ダイバーシティマネジメントとは? 必要性やメリット・デメリット・成功のポイントを解説

  • 公開日:2023.05.30

    更新日:2023.05.30

    ダイバーシティマネジメントを取り入れると、多様な価値観や考え方を受け入れられる企業経営ができます。企業にさまざまな価値観の人が集まって運営することで、人材の確保や新商品やサービスの開発なども可能です。この記事では、ダイバーシティマネジメントの概要やメリット、デメリット、成功のポイントなどを解説します。ぜひ参考にしてください。

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ダイバーシティマネジメントとは

ダイバーシティマネジメントとは、多様化した組織を構築して成果につなげる施策です。従来の国内の雇用は男性が中心でしたが、女性の社会進出やグローバル化に伴い注目されています。性別や年齢、属性、価値観、スキルなど、多様な個性を受け入れ、活かすことで組織を成長を目指します。

ダイバーシティマネジメントの必要性

ダイバーシティマネジメントは、以下3つの理由から必要性が高まっています。

  • ・市場のグローバル化
  • ・労働者不足
  • ・価値観の多様化

ここでは、それぞれの特徴について解説します。

グローバル化に対応できる

昨今、国内の市場は縮小しており、グローバル化した市場に対応する必要性が増しています。日本の国際競争力はOECD諸国のなかでも低く、加盟36カ国中21位とG7のなかで最も低い順位です。今後はグローバル化に対応するために、日本人と文化や価値観が異なる人たちに向けて、商品やサービスを展開する必要があります。

※参考:IMD世界競争力ランキング|IMD World Competitiveness Online(https://worldcompetitiveness.imd.org/rankings/WCY
※参考:OECD諸国の労働生産性の国際比較|公益財団法人 日本生産性本部(https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/R2attached2.pdf

労働者不足の解消につながる

国内の人口は、2004年をピークに減少し続けています。2050年の人口は9,515万人まで減少し、生産年齢人口が2005年に比べて約3,500万人減少することが予測されます。国内の労働力が不足することで人材の採用が困難になるため、外国人労働者の雇用をはじめとする、多様な人材の確保が必要です。

※参考:市町村合併の推進状況について|総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf

多様な価値観に対応できる

企業には、労働者や消費者の価値観の変化に対応した経営が求められています。たとえば、従業員の柔軟な働き方を認めたり、さまざまな価値観に合わせて商品やサービスを開発したりするなどの対応が必要です。今後の企業は、従来の画一的な方法ではなく、時代の変化に適応したマネジメントを実施することが重要といえます。

ダイバーシティマネジメントのメリット

ダイバーシティマネジメントのメリットは、以下の3つです。

  • ・企業の社会的な価値が高まる
  • ・多様な人材を確保できる
  • ・イノベーションにつながる

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

社会的な価値が高まる

企業がダイバーシティマネジメントを実施すると、イメージの向上やブランディングにつながります。多様な価値観を活用する取り組みは、社外にアピールするために有効です。たとえば、海外人材やLGBTQの人材の活躍など、多様な価値観が受け入れられる体制を構築することによって、企業のイメージアップを期待できます。

多様な人材を確保できる

ダイバーシティマネジメントを実施すると、労働不足の解消や優秀な人材の獲得につながります。リモートによる自宅勤務や時短勤務など、多様な働き方を受け入れると人材獲得のチャンスが広がるため、女性やシニア層などの働き方が制限されていた人材を確保しやすくなるでしょう。

労働者に働く意欲や能力がある場合でも、企業の労働条件を理由に働けない人は多くいるため、ダイバーシティマネジメントを推進することは重要です。

イノベーションにつながる

多様な価値観や背景をもった人が集まることで、組織にさまざまなアイデアや発想が生まれやすくなります。企業に革新的なアイデアや創造的な発想が生まれると、イノベーション(技術革新)の創出につながりやすくなります。新商品やサービスの開発する際に課題が発生した場合でも、さまざまな視点や異なる考え方を活用して解決につなげることが可能です。

