目標設定とは何か?
ビジネスにおける目標設定とは、組織や部署単位でのゴールや目的を明確化し、社内でも共有するとともに、目標達成に必要なタスクや工程、手段を設定することです。例えば、小売店で1か月の売上を20%アップすることを目的とした場合、新規顧客やリピーターの獲得、広告による来客数の増加、業務プロセスの効率化や輸送コストの軽減などのタスクを設定します。これがビジネスにおける目標設定です。ここでは目標とはそもそも何なのか、目的との違いはどこにあるのかなどを見ていきましょう。
目標とは
目標とは、目的という最終的に達成したいものに向けて、目的へと到達するための道筋を指します。例えば組織の目的が「全国シェア1位を獲得する」なら、目標として「全国にチェーン店を300店舗展開する」「営業の成約率を高める」などが考えられます。つまり、目標とは目的を達成するための具体的な過程や手段を意味すると捉えればよいでしょう。もちろん目標は組織全体で設定するだけでなく、部署毎、社員毎といったさまざまな対象で設定するのが基本です。目標は最終的な目的へと到達するために必要な要素であり、具体的な内容にすることで方向性を誤らずに取り組めるという効果があります。
目標と目的の違いとは
目標は目的を達成するための過程や手段ですが、目的は最終的に達成したいゴールを意味します。例えば「すべての家庭に自社製品が行き渡るようにする」という目的があれば、それが会社として最終的に達成すべき目的となります。そして会社の目的を達成するために、組織内の各部署で目標を設定し、目的へと近づくために努力を続けるという関係性です。注意したいのは、企業の目的も達成したら終わりでなく、新しい目的へ向けて動き出すという点です。 組織内の各部署や社員は目的を達成するために目標を設定しますが、目標も目的に合わせて調整しなければなりません。 そして個人目標は会社や部署にどのように貢献するのか、どうすれば会社の目的達成に貢献できるかという視点を持つことが大切になります。
目標設定の具体的な例
企業が行う目標設定は、組織としての方向性を決定し、社員が同じ目標を共有して働くために重要となります。 目標設定の具体的なポイントとして、定量的に測定できる指標を設けるのがポイントになります。具体的には「KGI(重要目標達成指標)」「KPI(重要業績評価指標)」「KDI(重要行動指標)」を設定する方法です。それぞれを具体例で示すと次のような内容となります。
・KGI:市場シェア50%以上を獲得/毎月の売上100万円を達成/年間売上を10%増加
・KPI:営業部門の成約率を10%アップ/自社サイトのアクセス数毎月10万人を達成する/顧客全体に占める新規顧客の割合を2割以上にする
・KDI:市場における新規販路を開拓する/自社サイトのUXを改善し、離脱率を下げる
上記のように、具体的な数字を出して目標設定することで、社員は自分たちの仕事が目標達成につながっているかどうかを考えるようになります。定量的に測定できることから効果判定もしやすく、どれくらいの行動が必要か、優先度の高い業務は何かを判断しながら業務遂行できるでしょう。
目標設定を行うメリット
組織が目標設定を行うことで、会社にとってどのようなメリットがあるのか紹介します。
組織の方針が明確になる
組織が目標を設定するということは、将来的にどのような未来を思い描いているのか、どんな方針で経営していくのかを明確にすることです。組織の方針が明確になれば、所属する社員は日常の業務でも迷うことが少なくなり、習得すべきスキルや知識も明確になります。また社員にとって会社の目標は、自分のライフプランにも影響を与えることがあるほど重要なポイントです。会社の目標が自分のライフプランやキャリアデザインに合っていれば、仕事への意欲も高まるでしょう。そのため社員が働きやすい環境を作る意味でも、組織としての目標設定は大きな意義があります。
部署毎のやるべきことが明確になる
組織が目標設定を行うと、その中にあるさまざまな部署、そして所属する社員もやるべきことが明確になります。組織が目標を設定する際は、目標の背景に組織としての判断があり、達成するための具体的なプロセスも決められています。そのため組織に属する部署や社員は、目標達成に必要なプロセスや手段を考え、それぞれが何をすべきかを明確にできるでしょう。ただし注意したいのは、 高すぎる目標を設定するのではなく、努力すれば達成できる内容にすることです。ちょうどよいレベルの目標を設定することで、社員のモチベーションは高まり、仕事に対しても前向きに取り組めるようになります。
