ハラスメントの定義
「ハラスメント」とは、相手が嫌がる言動や行動を総称した言葉です。 「嫌がらせ」という意味合いが強く、受け手が不快に感じたり、何らかの不利益が発生したりすると、ハラスメントと見なされます。
そして、ハラスメントは被害者の心情を基準とするため、加害者に悪意があるかどうかは関係ありません。加害者が「嫌がらせのつもりはなかった」と弁明しても、相手が不快に感じるような行為はすべてハラスメントに該当します。
ハラスメント判断時の職場と労働者の定義
従業員から「嫌がらせを受けている」と訴えがあったからといって、すべてがハラスメントに認定されるわけではありません。ハラスメントかどうかを判断する際の「職場」と「労働者」の定義について解説します。
職場の定義
ハラスメント判断時の「職場」の定義は、事務所内やオフィススペースだけに限りません。業務を遂行する場所であれば、出張先、取引先、営業車内なども「職場」に含まれます。働き方が多様化している現代社会では、在宅勤務を行う自宅、リモートワークで利用するカフェ、サテライト型オフィスなども「職場」と見なされます。
業務時間外の懇親会で発生したハラスメントについても会社の責任を認めた判例があるため、「職場」の定義は個々のケースによって変わります。
労働者の定義
正規雇用労働者を筆頭に、パートタイム労働者、契約社員などの非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用するすべての労働者がハラスメント被害・加害の対象者となります。派遣労働者については、派遣元事業主に加えて、派遣先事業主も責任と義務を負わなければなりません。
ハラスメントにより発生する影響
ハラスメントは、企業、加害者、被害者にさまざまな悪影響を及ぼします。ハラスメントにより発生する問題について、詳しく見ていきましょう。
企業
ハラスメントが発生している職場では、良好な人間関係の構築はできません。雰囲気の悪い職場は、「コミュニケーションが取りづらい」「仕事に対するモチベーションが保てない」といった問題が生じやすく、組織としての生産性も低下します。生産性の低下は業績の低迷に直結するため、ハラスメントの発生は健全な企業経営を脅かす大きな要因となります。
インターネットやSNSの普及により、情報の拡散スピードが速くなったことも、懸念事項の1つです。ハラスメントに関する情報が出回って、広く社会に知られると、企業のブランドイメージが損なわれます。さらに深刻な事態に陥ると、使用者責任や不法行為責任といった法的責任を問われるケースもあるでしょう。
使用者責任とは、従業員が行った行為について、使用者である企業が損害賠償責任を負うことを定めた法制度で、民法第715条で規定されています。たとえば、雇用する労働者が部下にセクハラを行い、被害者が精神的な苦痛を受けて休職することになった場合、企業はセクハラ行為について使用者としての責任が問われます。
「人員削減を行いたい」という会社通達に基づいて、担当者が過度な退職勧奨を行ってしまうと、企業側に不法行為責任が問われる可能性もあります。
加害者
ハラスメントを行った加害者は、企業や職場からの信頼を失います。 職場内の話し合いで解決できたとしても、ハラスメント行為によって落ちた評判を取り戻すのは容易ではありません。また、悪質性が高いと判断されると、けん責・減給・出勤停止・解雇、懲戒処分といった罰則の対象となります。
ハラスメント加害者は民事で損害賠償義務を負うだけでなく、名誉棄損罪、傷害罪、強制わいせつ罪といった刑事罰が科されるケースもあります。たとえば、名誉棄損罪に該当すると、「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」に処される可能性があります。
被害者
ハラスメントの被害者は、精神的に不安定な状態に陥り、うつ病や不安障害などを発症してしまう可能性があります。勇気を出してハラスメント被害を訴えたにも関わらず、「事実として信じてもらえない」「被害者側にも問題があったと責められる」など不当な扱いを受けるセカンドハラスメントが起こることもあります。
ハラスメントの実態
「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」によると、職場でハラスメントを受けたことがある割合は全体の32.4%にのぼります。内訳はパワー・ハラスメントが 27.6%で1位、次いでセクシュアル・ハラスメントの8.5%となっており、パワー・ハラスメントが圧倒的に多いことが分かります。
