人的資本経営とは? 注目されている背景や実践する手順まで解説

  • 公開日:2022.12.20

    更新日:2023.01.05

    人的資本経営は、世界中で注目が集まっている経営のあり方です。この記事では、人的資本経営を行うことを検討している企業担当者に向けて、人的資本経営の概要について解説します。注目されている背景やメリット、実践する際の手順についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

人的資本経営とは?

人的資本経営とは、経済産業省によると「人材を資本としてみなし、人材の価値を最大限に引き出すことにより、中長期的な企業の価値向上につなげる経営のあり方」と定義されています。企業が投資する資本は「有形資本」と「無形資本」の2つに分類され、人的資本は無形資本にカテゴライズされます。
※参考:人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~ (METI/経済産業省)

人的資本経営と従来の経営の違い

従来の経営では、人材は「資源」の1つと捉えられており、年功序列や終身雇用などで人材の囲い込みが行われてきました。一方で、人的資本経営では人材を「資本」として捉え、企業と人材が選び合う関係へと変革しています。

人的資本経営が注目されている背景

人的資本経営が注目されるようになった2つの背景について解説します。

ESG投資への関心

ESG投資への関心の高まりは、人的資本経営が注目された背景として挙げられます。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)のそれぞれの頭文字をとったワードです。人的資本経営は、社会(Social)、企業統治(Governance)の2つに深く関連があることから推し進める企業が増えています。

人材と働き方の多様化

人材と働き方の多様化は、人的資本経営が注目された背景の1つです。現在では、外国人従業員やシニア世代などが増加しているため、従来の人材管理では限界に達しています。そのため、それぞれの人材に適した働き方で価値を引き出す、人的資本経営が必要とされています。

人的資本経営への取り組み

人的資本経営への取り組みについて、海外と国内の取り組みに分けて解説します。

海外における人的資本経営への取り組み

人的資本の情報開示に関する動きは、日本より先に欧米から広まりました。2018年12月に国際標準化機構が「ISO30414」を発表しました。「ISO30414」とは、人材マネジメントの11領域に関する指標が提示されている、世界初となる人的資本に関する情報開示のガイドラインのことです。

2020年8月には、米国証券取引委員会がアメリカの上場企業に対して、人的資本の情報開示を義務付けました。

国内における人的資本経営への取り組み

国内では、2020年9月に経済産業省より「人材版伊藤レポート」が発表されてから、人的資本の情報開示の重要性が広まりました。2021年6月には、東京証券取引所と金融庁により、「コーポレートガバナンスコード」が改訂され、人的資本に関する開示・提示と、取締役会による実効的な監督が追記されました。

金融庁は、2023年3月期以降、有価証券報告書を発行する大手企業4,000社に対し、人材投資額や社員満足度などの人的資本に関する情報の記載を求めています。

人的資本経営における「3つの視点」「5つの共通要素」

人材版伊藤レポートとは、経済産業省が開催した、人的資本に関する研究会の成果をまとめたレポートです。ここでは、人材版伊藤レポートをもとに、人的資本経営における3つの視点、5つの共通要素について解説します。

人的資本経営における「3つの視点(3P)」

人材版伊藤レポートでは、人的資本経営において人材戦略に必要な3つの視点(Perspectives)を定めています。

1.経営戦略と人材戦略の連動
2.As is-To beギャップの定量把握
3.企業文化への定着

人的資本経営を進める際には、経営戦略と連動させた人材戦略を策定し、実行する必要があります。目標(To be)が決まったら、目標とのギャップ(As is-)を定量的に把握し、定期的に見直すことが大切です。企業文化として定着させるためには、経営陣が人材戦略に関して積極的に発信し、従業員と直接対話するのが有効です。

人的資本経営における「5つの共通要素(5F)」

人材版伊藤レポートでは、人的資本経営において人材戦略に必要な5つの共通要素(Factors)を定めています。

1.動的な人材ポートフォリオ
2.知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
3.リスキル・学び直し
4.従業員エンゲージメント
5.時間や場所にとらわれない働き方

経営戦略を実現する際には、必要な人材を定義し、採用・育成計画を立てる必要があります。中長期的に企業価値を高めるためには、多様な人材を取り込むことも大切です。個人のリスキル・学び直しは、従業員の価値観の多様化に対応するために必要です。

人的資本経営のメリット

人的資本経営は、従来の経営にはないメリットが得られる経営スタイルです。ここでは、人的資本経営のメリットについて解説します。

投資家が投資してくれる可能性がある

投資家が投資してくれる可能性がある点は、人的資本経営のメリットとして挙げられます。現在では、人的資本に投資する企業に関心をもつ投資家が増えています。そのため、多くの投資家に人的資本経営を推進している企業だと知らせることで、積極的な投資を促せるでしょう。

企業ブランドの向上につながる

企業ブランドの向上につながるという点も、人的資本経営のメリットです。人的資本経営を行っていると、従業員のことを考えている企業であると想定されるためです。投資家からだけではなく、世間からの企業イメージも向上することが期待できます。

生産性や従業員のエンゲージメントが向上する

生産性やエンゲージメントが向上するという点も、人的資本経営のメリットの1つです。人的資本に投資することで、従業員の質が上がり、生産性も向上するためです。また、働きやすい環境の整備により、エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。

人的資本経営を実践する際の手順

人的資本経営を行う際の手順について、4つのステップに分けて解説します。

1.経営戦略と人材戦略を連動させる

人的資本経営を実践する際は、まずは経営戦略に沿った人材戦略を策定しましょう。経営戦略を実現するためには、人材戦略と連動させることが重要です。経営に関する課題を整理したうえで、人材戦略に反映させるのがポイントです。

2.目指す姿と現在の姿のギャップを明確にする

自社が目指す姿(To be)を設定し、現在の姿(As is)とのズレや違いなどのギャップを明確にしましょう。ギャップを把握する際には、基本的には人事がイニシアチブをとって、従業員の経験やスキルを収集し、分析します。

3.ギャップを埋めるための施策を考える

自社が目指す姿と現在の姿のギャップを埋めるための施策を考えましょう。施策を考案する際には、施策を投資として捉え、自社が目指すべき姿から逆算して考えるのがポイントです。

4.施策を実行して効果検証する

施策を実行して、効果検証をしましょう。施策の精度を高めるポイントは、PDCAを回すことです。定期的にモニタリングして、施策による変化や目標達成度を把握するようにしましょう。

まとめ

人的資本経営は、世界中から関心が集まっている経営のあり方です。人的資本経営を行う際には、経営戦略に沿った人材戦略を策定し、自社の目指す姿と現在の姿の違いを明確にしましょう。ギャップを埋めるための施策を考えたら、実行して効果検証をします。

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