オリエンテーションとは
オリエンテーションとは、直訳すると「環境や状況の変化に順応する・適応する」という意味があります。学校や医療現場のほか、ビジネスシーンでも広く一般的に使用される用語です。
そして、 ビジネスシーンでのオリエンテーションが指しているのは、新入社員への教育・指導のために実施する講習やイベントです。 主に、入社後にスムーズに業務にあたれるように、自社の情報や知識、マナーなどについて学習してもらいます。
オリエンテーションとガイダンスの相違点
オリエンテーションに似た言葉として、「ガイダンス」があります。ガイダンスとは、特定の物事に対して基本的な知識がない人向けに実施される説明などを指します。ガイダンスは、初歩的な知識がない人でも、理解したり操作したりするために用意されるのが一般的です。
一方、オリエンテーションは、ガイダンスよりも深い内容を説明する機会であり、すでに基本的な知識を持つ人が対象です。ガイダンスは何も知らなくても理解できるように内容が用意されていますが、オリエンテーションの場合、参加者に一定の知識や理解度が求められます。
ビジネスシーンにおけるオリエンテーションの目的
ビジネスシーンにおけるオリエンテーションは、企業ごとにさまざまな目的で実施されます。実効性のある内容で実施するためにも、目的を明確にしておくと良いでしょう。オリエンテーションの目的として、以下の3つがあります。
企業への理解を深める
オリエンテーションは、新入社員が企業への理解を深めるのを目的として実施されることがほとんどです。業務で成果を出すためには、企業の理念や方針への理解が必要不可欠だからです。
そのため、オリエンテーションは、入社直前や直後に実施されるケースが多く、企業理念や方針のほか、社内ルールなども詳しく説明されます。企業価値などを理解した状態であれば、新入社員でも業務効率や生産性を意識して業務にあたことが可能になるでしょう。
従業員の意識を統一する
オリエンテーションは、企業への理解のほか、従業員の意識統一も目的の1つです。方向性や価値観について理解したうえで、企業の一員となる意識を持ち、自分にどんな役割があるのかを把握させます。
企業が変革期にある場合などは、社内全体の意識統一をはかるために、新入社員だけでなく既存従業員に対しても、オリエンテーションを実施するケースがあります。
人間関係の構築をスムーズにする
オリエンテーションでは、人間関係の構築をサポートする目的もあります。社内の人間関係をスムーズに構築するために、同期や先輩従業員との交流の機会を作ることも大切です。
早めに人間関係が構築できれば、新人研修や現場での業務を円滑に進めやすくなります。人間関係の構築のために、オリエンテーション内で自己紹介などの場を設ける企業もあります。
ビジネスシーンにおけるオリエンテーションの内容例
ビジネスシーンでのオリエンテーションでは、さまざまなテーマについて説明・講習があります。オリエンテーションの目的に応じて、伝えるべき情報は異なるでしょう。
以下では、オリエンテーションで実施される説明や講習の例を3つ解説します。
企業に関する基本事項
多くの企業では、オリエンテーションで企業に関する基本事項を説明しています。基本事項とは、大きく分けると、企業理念・方針、社内規定、社内ルールの3つです。
企業を理解するためには、企業理念・方針を知る必要があるため、企業文化やこれまでの歴史、社内構造などを説明します。また、就業時間や休日、各種手当、キャリアのサポート体制などの社内規定については、これから入社するにあたって必要な情報です。
さらに、社内風紀や安全性のために、セキュリティに関するルールや就業中のルールなど、細かな社内ルールの説明も必要です。
ビジネスマナー
新入社員対象のオリエンテーションでは、挨拶の仕方や正しい敬語の使い方、基本的な電話対応、ビジネス文書の作成方法などのビジネスマナーも必要とされます。
ビジネスマナーは、業務に欠かせない基礎的な知識であるほか、社内外の人間関係の構築に必要不可欠です。時間の管理や報連相などのビジネスマナーは、スムーズな社内連携にも役立ちます。
コンプライアンス
企業だけでなく従業員1人1人を守るためには、コンプライアンスの周知も大事です。企業には、順守すべき法令や社内規定があります。
コンプライアンスをしっかり周知できていないと、従業員の言動によって企業の社会的信頼を損失する可能性があります。法令や社内規定を説明するだけでなく、なぜ順守しなければならないかを理解できるように、違反リスクについての説明・解説が必要です。
ビジネスシーンにおけるオリエンテーションの活用場面
ビジネス上では、さまざまな場面でオリエンテーションが活用されています。おもな活用場面について、以下で解説します。
面接
オリエンテーションは、新入社員の面接の一環として実施されるケースがあります。企業や業務についての説明や、質疑応答の場としてオリエンテーションが活用されます。
面接としてのオリエンテーションでは、就活生と既存従業員数人に参加してもらうのが一般的です。今後入社の可能性がある人に対する、教育・指導の機会として効果的です。
説明会
オリエンテーションは、内定者に向けた入社説明会として実施する企業も多くあります。加えて、入社が内定している同期や先輩との顔合わせにもなります。
