パーパス経営とは? 意味やメリット、企業事例まで解説!

  • パーパス経営とは? 意味やメリット、企業事例まで解説!

    公開日:2023.02.22

    更新日:2024.03.05

    パーパス経営は企業価値を高めたり、商品やサービスの購買を促進したりする経営手法です。社外の関係者や消費者から評価を得るためには、利益を優先する体制を見直し、社会や環境に配慮した事業活動が求められます。この記事では、パーパス経営のメリットや条件、実践方法などを解説します。パーパス経営の取り組みを実施する際に、ぜひ参考にしてください。

パーパス経営とは

パーパス経営は、社会に貢献して自社の価値や存在意義を明確にする経営手法です。「パーパス(purpose)」とは、目的や意図の意味を持ちます。昨今の不安定な世界情勢や不景気の影響により、企業には社会的な貢献が求められるようになりました。社会支援を行う企業は、消費者に支持されやすくなるため、企業の運営にとってパーパス経営は必要性が高いといえます。

パーパスは「存在意義」

パーパス経営におけるパーパスとは、自社の存在意義や目的を意味します。パーパス経営は企業としての存在意義、目的、社会貢献などを軸として考え、自社の事業に取り入れていく経営方法です。従来の企業は利益を追求することを重視していました。しかし近年は日本においてパーパス経営を重視する企業が増加しており、注目を集めています。

パーパス経営とは目的(パーパス)を掲げて企業活動をすること

パーパス経営の根幹は、企業としての「目的(パーパス)」を掲げて企業活動をすることです。パーパス経営では単に企業としての利益を追求するだけでなく、社会における自社の存在意義を重要と考えます。
例えば自社の役割を踏まえて、会社がなくなると社会においてどのような損失があるか考えることがパーパス経営の考え方です。自社の製品が電化製品やIT分野など、産業でどのような役割を持ち、存在意義があるか理解することが基本です。パーパス経営を進めることで社会からの認知度が高まり、自社を支持する動きや共感が広まります。そして自社への信頼が高まることにもつながり、社会における会社の地位を確立することにもなるでしょう。

パーパスとMVVの違いは?

パーパスと混同されやすい用語として、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)があります。MVVとはそれぞれ次のことを意味します。

・ミッション(Mission):企業の成し遂げたいこと、目標
・ビジョン(Vision):企業として目指すべき姿、理想像
・バリュー(Value):企業としての価値観、行動規範

MVVは人に対して自社の目指す未来をアピールする際に使われます。
一方パーパスは人よりも広い視点で、社会全体に対して自社の存在意義を伝えるもので、社会における価値に重点を置いている点が違いです。そのためパーパス経営ではSDGsやEVシフト、IoTなどの社会課題への貢献について注目します。

パーパス経営が注目される理由

企業は社会や従業員の気持ちの変化に対応することが求められます。ここでは、パーパス経営が注目される理由を解説します。

サステナビリティ経営やSDGsへの取り組みが始まっている

近年注目を集めているサステナビリティ経営やSDGsも、パーパス経営が注目される理由になっています。世界的な環境意識の高まりによって、顧客からも企業が社会問題への意識を持っているかどうかを評価されるようになりました。企業としてカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーへの取り組みをしているか、その点が企業の価値を判断するステータスになりつつあります。こうしたサステナビリティ経営やSDGsへの取り組みは、パーパス経営との親和性が高いものです。パーパス経営は企業が社会のためにどのような貢献をしているのか、存在意義や目的を打ち出す経営手法です。パーパス経営が社会から高く評価されれば、社会に貢献する企業としての地位が確立され、継続的な成長が見込めます。
※参考:SDGsとは?

