MBO(目標管理制度)とは?種類、メリット、デメリット、手順を紹介

  • MBO(目標管理制度)とは?種類、メリット、デメリット、手順を紹介

    公開日:2024.07.31

    更新日:2024.07.12

    MBO(目標管理制度)とは、会社の経営方針や理念、利益につながる行動を根底として、社員に主体的な目標や行動計画を立ててもらうマネジメント手法です。MBOを適切に運用すると、社員が業務へのモチベーションを高め、将来的なキャリアアップもイメージしながら働けるようになります。この記事ではMBOの概要やOKR・KPIとの違い、導入・運用のメリット・デメリット、実施手順などを解説しています。

MBO(目標管理制度)とは何か

MBOとは「Management by Objectives」の略称で、日本語では「目標管理制度」と称します。目標管理とは、会社の方針とすり合わせながら、社員自らが組織の利益につながる目標や方向性を設定し、達成への過程を管理することです。著名なアメリカの経営学者ピーター・ドラッカーによって提唱された概念です。

従来の目標管理との違い

従来の目標管理との違いは、 MBOでは社員一人ひとりが目標達成への道のりを自己管理する点にあります。
行動の主体を社員側に置き、達成までの過程や具体的なアクションを考えさせることで、さまざまな効果が期待できます。
・業務効率の向上
・モチベーションアップ
・スキルアップ
・仕事に対する自信

主体性の高い人材育成を進めることを目的とした場合、MBOは高い効果を発揮するでしょう。

具体例


MBOを進める際は、以下の項目を基本的な内容として設定しましょう。

・基本情報
・個人情報
・難易度
・アクション
・達成期限
・達成のためのスケジュール
・結果
・振り返り
・コメント

上記を含めたうえで、明確で第三者にも評価しやすい目標を設定します。
具体例は次の通りです。

・人事評価システムの導入:〇月中に開発会社を比較検討し、〇月中に業者の選定およびミーティング、〇月までを目途にテストとなるシステムを導入する。
・営業職の場合:新規顧客を毎月10件獲得し、四半期の売上を20%アップする。
・技術職の場合:営業部と毎月ミーティングを行い、製品や業務への認識を共有する。作業工程と業務中の動線を見直し、1日の生産量を10%アップさせる。

MBOでは具体的な数値を用いることで、客観的に目標を達成できているか否かが判断しやすくなります。

MBOと人事評価制度の関係とは

MBOと人事評価制度には、直接的な関係はありません。その理由は、MBOはマネジメント手法の一種であり、人事評価の手法ではないからです。
MBOは、社員が組織の目標や方針に沿うよう目標を自己管理することでモチベーションや業務効率を改善するものです。仕事に対するやりがいが高まることで、間接的に人事評価へ影響することはあるでしょう。「MBO=人事評価制度」と勘違いされることもありますが、MBOは企業のマネジメント手法であると理解しておくことが大切です。

MBOとOKRやKPIは何が違うのか

MBOと似た言葉に「OKR」や「KPI」というものがあります。OKRは「目標と重要な成果」で、KPIは「重要業績評価指標」を指します。それぞれ目標や指標という点では共通していますが、目的や対象、達成率の設定などに違いがあり、それぞれを較してみましょう。

 

MBO 

OKR 

KPI

目的 

社員のモチベーションアップ、組織全体の利益を向上する 

マネジメントスキルやチームワークの向上、組織の生産性を高める 

チームとして目標達成のプロセスを中間指標で示す 

対象 

各部署の管理者と一般社員 

全社員 

チーム・部署・プロジェクト単位 

達成率の設定 

100%達成を目標とする 

6070%達成でOK 

各期間や工程で達成すべき中間指標・マイルストーンを設定する 


・OKR

OKRはより高い目標を達成するためのマネジメント手法で、全社員や部署、チームといった大きな単位で目標を設定します。MBOとは目標への向き合い方が違います。 OKRでは、理想となる目標の設定はしますが、目指すのは、目標の達成ではなく、達成に近づくことにあります。 例えば、空飛ぶ自動車を作ることを目標とした場合、動くことはできなくても、短時間でも浮くことができれば達成に近づいたことになります。OKRはMBOに比べて高い目標を設定するため、比較的高い頻度で振り返りとフィードバックを行う必要があります。


・KPI

KPIは最終的な目標達成に向けて、チームやプロジェクトに必須のプロセスと中間指標を示すものです。KPIはチームや部署など、MBOとOKRの中間にあたる範囲を対象としています。またKPIは評価の頻度が高く、場合によっては毎日達成度の評価を行うことがあります。その分、達成度の指標は数値による定量的なものを設定し、チームやプロジェクトメンバーに共有しなければなりません。KPIは最終的な目標達成のプロセスを評価するため、MBOとは違って人事評価にも影響します。

