ハラスメント研修とは
ハラスメント研修は、職場におけるハラスメントについて学ぶ研修です。ハラスメントとは、不快にさせたり、苦痛を与えたりする言動や行動などを指します。ハラスメントに対する従業員の理解を促し、予防や対策などを実施します。職場でいじめや嫌がらせがあると人権侵害に発展する可能性があるため、社員1人ひとりに対する学習機会の提供が必要です。
ハラスメント研修の必要性
ハラスメント研修は、職場の安全を守るために必要なもので、法律でもハラスメント防止策が定められています。以下で解説します。
職場の環境を悪化させないため
厚生労働省の調査によると、職場におけるハラスメントの状況が悪化しています。「精神障害に関する労災補償状況」には、いじめや嫌がらせなどによる労災認定の増加傾向が発表されています。職場のハラスメントを放置すると、従業員の休職や退職などの増加につながる可能性があるため、職場の環境を整備することが重要です。
※参考 令和2年度「過労死等の労災補償状況」|厚生労働省
ハラスメント防止の義務化に対処するため
2022年4月1日、中小事業主において、パワーハラスメント防止が義務化されました。今後は大手企業から中小企業まで、すべての企業にハラスメント対策が求められます。企業はハラスメント研修によってコンプライアンスの理解や、ハラスメント全般に対するリテラシーを高めなければなりません。ハラスメントに関する知識を得たうえで、職場の行動規範を変える必要があります。
※参考 職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!|厚生労働省
ハラスメント研修の目的
ハラスメント研修の目的は、ハラスメントを起こさない環境・体制をもつ組織を作ることです。従業員がハラスメントに関する正しい認識を持つことで、社内におけるコミュニケーションの改善が期待できます。
企業におけるハラスメントについては、意識的・無意識的に関わらず、また特定・不特定多数を問わず、予防の対策が求められます。ただし、過剰な気遣いによるコミュニケーションで社員が疲弊しない対策が必要です。
ハラスメントの種類
ハラスメントには数多くの種類があります。以下で、代表的なハラスメントについて解説します。
パワーハラスメント
パワーハラスメント(パワハラ)は、職場や学校での上下関係、権力を利用した嫌がらせ行為や強要行為を指します。職場の場合は上司から部下、または先輩から後輩に対して、優位な立場から不必要な指導を行ったり、精神的な苦痛を与えたりする行為はパワハラに該当します。一方で、指導と嫌がらせを判別するには、個別の状況と双方の意見を聞いたうえで対応をしなければ、パワーハラスメントの客観的な判断は難しいでしょう。暴言や脅迫、人間関係の切り離し、過大または過小な仕事を要求するなどの行為があればパワーハラスメントと認定される可能性が高いです。
モラルハラスメント
モラルハラスメント(モラハラ)は、言動や行動で意識的に相手に精神的苦痛を与える行為を指します。モラルとは道徳または倫理を意味しており、暴力行為はないものの、悪質なクレームや嫌がらせを行い、相手を精神的に追い詰めることがモラルハラスメントにあたります。また特定の相手を無視したり、明確な理由もなく暴言を浴びせたり、常に不機嫌な態度で接したりすることもモラルハラスメントです。モラルハラスメントはパワーハラスメントとも近い性質を持っていますが、上下関係や優位な関係性には限らない点が違っています。職場環境や人間関係の悪い職場で多く見られるハラスメントで、職場環境の改善が解決の最重要課題になるでしょう。
セクシャルハラスメント
セクシャルハラスメント(セクハラ)は、性的な言動または行動によって、心身に苦痛を生じさせたり、就業環境を害したりするハラスメントです。例えば上司から女性社員に対して、権力を利用して性的な言動を行ったり、身体に触れたりするのが典型的なセクシャルハラスメントです。また性別や年齢、容姿、プライベートな生活などについて、個人の価値観や尊厳を傷つける発言をするケースも、セクシャルハラスメントとして認定されます。セクシャルハラスメントは日本で認知されるのが1980年代と非常に早く、当時は男性から女性への嫌がらせが一般的でしたが、現在は性別関係なくセクシャルハラスメントと定義されています。
マタニティハラスメント
マタニティハラスメント(マタハラ)は、妊娠・出産・子育てに関連した嫌がらせ、職務上不利益な取り扱いを行うハラスメントです。女性の場合はマタニティハラスメント、男性の場合はパタニティハラスメントといわれます。マタニティハラスメントの具体的な例としては、妊娠を理由に過小な業務を命じたり、配置転換をさせたり、自主退職を迫ったりするケースがあります。妊娠・出産・子育てに関連した嫌がらせ行為は、育児介護休業法で違法とされているため、必要に応じて労働基準監督署に報告すべきです。
アルコールハラスメント
アルコールハラスメント(アルハラ)は、名前の通り飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為を指します。社会人は職場の飲み会や忘新年会がありますが、その際に上下関係や集団での強要によって、強制的にアルコールを摂取しなければならない状況に追い込むことがアルコールハラスメントです。またお酒に酔った状態で暴言や暴力、迷惑行為を行うこともアルコールハラスメントに該当します。本人の気持ちを無視して、周囲が飲酒をさせることもアルコールハラスメントにあたるため、飲酒する際は本人の意思を重視してください。
ハラスメント研修の内容
ハラスメント研修で学習した後は、職場環境の見直しが必要です。職場におけるハラスメントを予防し、従業員それぞれが対処法を身につけましょう。以下で解説します。
ハラスメントについて学習する
・ハラスメントの定義を学ぶ