社員のモチベーションアップにつながる
ここまで述べてきた通り、目標設定は組織としての方針を決定するだけでなく、社員のモチベーションアップにも効果的です。目標は社員に達成してほしいことを明示することでもあり、目標を達成できれば社員にとって自己効力感の高まりにつながります。また目標があることで仕事でも重要な判断に迷うことがなくなり、仕事への自信もつきます。社員のモチベーションアップだけでなく、業務における合理的な判断や行動ができるようになり、業務効率化と生産性向上といったメリットにつながるでしょう。
PDCAサイクルを回しやすくなる
目標設定することで、PDCAサイクルを回しやすくなる点もメリットです。PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字を取った言葉で、質の高い仕事をするためのサイクルとされています。目標設定では組織が達成したい目標が提示され、社員はどのくらいの期間と優先順位で業務をすべきかがわかりやすくなります。目標があることでPDCAサイクルをどのくらいの頻度で回せばいいか、改善策の方向性も決定しやすくなるという点が大きなメリットです。PDCAサイクルを回すほど目標達成に必要な行動が明確になり、社員が目的意識を持って仕事に取り組めます。
目標設定の方法
企業にとっての目標設定は、最終的な目的を達成するための大事なプロセスです。どのような手順で目標設定を行うのが正しいのか、4つの工程を紹介します。
1.目標の種類を把握
まず行うのは、自社の目標にどのような種類があるかを把握することです。目標には発生型と設定型の2種類があり、各職種に応じた目標にもさまざまなものがあります。発生型は現在起こっている問題・課題を解決するための目標で、現状の課題を正しく認識しなければなりません。設定型は自発的に設定し、成長や利益を目標とするものです。2種類の目標と職種別の目標の具体例を挙げると次のようになります。
職種 | 目標 |
営業職 | ・成約率の向上 ・新規顧客獲得率の向上 ・売上向上 |
技術開発 | ・開発コストの削減 ・品質向上 ・製造プロセスの簡易化 ・独自技術の開発 |
エンジニア | ・UI/UXの改善 ・納期遵守 ・テストでのチェックミス減少 |
マーケティング | ・サイトの離脱率減少 ・月間/年間アクセス数増加 ・インバウンドへの訴求効果増大 |
人事・労務 | ・長時間労働の是正 ・時間外労働の削減 ・有給休暇取得率の向上 ・新卒採用人数の増加 |
総務 | ・経費削減 ・ITツール使用も含めた業務効率化 ・資格取得率の向上 |
2.目標の数値・内容の設定
目標について把握できたら、次は目標に対して具体的な数値や内容を設定します。企業や職種によって数値と内容には違いがありますが、現実的に達成可能な数値設定にすることを意識してください。人事や事務といった職種では数値化しにくい場合もありますが、目標設定では数値化できる内容にすることが大切です。よくない目標設定の例は「今より技術力を向上する」「メンバーとの関係を良好にする」など、主観的な情報が入るケースです。あくまで客観的に目標達成が確認できるように、具体性と客観性を重視して内容を設定しましょう。
3.目標達成に向けた手段の定義
目標の数値・内容を設定したら、次に目標達成に向けた手段の定義を行います。例えば「営業部門の売上を月100万円にする」という目標にした場合、アポイントメントの件数設定や顧客への訪問、リピーターへの訴求など売り上げを増やすための手段を考えます。手段の定義で意識すべきポイントは、具体的で誰もが実行しやすい手段であることです。属人化したスキルや知識が必要になると、すべての社員が実行するのは難しいからです。
4.目標達成までの期限・期間を設定
