーズに進まなかったのです。
eラーニングの発展
eラーニングが発展するきっかけになったのが、1990年代に入ってパソコンが普及したことです。パソコンが急速に発達・普及する中で、CAIがCBT(コンピュータ・ベースド・トレーニング)という考え方に変化しました。加えて、大容量のCD-ROMに動画や音声を教材として記憶させ、実際に教材として用いられるようになりました。この頃からeラーニングという言葉が登場し、一般家庭でもパソコンの普及率が高まっていきます。特に1995年頃は家庭用パソコンOSの先駆けともいえる「Window95」が発売され、それまで一部の人しか扱えなかったコンピュータが、家庭で誰でも扱えるように環境が大きく変わりました。こうした流れに乗って、CBTによる教育はさらに発展していきます。しかしこの当時でも今ほど簡単に教材を用意できる環境はできておらず、教材作成のコスト、誤りの修正が困難、管理者側での一元管理ができないという課題は残っていました。そのため、CBTが普及するまでにはもう少しの時間を要します。
インターネットによる学習システムの確立
日本におけるeラーニングの環境に大きな変化が生じたのは、2000年に政府が打ち出した「e-Japan構想」がきっかけです。この構想は日本型IT社会の実現を目指すという目標のもと、5年以内に超高速ネットワークインフラを整備することが重点政策に掲げられます。さらに、2001年には「日本イーラーニングコンソシム」が設立され、eラーニングを普及させる流れが加速しました。2000年代はインターネット環境の大幅な変化があった時代でもあり、企業内で独自のネットワークシステムを整備する企業も多く現れます。そして、eラーニングの手法も従来のCD-ROMを利用したCBTから、WBT(ウェブ・ベースド・トレーニング)に変化していきます。CBTでは、個人のパソコンにCD-ROMなどを教材として配布してきましたが、WBTではインターネットを通じて教材を配信する方向に大きくシフトしました。ネットワークを利用する企業も増えたことで、WBTでのeラーニングシステムは急速に普及し始めます。これは企業だけに留まらず、学校などの教育機関でも利用されるようになり、eラーニングは日本全体で利用されるケースが多くなりました。さらに、技術の進歩に伴ってLMS(ラーニング・マネジメント・システム)というものも登場し、オンライン上で教材の配布も可能になりました。LMSの登場は管理者にとっても大きなメリットでした。
- ●受講者の進捗状況を把握できる
- ●教材データを保管する必要がない
- ●インストラクターと双方向のやりとりが可能
- ●テストやレポートの実施・採点までオンラインで可能
スマートデバイスによる普及
eラーニングの普及について語るうえで、もう1つ欠かせない大きな変化があります。それは2000年代後半から登場し、今や1人1台持つのが当たり前になったスマートフォンやタブレット端末の普及です。スマートデバイスは持ち運べるパソコンとして、いつでもどこでも何度でもすき間時間に学習することを可能にしました。通勤中の電車の中はもちろん、仕事の休憩時間でも研修が受けられるようになり、それまで以上に効率的なeラーニングを実現しました。スマートデバイスは持ち運びしやすく、一か所に集まらなければ研修を行えなかった製造業・接客業・サービス業でも、気軽に研修を受けられるメリットがあります。また近年のeラーニングでは利用者同士のコミュニティ機能を搭載しており、同じ学習をした者が集まって、意見交換や支援を行えるように進化しています。会社で利用した場合は、部署を問わずコミュニケーションを促進でき、部署間の交流や連携による生産性の向上に繋がっているケースも少なくありません
eラーニングの今後の展望
