DX研修とは?研修を行う目的や内容を解説

  • DX研修とは?研修を行う目的や内容を解説

    公開日:2024.12.18

    更新日:2024.12.18

    DX研修とは、デジタル技術を活用してビジネスに変革を起こす「DX(デジタルトランスフォーメーション)」について、知識とスキルを身につけるための研修です。DX研修は企業の成長を支えるための人材育成の観点から、あらゆる業種・業界において必要とされています。この記事ではDX研修とはどのようなものか、DX人材に求められるスキル、具体的な研修内容、成功のポイントなどを解説します。

    法人向けユーキャンのデジタルリテラシー研修

DX研修とは

DX研修とは、デジタル技術を活用してビジネスに変革を起こす「DX(デジタルトランスフォーメーション)」について、知識とスキルを身につけるための研修です。現代では企業の成長とDX推進には密接な関係があり、組織全体でのDXリテラシー向上が欠かせません。なぜDX研修が重要なのか、目的について解説します。

DX研修の目的

DX研修を行う目的は、社内のDX人材を増やすことです。日本では「2025年の崖」(日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進まなかった場合に予想される2025年以降の経済損失)が経済産業省より公表されており、企業のDX促進と人材育成が急務になっています。総務省発表の情報通信白書でも、日本企業の半数以上がDXに関して「人材不足」と回答しています。2025年の崖を解決し、企業のDXを推進する人材を育成するためにも、DX研修の必要性が高まっています。

DX研修の必要性

社内のDX人材を増やすことがDX研修の目的ですが、なぜDX人材がそれほど必要になるのでしょうか。DX研修の必要性について、3つのポイントを解説します。

企業のDXリテラシーが向上する

企業のDXを推進するには一般社員から経営層まで、全社でDXリテラシーを向上させる必要があります。特に経営層はDXへの理解を深め、社員よりも率先してDX推進を図るべきです。経営層がDX推進に積極的であれば、社員もDXの知識・技術を高め、経営戦略にDXを組み込む方策を提案しやすくなるからです。また社員のDXリテラシーを高めることで、DXの施策を打ち出した際の社員の捉え方にも変化が期待できます。DXリテラシーの低い状態でDXを推進しても、社員からは理解を得にくく、反発を招く可能性があります。しかしDX研修を通して基礎的な知識と技術を身につけてもらえば、抵抗感なくDXを受け入れられるでしょう。社員に「なぜDXが必要なのか」という根本的な説明も交えながら、前向きにDX研修への参加を受けられるよう準備することが重要です

システムの内製化につながる

日本企業では自社の独自システム(オンプレミス)を採用している企業も多く、システムの運用・管理を外部企業に一任しているケースも珍しくありません。しかしオンプレミスは他のシステムと互換性がないうえ、取り扱いに必要な知識・スキルが属人化しやすいという問題があります。そのため対応できる人材がいないとトラブル時の対応も難しく、場合によっては会社に大きな損失を与えるおそれもあります。こうした問題を解決する手段の1つとしてDX研修があります。DX研修で基幹システムへの理解を深め、IT知識・技術を磨くことで社内でシステムの運用・管理が可能になり、不測の事態にも対応できるようになるでしょう。加えて専門的な教育を続けることで、システムを内製化することも可能です。自社内の人材で対応できるシステムを導入すれば、コスト削減と業務効率化にもなります。

技術の進歩に対応できるようになる

DX研修でデジタル技術について学ぶことで、最新の技術にも対応できる人材育成が進められます。ITの世界は常に進歩しており、1年前の知識・技術が過去のものになっていることもあります。DX研修で必要な知識・技術を学べば、最新のIT情報へのアンテナを張り、時代の変化にも対応できる人材を育てられるでしょう。また社員にDX研修を行うことで、IT・AI技術をビジネスとつなげる橋渡し役になる可能性もあります。企業が成長を続けるためにも、社員のDX研修は継続的に行うことが重要です。

