ロールプレイングとは
ロールプレイングは、役割という意味のロール(role)と、演じるという意味のプレイング(playing)を合わせて作られた言葉です。実際の場面や状況を想定し、疑似体験を通して研修を行う手法で、問題点や課題点に対してどのように対応するか、解決方法を学びます。
日本では、ロープレと略して呼ばれるケースもあり、企業の新人研修や営業活動の準備など、新しい環境や業務に慣れるための学習方法として活用されています。
ロールプレイングの目的
ロールプレイングは、座学だけでは難しく不足している経験値を補い、現場で役立つ実戦的なスキルや知識を学習するために行われます。 新しい現場や業務にいきなり順応するのは困難であるため、あらかじめその現場や業務を想定した環境を用意し、習得した技能を定着させたり、起きた問題点や課題点に対する解決方法を考える研修方法です。
一般的に、即戦力としてスキルや知識を付けてほしい場面で活用されます。ビジネスシーンでの例には、接客や営業スキルの向上のために用いられるケースが多くあります。
ロールプレイングを行うメリット
ロールプレイングの実施により、従業員の知識を深め、スキルを高めることができます。具体的には、以下にあげる4つのメリットがあります。
- ・業務内容を把握でき業務に必要なスキルが身につきやすい
- ・自身の課題を発見して改善に役立てられる
- ・参加者から具体的な改善ポイントを見つけてもらえる
- ・接遇マナーや会話力が身につき対応力が向上する
業務やスキルが身につきやすい
実際の業務環境や場面を想定した学習ができるため、業務内容やスキルが身につきやすくなります。
また、座学よりも自発的に学習できるのもポイントです。ビジネスシーンで必要となるスキルや知識は、普段の生活では使わないものも多いため、ロールプレイングで実際に身体を使って覚えるのは非常に効率的です。
実践に即した課題がわかる
いざ本番というときに、スキルや知識が足りていないとトラブルの要因になってしまいます。しかし、 ロールプレイングで実際のシチュエーションに近い場面を経験しておけば、実践で不足している部分が見つけやすくなるため、課題発見に役立つでしょう。具体的な課題が見つかれば、スキルの見直しや改善策の立案ができ、実践に備えられます。
具体的なフィードバックを受けられる
実際の場面を想定した環境でスキルや知識を試せるため、より具体的なフィードバックが受けられます。また、ロールプレイングは基本的に複数人で行われるため、客観的な意見や指摘がもらえる点もメリットです。自分だけでは気づけない課題や不足している部分が分かるため、より高いレベルでスキルを身につけられます。
コミュニケーション力が上がる
ロールプレイングは、対人形式で実施するケースが多いため、コミュニケーション力の向上も期待できます。人と接するときの態度やトークのバリエーションの見直しができるため、より高い対応スキルが身につくでしょう。
また、人と接するのが苦手な人は、対人コミュニケーションに対する精神面も鍛えられます。ロールプレイングでトライ&エラーを繰り返し、会話の組み立てが上手くなれば、説得力のある話し方ができるようになります。
ロールプレイングの種類
ロールプレイングは以下の4種類に分けられます。活用シーンによって適切な種類のロールプレイングを使い分けると、より効果的です。
- ・問題解決型:実際に生じた問題に対する解決策を発見する方法
- ・ケース型:具体的に設定した場面や状況下で行う方法
- ・モデリング型:手本となる人員を参加者が模倣する方法
- ・グループロールプレイング:参加者同士が役割を交代しながら行う方法
問題解決型
問題解決型のロールプレイングとは、実際に現在進行形で発生している、または過去に発生した問題を題材にしてロールプレイングを実施する方法です。「リアルロールプレイング」とも呼ばれ、問題に対して多方面から協議し、解決策を見つけるために用いられます。伸び悩んでいる新人や、壁にぶつかっている従業員の課題解決にもなるでしょう。
ケース型
ケース型は、ロールプレイングの方法として代表的な方法です。特定の場面や状況を細かく設定し、ロールプレイングを実施します。
顧客の属性や自分の立場、業態などのくわしい状況を想定して、実施者は自分の役割を演じ、課題解決を目指す方法です。具体的な手法や話す内容がある程度決まっている場合に用いることが多く、フィードバックも適切に行いやすいため、自身の課題発見に役立ちます。
モデリング型