目標達成の手段まで定義したら、最後に目標達成までの期限・期間を設定します。目標は無期限に立てておくものではなく、定期的に振り返り、進捗状況を確認することが重要です。期限までに予定通りの進捗度合いを達成できなかった場合は、人事評価でマイナス評価を受ける可能性があることも共通認識にすべきです。また個人目標は社員によって内容も異なるため、それぞれの階層と目標の整合性を確認しながら、適切な期間を設定しましょう。
目標設定の役立つフレームワーク6選
目標設定では数値化しやすく、定量的に評価できる目標にすることが重要です。 しかし、社員の中には目標設定に慣れておらず、数値化しにくい目標を挙げてしまう人もいるでしょう。そこでビジネスで広く利用されており、かつ数値化もしやすい目標設定のフレームワークを6つ紹介します。
SMART
SMARTとは、理想的な目標設定を行うための5つの基準をまとめたフレームワークです。SMARTは「Specific(具体的)」「Measurable(測定可能)」「Achievable(達成可能)」「Relevant(関連性がある)」「Time-bound(期限を定めた)」の頭文字を取ったものです。5つのポイントをわかりやすく説明するなら次の通りです。
・Specific(具体的):何を測定するのか明確にする
・Measurable(測定可能):定量的な指標を設定する
・Achievable(達成可能):現実的に達成可能な目標にする
・Relevant(関連性がある):全体目標に直接関連性がある指標にする
・Time-bound(期限を定める):期限を設け、進捗を確認する
上記のポイントを意識することで、具体的で明確なKPIを設定できます。
KGI・KPI・KDI
KGI・KPI・KDIは、ビジネスでよく使用される要素を指標としてまとめたもので、定量的な評価が可能とされています。それぞれの用語の意味や例は次の通りです。
指標 | 意味 | 具体例 |
KGI(重要目標達成指標) | 企業やプロジェクトがどのくらい目標を達成したかを測定し、最終目標に視点を置いた指標 | 年間売上を10%向上し、新規顧客を100社獲得する |
KPI(重要業績評価指標) | KGIを達成するためにプロセスや進捗度合いを測定するための指標 | ・月別の売上高 ・月ごとの新規顧客獲得数 ・成約率 |
KDI(重要行動指標) | KGI・KPIを達成するために必要な行動や活動を示す指標 | ・アポイントメント ・顧客訪問 ・電話対応・問い合わせ対応の平均時間 |
KGIを最終目標とし、KPIで最終目標へ至るまでの中間目標や進捗確認、KGIで具体的な行動を決定するというレベル別の活用方法が一般的です。KGI・KPI・KDIを活用することで、管理職による社員へのマネジメント、評価とフィードバックも容易になります。
OKR
OKR(Objectives and Key Results)は企業や部署、個人が目標を達成するための管理手法です。「目標(Objective)」と「主要な成果(Key Results)」を設定することで、組織・部署・個人の目標に関連性を持たせ、全社員が一丸となって目標達成に向けて行動することを目的としています。例えば目標として「新しい市場へと参入する」と設定した場合、主要な成果には「新規顧客100社獲得」や「市場シェアの10%を確保」などが挙げられます。OKRは他の目標管理方法とは違い、組織として高い目標を設定し、社員に共有することで部署や個人の貢献度を高める方法です。そのため、評価期間までに100%達成を目指すのではなく、60~70%を達成するのが理想とされています。
ベーシック法
ベーシック法は「目標項目」「達成基準」「期限設定」「達成計画」の4つの段階で構成され、目標設定の最も基礎的な方法とされています。それぞれの項目については次の通りです。
ステップ | 特長 | 項目 |
目標項目 |
「何を達成するか」を4つの項目から考えて明確化する。4つのうち1つに絞るほど目標達成に集中しやすくなる。 |
・向上/強化:現状よりレベルアップさせることを目標とする |
達成基準 | どこをゴールにするかを具体的に設定する。 | ・数値の基準:数値化できるものを設定する ・状態の基準:数値化しにくい状態を設定する ・スケジュールの基準:一定の期限を定める |
期間設定 | 何を、どのくらい、いつまでにといった期限を具体的に設定する。 | ー |
達成計画 |