ダイバーシティマネジメントのデメリット

ダイバーシティマネジメントのデメリットは、以下の2つです。

  • ・コミュニケーションが難しくなる
  • ・生産性が低下する可能性がある

ここでは、それぞれのデメリットや注意点などについて解説します。

コミュニケーションが難しくなる

多様な価値観や考え方の人材が集まると、言語や文化などの違いによってコミュニケーションが難しくなります。また、リモートや時短勤務などを導入すると、従業員同士のコミュニケーションの機会が少なくなります。

企業内のコミュニケーションに問題が起きると、意見の対立が発生しやすくなるため、注意が必要です。従業員同士のトラブルも発生しやすくなるので、ダイバーシティにおいてお互いの意見を尊重し合うことが重要です。ミーティングやレクリエーションなどを開催し、従業員のコミュニケーションの機会を増やしましょう。

生産性が低下する可能性がある

多様な働き方や価値観を受け入れると、マネジメントが難しくなり、組織の生産性の低下を招くことがあります。従業員のなかでコミュニケーションに齟齬が生まれて、生産性の低下にもつながる場合があるため注意しましょう。さまざまな価値観に合わせて人事制度を設けると、評価制度に不満をもった従業員が離職する可能性もあります。

ダイバーシティマネジメントの進め方

ダイバーシティマネジメントは、以下3つの工程で取り組みましょう。

  • ・目的を明確にする
  • ・環境を整備する
  • ・施策を実践する

ここでは、それぞれのプロセスについて解説します。

経営理念と行動指針を明確にする

ダイバーシティマネジメントは、明確な経営理念と行動指針をもとに実施しましょう。企業内に文化や価値観が異なる人材を集めると、意見の衝突や行動に迷いなどが生じるためです。組織の多様な価値観や考え方をまとめるためには、経営理念をもとに従業員一人ひとりが判断し、議論できる体制をつくる必要があります。

環境を整備する

企業の目的や目標などの成果を達成するには、環境の整備が必要です。たとえば、従業員の経験やスキルなどが活かせる部署に配置したり、成長を促すための経験を積める部署に移転したりするなどを検討しましょう。企業内で多様な働き方を認めるために、就業規則の変更や成果を判断するための評価制度の見直しも行います。

施策を実践する

企業の経営理念や行動指針に沿って、ダイバーシティマネジメントの施策を実行します。従業員の多様性を活かすための機会や場を提供するために、マネジメント側は社員からの提案が反映される体制を整えて、施策の実行と改善を繰り返しましょう。施策を実践する際は、従業員が共通価値観を共有したうえで、多様な価値観を認めた働き方が必要です。

ダイバーシティマネジメントの成功事例

ダイバーシティマネジメントは、数多くの企業で取り組まれている施策です。ここでは、以下2つの成功事例を紹介します。

  • ・人事制度を整備した運輸会社
  • ・女性管理職を増やした日用消費財メーカー

運輸会社の事例

ある運輸会社は、ダイバーシティを実現するための人事制度を導入しました。同社はトランスジェンダーの社員が働きやすい職場環境を整備しており、ホルモン治療の理解や、休業時に同性のパートナーを法律婚の配偶者と同様に扱うなどに取り組んでいます。

同社は従業員のカミングアウトをきっかけに、経営者自らが性的指向や性自認について調べたうえで制度を構築しました。従業員から多様な視点を取り入れるため、外国人採用を毎年行い、3か国の外国籍の正社員を雇用するだけでなく、障がい者雇用などの雇用も推進しています。

日用消費財メーカーの事例

ある日用消費財メーカーは多様性の受容と活用を掲げ、ダイバーシティマネジメントの取り組みとして、女性管理職を増やしました。2013年に女性管理職比率30%を達成し、役員相当級も20%を超え、2020年に女性管理職比率48%を実現しています。

同社の取り組みは、ダイバーシティ&インクルージョンに関する取り組みを評価する「D&I Award 2022」の最高位ランクの賞に2年連続で認定されました。同社は今後もジェンダー平等や障害のある人に対する取り組みを強化する方針を示しています。