MBOの3つの種類

MBOはその目的に応じて3つの種類があります。3つの種類と特徴は次の通りです。

・組織活性型:社員の自発的な行動によって組織全体を活性化させることを目的としています。社員の目標や意思を尊重する点が特徴です。ただし、目標設定に重点が置かれているため、達成に向けた具体的な行動計画や評価基準が曖昧になりやすい点に注意しましょう。

・人事評価型:目標に対する達成度や実際の取り組み、成果などを人事評価に反映することを目的としています。人事評価の効率化につなげやすい点が特徴です。ただし、社員が人事評価で良い評価を得ることを目的にしてしまうと、結果的に企業の生産性向上にならない可能性があります。

・課題達成型:企業の目標や課題に基づいて、社員がそれぞれ達成すべき目標を設定するものです。過去の企業実績、部署の成果、チーム目標などから個人の目標設定を行います。課題は企業、部署、チームの目標をうまく個人の目標まで落とし込むのが難しい点です。

MBO導入のメリット

MBO導入で得られるメリットについて、社員の視点と組織の視点でそれぞれ紹介します。

社員にとってのメリットとは

社員にとってのメリットは次の2点です。

・自己管理能力が高まる

MBOの特徴は、社員が自ら目標を設定することにあります。各部署内で上司とも相談しながら、それぞれが達成すべき目標に向け、行動していくことになるでしょう。MBOでは自ら立てた目標に向けて行動するため、どうすれば目標を達成できるか、自分が取るべき最適な行動は何か、その都度考える必要があります。目標達成に向けて業務効率化や作業スピードを意識するようになり、個々の社員の自己管理能力の向上が期待できます。

・やりがいや達成感につながる

MBOは社員が目標を達成できれば、仕事に対するやりがいや達成感につながります。
目標を達成するには主体性を持つこと、スキルアップすること、学び続けることが重要です。上司の指示・命令の通りに動くだけでなく、自律して行動することが求められます。仕事への向き合い方が変わるだけでなく、自分が日々成長していることを実感できるでしょう。自分の行動の結果、目標を達成できたときは大きな達成感を得られるはずです。また努力の成果が認められたり、キャリアアップにつながったりすれば、次の目標に向けたモチベーションアップにもなります。

組織にとってのメリットとは

MBOの導入は組織にとってもメリットがあります。

・社員が主体的に行動できる

MBOでは組織の目標や方針、部門での目標などに基づいて社員が目標を設定します。組織という大きな単位で目標を達成するために、社員が自分の部署でできることは何か、自分の役割を正確に理解して行動することにつながります。社員が主体的に目標を設定するだけでなく、達成に向けて自発的に行動しなければなりません。 MBOを導入する効果は、社員が組織の掲げる理念や目標を深く理解することにも役立ちます。 自分の所属する部署だけでなく、会社全体の利益や状況を総合的に踏まえて、自分の行動が組織にどう貢献するのかが明確になるからです。社員一人ひとりが企業経営の一端をになっている意識を持つことで、主体的な行動を取れるようになるでしょう。

・客観的で公正な評価がしやすい

MBOの目標設定では、達成すべき目標や指標、期限などが数値として明確化されます。
そのため、当初に立てた目標に対して、どれだけの達成度を満たしているか客観的な数字として把握できます。客観的な情報だけで評価を行うことから、どの社員に対しても成果を元にした公正な評価を行えるでしょう。能力の高い社員は高く評価され、成果が上がらなかった社員には具体的なフィードバックがしやすい点もMBOの特徴です。公正公平な評価は、社員のエンゲージメントとモチベーションを高め、組織を活性化する効果があります。

MBOの導入のデメリット

MBOの導入にはメリットも多いですが、デメリットになる場合もあります。起こりうる2つのデメリットについて紹介します。

・モチベーション低下につながる可能性がある
・目標設定が社員の負担になることがある

モチベーション低下につながる可能性がある

MBOの導入で陥りやすい傾向として、目標達成ばかりに注目してしまい、社員の心情や考えに配慮が至らないことがあります。例えば、上司が部下の能力に対して過大または過小な目標を設定したり、社員の目標を上司が勝手に設定したりするケースです。この場合、社員が自ら考える目標との間に乖離が生じ、目標達成に対して義務感を抱くようになるでしょう。他者から自分の目標を決められれば、モチベーションを大きく下げることにつながります。MBOの趣旨は組織や部署、チームの目標や理念を社員一人ひとりの目標に落とし込むことです。あくまで社員の自主性が重要となるため、相談しながら適切な目標を設定していくことが重要です。ただし、新入社員や組織自体がMBOに慣れておらず、目標設定の方法がわからないケースでは、上司からある程度方向性を示すのがよいでしょう。