参考:日本労働組合総連合会|仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021
これまでもハラスメント自体は存在していたものの、狭いコミュニティ内で情報がとどまっており、表面化しなかったと言えます。近年ではインターネットやSNSの普及により個人が情報を発信し、受け取ることも用意となったため、ハラスメントが可視化されて取り上げられ始めました。
ハラスメントが発生する原因
ハラスメントが発生する原因の1つが、職場の風土や環境です。組織における風土とは、組織を構成するメンバー間で共有されている考え方、思想、価値観を指します。従業員1人ひとりが主体性を持って行動し、チームで相談しながら業務を遂行できる組織は、良い風土が醸成できているといえます。
一方で、職場の風土や環境は権力が強い人間によって左右されがちです。威圧的な上司、高圧的なマネジャーなどによって末端の意見が聞き入れられないと、ハラスメントが発生しやすくなります。
職場の風土や環境
ハラスメントが発生する原因の1つが、職場の風土や環境です。組織における風土とは、組織を構成するメンバー間で共有されている考え方、思想、価値観を指します。従業員1人ひとりが主体性を持って行動し、チームで相談しながら業務を遂行できる組織は、良い風土が醸成できているといえます。
一方で、職場の風土や環境は権力が強い人間によって左右されがちです。威圧的な上司、高圧的なマネジャーなどによって末端の意見が聞き入れられないと、ハラスメントが発生しやすくなります。
コミュニケーション不足
コミュニケーション不足も、ハラスメントの発生につながります。昨今は、対面ではなくオンラインでのやり取りも増えていますが、オンラインでのコミュニケーションは意図や行間などが充分に伝わらない場合も多く、対面と比べると意思疎通がスムーズに行えません。SNSでの嫌がらせをはじめ、コミュニケーション不足に起因するハラスメントは増加傾向にあります。アンコンシャス・バイアス
アンコンシャス・バイアスとは、無意識の思い込みや偏見を意味する用語です。 無意識の思い込みは誰もが持っているもので、ゼロを目指す必要はないものの、無自覚な言葉が相手を傷つける可能性があることを知っておくことが重要です。「普通はこれくらい簡単にできる」といった自分本位な判断は、部下や同僚へのハラスメントを誘発します。
性別役割分担の意識
性別役割を分担する意識が強いと、ハラスメントが発生しやすくなります。男女雇用機会均等法の成立によって「男性らしさ」「女性らしさ」で業務を分担することは減ってきましたが、完全になくなったわけではありません。
「お客様が喜ぶからお茶出しは若い女性にお願いしたい」といった行為も、ハラスメントに認定されるケースがあります。個人の能力とは関係なく性別で役割を捉えてしまう考え方が定着していると、ハラスメント発生のリスクは高まります。
不適切な業務量の配分
妊娠・出産・育児休業を取得する場合、残った従業員に不適切な業務量を配分してしまうと、休暇を取得した人への嫌がらせに発展する可能性があります。
女性の社会進出や管理職への登用を政府が推進していることもあり、子育て世帯をサポートする制度を新設する企業が増えています。この施策自体は歓迎されるべきものですが、他の従業員の負担が増えてしまうと、不満の矛先が特定の個人に向かいやすくなりハラスメントにつながります。
個人の価値観や倫理観の違い
悪意や貶める意図はなくても、価値観の違いによって生じた摩擦が、「嫌がらせ行為」だと認識されることがあります。特に年齢の離れた人と話すときは、世代間で言動の捉え方にギャップがあることを理解しておくことが大切です。
自分の経験から良かれと思ってしたアドバイスが、結果として相手を傷つけるハラスメントになる可能性も知っておきましょう。
ビジネスシーンにおける3大ハラスメント
ビジネスシーンにおける3大ハラスメントは次の通りです。
- ●セクシャルハラスメント
- ●パワーハラスメント
- ●マタニティハラスメント
それぞれのハラスメントは発生するシーンや状況が異なりますが、複数のハラスメントが同時に生じる場合もあります。企業として適切に対処するためには、ハラスメントが起こる原因や背景への理解を深めることが重要です。
※参考:ハラスメントの種類は?職場で起こる原因と発生した場合のリスク、対処法を解説
セクシュアルハラスメント
セクシャルハラスメント(セクハラ)は、職場における性的な嫌がらせ全般を指します。厚生労働省では、セクハラを下記のように定義しています。