eラーニングは今や企業でも学校でも当たり前に取り入れられ、一般的な研修方法として受け入れられています。特にコロナ禍以降はテレワークやオンラインが社会全体に普及し、心理的・技術的なハードルも大幅に下がっています。その中で今後のeラーニングに必要とされるものは、対面で行っていた研修にどれだけ近づけるかという課題と、AIを活用した変化です。eラーニングは便利なシステムですが、対面での研修のように五感で感じ取ることはできず、あくまで動画や音声、文字による学習に限られます。リアルタイムでインストラクターと繋がり、人間の五感をどうやってeラーニングで生かしていくのか、この点が今後の成長の鍵となってくるでしょう。またAIの進歩も目覚ましく、2023年にはAIの知能が人間の知能の総和を超えるともいわれています。AIを活用したeラーニングも今後ますます普及していくでしょう。eラーニングは時代と共に姿を変え、より効率的な方法へと進化し続けています。時代の変化に合わせたシステムを採用し、企業にとって最適なサービスを選び続けることを意識していきましょう。
eラーニングの最新トレンド
近年のeラーニングのトレンドについて、3つのトレンドを紹介します。
実践型eラーニング
実践型eラーニングとは、学習者が実際の業務や問題解決に必要なスキルを、シミュレーションや課題解決型の学習形式を通して学ぶeラーニングです。一般的なeラーニングが知識のインプットに重点を置いているのに対して、実践型は学んだ知識を瞬時にアウトプットすることを目指します。具体的には、シナリオベースのトレーニング、ケーススタディ、シミュレーション、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を活用した模擬環境などがあります。実践型では、受講者が学習内容を学ぶだけでなく、実際にタスクをこなして成果物を作成したり、問題解決のプロセスをシミュレートしたりすることで、学習内容が業務に反映しやすいというメリットがあります。さらに興味・関心を高める要素を取り入れることで、学習の主体性やモチベーションが向上することも期待できます。他にも、実践型eラーニングがトレンドとして注目される理由は次のとおりです。
注目されている理由 | 内容 |
実務向けの即戦力を育成できる | 知識のインプットだけでなく、実務に応用する力を養うことを重視しています。これにより、学習者は研修後すぐに業務に使えるスキルを身につけることが可能です。特にITスキルや営業スキル、問題解決力が必要な場合、実際の業務に似た環境で演習を行うことで、効果的にスキルを習得できます。 |
学習効果が高い | 人材育成の分野で広く知られる「70:20:10」 のロミンガー法則において、70%が「実務を通じた学び」、20%が「他者との交流」、10%が「形式的な教育」によるとされています。実践型eラーニング実践型で疑似的な経験を積むことで、学習効果を最大化する手法として注目されています。 |
DX時代に対応したスキルの習得 | デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代では、デジタルツールやAIを活用した業務が増えています。実践型eラーニングでは、これらのツールの操作方法やデータ分析スキル、AIの活用方法などを実務ベースでわかりやすいプログラムとして提供されており、DXに対応した人材育成に効果的とされています。 |
学習の効率性と柔軟性の向上 | 実践型eラーニングでは、学習者が個々の進捗に応じて学習を進められるため、効率的に学べます。場所や時間を選ばないオンライン形式により、働きながら学ぶ人や多忙なビジネスパーソンも、AIを活用した個別最適化により、受講者ごとの学習ニーズに応じたコンテンツを提供できます。 |
学習の評価がしやすい | 従来のeラーニングでは、学習成果を評価する主な手段がテストやアンケートに限られてました。しかし実践型eラーニングでは学習管理システムにより、学習効果の進行や研修内容の改善が容易になります。 |
実践型eラーニングは、インプットによる知識の習得ではなく、アウトプットによる実務に直結したスキルの習得と応用を目指します。学習における高い柔軟性、DXへの適応能力から大きな注目を集めています。これからも企業研修や個人のスキルアップに関して、実践型eラーニングは重要な役割を担っていくでしょう。
アクティブラーニング
アクティブラーニング(Active Learning)とは、学習者が主体的に学びに取り組む一つの教育手法です。代表的なものとしてケーススタディ(ケースメソッド)、シミュレーション、グループワーク・ディスカッション、問題解決、プロジェクト型学習などで学習者が能動的に学ぶことを指します。アクティブラーニングは、社員が自ら情報を収集・分析し、結論を導き出すプロセスを重視しており、学習者の深い理解と実践力を育てることが最大の目的です。また、アクティブラーニングの特徴には次の点があります。