目標達成が社員の負担になることがある

MBOを導入し、目標を達成することに力を入れすぎると、目標自体が社員の行動を制限することがあります。 MBOは社員の自主性を高め、業務効率や組織の生産性を高めるための手段です。 しかしMBOで目標を設定した場合、毎月の面談や目標管理、フィードバックなどの工程が追加されます。目標達成が社員のノルマと化してしまい、むしろ業務効率を落とす可能性があります。MBOは目標達成の手段であること、本来の目的を正しく社員に伝えることで、制度の正しい運用につながるでしょう。

MBOの手順

MBOを効果的に実施するには、4つの手順に分けて進めていくのがよいでしょう。
・目標設定
・目標達成に向けた計画・手段の決定
・実行・実施
・上司との評価・振り返り

目標設定

MBOで最も大切といえる手順は、社員がそれぞれの役割や能力に見合った目標を設定することです。目標設定を誤ってしまうと、MBO導入の効果が十分に得られないため注意しましょう。目標を設定する際は、組織の経営理念や目標を踏まえて、社員が自主的に考えられるように支援します。組織や上司が目標を押し付けたり、強制したりすると社員のモチベーション低下につながるからです。社員が目標を設定する際は、次のポイントを意識しましょう。

・部署における自分の役割は何か
・役割を果たすためにどんなスキルが必要か
・現在の自分に足りないスキル、能力は何か
・どう行動すれば成長できるか

目標達成に向けた計画・手段の決定

目標設定ができたら、次は目標達成に向けた計画や手段を考えます。例えば「新規顧客を毎月10件増やす」という目標を設定したなら、電話やメールでの連絡件数、訪問営業を増やすといった手段があるでしょう。ただし、計画は1つではなく、複数用意しておくことが大切です。1つの計画がうまくいかなくても、別の計画を実行できるからです。計画や手段を立てる際は、エクセルやスプレッドシートなどのツールで目標管理シートを作成し、日程も考慮しながら適切なプランにしましょう。

実行・実施

目標と計画、手段まで決定したら、実行の段階に進みます。計画の段階で作成した管理シートを参考に、目標達成に向けた行動を実践します。実行する際は状況をみながら、さまざまな手段や別のプランも進めましょう。また、実行・実施の段階では自分の計画の進捗状況に応じて、周囲に配慮することも大切です。部署やチーム内に計画通り進んでいない人がいるなら、一緒に目標達成に向けて支援しましょう。

上司との評価・振り返り

目標の期日がきたら、上司と面談して達成状況の評価と全体の振り返りを行います。目標達成までの行動をお互いに共有することで、部下のスキルや困っていること、上司からの評価が明確になります。同時に、計画の達成状況に応じて良い点、悪い点をフィードバックし、足りない部分は上司が指導しましょう。評価とフィードバックを行うことで、社員は次に自分がすべきことが明確になり、上司に「ちゃんとみてもらっている」という安心感を持てます。目標設定・計画・実行・評価の手順を繰り返すことで、社員の自主性が高まっていきます。

MBOを成功させるポイント

MBOを成功へと導くには、以下の5つのポイントを押さえることが大切です。

・社員の自主性を尊重する
・定量的でわかりやすい目標を設定する
・ストレッチ目標を意識する
・目標達成の具体的な行動を決める
・定期的な評価と振り返りを行う

社員の自主性を尊重する

MBOを運用していくには、社員の自主性を重んじることが重要です。社員が考える目標と、組織や上司が掲げる目標は必ずしも一致しません。トップダウン方式で目標を設定してしまうと、ノルマと同じになり、社員のモチベーションや主体性は育ちません。 MBOは社員が主体であることを理解し、組織や上司は社員が立てた目標と計画を否定しないことを意識しましょう。 そして、目標達成に向けた行動を進める中で、修正すべき部分は指摘しつつ、計画の進捗状況を管理することが大切です。