DX人材に求められるスキル

DX人材を育成していくうえで、非常に重要なスキルが2つあります。それが「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」の2つです。それぞれどのようなスキルなのか、概要や定義などを紹介します。

DXリテラシー標準

DXリテラシー標準(DSS-L)とは「働き手一人ひとりがDXに参画し、その成果を仕事や生活で役立てるうえで必要となるマインド・スタンスや知識・スキルを示す、学びの指針」とされています。簡潔に説明するなら、すべてのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準を策定したのが、DXリテラシー標準です。DXリテラシー標準はDX推進を通して、一般社員から経営層まで幅広い階層を対象にしています。新たな価値を生み出す意識や姿勢を意味する「マインド・スタンス」を根底として、マインド・スタンスの上にWhy(DXの背景)、What(DXで活用されるデータ・技術)、How(データ・技術の活用)の3つの項目を設けています。4つの項目の定義については以下の通りです。

・マインドスタンス
社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要な意識・姿勢・行動

・Why
DXの重要性を理解するために必要な、社会、顧客・ユーザー、競争環境の変化に関する知識

・What
ビジネスの場で活用されているデータやデジタル技術に関する知識

・How
ビジネスの場でデータやデジタル技術を利用する方法や、活用事例、留意点に関する知識

DXリテラシー標準の項目はいずれも常に進化を続けるIT・DXに対応するため、企業や社員がDXと関連スキルを学ぶうえでの基本となる指針です。それぞれの項目には、何を学べばよいのかを示した学習項目例もあるため、その内容を参考にするのがよいでしょう。

DX推進スキル標準

DX推進スキル標準(DSS-P)とは「DXを推進する人材の役割や習得すべき知識・スキルを示し、それらを育成の仕組みに結び付けることで、リスキリングの促進、実践的な学びの場の創出、能力・スキルの見える化を実現する」ことを目的に策定されました。DX推進スキル標準ではDXを推進する人材の類型や育成の仕組み、人材の相互関係などをまとめています。そしてDX推進スキル標準では、データやデジタル技術活用に関わる重要な人材について、次の5つを定義しています。

5つの人材類型が相互に連携することで、ビジネスや製品、サービスの変革につながるとしています。
類型 人材の特徴
ビジネスアーキテクト DXの取組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材 
デザイナー ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う人材 
ソフトエンジニア DXの推進において、デジタル技術を活用した製品・サービスウィ提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材 
サイバーセキュリティ 業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う人材 
データサイエンティスト DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材 

DX研修の具体内容

DX研修の具体的な内容について、対象となる社員別に紹介します。

全社員向けDX研修

全社員向けにDX研修を行う場合、専門的な内容よりも汎用性が高く、DXに必要な能力・知識を学べる内容にするのがよいでしょう。 DXリテラシー標準に定義されるように、社員一人ひとりがDXに参画し、必要なマインド・スタンスや知識、スキルを深められる内容が適切です。社内にはITに強い若い世代だけでなく、ITやPC操作に疎い中高年世代もいます。そうした知識の差や年代の違いも乗り越えて、社内でデジタルについての理解が進み、DXに対して全員が前向きに受け止められるようにすることが目標となります。また社員がDXに関心を持ち、社内のDXを加速できるような提案や創造性を発揮できるようになることが、全社員向けDX研修の最終的な目標となるでしょう。

経営層向けDX研修

経営層向けにDX研修を行う場合は、経営戦略としてDXを組み込めるような知識の習得が必須です。ビジネスシーンにおいてIT技術は日々進歩を続けていますから、DXについても現状を把握し、自社のどの部分に導入できるか、成長戦略に取り入れる意識を持つ必要があります。またDXの推進には経営層だけで取り組むのではなく、専門の部署を設け、一緒に取組みを進めることが重要です。DXの担当部署には各部署の意見を集約してもらい、どのようにDXへと反映できるか検討してもらいましょう。経営層はDXリテラシー標準のWhyとWhatの部分、担当部署はWhatとHowの部分をそれぞれ担当することで、効率的なDX施策の推進につながります。