対価型セクシュアルハラスメント | 職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること |
環境型セクシュアルハラスメント | 性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること |
※参考:職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント|厚生労働省
セクハラの被害者は女性だけに限りません。かつては男性から女性に対する性的な言動や行為が中心でしたが、近年では女性から男性への性的な嫌がらせや同性同士のトラブルもセクハラとして認定されるケースが増えています。
会話例:
「仕事が終わったら2人でディナーデートに行かない?」
問題点:
相手が断っているのに何度も食事に誘ったり、「デート」といった言葉を使ったりするとセクハラと見なされやすくなります。
パワーハラスメント
パワーハラスメント(パワハラ)は、職場での立場を利用して必要以上の精神的・肉体的苦痛を与えることを指します。
厚生労働省では、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づいて、パワハラを次の6種類に分類しています。
身体的な攻撃 | 暴行・傷害 |
精神的な攻撃 | 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言 |
人間関係からの切り離し | 隔離・仲間外し・無視 |
過大な要求 | 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 |
過小な要求 | 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと |
個の侵害 | 私的なことに過度に立ち入ること |
※参考:職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント|厚生労働省
パワハラでは、立場の高い人が加害者、低い人が被害者となりやすいですが、部下が上司を精神的に追い詰めたり、部下が結託して上司を無視したりするケースも増加傾向にあります。
会話例:
「本当にお前は使えないな」
問題点:
「使えない」「仕事が遅い」「役に立たない」など、相手を侮辱する言動を繰り返すのはパワハラです。
マタニティハラスメント
マタニティハラスメント(マタハラ)は、妊娠、出産、育児などをきっかけにした女性に対する嫌がらせを指します。詳しくは後述しますが、育児に関わる男性への嫌がらせはパタニティハラスメントと呼ばれるため、マタハラの対象は女性に限定されます。厚生労働省では、マタニティハラスメントを下記のように定義しています。
制度等の利用への嫌がらせ型 | 産前休業、育児休業などの制度や措置の利用に関する言動により就業環境が害されるもの |
状態への嫌がらせ型 | 女性労働者が妊娠したこと、出産したことなどに関する言動により就業環境が害されるもの |
※参考:職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント|厚生労働省
事業主による妊娠・出産・育児休業などを理由とする解雇は、不利益取扱いに該当して法律違反となります。
会話例:
「うちの組織で産休・育休なんて取った人はいないよ」
問題点:
事実であっても相手が制度を利用しづらくなるような発言はマタハラに該当します。
その他のハラスメントの種類
ハラスメントは行為別に細分化される流れが進んでおり、現在では80種類以上があるといわれています。ここでは、職場で発生しやすいハラスメントの一部を紹介します。
モラルハラスメント
モラルハラスメント(モラハラ)は、肉体的な苦痛ではなく、言葉や態度で継続的に相手を傷つける精神的な嫌がらせを指します。「外部の人からは見えない場所で嫌がらせを行う」「嫌がらせを隠蔽する」といった特徴があります。
会話例:
「そんな恥ずかしい服装で会社に来ないでくれる?」
問題点:
相手を執拗に蔑んだり見下したりする発言はモラハラと見なされます。
ロジカルハラスメント
ロジカルハラスメント(ロジハラ)は、正論をぶつけて自分の優位性を示し、相手を不快な気持ちにさせることを指します。説得や歩み寄りではなく、論理的に相手を言い負かすことが目的となっているため、生産性のない行為です。
会話例:
