パワハラ研修は必要なのか?研修内容やパワハラ防止法の義務化について解説

  • 公開日:2023.07.11

    更新日:2023.07.12

    2022年4月から、中小企業の事業主においてもパワハラ防止措置が義務化されました。この記事では、パワハラの定義を知りたい人や、企業で起こりうるパワハラを未然に防ぎたい人に向けて、パワハラ研修の内容や必要性について解説します。研修のメリットや、パワハラ防止法の義務化についても解説するので、自社でパワハラ研修を実施する際の参考にしてください。

企業にとってパワハラ研修は必要なのか

労働相談センターに持ち込まれるパワハラに関する相談数が増加傾向にあることから、2020年6月1日にパワハラ防止法が施行されました。2022年4月からは、中小企業でも義務化となったため、企業においてパワハラ研修の必要性が高まっています。

法律の施行により、パワハラ対策を講じることは事業主の義務となりました。職場環境の悪化防止やパワハラ防止の義務化に対処するため、パワハラ研修を実施する企業は増加傾向にあります。

パワハラ研修を実施する目的

パワハラ研修を実施する目的は、以下の2つです。

  • ・パワハラについての関心と理解を深める
  • ・働きやすい職場環境作り

それぞれについて解説します。

パワハラについての関心と理解を深める

パワハラ研修を実施する目的は、パワハラへの関心や理解を深めるためです。パワハラ研修を実施することでハラスメントの種類や定義を知るだけでなく、従業員1人ひとりの意識や価値観の違いに気づくきっかけにもなります。ハラスメントに対する正しい認識を持つことで相互理解を深め、パワハラの発生や潜在化を未然に防ぎます。

働きやすい職場環境作り

研修を通じてパワハラに対する正しい認識を持つ従業員が増えると、職場環境の改善やパワハラの抑制効果が期待できます。パワハラが発覚した後の対応方法や、従業員の相談・苦情に応じて、早期に適切に対処できる体制を整備できるでしょう。結果的に、より働きやすい職場環境の整備につながります。

パワハラが企業に与えるダメージとは

パワハラが企業に与えるダメージは、以下の2つです。

  • ・人材不足に陥る
  • ・企業イメージが低下する

それぞれについて解説します。

人材不足に陥る

パワハラが発生すると企業に与えるダメージは大きく、定職率の低下や離職率増加の可能性が高まります。パワハラが原因となり、メンタルヘルス不調になった被害者や身近な従業員が休職・退職するリスクが生じます。 このようなことから従業員が連鎖的に退職になると、企業は人材不足に陥るおそれがあります。パワハラが頻繁に発生している企業は危険性が高いといえるでしょう。パワハラを常態化させないためにも、パワハラを未然に防止することが重要です。

企業イメージが低下する

パワハラが社外に公けになると、企業イメージの低下につながります。公になるきっかけは、パワハラの被害者が訴訟を起こしたり、SNS投稿などによる告発が考えられます。企業イメージが低下すると新たな人材の採用にも支障をきたし、採用活動が長期に渡るためコストも膨らみます。

パワハラが発生した企業は社会からのイメージが悪くなり、顧客離れや株価の暴落といったリスクが生じ、業績にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

パワハラの定義を解説

パワハラの定義は、以下3つの要素をすべて満たす言動です。

  • ・優越的な関係を利用した言動
  • ・業務上の適正範囲を超えている言動
  • ・身体的・精神的な苦痛を与えたり、就業環境を害する言動

それぞれについて解説します。

優越的な関係を利用した言動

優越的な関係を利用した言動とは、抵抗や拒絶がしづらい関係を背景として行われるものを指します。具体的には、上司や先輩による職場での地位や優位性を利用した言動です。相手が同僚や部下で、上司や先輩が抵抗や拒絶ができない関係性の場合も、パワハラに該当する可能性があります。

業務上の適正範囲を超えている言動

業務には関係ない個人的な命令・言動など、業務の本質から外れた言動もパワハラに該当します。プライベートでの金銭貸借や土下座での謝罪の強要など、業務上の適正範囲を超えている場合に限り、パワハラが成立します。業務として行なわれるべき内容であれば、言葉が悪くてもパワハラとは考えにくく、該当しているとはいえません。