「目標項目」「達成基準」「期限設定」までの内容を踏まえて、具体的な手段や方法、頻度などを計画する。 |
ー |
ランクアップ法
ランクアップ法は自分のスキルや成長の目標を段階的に設定することで、目標達成へのステップを明確にしつつ、成功を積み重ねて最終目標へと向かう方法です。ランクアップ法では、「改善」「代行」「研究」「多能化」「ノウハウの普及」「プロ化」の6つの要素で目標項目を設定します。6つの目標項目の具体的な内容は次の通りです。
・改善:ネガティブな点を改善していくための目標を設定する。
・代行:自分より階層やスキル面で上の人の仕事を代行できるようになることを目標に設定する。
・研究:特定のテーマについて、自分の仕事にそれを取り入れられるかを研究しながら目標を設定する。
・多能化:既にある知識やスキルに加え、新たにスキルや能力を習得することを目標に設定する。
・ノウハウの普及:自分が持つスキルや能力をノウハウとしてまとめることを目標に設定する。
・プロ化:自分の持つスキルや能力、ノウハウを専門家レベルまで高めることを目標に設定する。
目標設定における注意点
目標設定は企業として目標を周知し、社員にやるべきことを伝えるうえで重要な施策です。しかし目標設定では、注意しなければならない点もあります。
社員同士で目標を共有する
目標を設定する際は、社員同士で目標を共有することが大切な注意点です。例えば社員が設定した目標を上司や同僚と共有することで、さまざまな効果が生まれるでしょう。自分で立てた目標を他者にも知ってもらうことで、目標達成のための責任感と緊張感が生まれ「行動しなければならない」という義務感にもつながります。一方、社員が目標を自分の内側にだけ持っているのでは、目標設定したままで努力しなくなる可能性があります。また社員同士で目標を共有していると、自然にコミュニケーションが生まれ、目標達成に向けた協力体制が生まれやすくなることも重要なポイントです。社員が自発的に行動を起こすことで、逐次的な進捗状況や中間目標の共有、社員同士でフィードバックを行うといったプラスの方向に働くでしょう。
定量的な目標を設定する
目標設定の方法でも説明した通り、定量的な目標を設定することも重要です。目標設定で陥りがちな失敗として、具体的な数値を設けることなく、抽象的な目標を設定して取り組むべき内容があいまいになるケースがあります。
・今よりも接客をうまくなる
・もっと効率的に業務をこなせるようになる
・資格取得の勉強をする
上記のような目標は、社員が内心で設定する分には問題ありませんが、ビジネスにおける目標設定としては定量化されておらず、内容としては良くありません。 そのため「顧客満足度を90%以上目指す」「個々の作業工程にかかる時間を10%低減する」「TOEICで800点以上を取る」など、定量化できる目標設定を心がけましょう。
評価を繰り返し行う
目標を設定したら、定期的に評価と振り返りを行い、良い点と課題点を分析しましょう。頻度はあまり間隔を空けず、週1回または月1回程度で行うのがおすすめです。あまり間隔を空けすぎると設定した目標を忘れてしまい、あいまいなまま日々の業務に取り組んでしまうからです。繰り返し評価を行う中で、良い点はどうすればより洗練できるか、もっとスキルアップするには何が足りないかを考えましょう。また課題点については、どこでつまずいているのか、何が足りていないと感じるかなどを細かく振り返ることが大切です。定期的に評価と振り返りを行うことで、自分が日々どれだけ成長できているか実感できるとともに、目標達成に向けたプロセスと乖離が生じていないかという現状把握にもなります。
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まとめ
目標設定とは、企業が目指す目的へと向けて、達成に必要な過程や手段をわかりやすくまとめることです。 目標設定が明確になっていれば、組織経営がブレることがなくなり、社員も目標達成に向けて日々の業務へ取り組みやすくなります。 そして重要なのは、目標は一度設定して終わりではなく、社会情勢や社内の状況、市場のニーズに応じて常にアップデートすべきという点です。組織が激しい市場競争の中でも成長を続けていくためにも、目標設定の重要性を再認識し、一つひとつ着実に達成できるように対策を打ち出しましょう。