管理職向けDX研修

管理職向けのDX研修では、現場の実務レベルでDX推進を行えるように、どのようにデジタルやAIを業務へと反映するかという視点を身につけてもらう必要があります。DX研修ではマインド・スタンスの定着に加え、企業での活用事例や知識を習得するために、WhatやHowの部分の向上を目指すのが効果的です。具体的なDX事例を知ることにより、部署で担当する業務にも活用できる内容や作業を効率化できる技術を思いつくことがあります。また部署内の部下とデジタル技術の活用について情報共有することで、商品やサービスに付加価値をつけられるアイデアが生まれる可能性もあります。管理職がDXへの理解を深めることで、一緒に働く部下もDX推進に前向きになれるでしょう。

DX推進担当者向けDX研修

DX推進担当者向けのDX研修では、DX推進担当者が現場と経営層の双方の中核的存在として、DXの知識と技術を生かせるような内容にしなければなりません。DXリテラシー標準のスキルを基本として、DX推進スキル標準の5つの類型に基づいた役割分担も必要になります。例えばビジネスアーキテクトはDX推進のリーダーとなり、多職種が協働できるような調整役になることを求められます。その他の類型でも社内のサービス・商品のデータに基づくシステムの設計、社員のユーザビリティと顧客満足度を意識したデザイン、セキュリティリスクへの対策なども必須です。DX推進担当者にはDX推進の旗振り役となってもらい、常に知識と技術の更新を続けさせることで、独立部署として活躍できるように会社が支援を続けるのが理想です。

IT部署の社員向けDX研修

IT部署の社員向けDX研修では、DX推進スキル標準の5類型の中でも、ソフトウェアエンジニアやサイバーセキュリティのスキルを高める必要があります。社内のDXを推進するには、デジタル技術を活用してシステムを設計したり、商品・サービスにデジタル技術を取り入れたりするスキルが必要不可欠だからです。また近年は企業を狙った大規模なサイバー攻撃も多発しており、自社の情報を守るためにはサイバーセキュリティの知識とスキルも必要です。IT業界はAIの登場により進歩の著しい業界であり、IT部署の社員に最新のIT知識・スキルを身につけてもらわなければ、時代の変化に乗り遅れるおそれがあります。会社がどのようなDX戦略や方針を掲げているか理解してもらい、DX推進に求められる知識と技術の習得を支援しましょう。

DX研修の実施方法

DX研修の実施方法は大きく分けて、集合型・オンライン・eラーニングの3種類があります。それぞれの実施方法と特徴について紹介します。

集合型研修

法人向けユーキャンのデジタルリテラシー研修
集合型研修とは、社内または社外の研修会場に集合し、その場で講師による研修を実施する方法です。1箇所に集まって数十人から数百人がまとめて研修を受けられるため、社員同士でコミュニケーションを取ったり、グループワーク形式の研修を行ったりするのに適しています。集合型研修は時間と場所を決めておく必要がある点は難点ですが、幅広い研修内容に対応できる点がメリットです。講義形式やグループワーク、ワークショップ、体験型など多くの研修が実施できるため、社員教育では広く活用されています。

オンライン研修

オンライン研修は、インターネットに接続したパソコンやスマホ、タブレットを通じて行う研修方法です。オンライン研修を利用すれば会場まで移動する必要がなく、遠方の研修にも参加できます。また事前に研修を録画しておけば、好きなタイミングで学習も可能です。一方でオンライン研修は受講者の自主性が必要になるほか、学習効果を測定しにくいという課題もあります。通常の集合研修と同様、研修後のフォローアップや効果測定を行うのがよいでしょう。

eラーニング

eラーニングはパソコンやスマホ、タブレットなどの端末を使用し、インターネット上のプラットフォームで学習する方法です。オンライン研修以上に時間と場所の自由が利きやすく、学べる内容も豊富な点が特徴です。企業側にとっても受講者の進捗状況の確認が容易で、用意されているテストを行えば理解度も把握できます。ただしあくまで視聴が中心になるため、実技の習得が必要な場合には不向きです。またオンライン研修と同じく社員のモチベーションが重要になるため、会社側で社員への継続的なフォローアップをしていく必要があります。

