ビジネスマナー研修とは
ビジネスマナー研修とは、ビジネスシーンで要求されるマナーや作法、立ち居振る舞いなどを身に付けるための研修です。研修を通して社会人の基本となるビジネスマナーを習得し、良好な人間関係を構築する方法を学べます。ビジネスマナー研修では新入社員を対象に、社会人意識の醸成や身だしなみの整え方、挨拶の仕方、適切な言葉遣いなどを学習します。また、業種によっては文書作成スキルや名刺交換なども研修に組み込まれるでしょう。研修方法も多様で、一か所で多くの人が学習する集合型、インターネットでオフィスから受講するオンライン、自宅でも学べるeラーニングなどがあります。ビジネスマナー研修では、基本となるスキルを企業の業態や規模に合わせて、内容を細かく調整していくのが一般的です。
ビジネスマナー研修の対象者
ビジネスマナー研修の対象者は新入社員が基本です。ただし、新入社員だけでなく若手や中堅社員であっても、ビジネスマナー研修が必要になることがあります。なぜならビジネスマナーは時代によっても変化しており、10年前と現在ではマナーも変わっているケースもあるからです。例えば10年前までは一般的ではなかったテレワークやオンラインコミュニケーションも、現代では一般化して普及しています。他にも外国人社員の増加により、文化の違いによる価値観の違い、ビジネスマナーの違いもあるでしょう。時代や文化、テクノロジーの発達とともに、日本のビジネスマナーも常に変化しています。時代に合わせた正しいビジネスマナーを身に付けるには、年齢や経験を問わず、多くの社員が研修を受ける必要があります。
ビジネスマナー研修の種類
ビジネスマナー研修を実施するにあたって、形式は1つだけに限りません。OJTやオンライン研修、eラーニング、グループワーク、ロールプレイングなどさまざまな種類があります。それぞれの研修方法のメリット・デメリットをみていきましょう。
概要 | メリット | デメリット | |
OJT | 実務での経験を通して、指導者が適宜フィードバックを行う研修方法 | ・一人ひとりの能力や状況に合わせて研修を進められる ・実務経験からノウハウを学ぶことで、状況判断能力や実用性の高いスキルが身に付く ・電話対応やビジネス文書作成など、細かな部分まで指導が受けられる |
・指導者の能力によって研修効果が違う ・体系的な学習には不向き ・指導者の業務負担が大きい |
オンライン研修 | ZoomやTeamなどのWeb会議ツールを用いて遠隔から講義を行う研修方法 | ・Web会議ツールの操作方法が身に付く ・時間や場所を問わず、誰でも参加しやすい ・講師に対して個別の質問がしやすく、回答がメッセージとして残るので学習効率が高い ・研修内容を録画しておけば、いつでも振り返り学習ができる |
・通信状況によっては映像や音声の途切れが生じる ・細かい仕草が把握しにくく、自由に視点移動できない ・実践的な内容は学びにくい |
eラーニング | 講師の授業をPC・スマホ・タブレットなどで視聴する研修方法 | ・順序立てて体系的な学習が進めやすい ・学習意欲の高い人は先の内容を学んだり、繰り返し復習したりすることが可能 ・動画に説明文や図解がつくため、視覚的にも学習しやすい |
・実践的な内容は学びにくい ・録画したものを視聴するため、不明点や質問をその場で尋ねられない ・スマホやタブレット、PCなどの端末が必要 |
グループワーク | 数人のグループに分かれ、テーマに関するディスカッションやワーキングを行う研修方法 | ・ケーススタディをグループメンバーと議論することで、理解を深めやすい ・実践的な学習がしやすい ・受講者同士での交流が生まれ、情報交換の機会になる |
・実施場所や日程の調整、グループメンバーを検討する必要がある ・指導者自身がケーススタディの事例への深い理解が必要 |
ロールプレイング | テーマや場面、状況を設定して、実際に発生した場合を想定して対応を学習する研修方法 | ・学びをその場で実践できる ・特定の状況での対応を詳しく学べる ・メンバー間でのコミュニケーションが活性化する |
