オンボーディングとは何か
オンボーディングは、新たに入社した従業員を、早期に能力を発揮できる人材へと育てるプロセスや施策です。英語ではon-boardingと表記され、目的地に向かって進む船や飛行機に乗り込んでいる状態を意味します。長期的なスパンでプランを作成することが一般的で、部署や部門へ配属された後も継続されます。
OJTとの相違点
OJTは、現場の業務に取り組みながら、実践的に知識や技術を教育する方法です。OJTとは、On The Job Trainingの頭文字を取っています。オンボーディングは、OJTよりも支援する内容や範囲が広く、社内の人間関係や企業風土に馴染むための支援も含まれます。
OJTについて詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
OJTとは? |ユーキャンの法人向け人材教育サービス
オンボーディングを導入する目的とは
企業がオンボーディングを導入する主な目的は、以下の3つです。
- ・職場への順応を円滑にする
- ・教育格差をゼロにする
- ・早期退職を防ぐ
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
職場への順応を円滑にする
オンボーディングの目的のひとつは、入社した従業員が職場へスムーズに適応するための支援です。オンボーディングにより、職場のルールや組織体制などを教育して、企業の戦力になるように支援します。入社直後で知るべきことが多い新しい従業員の教育に効果的です。
教育格差をゼロにする
オンボーディングは、企業内の教育レベルの差を減らす目的で導入される場合があります。部署や教育担当者によって生じやすい教育方法の違いや質の差を埋め、すべての従業員が平等かつ公平に教育を受けるために有効な手段です。
早期退職を防ぐ
入社間もない従業員の早期退職の防止にも、オンボーディングは有効です。ミーティングや面談を実施して、従業員が相談しやすい環境づくりに取り組みます。早期退職の原因にもなりえるコミュニケーションや業務への理解不足を改善するために効果的です。
オンボーディングが注目を集める背景とは
オンボーディングが注目を集める背景には、社会の変化や多くの企業が抱える課題があります。企業がオンボーディングに注目している主な理由は、以下の3つです。
- ・働き方、ワークスタイルの変化
- ・人材不足
- ・入社間もない従業員の早期退職
以下で詳しく解説します。
働き方、ワークスタイルの変化
リモートワークが普及し、働き方が大きく変化した昨今では、リモートでも対面でも成果を出せる体制が求められます。オンボーディングは、現代の働き方やワークスタイルに対応できる方法として、企業から注目されています。
人材不足
人材の不足は、企業にとって重要な課題です。人材が減り続ければ、新しい人材の採用だけではなく、優秀な人材の採用も難しくなります。多くの企業がオンボーディングを導入して、人材の定着率向上に取り組んでいます。
入社間もない従業員の早期退職
オンボーディングは、従業員の早期退職を防ぐためにも有効です。近年、転職する人は増加しており、新たに入社した従業員の早期退職が問題になっています。新規採用はコストや手間がかかるため、オンボーディングがこのような課題の解決に役立ちます。
オンボーディングのメリットとは何か
企業がオンボーディングを導入するメリットは、以下の4つです。
- ・生産性の向上
- ・従業員の満足度の向上
- ・人材育成の体制整備
- ・採用コストの削減
以下で詳しく解説します。導入を検討する際の参考にしてください。
生産性の向上
オンボーディングを導入することで、生産性の向上につながります。オンボーディングの実施には、全社的な社員教育に対応できる仕組みや体制の構築が必要になります。教育体制の構築により、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。
社内の生産性にお困りの場合は、以下の講座をご覧ください。
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従業員の満足度の向上
オンボーディングは、従業員の満足度を高める効果があります。オンボーディングの実施に伴い、既存の従業員と入社間もない従業員との間にコミュニケーションが生まれ、組織の活性化につながります。
既存の従業員と入社したての従業員両方にメリットがあり、組織に対する従業員の満足度が高まるため、退職を防ぎ、人材の定着につながります。企業の業績を上げる重要なポイントです。
人材育成の体制整備
オンボーディングの導入を通じて、社内における人材育成の体制の確立・強化が実現できます。従業員の定着率を改善しながら、入社したての従業員を即戦力として育成することが可能になります。即戦力として育成するためには、教育方法の統一やマニュアル作成が大切です。
人材育成について詳しく知りたい人は、以下のページをご覧ください。
人材育成とは?|ユーキャンの法人向け人材教育サービス
採用コストの削減
オンボーディングにより、早期退職者を減らすことができれば、採用コストの削減にもつながります。新たに入社した従業員が早期退職すれば、採用や教育などのさまざまなコストが増え、人材採用による効果も十分に発揮できません。
就労人口が不足している現代では、従業員1人あたりの採用・教育にかかるコストは増加傾向です。採用・教育コスト削減は大きなメリットとなります。
オンボーディングのデメリットとは何か
オンボーディングのデメリットは、以下の2つです。
- ・準備に時間がかかる
- ・既存の従業員の協力が必要
デメリットを理解して、導入の検討材料として役立てましょう。
準備に時間がかかる
オンボーディングの導入には、教育に必要なコンテンツや育成の仕組みづくりが必要です。研修をはじめとする教育方法によって、コンテンツの量や内容が異なるため、準備に時間がかかります。また、長期的に社内全体で実施できる育成の仕組みを構築するには、既存の従業員の負担を考慮しながら、丁寧に準備を進めなければなりません。