「ミスの理由を知りたいだけで、あなたの謝罪や主観が聞きたいわけではありません」
問題点:
相手が誠意を持ってコミュニケーションをとっているのに、正論で追い詰めることはロジハラに当たります。
エンジョイハラスメント
エンジョイハラスメント(エンハラ)は、上司や先輩といった優位な立場の人間が、部下や後輩に対して価値観を押し付けて不快にさせることを指します。
会話例:
「この部署の仕事は楽しいだろう」
問題点:
優位な立場の相手に対しては「つらいです」「嫌いです」とは答えづらいため、楽しさを強要するエンハラと見なされることがあります。
ソーシャルハラスメント
ソーシャルハラスメント(ソーハラ)は、SNSにおける嫌がらせを指します。「SNS上でのやり取りを強制させる」「個人情報や秘密をSNS上に許可なく書き込む」といった行為がソーハラに含まれます。
会話例:
「SNSの投稿にはお互いにコメントを書き込んだり、いいねボタンを押したりしよう」
問題点:
部下との親睦を深める目的であっても、立場が弱い部下にとってはストレスとなりソーハラに認定される可能性があります。
ラブハラスメント
ラブハラスメント(ラブハラ)は、恋愛に関する話題で相手に不快感を与えることを指します。セクシャルハラスメントやモラルハラスメントと似た性質があり、雑談の中で悪気なく発言してしまうケースも少なくありません。
会話例:
「いつになったら彼女(彼氏)ができるの?」
問題点:
恋愛の話題は個人のプライバシーに踏み込むことになるため、相手に会話を強要することはラブハラとなります。
マリッジハラスメント
マリッジハラスメント(マリハラ)は、未婚の人に対して、結婚しない理由を問いただしたり、独身でいることを否定したりする言動を指します。
会話例:
「結婚は早くした方がいいよ」
問題点:
相手を心配しての行為であっても、結婚しないことを否定したり責めたりする発言はマリハラと見なされます。
パタニティハラスメント
パタニティハラスメント(パタハラ)は、男性従業員の育児休暇の取得、フレックス勤務、育児短時間勤務の取得など、子育てに関わる制度を利用することへの嫌がらせを指します。
会話例:
「男性の短時間勤務は実績がないから、人事評価にも影響が出ると思うよ」
問題点:
相手を萎縮させたり、取得を躊躇させたりするような発言はパタハラです。
ケアハラスメント
ケアハラスメント(ケアハラ)は、家族の介護をする従業員への嫌がらせ行為を指します。高齢化が急速に進む日本社会では、介護休暇や介護時短勤務の利用を妨害する行為が大きな問題となっています。
会話例:
「介護時短勤務を利用するなら、出世は厳しいかもしれないね」
問題点:
介護を理由に正当な評価が得られないことは、ケアハラに当たります。
ジェンダーハラスメント
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)は、性別役割分業意識に起因する価値観の押し付けを指します。お茶出しを女性従業員だけにさせたり、体力を使う仕事を男性従業員だけにさせたり、個人の能力ではなく、画一的に業務を振るのもジェンハラに該当します。
会話例:
「女の子たちはローテーションで来客者の接遇をお願いできるかな」
問題点:
女性従業員を「女の子」と呼ぶことや、性別を理由に仕事を割り振ることはジェンハラとなります。
パーソナルハラスメント
パーソナルハラスメント(パーハラ)は、容姿、クセ、個人的趣向などを批判することを指します。冗談であっても、受け手が嫌がらせだと感じればハラスメント行為となります。
会話例:
「背が低いからスーツを着ても子どもみたいだね」
問題点:
その場を盛り上げるためであっても、相手を侮辱したり、不快感を与えたりする発言はパーハラと見なされます。
エイジハラスメント
エイジハラスメント(エイハラ)は、年齢に対する嫌がらせ行為を指します。「まだ20代なのに」「もう50代なのだから」といった年齢による差別や偏見はエイハラに直結します。
会話例:
「もう50代なのに、そんなこともできないのか?」
問題点:
ミスや問題点を指摘するときでも、年齢を必要以上に強調することは、エイハラに当たります。
時短ハラスメント
時短ハラスメント(ジタハラ)は、残業時間の削減や定時退社を推進しながらも、これまでと同じ業務量をこなし同等の成果を求める行為を指します。
会話例:
「今月はもう残業できないけど、目標の数値は達成してね」
問題点:
具体的な施策がない状態で、従業員にだけ労働時間削減の負担を強いる言動は、ジタハラに該当します。
リストラハラスメント