・主体的な学びを促進できる
・対話型の学習ができる
・実践的な学びを得やすい
上記に加え、アクティブラーニングがトレンドとなる理由には以下の点もあります。
注目されている理由 | 内容 |
理解を深められ、知識の定着率が高い | アクティブラーニングは、教育心理学で知られる「ラーニングピラミッド」に基づいて効果が実証されています。この理論によれば、受動的学習(講義や読書)は知識の定着率が低い一方、教え合いや議論、自らの体験といったアクティブラーニングは高い定着率を示しており、実践的な活動が学習の効果を最大化することがわかっています。 |
時代に合ったスキルが習得できる | 現代のビジネス環境や社会は、急速に変化し続けています。この中で求められるのは、単なる知識の記憶ではなく、問題解決能力や批判的思考(クリティカルシンキング)、コミュニケーション能力、他職種協働といったスキルです。アクティブラーニングではこうしたスキルを効果的に養うことができ、教育現場や企業研修でも積極的に採用されています。 |
デジタル時代に対応している | デジタル技術の進化により、さまざまな情報に誰でもアクセスできるようになりました。アクティブラーニングは、情報化が進んだ現代における課題解決方法を学び、情報活用力やデータ分析力を高める場を提供できるとされています。 |
主体性を尊重できる | 従来のeラーニングでは、講師が主導する講義形式が一般的でしたが、この方法は学習者が受け身になる傾向が強いです。 一方、アクティブラーニングは学習者が自ら考えて行動し、経験から学ぶプロセスを重視しています。そのため、特にZ世代のような個人主義的傾向が強い世代に適しており、自分の価値観や興味に応じた学びが実現できます。 |
多様性を尊重し、相互理解を促進できる | アクティブラーニングでは、グループディスカッションや共同プロジェクトなど、多様な人々と意見を共有することで、相互対話することが可能です。この経験が、グローバル化や多様性が求められる現代社会において重要な価値観を育てることにつながります。 |
アクティブラーニングは、学習者の主体性や実践力を重視した教育手法であり、企業の成長を支えるスキルの育成に最適です。現代の教育・研修において、知識伝達だけで終わらない深い学びを提供することで、個人の成長と組織の発展に重要なアプローチとして注目されています。
ラーニングアナリティクス
ラーニングアナリティクス(Learning Analytics)とは、教育や学習に関連するデータを収集・分析し、その結果を活用して学習プロセスを最適化し、学習者の成果を向上させるための手法や技術です。ラーニングアナリティクスは、データサイエンスや人工知能(AI)の発展とともに注目されており、教育現場や企業研修の分野で積極的に取り入れられています。ラーニングアナリティクスは、特に次のような情報を分析対象とします。 ・学習データ ・行動データ ・受講者のプロフィール 収集したデータを基に、受講者の学習傾向を把握し、個々の受講者に適した指導方法やカリキュラムを提案することが最大の目的です。
注目されている理由 | 内容 |
個別化・最適化された学習の実現 | 従来の教育や研修では、画一的な内容や進行スピードで講義が行われることが多く、学習者個人の理解度や学習スタイルが十分に反映されていませんでした。ラーニングアナリティクスを活用することで学習の効率が向上し、成果を最大化することができます。 |
課題発見と対策につながる | 受講者がつまづいている箇所や理解が不足している領域を、データとして把握できる点が大きな利点です。通常の学習では足りない部分について、追加のサポートや資料を提供するなど、効率的な課題解決ができるようになります。 |
エンゲージメントが向上する | ラーニングアナリティクスを利用して、受講者の学習状況や理解度を把握することで、社員の個別性に配慮した支援が提供できます。十分な支援体制の下で学ぶことができれば、受講者のエンゲージメントや継続率の向上が期待できます。 |
