コンプライアンスの概要
コンプライアンスの概要として、以下の4つについて解説します。
- ・言葉の意味
- ・ハラスメント防止
- ・就業規則や行動規範の順守
- ・情報漏えい防止
言葉の意味
コンプライアンスとは、日本語に訳すと従順や遵守など、「従うこと」を指します。従来は「法令遵守」と翻訳されることが多くありました。法令とは、国が定める法律や行政機関が定める法規、地方公共団体が定める条例や規則などを指します。ただし、近年は法令遵守だけでなく、以下のように幅広い内容を含むようになっています。
ハラスメント防止
ハラスメントとは、ほかの人が嫌がる声掛けや行動をすることです。少しの言動がハラスメントに該当することがあります。ハラスメントにはさまざまな種類がありますが、代表的なものはセクシャルハラスメント、パワーハラスメント、アルコールハラスメントなどが挙げられます。ハラスメントは、言われたりされた相手がどのように感じるかが焦点となります。無意識的なものを含めて、ハラスメントをしている従業員に対しては、コンプライアンス教育が必要です。
就業規則や行動規範の順守
それぞれの企業には、就業規則や行動規範が設定されています。就業規則には企業が定めた勤務時間や賃金の計算方法、安全衛生など、幅広い約束事が規定されています。また、企業の従業員として、企業理念に沿った行動規範を守ることもコンプライアンスの一環です。
情報漏えい防止
デジタルデバイスの進化や業務で使用する頻度が増加し、従業員が情報を社外へ持ち出す場面が増えています。個人情報やクライアントの情報を漏えいするリスクが高まるため、従業員は機密情報を慎重に取り扱う意識を持たなくてはいけません。実際に、機密情報の漏えいで社会的信用を失った企業は少なくありません。機密情報を漏えいすると、企業として大幅な信用の低下に繋がる可能性があるため注意しましょう。
コンプライアンス教育が重要な理由
企業は多くの情報を取り扱っています。常に、ステークホルダーや市場から厳しくチェックされています。コンプライアンスを守れずリスクを回避できないと、企業存続の危機にさらされる可能性もあるでしょう。反対に、コンプライアンスを遵守することで支持され、企業価値が高まるケースもあります。
コンプライアンス教育を実施する目的
コンプライアンス教育の目的は、以下の4つです。
- ・倫理観の習得
- ・社会人の基本的なルールの習得
- ・コンプライアンス違反のリスクの理解
- ・コンプライアンス違反時のリスクマネジメント
詳細を解説します。
倫理観の習得
コンプライアンスを継続的に守るために重要なのが、倫理観です。明確にルール化されていない内容は、人としての良識や自社の行動指針に基づいて判断しなければなりません。ルール化されていない規範を守るには、倫理観が欠かせません。自社のコンプライアンスの基本方針を伝えて、倫理観の重要性について教育する必要があります。
社会人の基本的なルールの習得
コンプライアンス研修は、新入社員に対して実施するケースが多いでしょう。新入社員は、社会人としてのルールを正確に理解できていないことも多いです。研修で知っておくべき知識や経験を身につけてもらい、振る舞いや行動に活用できるようにしましょう。法令や企業の規則に加えて、顧客情報や機密情報の取り扱い、SNSリテラシーなども重要です。
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コンプライアンス違反のリスクの理解
コンプライアンス違反による、企業や当事者が受ける影響の深刻さについて、従業員に理解を促すことが大切です。コンプライアンス違反が原因で、社会的信用を失ったり制裁を受けたり、最悪の場合、倒産に至る可能性も考えられます。
過去の事例を学ぶことで、具体的にリスクを認識できるようになるでしょう。知識がなく無意識にコンプライアンス違反をする従業員はもちろん、意図的に違反しようとする従業員を減らすことにも繋がります。
コンプライアンス違反時のリスクマネジメント
教育を実施しても、コンプライアンス違反の可能性をゼロにはできません。違反が発生した際に迅速かつ適切に対応できるよう、教育することも欠かせません。違反が起きたことを想定した実践的な演習をして、リスクマネジメントに繋げましょう。
コンプライアンス教育成功のポイント
コンプライアンス教育成功のポイントは、以下の4つです。
- ・全従業員に実施する
- ・自社のコンプライアンスを解説する
- ・アウトプットの場を設ける
- ・事例を用いて説明する
詳細を解説します。
全従業員に実施する
コンプライアンスはトップや経営陣をはじめ、全従業員が理解しておくべき内容です。研修を受講していない従業員がコンプライアンス違反を犯し、1人が違反したことをきっかけに、社内全体の状況が悪化する恐れもあります。全従業員がコンプライアンスへの意識を高めることが、企業としての質を高めます。
自社のコンプライアンスを解説する