定量的でわかりやすい目標を設定する

MBOを効果的に運用するには、客観的で公平な評価をする必要があります。そこで重要になるのが、定量的な数値を用いた目標設定です。例えば「月の売上を10%向上する」「一日の生産量を20%増やす」「1か月間の利用者数を1万人増加させる」などです。目標設定に数字を用いることで、実際の状況と目標にどの程度の差があるか客観的に把握できます。目標を達成できていれば、上司は部下を褒めやすくなるでしょう。逆に、目標達成ができていない場合でも、具体的に何が不足していたのか、改善できるポイントを探る余地が出てきます。

ストレッチ目標を意識する

ストレッチ目標を意識的に設定することも大切です。

ストレッチ目標とは、努力次第で達成できそうな目標のことで、社員の能力やスキルに応じて設定するものです。単に理想となる目標からハードルを下げるのではなく、現状の社員の能力を考慮して、努力すれば達成できる目標にしましょう。簡単すぎれば社員の努力にはつながらず、難しすぎてもモチベーションを低下させてしまいます。適度に難しく、チャレンジ意欲が湧く目標設定を行うことが大切です。

目標達成の具体的な行動を決める

目標をしっかりと定めても、具体的な行動計画が曖昧なまま進んでしまうケースもあります。その場合、社員が誤った行動をしていても本人は気づかず、目標達成が遠のく可能性があります。MBOで定量的な目標設定ができたら、次は目標達成のプロセスをいくつかに分けることが重要です。目標までのプロセスを分けて考えることで、社員のすべき行動が明確になりやすいからです。また行動計画を決める際は、期日から逆算することも欠かせません。期日がないと、いつまでにどの行動が必要か判断できなくなります。期日と具体的な行動計画はセットで考えましょう。

定期的な評価と振り返りを行う

MBOの目標は1年後を目途にすることが多く、長い期間で計画を立てることになります。

しかし、期間が長くなると行動計画が曖昧になりやすく、社員のモチベーションを維持するのも容易ではありません。そこで、毎月上司との面談や1on1ミーティングの場をセッティングし、現状の評価と振り返りを行いましょう。部下から上司に達成状況や行動を報告し、上司は内容に対してフィードバックを行います。こうすることで行動の軌道修正が必要な場合にも、早い段階で気づけるはずです。

MBOとあわせて検討したい施策

MBOとあわせて検討したい施策を2つ紹介します。

評価者向け教育

MBOを効果的に運用するには、目標を評価する上司への研修は必須です。 MBOは社員それぞれが目標を設定するため、評価基準もフィードバックの内容も全く異なります。社員の自主性・主体性を維持しながら、上司としてどのように評価や目標管理、軌道修正を行っていくかが重要です。上司が目標を強制したり、押し付けたりすれば社員自身の目標ではなくなり、MBO本来の目的を見失ってしまいます。MBOを正しく運用していくには、上司もMBOの目的や理念を理解し、評価スキルを身に付けましょう。

被評価者向け教育

評価者向け教育と並行して、被評価者である社員向けの教育も重要です。MBOでは社員が企業や部門の方針を理解し、その内容に沿う個人目標を設定します。目標設定には、組織の成果に必要なものは何か、自分に求められる役割・行動は何かを把握しなければなりません。MBOの事前知識なしで目標設定・行動計画を立てようとしても、社員は戸惑うことになるでしょう。組織は被評価者向けに企業理念や運営方針の説明、キャリアデザインの選択肢、部門ごとの役割を社員に細かく説明することが大切です。そして、社員が主体的に目標を設定し、行動計画を練れるように支援しましょう。

MBOを正しく活用するためのチェックリスト

MBOを正しく活用するには、各手順において細かなチェックポイントを押さえることが重要です。それぞれの手順に応じたチェックリストは、次の通りです。

 

MBO 

OKR 

KPI

目的 

社員のモチベーションアップ、組織全体の利益を向上する 

マネジメントスキルやチームワークの向上、組織の生産性を高める 

チームとして目標達成のプロセスを中間指標で示す 

対象 

各部署の管理者と一般社員 

全社員 

チーム・部署・プロジェクト単位 

達成率の設定 

100%達成を目標とする 

6070%達成でOK 

各期間や工程で達成すべき中間指標・マイルストーンを設定する 

人材育成ならユーキャン

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まとめ

今回はMBO(目標管理制度)について、概要やメリット・デメリット、実施手順、成功するためのポイントなどを解説しました。MBOは社員の主体性と意欲を高め、業務効率と生産性の向上、組織の利益へとつなげていくマネジメント手法です。人事評価と連携して運用する方法もあり、社員のやりがいにも結びつく制度です。社員の主体性の低下に悩む企業の担当者は、MBOを活用して自律できる社員を育成しましょう。

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