教育プログラムが改善する | 学習・行動データを分析することで、教育プログラムの効果を評価し、課題と改善点を特定できます。特定のカリキュラムや教材による学習効率や定着率が低い場合は、原因を突き止めやすくなり、教育の質の向上につながります。 |
ビッグデータとして活用できる | AIや技術ビッグデータ解析の進化もラーニングアナリティクスが注目される理由の一つです。大量の学習データを効率的に処理し、精度の高い分析結果を提供できるようになれば、個別化・最適化された学習内容支援が可能になります。従来の学習管理システム(LMS)よりも高度な学習支援が可能となることから、ラーニングアナリティクスが重要とされています。 |
人材育成に活用できる | 企業研修では、従業員のスキルギャップやキャリアパスに基づいて、個別の学習計画を作成することが求められます。ラーニングアナリティクスを行うことで、個別の受講者の学習進捗率やスキル習得状況を把握し、自社の求める人材へと育成するための最適な研修内容を提供できます。 |
教育格差を是正できる | ラーニングアナリティクスは、教育格差を減らす手段としても期待されています。個々のデータ分析によって学習が不足している領域を特定し、適切な支援を提供することで、すべての受講者が平等に教育を受けられる環境を構築できます。 |
ラーニングアナリティクスは、データを活用して科学的に分析・改善することで、新しい学習プロセスやアプローチを発見できます。その結果、学習内容の個別化・最適化と取り組みへの積極性の向上、教育プログラムの改善など、研修の現場に大きなメリットをもたらします。ビッグデータ解析技術の進化とともに、ラーニングアナリティクスは今後も注目される分野となっていくでしょう。
eラーニングを導入するメリットとデメリット
eラーニング導入にはさまざまなメリットがある反面、デメリットもあります。学習者・管理者にとってどのようなメリット・デメリットがあるのか詳しく解説します。
学習者視点から見たメリット・デメリット
学習者側にとってのメリット・デメリットについて、一覧でみていきましょう
【メリット】
・いつでも好きな場所で学習できる
・理解度に応じて学習内容が選べる
・繰り返し学習できる
・慣れたら倍速で視聴できる
・学習してすぐにテストできる
・実技の学習がしにくい
【デメリット】
・オンライン環境が必要
・社員同士のコミュニケーションができない
・講師へのリアルタイムでの質問ができない
まず、メリットから解説していきます。学習者にとってeラーニングの最大のメリットは、いつでも好きな場所で学習できることです。インターネットにつながる環境さえあれば、スマホでも学習できることが大きな魅力です。動画をダウンロードできるタイプなら、自宅でダウンロードし、ネットワーク環境のない場所でも視聴できます。学習者の理解度に応じて内容を選択でき、何度でも視聴できる点もメリットです。理解できるまで何度でも学習できますから、分からない部分をそのままにしておくことがなくなります。視聴速度も等速~2倍速程度まで選べるものがあり、慣れてくれば視聴時間を短縮できます。そして教材によっては学んだ内容をすぐにテストでき、インプットとアウトプットを同時にできる点も強みです。
一方、eラーニングならではのデメリットもあります。最大のデメリットは、実技の学習には不向きという点です。eラーニングは座学で知識を学んだり、手順を見て覚えたりするのには向いていますが、実技は自分で試行錯誤するしかありません。講師がその場にいないため、改善点を自分で見つけることになります。基本的にオンライン環境が必要であり、通信環境によっては視聴できず、通信容量も消費するデメリットもあります。社内のインターネットや自宅のWi-Fi、外出先のフリーWi-Fiなどの環境が必須です。集合研修とは違い、社員同士や講師とのコミュニケーションが取れない点もデメリットといえます。特に疑問をその場で質問できない点は、学習のモチベーションを下げる原因になるおそれがあります。
管理者視点から見たメリット・デメリット
管理者側にとってのメリット・デメリットについて、一覧でみていきましょう。
【メリット】