ひと言でコンプライアンスといっても、企業ごとに内容は異なります。自社のルールが世間の常識と異なっていると適切な判断ができず、コンプライアンス違反の原因になるでしょう。教育を行う際は、自社のコンプライアンスの内容を伝えます。コンプライアンス研修後は、マニュアルを全従業員が閲覧できる状態にしておくと良いよいでしょう。
アウトプットの場を設ける
コンプライアンス研修は、座学で行われることが多いです。専門用語など中には難解な部分もあるため、伝え方に工夫が必要となります。インプットした知識を習得するには、参加者同士で議論するなどアウトプットの場を設けるのがおすすめです。意見を出し合うことで、聞くだけよりも記憶に残りやすくなったり、自分とは違う考えに気付いたりできるでしょう。
事例を用いて説明する
過去の事例を紹介すると、説得力を伴ってコンプライアンスの重要性を示せます。中でも自社と同業の企業の事例を示すと、参加者は具体的なイメージが湧き、当事者意識を持ちやすいでしょう。未然に防ぐ方法や違反が起きた背景について、議論するのもおすすめです。
コンプライアンス教育のステップ
コンプライアンス教育の手順は、以下のとおりです。
- ・ゴールを決める
- ・スケジュールを決める
- ・具体的な内容を決める
- ・受講者を選ぶ
- ・定期的に実施し、振り返る
詳細を解説します。
ゴールを決める
はじめに、コンプライアンス教育で達成すべきゴールを決めましょう。研修の種類は多数あり、ゴールによって行うべき研修の内容が変わるためです。受講者にもゴールを共有することで、意欲的に取り組みやすくなります。ゴールへと効率的に向かううえで、重要なステップです。
スケジュールを決める
コンプライアンス教育のスケジュールをあらかじめ決めましょう。研修には1日で終わるものから、受講に数日を要するものもあります。前もってスケジュールを決めることで、日数に適したプログラムを組み込めます。定期的に実施することが重要なため、のちのスケジュールも決めておくと良いでしょう。
具体的な内容を決める
コンプライアンス教育には、「ハラスメント」や「情報セキュリティ」、「コンプライアンス違反の事例や罰則に関する研修」などがあります。それぞれ重要ですが、自社のゴールやスケジュールに基づいて必要な内容を決めましょう。
一般社員への教育
一般社員に対しては、何をすべきで何をすべきでないかといったコンプライアンスの基礎的な内容をはじめ、コンプライアンス違反を防ぐための教育が大切です。具体的には、同僚や取引先の人など周囲の人を不快にしないことや、SNSの利用で気を付けるべきことなどです。
新入社員は実感を得にくいため、実際の事例や問題を通じて、リスクはさまざまな場面に潜み、いつどこでコンプライアンス違反が起きるか分からないことを理解してもらいましょう。また、違反や問題に直面した際に相談しやすいよう、制度を整えると良いでしょう。
管理職への教育
管理職には、コンプライアンスの基礎的な内容を理解してもらうことはもちろん、部下に対して模範となる行動を促す必要があります。また、コンプライアンス違反が発生した際に、問題を発見したり解決する力を養うための、知識を身につけてもらうことも大切です。
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ケアレスミスや軽微な問題に、迅速に対応することで、大きなコンプライアンス違反を予防する効果が期待できます。管理職は裁量を持っているが故に、不正を起こす危険性も伴うため、不正に関する法令の知識を伝え予防しましょう。
経営層のへの教育
経営層に対しては、改めて経営に関わる経営者の責任や役割について認識し、コンプライアンス違反が経営にどのように影響を及ぼすかを認識することが大切です。より効果的な理解には、具体的な数値で根拠を示すと良いでしょう。
また、社内をまとめる必要があるため、自社のコンプライアンスの方針やルールの作成、体制を構築したり運用したりする知識を身につけなければなりません。不正行為に関わるリスクも管理職以上にあるため、事例から具体的にリスクを理解しておきましょう。
受講者を選ぶ
基本的なコンプライアンス教育は、全従業員に対し、実施すべきです。ただし、研修の目的や教育内容によっては、受講すべき対象は変わります。新入社員のみ、管理職のみなど、階層別にすべきケースがあるため、適した受講者を選びましょう。
定期的に実施し、振り返る
コンプライアンス教育は定期的な実施が大切です。そして、コンプライアンス教育の研修が終わるたびに受講者へ振り返りを実施すると、復習になり新たな発見があるかもしれません。研修で得た知識を定着させ、実践の場で活用してもらうために振り返りは大切です。
まとめ
近年はコンプライアンスという言葉を耳にすることが増え、重要性が増しています。以前は法令遵守という意味でしたが、ハラスメント防止や就業規則・行動規範の遵守、情報漏えい防止など幅広い意味を含みます。企業は常に多くの情報を扱っており、長期にわたって成長を続けるにはコンプライアンスのリスクを回避することが重要です。
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