入社前に企業への理解や人間関係を深めておけば、入社後、スムーズに社内環境に適応できるでしょう。
業務の説明
オリエンテーションは、新入社員だけでなく既存の従業員へ業務内容を説明するために活用されるケースもあります。業務内容に変更があった場合や、新規案件が発生した場合などに実施されるのが一般的です。
新たな業務の方向性や業務内容を理解し、従業員の意識を統一させるために実施されます。スムーズに新たな業務や案件をスタートさせるためには必要な機会です。
基本的なオリエンテーションの形式
さまざまな目的や場面で活用されるオリエンテーションは、実施される形式も企業によって異なります。 従業員にオリエンテーションの内容をしっかり理解してもらうためにも、社風などに合わせた形式での実施が大切です。
以下では、基本的なオリエンテーションの形式について解説します。
座学
オリエンテーションの形式として、座学は最も一般的です。社内の会場で実施するほか、最近ではオンラインでも実施されています。理解度を確認するために、テストやアンケートを実施する企業もあります。
ゲーム
堅苦しさをなくすために、オリエンテーションにゲーム形式を取り入れる企業も増えています。決められたルールのなかで、参加者同士でゴールを目指します。
主体性を持って参加してもらいやすいことに加え、参加者同士の交流にもなるでしょう。新入社員の場合、緊張でなかなか交流が進まない可能性もあるため、緊張を和らげる意味でも効果的な方法です。
ケーススタディ
オリエンテーションは、実際の出来事を基にしたケーススタディ形式で実施されるケースもあります。実際の業務を仮定して、問題に対する解決策や対処方法などを検討してもらいます。
ケーススタディは、現場での考え方や行動パターンをイメージしやすく、実務に生きやすい形式です。中途採用の場合は、すでに持っている知識や技術がどう生かせるかを学んでもらいます。
OJT研修
オリエンテーションは、OJT研修として現場で実施されるケースもあります。実際に業務をこなしながら指導を受けると、より実践的な学習ができます。座学やケーススタディなどの形式と組み合わせると、より理解度を深められるでしょう。
内定者懇親会
オリエンテーションの目的が、同期や既存従業員との交流の場合、懇親会形式で実施されるケースがあります。内定者や既存従業員に参加してもらい、コミュニケーションを図ります。
新卒や中途採用など、新入社員のなかでも年齢やキャリアに差がある場合、コミュニケーションのハードルが高いと感じてしまうケースもあります。オリエンテーションの段階で交流すれば、打ち解けやすくなるでしょう。
オリエンテーションに参加する際の服装
参加者の服装はその人の第一印象に影響する重要な要素です。適切な服装を選択しましょう。
まず会社からの指示がある場合はそれに従いましょう。カジュアルな服装を許可する企業もあれば、フォーマルな服装を求める企業もあります。オリエンテーション前に、会社のドレスコードポリシーを確認しておくといいでしょう。一般的なルールとして、清潔感があり整った服装が適切です。シワのない服や傷みのない靴を選びましょう。華美な服やアクセサリーは控えた方が無難です。また季節にあった素材の服を選び、会場の気温に合わせて脱ぎ着ができるものを1枚持っておくなど、自分で調節できるよう工夫しましょう。
オリエンテーションの効果を高める方法
オリエンテーションは、業務にも影響する重要なイベントです。効果をできるだけ高めるためには、以下の3つのことを意識して実施すると良いでしょう。
実施する目的を明確にする
オリエンテーションを実施する際は、最初に新入社員や対象となる従業員に学んでほしいことや意識してほしいことなどを明確にする必要があります。オリエンテーションの目的を明確にしていないと、中身が薄く形式だけのものになってしまうためです。オリエンテーションを実施する目的を基に、計画的な実施が重要です。
準備を整える
オリエンテーションは、参加者にしっかり理解してもらうためにもスムーズな進行が必要です。そのため、事前準備を入念に行う必要があります。
準備不足で円滑にオリエンテーションを進行できない場合、参加者に不安感や不信感を与えてしまう可能性があります。参加者に準備や作業が必要な場合は、事前連絡しておくとスムーズです。
オリエンテーション後のサポート
オリエンテーション後のサポートについても工夫が必要です。例えば、 入社後に新入社員1人に対して先輩従業員や上司が1人つく「バディ制度」や、新入社員のメンタルケアや質疑応答を先輩従業員や上司が担当する「メンター制度」などを設ける企業もあります。
オリエンテーションで学んだ知識に対する理解を深めるためには、入社後のサポートは不可欠です。
まとめ
ビジネス上でのオリエンテーションは、これから入社する人や既存従業員に活躍してもらうために欠かせないイベントです。目的をはっきりとさせたうえで、内容を吟味し、充実したオリエンテーションを実施しましょう。
そして、 オリエンテーションをはじめとした、ビジネス上で欠かせないイベントや会議などを有意義なものにするためには、その場をうまくコントロールできる「ファシリテーター」の存在が重要です。
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