・研修コストが削減しやすい
・全社員に学びを提供できる
・社員の学習状況を管理できる
・最新の知識が得られる
・教材のアップデートがしやすい
・学習者に合わせたカリキュラムを組みやすい
【デメリット】
・IT知識・リテラシーが必須
・習熟度にバラつきが出やすい
・学習に強制力がない
管理者側のメリットについて解説します。eラーニングは管理者にとって、研修コストを削減しつつ質の高いカリキュラムを提供できる方法です。通常、集合研修を行うには講師の依頼料や交通費、研修会場の費用、その他諸経費が必要になります。しかしeラーニングなら社員毎にアカウントが割り振られ、その数に応じて費用が発生するうえ、集合研修に比べて大幅に安く済みます。全社員を対象に、平等に学びの機会を与えられる点もメリットです。意欲のある社員ほど高い効果が期待でき、スキルアップ・キャリアアップにつながります。管理者が学習状況を管理しやすく、社員一人ひとりへのフォローアップもしやすいです。必要に応じて個別のカリキュラムを構築すれば、より高いレベルで学習も可能です。一方で、少ないながらデメリットもあります。まず、管理者側に十分なIT知識とITリテラシーが求められることです。システム画面の操作はもちろん、学習者からシステムについての質問が来た場合に備え、システムへの理解が必要になるからです。また集合研修に比べると、eラーニングには学習への強制力がない点もデメリットとなります。学習意欲の低い人が現れた場合に、どうやって利用を促すかが課題になります。学習意欲の高い人と低い人が現れれば、結果的に習熟度にもバラつきが生じるでしょう。社員の自主性に任せつつ、一定の強制力を持たせる対策が必要です。
eラーニングの実際の使い方
eラーニングの実際の使い方は、学習者と管理者それぞれの視点から考えるのがわかりやすいです。それぞれの使い方について、視点毎に解説します。
学習者
まず学習者にとっての使い方としては、学びの観点から見やすさ・使いやすさ・わかりやすさの3点が重要です。学習する度に煩雑な手間が掛かるようでは、準備段階で学習者が意欲を失ってしまいます。若い世代だけでなく、ベテランにもわかりやすいインターフェースを用意し、学習しやすい環境を提供しましょう。また教材は受講して終わりではなく、受講後の簡単なレポートやアンケートを用意し、疑問を管理職と講師に質問できる環境設定も重要です。さらに学習者のモチベーションを維持するには、学習者同士でコミュニケーションを取れるツールがあると便利です。eラーニング自体は個別に受講するものですが、社内で一緒に学んでいるという連帯感があれば、学習への意欲に繋がります。以上を踏まえたうえで、学習者の視点でeラーニングを効果的に使うなら、次のようなポイントが必要です。
- 1.インプット学習の充実
- 2.インプット後のアウトプット学習の環境
- 3.学習者同士のコミュニケーション・コミュニティ
- 4.スケジュールの設定
- 5.学習後の質問権
管理者
管理者の視点での使いやすいeラーニングは、学習者の学習管理を行いやすく、直感的で多機能さを実現したシステムのものです。管理者は立場上、日常的に部下の業務管理を行っているため、管理に工数が必要なeラーニングシステムは好まれません。eラーニングを効率的に運用するために、最低限「学習管理システム」を搭載したサービスを選ぶべきです。その点を踏まえて、次のポイントが充実しているサービスを選びましょう。
- 1.受講者登録機能
- 2.履修登録機能
- 3.教材作成機能
- 4.コース作成機能
- 5.受講管理機能
- 6.メンタリング機能
eラーニングの導入に必要なもの
eラーニングの導入にあたって、必要なものをみていきましょう。
学習管理システム(LMS:learning management system)
eラーニングはカテゴリーや単元、チーム毎に学習領域が分かれており、教材に応じて管理プログラムを用意するよりも、まとめて管理できるシステムの方が便利です。そこで学習管理システムを利用すれば、学習者の進捗状況把握、教材の管理・作成・保存、部署毎の学習者登録などが可能になります。また、その他にも次のようなメリットがあります。
- ●教材毎に管理プログラムを作成する手間が不要で、工数とコストを大幅に削減できる