リストラハラスメント(リスハラ)は、嫌がらせによって従業員に退職を促す行為を指します。「簡単な業務のみを押し付ける」「まったく仕事を与えない」といった状態を作り上げて、自主退社に追い込みます。
会話例:
「今日も書類の整理だけしてくれたらいいよ」
問題点:
会社に長年貢献してきた従業員に対して、故意に簡単な業務しか与えない行為は、リスハラです。
テクノロジーハラスメント
テクノロジーハラスメント(テクハラ)は、パソコンなどの電子機器の扱いに疎い人に対して、作業のスピードや知識の低さを挙げて侮辱することを指します。
会話例:
「こんな簡単な操作もわからないのですか?」
問題点:
実際に簡単な操作であったとしても、それをストレートに相手に伝えてしまうとことで、テクハラとなる可能性があります。
スモークハラスメント
スモークハラスメント(スモハラ)は、喫煙者が非喫煙者に対して行う嫌がらせ行為を指します。喫煙を強要したり、タバコを嫌がる人の近くで吸い続けたりすることはスモハラに該当します。
会話例:
「ちょっと1本タバコ吸っていいか?」
問題点:
上司からタバコを吸いたいと言われた場合、立場の弱い部下は断りづらいため、相手の許可を取っていたとしてもスモハラと見なされることがあります。
アルコールハラスメント
アルコールハラスメント(アルハラ)は、上下関係を利用した飲酒の強要などを指します。相手の体質や体調を無視して無理やり飲酒させる行為はアルハラです。
会話例:
「上司の注いだ酒が飲めないのか」
問題点:
業務時間外の懇親会であっても、過度な飲酒をすすめる行為はアルハラに認定されます。
スメルハラスメント
スメルハラスメント(スメハラ)は、においによって周囲を不快な思いにさせる行為を指します。体臭や、タバコのにおい、口臭などの他、強い香水や柔軟剤などが原因として挙げられます。
会話例:
「毎朝ちゃんと歯磨きしてる?」
問題点:
体臭や口臭はデリケートな問題なので、香害の被害者として相手に改善を求めたつもりが、スメハラの加害者となってしまうケースもあります。
ハラスメントが発生した際の対処法
ハラスメントが発生したときは、被害者と加害者だけでなく、広く関係者に事実確認する必要があります。ここでは、ハラスメントが発生した際の適切な対処法を解説します。
関係者に事実確認をする
ハラスメントの報告が上がってきたら、次の手順で事実確認を進めていきます。
- 1.被害者、加害者、関係者を特定する
- 2.被害者と加害者の主張を聞く
- 3.関係者から情報収集をする
被害者と加害者が1対1とは限りません。関係者の中には、自覚のないまま嫌がらせ行為に加担する人がいる場合もあるため、慎重にヒアリングを行っていきます。 当事者の主張だけでなく、確実な証拠を集めて、正確に事実関係が把握できるよう努めましょう。下記は、被害者と加害者へヒアリングする際の質問例です。
- ・誰によって・どこで・どのときに・どのように行われたか
- ・拒否や拒絶の意思表示はしたか
- ・周りの人にも同じようなことがあったか
- ・今もその状態が続いているのか
- ・メンタルはどのような状態か
- ・今後の対応はどうして欲しいか
- ・どのように解決していきたいか
適切な対処ができないと、被害者がバッシングや嫌がらせを受けたりする二次被害(セカンドハラスメント)が発生しやすくなります。ハラスメント対応は社内の専門部門や外部の専門家、顧問弁護士などを含め、公平公正に実施することが重要です。
また、被害者にヒアリングを行う際は、話した内容が外部に漏れないことを伝えると、被害者は安心して事実を話しやすくなります。加害者へのヒアリングも、偏見や先入観を待たず、中立な立場で聴取することを意識します。ただし、確実な証拠との矛盾があった場合は、踏み込んで追求するなど、緩急をつけながら対応していきましょう。
被害者と加害者に適切に対応する
事実確認の結果、ハラスメント認定することが決まったら、被害者と加害者への適切な対応を検討します。処分は軽すぎても、重すぎてもいけないので、公平な判断を心がけましょう。関係修復が困難な場合は、被害者と加害者が一緒にならないように配置を転換することも1つの解決策です。
加害者からの直接的な謝罪は、被害者に「許さなければならない」といったプレッシャーを与えかねないため、安易に促すべきではありません。謝罪の機会を設ける場合は、被害者の意向を尊重し、加害者の自己満足で終わらないよう注意します。加害者が深く反省し、誠意を持って被害者と向き合っているなら、やり直しの機会を与えることも考えてみましょう。
再発防止案を考える