既存の従業員の協力が必要
オンボーディングを実施するには、既存の従業員の協力が不可欠です。そのため、従業員に向けて実施目的を説明し、理解を促す働きかけが大切です。既存の従業員にとってのメリットを伝えることも効果的でしょう。オンボーディングに対する従業員のモチベーションを維持するために、丁寧に取り組みの重要性を伝えます。
オンボーディングの導入プロセスとは
オンボーディングは、以下の導入プロセスに沿って実施します。
1.目標を設定する
2.プランを立案・作成
3.実行と振り返りをする
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
1.目標を設定する
まず、具体的な目標を設定します。オンボーディングによって実現したい成果や従業員のスキル要件が具体的になることで、今後、実施するべき取り組みを明確にすることができます。
効果的に目標を設定するための手法を学びたい人には、以下の講座がおすすめです。
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2.プランを立案・作成
次に、実施計画を作成しましょう。設定した目標の達成に必要な取り組みや、社内や配属部署が求める人材に育てるための手法などを考え、できる限り詳細にまとめます。プランを立案・作成する際には、入社間もない従業員の視点で課題を考え、個々の従業員に合った内容を考えます。
3.実行と振り返りをする
管理職と既存の従業員でプランを見直します。その際、「目標は達成可能か」「現実的に実施できる内容か」といったポイントで議論します。
内容に問題なければ実行に移します。オンボーディングをスタートしたら、企業全体で入社した従業員を支援することが大切です。
オンボーディングを導入する際のポイントと
オンボーディングは、以下のポイントを意識して導入します。
- ・教育体制を整備する
- ・企業と従業員間の期待値を確認する
- ・良好な人間関係づくりをサポートする
- ・指導者を育てる
- ・スモールステップ法を取り入れる
- ・全社的にオンボーディングへの意識づけをする
教育体制を整備する
オンボーディングを導入する際には、入社直後の従業員が学びやすい仕組みを整えましょう。入社してすぐは、企業文化や職場のルールなど学ぶ内容が多岐に渡ります。教育体制を事前に整備しておけば、効率よく育成することが可能です。 いつでも確認できるマニュアルの作成や、社内の教育方法のすり合わせなど、教育体制の構築を進めましょう。
企業と従業員間の期待値を確認する
オンボーディングを導入する前に、企業と従業員の期待値を調整します。入社前からお互いの期待値に差があると、入社後に後悔や落胆となるため、事前に確認し、すり合わせることが大切です。インターンを活用して、互いが希望する条件や成果を共有できれば、入社後のミスマッチを未然に防止できます。
良好な人間関係づくりをサポートする
社内の人間関係づくりの支援は、オンボーディングにおいて重要なポイントです。入社したばかりでは、人間関係の相関や相談先はわかりません。周囲の支援があれば、従業員の負担が軽減されて、オンボーディングの成功率が高まります。入社したての従業員が相談できる窓口の設置や、チームもしくは部署メンバーが交流できるランチ会などを企画して、従業員を支援しましょう。
指導者を育てる
スモールステップ法は、設定した目標の実現を着実に可能にする手法です。スモールステップ法を活用して、入社間もない従業員の育成を実施をすれば、成功を実感しながら着実にスキルアップできます。教育担当者やチームで継続的に支援して、従業員の成長を促しましょう。スモールステップ法は、従業員の即戦力化を効率よく実現できる手法です。
全社的にオンボーディングへの意識づけをする
オンボーディングは、社内全体で入社したての従業員を育成する動きが大切です。人事部や配属部署をはじめ、すべての従業員が入社を歓迎し、支援する体制が求められます。社内全体にオンボーディングへの理解を促す過程で、支援についても意識づけをしましょう。 例えば、従業員同士の自然な交流を生み出す取り組みを実施すれば、従業員が職場に馴染みやすくなります。
オンボーディングの導入事例から学べることとは
近年、多くの企業がオンボーディングを導入し、課題解決に成功しています。以下で紹介する2社は、オンボーディングを導入した代表的な例です。オンボーディングの導入を検討する際の参考にしてください。
A社(インターネット関連会社)
A社は、従業員の帰属意識の希薄さに課題を抱えており、オンボーディングを活用した課題解決に取り組みました。社内全体で取り組む方法に切り替えたため、入社直後の従業員をすべての従業員で育成する風土が生まれ、課題解決につながった事例です。
B社(ソフトウェア開発会社)
B社は、企業規模が大きくなり、急激に従業員数が増加したことで、入社間もない従業員の経験値やスキルの差に課題がありました。入社後の3か月間限定で受講できる企業や自社製品について学べる研修の場を設けた結果、従業員のスキルが一定のレベルまで向上し、課題解決に成功しました。
まとめ
オンボーディングは、入社した従業員の職場への順応、早期退職の防止、教育格差をなくすなどの目的で実施する教育方法です。企業がそれぞれ抱える課題解決の方法として、多くの企業でオンボーディングが導入されています。導入する際は、社内全体で入社直後の従業員を支援する体制・仕組みを構築することが大切です。
ユーキャンの法人向け人材育成サービスは丁寧なヒアリングで課題を抽出し、それぞれの法人様にフィットする提案をしています。60年以上の歴史のなかで得たノウハウをもとに、人材育成を支援します。
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