ダイバーシティマネジメントを成功させるポイント

ダイバーシティマネジメントを成功させるポイントは、以下のとおりです。

  • ・評価基準を明確にする
  • ・コミュニケーションを円滑にする
  • ・制度やシステムを整備する
  • ・企業の価値観を浸透させる

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

評価基準を明確にする

ダイバーシティマネジメントを実施する際は、多様な人材や働き方を受け入れることになるため、明確な評価基準が必要となります。従来の均一的な評価基準のもとでダイバーシティマネジメントを実施すると、一部の従業員に負担がかかってしまい、不平等な評価基準に不平不満が生まれる可能性があります。

従業員から不満が出ない評価を実施するためには、それぞれの従業員の働き方や業務内容等を考慮して、評価基準を明確にしなければなりません。評価制度は一度作成したうえで、定期的な面談や1on1ミーティングなどを行い、制度の見直しや作り直しを前提に調整を続ける必要があります。

コミュニケーションを円滑にする

多様化した人材や価値観を活かすには、従業員同士のコミュニケーションを円滑にすることが重要です。ダイバーシティマネジメントを行う企業には、国籍や言語、文化、価値観など、さまざまな考えをもつ従業員の活用が求められます。従業員が安心してコミュニケーションを取るために、従業員が気軽に話し合える環境を提供しましょう。

たとえば、休憩場所やミーティング、社内食堂などを用意したり、コミュニケーションツールを導入したりするなどの対策が必要です。職場に円滑なコミュニケーションが生まれると、従業員同士の対立や誤解の予防につながり、多種多様な価値観やスキルを活かせる職場環境の構築ができます。

制度やシステムを整備する

企業に多様な人材や価値観が受け入れられる働き方を実施するには、制度の整備やインターネット環境のようなインフラなどの環境整備が必要です。従業員の働き方に対応するために、介護や子育てなどの支援制度を設けて、時短勤務や在宅勤務のような働き方を実施しましょう。

海外の人材を採用する際は、働き方だけでなく、日本社会のルールになじめるようなサポートも必要です。国ごとに文化や風習などが異なるので、従業員の情報を事前に把握して多様な働き方が受け入れられる体制を構築します。評価制度を見直す際は、従業員からの不満を考慮して、不公平な制度にならないように注意しましょう。

企業の価値観を浸透させる

企業の価値観を浸透させると、多様な考え方や価値観の従業員が集まった場合でも、足並みをそろえて事業に取り組めます。従業員が企業の価値観や存在意義に共感できると、多様な人材が集まった場合でも共通の認識をもって働きやすくなるでしょう。

多様な価値観を活かしながら組織の統一性を保つには、従業員間に企業の価値観を浸透させることが重要です。ダイバーシティマネジメントにおいて、個人の考え方や価値観を尊重するために、組織の機能を落としてはなりません。企業が多様な人材を活かすためには、従業員同士が団結して業務に取り組めるように、従業員が共感できる価値観のもと、指針や目標をつくりましょう。

ダイバーシティマネジメントの教育ならユーキャンがおすすめ

ユーキャンには、ダイバーシティマネジメントに必要な知識を学べて、実際に活用できるスキルをまとめて習得できる「管理職(課長・部長)向けeラーニング」が用意されています。たとえば、コミュニケーションや目標設定など、多様な価値観に合わせてマネジメントできるスキルを効率よく学ぶことが可能です。

ユーキャンの講座はオンラインの受講によって「いつでもどこでも」学習でき、ワークと確認テストによる振り返りで実践的な考え方が身につけられます。また、研修との組み合わせ受講もできるので、ダイバーシティマネジメントの教育におすすめです。

まとめ

ダイバーシティマネジメントは、多様な価値観をもつ従業員が活躍できる働き方を実現できる施策です。ダイバーシティマネジメントの施策に成功すると、グローバル化した市場への対応や労働者不足の解消などにつながります。ただし、コミュニケーションや評価制度の設計などが難しくなるため、従業員への教育の実施が必要です。

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