ハラスメントが発生したということは、環境や体制などに問題があり、今後も同様のトラブルが起こる可能性があることを示しています。報告のあったハラスメントが解決したら、その原因を突き止めて、環境や体制を見直しましょう。下記に、再発防止策の具体例を紹介します。
- ・ハラスメントが発生した部門で研修を実施する
- ・定期的にハラスメントに関するアンケート調査を行う
- ・社内報やトップメッセージなどでハラスメント事例を共有する
ハラスメント研修やアンケート調査は、問題が大きくなる前に対処できる最適な方法です。ハラスメント事例を共有する際は、個人が特定されないようプライバシーに配慮しなければなりません。再発防止策として事例を共有したつもりでも、被害者からセカンドハラスメントと捉えられてしまうリスクがあります。
ハラスメントの防止に必要なこと
価値観や性格の異なる人が集まる職場では、従業員間のコミュニケーションエラーをゼロにすることはできません。 重要なのは、ハラスメント事案として被害者と加害者が生まれる前に、最適な対策を講じることです。
ハラスメントの防止に必要な3つのポイントは、以下のとおりです。
- ・社内でのルールや規定を周知
- ・法律により規定されていることを周知
- ・相談窓口の設置
ハラスメントの防止に必要なポイントについて、詳しく解説します。
社内でのルールや規定を周知
ハラスメントを防止するために、多くの企業が社内ルールや規定を定めています。就業規則の規定に詳細を明記することで、ハラスメントの抑止力となりますが、周知が徹底できていなければ高い効果は見込めません。
「どういった事例がハラスメントに該当するか」「ハラスメントの報告があったら、どのように対処するか」など、具体的な行動指針を提示することで、大きなトラブルに発展する前に解決しやすくなります。
法律により規定されていることを周知
ハラスメントは職場内だけの問題ではありません。セクシャルハラスメントやマタニティハラスメントは男女雇用機会均等法、パワーハラスメントは労働施策総合推進法などの法律によって、防止措置を講じることが義務付けられています。
ハラスメント行為に対する理解不足や、問題意識の低さを改善するためには、法律により規定されていることを周知することが重要です。ハラスメントに関する法律は時代に合わせて更新されているため、改正のタイミングで全従業員に情報を共有すると、理解を高めることができます。
相談窓口の設置
ハラスメントの防止として、相談窓口の設置も効果的です。相談窓口があることで、ハラスメントの原因となりうるトラブルが発生した場合でも、事態が大きくなる前に対処できます。
相談窓口は社内の従業員で構成する方法と、外部に委託する方法があります。社内の従業員から担当者を選ぶ場合は、事前にハラスメント研修を受講するなどして知識を深めてもらうことが大切です。外部委託には、「専門家が対応できる」「内部事情に影響されず客観的な判断が下せる」といったメリットがあります。
プライバシー保護への配慮も重要
相談窓口を設置する際は、プライバシー保護への配慮も重要です。「直接話す場合は、秘密性の高いスペースを確保する」「予約制にして来室者が重ならないように配慮をする」など、安心して利用できる環境を構築します。また、気軽に相談しやすいように、文書、メール、電話、対面など複数の手段を用意しましょう。
研修やセミナーなどで理解を促す
研修やセミナーを実施して、ハラスメントへの理解を深めることも防止策となります。ハラスメントに詳しい従業員が社内学習会を行ったり、外部から講師を招いてセミナーを実施したりするなど、自社に合った方法を検討してみましょう。
学ぶ機会を定期的に設けることで、ハラスメントが発生しづらい組織風土が醸成できます。自社で研修やセミナーの実施が難しい場合は、外部サービスの利用も検討してみましょう。
※参考:ハラスメント研修とは?目的やハラスメントの種類、研修する方法も解説
まとめ
近年では、悪意のない行為や業務時間外のやり取りなどがハラスメント認定されるケースも増加傾向にあります。ハラスメントは被害者に大きな心の傷を残すだけでなく、企業にもさまざまな悪影響を及ぼしかねません。ハラスメントが発生した際の対応や、事前に防ぐための対策をしっかりと立てることが重要です。
ユーキャンのハラスメント防止コミュニケーション講座では、具体的な事例を通じて基礎からしっかりと学ぶことができます。組織のハラスメント意識を高めたい方や、ハラスメントにならない声掛けや指導のポイントを知りたい方は、ぜひご活用ください。