DX研修を成功に導くポイント

DX研修の効果を高め、成功へと導くには4つのポイントを押さえることが重要です。何を意識すべきか、4つのポイントについて紹介します。

研修の目的を明確にする<

DX研修を行う前に、まずはDX研修の目的を明確に定めておくことがポイントです。DX研修でDXの基礎知識を身につけてもらいたいのか、それとも社内システムの内製化まで進めたいのかによって、研修のカリキュラムや具体的内容も変わります。また企業ですでにDXを進めているなら、個別の部署でどこまで具体的なDXを進めたいのかという構想も含めるのがよいでしょう。研修の目的が明確になれば、DX推進に必要な人材やスキルが明確になり、研修計画も具体性が増します。部署別にカリキュラムを組みやすくなり、研修の効率も良くなるでしょう。

社内のDXリテラシーとスキル状況を把握する

研修の目標を立てるためにも、社内のDXリテラシーやスキルレベルの現状を把握することも欠かせません。DXリテラシーが低いとDX推進の課題になりやすく、社員からの理解を得にくくなります。またスキルについても全体の平均的なレベルと個別のレベルを把握することで、適した研修レベルを検討するのに役立ちます。社内のDXについて理解度は会社によって違いますから、必要に応じて外部の専門家の意見も取り入れつつ、最適な研修内容を選定しましょう。

社員のレベルに合わせた研修計画を立案する

社員のDXスキルのレベルを把握したら、具体的な研修計画を検討します。注意すべき点は、社員に求められるDXスキルのレベルは部署やキャリアによって異なるため、全員に同じ内容を提供すれば効果的とは限らないことです。現場で働く人には業務効率化につながるDXスキル、管理職には無駄なくマネジメントできるDXスキル、経営層ならDXを取り入れた成長戦略など、社員の分類に合わせた内容にしましょう。またDX研修は事前に全社員向けに説明会を開催し、なぜDX研修を行うのか理解してもらう必要もあります。社員の理解がなければ、研修に対するモチベーションは上がらず、むしろ会社への不満につながる可能性があります。会社の成長戦略の面だけでなく、社員のモチベーションや負担にも配慮した研修計画を検討してください。

実務でDXを導入する

DX研修を実施後、実務にもDXを導入することが重要です。DX研修で学んだ知識を活用する機会がなければ、社員のモチベーション低下を招きます。研修効果を確認する意味でも実務にDXを導入し、しっかりとDX研修で学んだ知識・スキルを生かせているか、業務効率化や生産性向上につながっているかを評価しましょう。そして効果が十分なら同様の研修を継続、逆に効果が不十分なら問題点を洗い出して次の研修内容に反映します。研修後の効果判定は必須ですから、実務での効果測定とフィードバックを続けながら、カリキュラムのレベルアップを図るのがおすすめです。

まとめ

会社のDX推進には、DX研修でDXリテラシー標準とDX推進スキル標準を高める重要性が高いです。近年、世界的にもIT技術は発展しており、AIの登場によって人に頼らなくてもできる作業が増えてきています。今後はさらにIT技術が進歩し、企業の成長と生産性を支えるにはDXが不可欠になってくるでしょう。 社がDXを推進するには既存人材のDXスキルを高め、業務プロセスのスリム化を図る必要があります。会DX研修について詳しく知りたい方は、外部の専門機関に相談してみることをおすすめします。

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