企業のDX化が求められている

パーパス経営が注目される背景には、国内企業のDX化が求められている点もあります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用してビジネスや日常生活の利便性を高め、より豊かにすることを目指します。企業のDX化によって人手不足の解消、業務効率化にもつながっており、生産年齢人口の減少局面にある日本において重要です。
また、DX化によって自社が顧客や社会から求められていることが明確になり、企業としてのあり方を考える機会にもなっています。パーパス経営は自社が社会に果たす役割を経営に活かすものです。DX化によってサステナビリティ社会やSDGsを推進する企業も増加しており、パーパス経営では重要な要素といえます。

ミレニアル世代やZ世代の価値観に合わせる

パーパス経営が注目されるようになったのは、ミレニアル世代やZ世代とも関係があるとされています。ミレニアル世代は1980年代から1990年代半ばに生まれ、2020年頃に20代後半から30代後半の世代です。Z世代はミレニアル世代より後に生まれ、2020年頃に10代から20代前半になる世代を指します。ミレニアル世代以降はパソコンやインターネット、携帯電話、スマートフォンなどと多く接してきています。ミレニアル世代よりも前の世代に比べ、多くの情報を収集することに慣れており、社会問題に対する関心と理解も高い傾向です。消費者の中でも若い世代は購買意欲が高く、顧客の中心になっていくと予想されます。企業が絶えず成長していくには、ミレニアル世代やZ世代に関心を持ってもらうことが重要になるでしょう。

ESG投資の広がり

ESG投資の広がりも、パーパス経営においては重要です。
ESGとは次の3つを意味します。

・Environment:環境
・Social:社会
・Governance:企業統治

従来は多くの利益をもたらす企業に投資し、大きなリターンを狙うのが投資家の基本スタンスでした。
しかし、世界的な環境問題への意識の高まりや利益追求による企業の不祥事増加に伴い、ESG投資の注目度が高まっています。
こうした投資家の動きに呼応する形で、企業でも環境意識が高まり、投資家からの注目を集めようとする動きが加速しました。パーパス経営は現代の投資スタイルを意識した結果、企業の間で広まりを見せるようになったと考えられます。

VUCA時代の到来

VUCA時代が到来したことも、パーパス経営が注目される要因です。
VUCA(ブーカ)は次の4つの頭文字です。

・Volatility:不安定
・Uncertainly:不確実
・Complexity:複雑
・Ambiguity:不透明

VUCA時代は既存のビジネスモデルが通用しにくく、社会や個人の意識が多様化したことで、同じ企業内でも同じ方向性に舵を切ることが難しいといわれています。
VUCA時代では当たり前の経営戦略では通用しないため、予想できない状況を想定した経営戦略が必要とされています。想定できないことを戦略に組み込むことは難しいですが、パーパス経営は難しい状況でも統一した価値観として重要です。あらゆる企業が変化を求められる時代だからこそ、パーパスを根底に置いた経営が重要となります。

パーパス経営に必要な5つの条件

パーパス経営には、社会と自社、従業員への配慮が必要です。ここでは、パーパス経営に必要な5つの条件について解説します。

社会課題を解決する

パーパス経営には、環境問題だけでなく、人権や労働などの社会課題への取り組みが必要です。身近な社会課題と向き合う企業は、事業の関係者であるステークホルダーから共感を得られ、事業に取り組みやすくなります。

自社に実現可能な目標を掲げる

社会的な課題の解決は、自社に実現できるかどうかが前提です。実現不可能な大きな目標を掲げると、経営に失敗する可能性があります。社会的な課題に対して、パーパスを具体的な活動に落とし込みましょう。

自社の利益につなげる

パーパス経営は社会課題の解決だけでなく、利益を生み出す活動が必須です。経営は慈善活動ではないので、企業を存続させるために自社の利益につながる活動を実施しましょう。

自社に合理性がある活動を行う

社会活動には、自社のノウハウや知見を活かす必要があります。自社の活動と関連のない活動は長期的な利益を生まない可能性が高くなります。自社の活動が市場から理解を得られるように、合理性のある活動を実施しましょう。

従業員を鼓舞できる活動を行う

パーパス経営は、従業員が自社の活動に社会的な意義を感じることが重要です。パーパスが明確になると、従業員がモチベーションを維持できるため、長期的に社会的な課題の解決に取り組めます。事前に自社の目的を明確にしたうえで、事業を社会へ役立てましょう。

パーパス経営のメリット

企業の社会的な活動は、自社の利益につながります。ここでは、パーパス経営のメリットを解説します。

社外からの評価が高まる

パーパス経営を実施すると、株主や取引先などのステークホルダーから、社会的な活動を評価されます。企業の活動に共感が得られると、多くの人から支持されやすくなるためです。自社の活動が社外から評価されると、企業の発展につながります。企業の活動は利益以外に、社会的な活動が評価されることを考慮しましょう。