- ●LMSを利用すればeラーニングの実施・教材作成などが簡単に行える
- ●eラーニングに関わる全ての情報を企業が一元的に管理できる
学習教材
eラーニングを運用するためには、学習管理システムと合わせて、学習教材も必須です。どれほど便利な学習管理システムを導入しても、学習教材の質が悪ければeラーニングの効果は期待できません。学習教材はさまざまな種類があるため、企業の業種・働き方・職場環境に合わせて適切なものを選択しましょう。
- ●画像やテキスト(スライド型教材)
- ●動画(ビデオ型教材)
- ●テスト形式(演習型教材)
学習支援者(メンター)
eラーニングを利用した学習の中でも、近年必要とされているのが学習支援者です。メンターや学習アドバイザー、チューターとも呼ばれ、学習者の学びをサポートし、モチベーションを高める役割があります。メンターは、指導者的な立ち位置で学習者をサポートする存在です。学習アドバイザーは学習者へのトータルケア、チューターは主に学習者の疑問・質問に答えるのが役割です。eラーニングは個人の主体性に任せる側面があることから、モチベーションの維持が最大の課題であり、効率的な運用を進めるなら注意しなければなりません。その点、学習支援者の存在は学習者の意欲低下を防ぎ、理解の促進に繋がるため、eラーニングの導入成功においては重要な鍵になります。
受講者用の端末(パソコン・タブレット・スマートフォンなど)
eラーニングを導入する際は、受講者用の端末を用意することも重要です。現行のeラーニングは、ほとんどがパソコン・スマートフォン・タブレットで利用できるようになっています。そのため学習者が個人の端末を利用し、eラーニングを受けられるようにするほか、企業としても端末の貸し出しを考えましょう。特にITリテラシーの低いベテラン社員の場合、スマートフォンを利用した学習がうまくいかないことも考えられます。iPhoneやandroidというOSの違いによってもアプリの扱いは異なるため、受講者の利用端末に配慮する必要性は高いです。企業の端末を貸し出し、手順通りの操作でeラーニングが利用できるようにすれば、学習の進捗や普及率が高まる効果が期待できます。
eラーニング導入事例
以下は、eラーニングを導入した2つの企業の事例です。新入社員と管理職向けに導入した詳細をご紹介します。
株式会社バイク王&カンパニー
株式会社バイク王&カンパニーは、「成績や営業効率を上げたい」「新しいことにチャレンジしたい」という社員の声からeラーニングを採用しました。新入社員向けの教材として活用することで、教材を学んだ社員は自身の業務や数値などに表れています。
社員が入社した後にeラーニングを活用して、早い段階で昇進につなげています。同社は営業職の社員が多いため、学習の進捗を管理できる点が自社の方針に合っていたことで成功しました。
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伊勢半グループ
伊勢半グループは新任管理職の研修用にeラーニングを導入したことで、社員の業務に対する不安を解消させました。eラーニングを採用したことで管理者を登用する際の公平な試験が実施できるようになり、試験にかかる作問や試験監督、採点などの負担の軽減にもつなげています。
管理者としての全体認識や知識部分を学習でき、職務につく不安の低減につなげています。社員が「何をすべきか」の判断が明確になり、意思をもって自主的に行動できるようになりました。
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まとめ
eラーニングは研修や教育などの学習効率を高め、コストを削減するために有効な手段です。ただし、教材の質を高めたりモチベーションを維持したりする工夫は必要です。質の高い教育を提供するために、社内の体制の整備やeラーニングの提供会社が持つ知見やノウハウの活用を検討するといいでしょう。
法人向け人材育成のユーキャンは丁寧なヒアリングで課題を抽出し、その法人様にフィットする提案をします。60年以上の歴史があり、累計受講生数2,100万人が受講しました。eラーニングを導入する際は、ぜひユーキャンの講座をご活用ください。