福祉教育とは?基本情報から必要性・期待される効果まで解説

  • 公開日:2023.07.11

    更新日:2023.07.12

    福祉という言葉は知っていても、具体的な意味や福祉教育という言葉を知らない人は少なくありません。この記事では、福祉教育の概要から必要性、基本的な内容、注意点、考え方の変化などを解説しています。自社で研修を実施したいと考えている人は、参考にしてください。

福祉教育の基本とは

福祉教育とは、どのようなものでしょうか。目的や狙いなど、基本的な情報を解説します。

福祉とは

福祉の「福」も「祉」も、どちらも「幸せ」という意味を持ちます。これまで、福祉は、高齢者や障がい者など日常生活に課題を抱えた人のものと考えられていました。
現在は、年齢、障がいの有無、国籍等の区別はなく、全ての人が福祉の対象であり、幸福で安定した生活の達成を目指すこととされています。

福祉教育の目的とは

福祉教育の目的は、福祉における課題を発見して、解決するために多種多様な立場の人と考え行動するための力を育むことです。1人で考えるのではなく他者と話し合いながら実践すれば、他者との関係について考えるきっかけになります。

福祉教育では身近な他者を対象として、他者の生活上の課題を自分事として意識してもらいます。多様性を認め合えば「ともに生きる力」を育めるでしょう。また、それぞれが生活課題や福祉課題に気付き、解決のために協働するプロセスが重要です。「地域住民の豊かな成長」や「地域福祉の推進」という側面も含まれます。

福祉教育の狙いとは

高齢者や障がい者だけでなく、すべての人が主体的に考え、社会の中で豊かで幸せな生活を送れる地域を作ることです。

すべての人が尊ばれ、差別されることなく支え合えるよう、「共に生きる力」を育みます。人にはそれぞれ違いがあり、人と違うことは当たり前だという教育を進めなければなりません。

福祉教育の必要性

現代の子どもたちは、地域の人々と繋がる機会が少なくなってきています。子どもたちが、高齢者や障がい者だけではなく、様々な年代、立場の人々とコミュニケーションをとる中で、生命の尊厳や人間らしい生き方について学び、支えあうことの素晴らしさを知る教育活動が重要です。

福祉教育に期待される効果

福祉教育に期待される効果は以下の5つです。

  • ・地域の一員としての自覚
  • ・対人関係の向上
  • ・課題を見つけ解決する力
  • ・自己肯定感の育み
  • ・基本的人権の重要性の実感

詳細を解説します。

地域の一員としての自覚

地域や他者のことを知れば、地域への愛着が生まれます。地域の一員として、地域の人と支え合いながらともに生きることで、「社会参加」への意識を抱けるようになるでしょう。

対人関係の向上

現在は、地域の人との関わりが減少しています。高齢者や障がい者など地域の人との交流によって、さまざまな気付きを得られるでしょう。交流やふれあいの過程でさまざまな価値観を知り、他者を思いやる気持ちが深まれば、人間関係を深めやすくなります。また、社会生活を送る際の規範やルールも学べます。

課題を見つけ解決する力

福祉教育を通して、これまで気付けなかった地域の課題を見つけて、解決策を考えられるようになります。課題について調べたり話を聞いたりして、課題解決のために行動できる、社会人に求められる力を身につけられるでしょう。更に、地域の福祉力も向上できます。

自己肯定感の育み

社会や他者に役立つ体験を通して、人から感謝を伝えられ、それに感動する機会を得られます。自分にもできる、自分は必要とされていると実感できるでしょう。さまざまな体験や交流が、達成感や充実感に繋がります。

基本的人権の重要性の実感

さまざまな人たちの生き方を理解することは、お互いの価値観の認め合いに繋がります。人はそれぞれ違って当たり前です。自分らしい生き方が制限されることは許されない、という基本的人権の重要性に気付けます。

福祉教育の注意点

福祉教育の注意点は以下の2つです。

  • ・体験学習だけでは福祉の理解に繋がらない
  • ・自ら気付ける働きかけが大切

詳細を解説します。

体験学習だけでは福祉の理解に繋がらない

福祉教育では多くの場合、車いす体験やアイマスク体験などにより、高齢者や障がい者の動きにくさを体験します。ただし、体験学習だけでは、障がいがあると大変というマイナスの部分しか伝わらず、「共に生きる」社会の実現には繋がりません。体験を通して機能障害、能力低下により生じる活動や参加の制約があると気付き、何があれば解決できるのかを考えることが重要です。実践を通して何を感じて欲しいのかを明確にし、目的に合ったプログラムを考えましょう。

自ら気付ける働きかけが大切

福祉教育の企画者は、当事者に話を聞いたり体験学習を実施したりするだけでなく、参加者が「全員が同じようにできる方法」を考えられるようにします。その方法があれば自分たちと同じだと気付けるように、働きかけましょう。解決するための行動力を養うことが重要です。

福祉教育の考え方の変化

現在の福祉教育の考え方が作られるまでには、いくつかの変化がありました。流れを解説します。

バリアフリーの歴史

バリアフリーという言葉が使われるようになったのは、1974年の国連障害者生活環境専門家会議で、『バリアフリーデザイン』が作成されたことが、始まりだと言われています。1985年頃から本格的にバリアフリーの取り組みが始まり、現在は、高齢者や障がい者等が生活する上での物理的な障害や障壁を取り除いた状態にするだけでなく、社会的、制度的、心理的なすべてのバリアの除去という意味で用いられています。

ICIDH(国際障害分類)

ICIDHとは、1980年にWHO(世界保健機関)が発表した、疾病だけではなく、生活や人生の問題を含めて障害として捉える考え方です。「機能障害」「能力障害」「社会的不利」の3つの段階があることを示しました。しかしながら、障害が社会的不利につながるといった一方的な視点から問題視されるようになりました。

ICF(国際生活機能分類)

ICF(国際生活機能分類)は、ICIDHを改訂したもので、2001年にWHO(世界保健機関)で新たに採択されました。
「心や身体の機能や障害の状態は生活の環境によっても左右される」「同じ障害でも性格や成育歴、価値観によって日常生活での活動や参加の状態は変化する」という考え方です。

障害の捉え方から生まれた考え方ですが、福祉を環境を含め、多角的に捉えて考えていく際に役立つため、福祉を考える際にも適応できるとして重要視されています。

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まとめ

福祉とは、あらゆる状況の人を対象として、それぞれが知恵を出し合い問題を解決し、支え合って幸せな人生を送れるようにすることです。福祉教育は、福祉に関する理解と関心を深め、すべての人が社会の中で幸せな生活を送れるような地域を作ることを目的としています。

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