・学べるケースに限りがある ・参加人数が多いと時間管理が難しい ・メンバーの人間関係を意識した調整が必要 |
ビジネスマナー研修の具体例・カリキュラム
ビジネスマナー研修の具体的なカリキュラムについて、2つのパターンを紹介します。
内定者~若手社員向け
テーマ |
研修内容 |
マナーの必要性 |
・仕事の成果とマナー ・マナーで探られている ・信用度を高めるマナー |
挨拶から始まる |
・挨拶の必要性 ・社会人にとっての挨拶とは ・きちんとした挨拶とは ・お辞儀とは ・正しいお辞儀のしかた ・3種類のお辞儀の使い分け |
電話のマナー |
・電話の受け方 ・避けるべきタイミング ・電話をかけるとき |
名刺交換のマナー |
・名刺入れを使う ・名刺入れをしまう場所 ・名刺交換の方法 ・いただいた名刺の扱い ・上司や先輩と二人でお客様を訪問したときの名刺交換 ・スムーズに行うポイント |
冠婚葬祭のマナー |
・お見舞いに行くときは ・訃報に接したときは ・服装について ・参列したときは ・日本の葬儀 |
一つひとつは細かな内容ですが、どれも社会生活を送るうえで必要なマナーです。
研修担当者は若い世代に身につけてもらいたいビジネスマナーを検討し、自社のニーズに合わせたカリキュラムを選択しましょう。
ビジネスマナー研修で得られるスキル
ビジネスマナー研修を通して、新入社員や若手社員が習得できるスキルの例を紹介します。
社会人意識
新入社員は学生から社会人になったばかりで、社会人らしい立ち居振る舞いやビジネスのルールを理解できていないことがあります。研修でマナーを学ぶことで社会人意識を高め、仕事に対する責任感や主体的な行動力が身につく効果が期待できます。
正しい言葉遣い・丁寧な話し方
職場内でも取引先との交渉でも、正しい言葉遣いと丁寧な話し方は聞く人に良い印象を与えます。人間関係を構築するうえでも重要なポイントです。研修を通して人から好かれる言葉遣いや話し方が身につけられるでしょう。
職場内でのコミュニケーションスキル
社員が一丸となって業務を遂行するには、社員同士の連携が不可欠です。ビジネスマナー研修を通して挨拶などのコミュニケーションの基本を学べば、社内のチームワークを向上できます。
ビジネスマナー研修を実施する3つの目的
企業がビジネスマナー研修を行う目的はさまざまですが、大きく3つの目的に分かれます。以下で詳しく解説します。
企業イメージを向上させる
企業には社長や取締役、中堅社員や新入社員などさまざまな役職がありますが、社外から見れば、目の前で関わる人物が企業の顔です。社内の役職や立場は関係なく、マナーの良し悪しで企業のイメージは決まります。企業で働くすべての人物にとって、正しいビジネスマナーの習得が重要です。
顧客や取引先の満足度を向上させる
ビジネスマナー研修を通して正しいビジネスマナーが身につけば、企業の顧客や取引先の満足度を高める効果が期待できるでしょう。顧客や取引先などの企業と関わりのある人物に対して気遣いができるようになり、好印象を与えられます。また、顧客の満足度が高まれば、企業の業績を伸ばすことにもつながります。
関連先と良好な関係を築く
正しいビジネスマナーが身につけば、企業が行っている事業の関係先と良好な関係をつくることにもつながります。高い成果を上げていて、社内で信頼の厚い人物であっても、外部で不適切な発言や行動があれば、企業が信頼を失う原因にもなるでしょう。言葉の選び方や口調、細かな動作に至るまで意識し、相手を気遣うことが大切です。
ビジネスマナー研修を実施する際のポイント
ビジネスマナー研修で効果を発揮するには、講師の選び方や研修後のサポートが大切です。以下で詳しく解説します。
講師の選び方に気をつける