ブランディングにつながる

企業の社会的な課題に対する取り組みが評価されると、企業イメージを向上させられます。顧客に社会活動の内容を示すことにより、企業の存在を連想させることが可能です。企業が社会的な存在意義を示すと、応援してくれる人が増えてファンを獲得できます。社会貢献を通して自社のブランディングができ、商品やサービスの購入を促します。

従業員のモチベーションを向上させる

企業が社会的な活動を実施すると、従業員が自社の役割を認知し、働くモチベーションが高まりやすくなります。自社の活動に誇りや価値を感じるようになり、勤務意欲の向上や離職率の低下にもつながります。企業のパーパスが明確になると、ロイヤリティの高い優秀な人材の獲得が可能です。企業の経営は、利益を追求しすぎない姿勢が求められます。

パーパス経営に成功している企業の事例

日本国内においてもパーパス経営に成功している企業の事例はたくさんあります。

・国内大手電気機器メーカー
・国内大手銀行
・国内大手食料品メーカー
・国内大手総合エレクトロニクスメーカー

4つの企業の事例について紹介します。

国内大手電気機器メーカーA

国内大手電気機器メーカーAのパーパス経営は2019年にPurpose & Valueとして、企業全体に共有されました。A社の全社員に共通したパーパスを持たせることで、コロナ流行期のリモートワークへの移行でも業務効率と生産性の維持を実現しました。グループのパーパスとして「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というものを掲げています。そのうえで全社にパーパスを浸透させるため、キービジュアルの作成やパーパスへの思いを書いた代表からの手紙、社員へのインタビュー記事を公開しました。
コロナウイルスが流行する中であっても、全社員が統一した目的意識を持つために、A社がパーパス経営を有効な施策の1つとして活用した事例です。

国内大手銀行B

日本のメガバンクであるBは「世界が進むチカラになる」というパーパスを掲げています。
Bグループのパーパスには、環境問題や食糧難、少子高齢化、経済成長の低迷、コロナウイルスの流行といった課題に対し、社会をリードする存在になることへの思いが詰め込まれています。金融分野はDXの導入も進む分野であり、異業種との関わりも多い業界です。日本のメガバンクの1つとして、世界でもリーダーシップを発揮していくためにパーパス経営を導入しています。

国内大手食料品メーカーC

C社はパーパスを「食と健康の課題解決のその先へ アミノサイエンス🄬により人・社会・地域のWell-beingへの貢献、すなわり”Eat Well、Live Well.”を実現していきます」としています。
そのうえで根底にある理念体系を提唱しました。
パーパスを全社員に浸透させるために、組織目標と個人目標の設定、目標発表会、ベストプラクティスの表彰、エンゲージメントサーベイなどを行っています。C社ではパーパスを定めるために2年以上の議論を重ね、現在のパーパスを会社全体に共通認識として共有しています。

国内大手総合エレクトロニクスメーカーD

D社のパーパスは「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」です。パーパスの実現に向けてGRB(グローバルレスポンシブルビジネス)という枠組みを確立し、人権・多様性、ウェルビーイング、環境などの6つの重要課題にグループとして横断的に取り組むとしています。
また、パーパス実現に向けて2021年から新評価制度の「Connect」も導入しました。
Connectではメンバーとの想いの共有、ビジョンにおけるインパクト、パーパスを起点とした個人の成長などを評価する仕組みです。2022年には全社員を対象に導入され、社員のチャレンジ精神を高める要因になると期待されています。

まとめ

企業がこれからの未来も成長を続けていくには、パーパス経営の意識は不可欠です。
従来の利益追求だけの意識から、企業の存在意義や社会に貢献できることを明確に打ち出していくことが大切です。もちろん、パーパスを掲げるだけでなく、実現していくための具体的な施策も進めていく必要があります。パーパスは自社の経営陣だけで考えるのではなく、顧客や社会からの企業に対するイメージ、社員の考える社会貢献や企業の存在意義も参考に取り入れましょう。広く社会から受け入れられるパーパスを打ち出すことで、企業の存在価値は大きく高まります。

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