ハラスメントには明確な定義というものはなく「受けた人の感じ方」によってはハラスメントになります。主観的には「労働者が何らかの不快感を覚えること」となっており、かつ不快であることと中止を求めているにもかかわらず、繰り返し同様の行為が繰り返されればハラスメントです。ただし、ハラスメントと認定されるには一定の客観性が必要であり、認定には証拠も必要です。
・ハラスメントの現状について学ぶ
厚生労働省が2021年4月に発表した「職場のハラスメントに関する実態調査」では、7割以上の企業でパワハラやセクハラ、約半数の企業でマタハラ・パタハラがあったという結果が出ています。ハラスメントの件数は、セクハラこそ減少してるものの、パワハラはほとんど変化がなく、ハラスメント問題は根強く残っていることがわかります。
・ハラスメントの影響について学ぶ
ハラスメントは放置すると、被害者からの告発や訴訟問題となり、多額の賠償金を支払うことになります。また賠償金以上に大きな問題が、企業の信用失墜、株価の大幅な下落、生産性の低下、退職者の増加などの悪影響です。個々の問題を解決しても、企業としての環境や体質を改善しなければ繰り返される問題であり、根本的な解決には組織を挙げて取り組む必要があります。
職場環境の見直し
職場環境を見直すことで、ハラスメントの実態の調査ができます。ハラスメントのチェックリストを作成し、業務における問題点を洗い出しましょう。指導とハラスメントの明確な違いを把握し、普段の行動や言動を見直す必要があります。職場におけるコミュニケーションを見直し、ハラスメントにならない伝え方のスキルを高めることが重要です。
ハラスメントの予防や対処法を学ぶ
従業員がハラスメントの予防や対処法を学ぶと、職場の安全性を確保できます。同僚に対する心遣いやマナーを身につけて、ハラスメントの発生をなくしましょう。万が一、ハラスメントが起きたら、職場全体で再発防止の仕組みを構築します。研修を行い、職場のハラスメントにおける共通認識を作り、良好な関係性を築ける工夫をしてください。
※ページ内で紹介していないハラスメントの種類に関してはこちらの記事へ
ハラスメントの種類は? 職場で起こる原因と発生した場合のリスク、対処法を解説
ハラスメント研修の方法
ハラスメント研修は外部講師による学習や、オンライン研修などがあります。以下で解説します。
外部講師による研修
外部講師による研修は、専門家の知識やノウハウを活用した研修が実施されるため、質の高いハラスメント研修が受けられます。ユーキャンが提供する研修は学習内容を絞り、重点的な学習ができるカスタマイズが可能です。ハラスメントの本質や構造を学べて、ハラスメントの正しい知識や解決策、対処方法などを身につけられます。
講師に依頼する場合、費用や会場の手配などのコストがかかりますが、ユーキャンではeラーニングもご用意しております。学習効果の高い研修を希望する際は、ぜひ利用を検討してください。
オンライン研修
オンライン研修は時間や場所を選ばない学習ができるため、従業員が参加しやすい環境を構築できます。外部研修や講師を招く研修と比べて、費用も抑えられるでしょう。ただし、オンライン研修は講師と従業員の間でコミュニケーション不足が生じる可能性があります。学習した内容のフィードバックを社内でできる体制を整え、学習の効果を高める研修を実施しましょう。
ハラスメント研修を成功させる3つのコツ
ハラスメント研修を成功させるには、従業員の目的意識や当事者意識が求められます。カリキュラムの改善も必要となります。
1、目的を明確にする
ハラスメント研修は、目的を決めて従業員の意識や行動を変化させることが重要です。すべての従業員がハラスメントについて理解し、自主的に予防や職場環境の改善に取り組まなければなりません。従業員がハラスメントに関する知識やノウハウを身につけられるように目的を設定し、働きやすい環境を構築するための研修を実施しましょう。
2、当事者意識をもたせる
ハラスメント研修は従業員ごとにプログラムを設定し、役職に合わせて当事者意識を持たせることが重要です。研修内容に対して他人事に感じてしまうと、従業員の参加意欲が低下する可能性があります。研修は座学だけではなく、グループワークや講師への質問の機会を設けるなど、従業員を積極的に参加させる体制を構築しましょう。
3、アンケートを実施する
研修においては、実施後の改善が必要となるため、研修の参加前と参加後にアンケートを取りましょう。参加前のアンケートの結果をもとに研修のカリキュラムを調整し、参加後のフィードバックを参考に改善を繰り返します。研修の内容は1度の受講だけでは理解が難しいため、定期的に研修を開催して従業員の理解を促しましょう。
4、ハラスメントを許さない組織風土を醸成する
受講者にハラスメント研修を当事者意識を持って臨んでもらうためには「ハラスメントを許さない」風土を組織内で醸成する事が重要です。そのため、経営者から全従業員へ向けて以下のような発信や行動をするべきです。
・明確な意思表示をする
・ハラスメント防止に向けた行動を率先して行う
たとえば、経営者が従業員とともにハラスメント防止研修を受けることは、従業員への強力なメッセージとなります。
5、繰り返し行う
ハラスメント防止研修は1度限りの実施では、行動や意識を定着させることが出来ません。繰り返し行うことで風土を育て、行動の定着化を推進できます。ハラスメントが起きてしまうことでの従業員へのリスクや、企業へのリスクを予測し、定期的に繰り返し実施するべきです。
まとめ
ハラスメント研修は、ハラスメント対策としてすべての企業において必要な取り組みです。職場の環境を改善するために、従業員のハラスメントに対する理解を促し、働きやすい職場を目指して繰り返しの学習を行います。従業員が自主的にハラスメント対策に取り組めるように、専門の講師を呼んで、質の高い研修を実施しましょう。
ユーキャンの法人向け人材育成サービスは丁寧なヒアリングで課題を抽出し、最適な提案を行います。ハラスメント研修を実施する際は、ぜひ利用をご検討ください。