1人を手本として、他の人が模倣するロールプレイングをモデリング型といいます。全員に同じイメージを共有してもらいたい場合や、同じスタンスで実践に臨んでもらいたい場合に用いられます。大人数の足並みを揃えさせたい場合や、個別のロールプレイングに効果的です。
グループロールプレイング
グループに分かれて、メンバー同士で役割を交代しながら何度もロールプレイングする方法です。複数の役割を演じるため、さまざまな視点から状況を把握でき、広い視野をもって実践できるようになります。立場によって見方が変わるため、多方面からアイデアや意見が出やすくなり、より効果的な対応方法を見つけられるでしょう。
ロールプレイングの進め方
ロールプレイングは、役割分担、状況の設定、フィードバックの3ステップで進めます。それぞれのポイントは以下のとおりです。
- ・参加者同士の役割を分担する
- ・想定する場面やロールプレイングの最終目的を設定する
- ・課題や改善ポイントをフィードバックする
個人ごとの役割を決める
まずはロールプレイングで演じる役割を個人に分担します。たとえば、営業スキルを身につけるためのロールプレイングでは、「顧客役」と「営業役」に分かれて行います。教育スキルを身につける場合は「上司役」と「部下役」に分かれるなど、テーマによって役割はさまざまです。
経験が浅い人同士でロールプレイングをする場合、的確なフィードバックを得るためにも、実践経験の豊富な「オブザーバー」を含めた3人組で実施すると効果的です。
目的や場面を設定する
個人の役割分担ができたら、ロールプレイングにおける状況や場面、目的の設定を行います。ロールプレイングによって最終的に辿り着くべき目的や、どのような場面で行われるかを細かく設定しましょう。
あらかじめ目的や場面を明確に決めておかないと、緊張感のない曖昧なロールプレイングになってしまい、効果的ではありません。また、フィードバックも難しくなってしまいます。
フィードバックをする
ロールプレイングが終わったら、フィードバックをしましょう。ロールプレイング内で何が良かったのか、どこが悪かったのかをフィードバックし、自らの課題発見につなげます。
ここでは、ロールプレイングの内容を評価するのではなく、対象者のスキルを伸ばすためのフィードバックが大切です。客観的に見た課題や改善点のほか、いい点も洗い出せると効果が出やすいでしょう。
ロールプレイングを実施する際の注意点
ロールプレイングをより効果的に実施するには、以下の3点に注意が必要です。
- ・現場をイメージして緊張感を出す
- ・慣れを防止するために複数のパターンを用意する
- ・ロールプレイングは高い評価を得ることが目的ではない
緊張感を保つ
ロールプレイングは、基本的に身内で実施するケースが多いため、意識して緊張感を保たなければ、適当になりがちです。適当なロールプレイングでは、実践的なスキルが身につきにくく、時間と労力が無駄になってしまいます。 自身の課題としっかり向き合うためにも、ロールプレイング中は実際の場面を想定し、メリハリのある取り組みが必要です。
同じ内容や形式だと課題が見つかりにくい
何度も同じ内容や形式でロールプレイングを実施すると、ロールプレイング自体に慣れてしまい、課題が見つかりにくくなってしまいます。1度のロールプレイングで課題を見つけられない場合は、複数回実施するケースもありますが、効果が低いようであれば別の方法も考えるべきです。
フィードバックを評価と間違えない
フィードバックは、対象者に対して改善ポイントを伝え、実践でも役立つスキルやノウハウを身につけるために行うものです。つまり、フィードバック自体が対象者の評価となるわけではありません。そもそも、ロールプレイングは高い評価を得ることが目的ではなく、スキルの改善・向上が目的なので、上司からの評価を重要視しすぎないようにしましょう。
まとめ
ロールプレイングは、実務経験の浅い新人の教育や、壁にぶつかっている若手・中堅社員の育成に役立つ学習方法です。対象者の課題を見つけ出し、より実践的なスキルやノウハウを伸ばしたい場合に役立ちます。 特にコミュニケーション能力を重要視する企業では、従業員のスキルの底上げにつなげることが可能です。
また、ロールプレイングは、適切なフィードバックや傾聴の姿勢も重要となるため、管理職の育成にも役立ちます。ユーキャンが法人向けに提供する「コミュニケーションマネジメント研修」では、ロールプレイングによる、質問・傾聴・フィードバックのスキルを養成します。社内の人材育成に欠かせない管理職のスキルアップに適しているので、ぜひご検討ください。