ビジネスマナー研修を実施する際、講師の質や実績は重要なポイントです。ビジネスマナーの知識が豊富でも、講師として優れているとは限りません。社員との相性によっては、受講する社員のストレスになり、期待した結果が得られないこともあります。そのため、講師選びではこれまでの実績や実際の講義シーン、受講者からの評判まで確認しましょう。また自社の属する業界・業種に対する理解があり、ニーズに合わせた研修を行ってくれるかどうかも見極めるべきです。経歴や肩書きだけでなく、講師一人ひとりの個性も加味した選び方を意識してください。
研修後も実践の機会をつくる
ビジネスマナー研修はインプットして終了ではなく、実践で活用できてこそ価値を発揮します。基本的なマナーは研修で学べても、実践の場では応用力が求められることもあるでしょう。特に新入社員はマナーを学んでも、実践経験の少なさから応用力が身についていないこともあります。そのため、ビジネスマナー研修を受けて終了するのではなく、実践できる機会を設けることも大切なポイントです。すぐに実践するのが難しい場合は、ケーススタディやOJTで実践に近い形で振り返りを行うのもよいでしょう。社内でも新入社員をフォローする体制を構築し、完全に習得できるように支えることが重要です。
柔軟な対応を教育する
ビジネスにおいては、すべてを型通りに対応できるわけではありません。マニュアルには基本的な対応や手順は書かれていても、実践の場では予想外のことがしばしば起こります。そのためビジネスマナー研修を実施する際も、TPOに応じた対応力が求められることがあります。例えば電話対応でも、一方的に相手がまくし立ててきたり、理不尽なクレームを入れられたりすることもあるでしょう。その場合でも柔軟に対応し、相手への配慮や周囲の人への気遣いを忘れないことが、ビジネスマナーでは大切です。すべてを一度に教えるのは難しいですから、少しずつTPOに合わせたビジネスマナーの教育を進めましょう。
ビジネスマナー研修でよくある失敗
ビジネスマナー研修では、多くの企業で起こりやすい失敗があります。
・研修の目的や意図が明確でない
・インプット学習中心で実践の機会が少ない
2つの失敗について知ることで、自社で研修する際の参考にしましょう。
研修の目的や意図が明確でない
ビジネスマナー研修では、研修担当者が目的や意図を明確にしておらず、実践的なスキルが身につかないという失敗が起こることがあります。ビジネスマナーは社会人の基本スキルであり、どの企業でも必要とされます。しかしビジネスマナーは業界や業種、相手によっても対応が変わるものです。型通りのビジネスマナーだけを学習しても、業務のどの場面で活かすのかがはっきりしません。そのためビジネスマナー研修を計画する場合は、何のために学ぶのか、どのようなシーンで必要なのか、どんな相手を想定しているかまで考えるべきです。TPOに合わせたビジネスマナーを学ぶことで、自立した社会人への成長につながるでしょう。
インプット学習中心で実践の機会が少ない
ビジネスマナー研修でよくある失敗には、座学などのインプット学習が中心で、実践の機会が少ないパターンもあります。ビジネスマナーは頭でわかっていても、実際に使うとなると曖昧になりがちなスキルです。知識だけを学んでも、実践できる機会がなければ本当の意味で身につけるのは難しいでしょう。またビジネスマナーは形式的に学ぶことはあっても、ケーススタディで詳しく学ぶことは少ないスキルです。お辞儀1つとっても3種類あり、状況や相手によって使い分ける必要があります。そうした知識の違いは実践の中でマスターするものであり、学んですぐに実行するのは困難です。ビジネスマナー研修を実施する際は、インプット学習だけでなく、実践できる機会を用意することで学習効果が高まります。
まとめ
ビジネスマナー研修は、正しいビジネスマナーを学べる研修のことです。多くの企業が実施しているビジネスマナー研修には、企業イメージの向上や、企業の顧客や取引先の満足度を向上させる目的があります。ビジネスマナー研修を実施すれば、ビジネスマナーの必要性が理解でき、実際の業務で活かせるビジネスマナーが学べます。
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