身体的・精神的な苦痛を与えたり、就業環境を害したりする言動

相手の人格や尊厳を傷つける言動もパワハラです。言動によって身体的・精神的に苦痛を与え、就業環境を害し、能力を発揮する上で大きな悪影響が生じる場合が該当します。「社会一般の労働者が同様の言動を受けた場合に、就業する上で看過できない支障が生じたと感じるかどうか」が判断基準です。1回の言動でも、パワハラに該当する場合があります。

パワハラの種類は6つに分類される

パワハラの種類は、以下の6つに分類されています。

  • 1.暴行や傷害など身体的な攻撃
  • 2.脅迫や暴言など精神的な攻撃
  • 3.仲間外れや無視など人間関係から切り離す行為
  • 4.職場環境を害する過大な要求をする行為
  • 5.仕事を与えず、過小な要求をする行為
  • 6.プライバシーに立ち入り、個を侵害をする行為

それぞれについて解説します。

1.暴行や傷害など身体的な攻撃

殴る・蹴るなど、目に見えて分かる暴力や傷害といった身体的攻撃はパワハラです。タバコの火を近づけたり、物を投げつけるフリをしたり、実際には身体に触れなくても、間接的な暴力として対象になり得ます。それらの行為が指導目的でも、身体的な攻撃となるケースが一般的です。

2.脅迫や暴言など精神的な攻撃

脅迫や暴言、侮辱や名誉を棄損する発言など、精神的苦痛を感じさせる言動はパワハラです。業務に関する場合でも、長時間に渡る必要以上の厳しい叱責や、他の従業員の前で威圧的な叱責を大声で繰り返すなど、人格を否定するような言動が該当します。精神的苦痛を感じさせる内容のメールを従業員に送信する行為も対象です。

3.仲間外れや無視など人間関係から切り離す行為

隔離や無視、仲間外れなど、人間関係から孤立させる行為はパワハラの1つです。
上司が部下を退職に追い込むために、配転命令を出したり仕事から外して隔離したりすることも、人間関係からの切り離し行為に該当します。上司だけでなく同僚や部下が集団で無視し、職場で孤立させた場合も意図的な隔離に含まれるため、パワハラの対象です。

4.職場環境を害する過大な要求をする行為

明らかに必要のない業務や達成できない課題を強制し、仕事の妨害をすることはパワハラです。要求が達成できないことに対し、怒鳴る・殴る・蹴るといった複数のパワハラが併発する場合もあります。社員教育のため現状よりレベルの高い業務を任せたり、繁忙期に通常時より多い業務量を割り振ったりすることは、これには該当しません。

5.仕事を与えず、過小な要求をする行為

過大な要求とは対照的に、能力や経験とかけ離れた余りに簡単な業務を任せたり、極端に仕事を与えなかったりといった行為もパワハラに該当します。客観的に生産性の乏しい業務や理由のない自宅待機は過小な要求です。従業員の能力に応じて、業務内容や業務量を軽減する場合はパワハラにはなりません。

6.プライバシーに立ち入り、個を侵害をする行為

プライベートに過剰に踏み入る行為は、相手が精神的苦痛や職場環境を害されたと感じる場合はパワハラになります。職場内外で継続的に監視して嫌がらせをしたり、私物の写真を撮ったり、過度にプライバシーを詮索することは、個の侵害をしたとみなされる対象です。相手が女性である場合、セクハラになる可能性もあります。

パワハラ研修を企業で実施する方法

企業がパワハラ研修を実施する方法は4つあります。

  • ・従業員が講師となり自社のみで実施する
  • ・講師を招いて社内で実施する
  • ・外部の研修へ参加する
  • ・オンラインのパワハラ研修を受ける

それぞれの方法について解説します。

従業員が講師となり自社のみで実施する

社内でパワハラ研修を実施する場合、人事労務や相談窓口の担当者を講師に選ぶことがあります。従業員が講師になるメリットは、研修を実施するためにスケジュール調整をしたり法律を学んだりしながら、研修講師の経験を積むため、人材の育成やスキルアップにつながることです。社内で研修を企画する場合、対象を一般従業員と管理職に分けて実施すると効果的です。

講師を招いて社内で実施する

パワハラ研修には、研修サービスから講師を派遣してもらい、インハウス研修を実施する方法があります。事前に職場環境を踏まえたカリキュラムを準備をすることで、自社の状況に合わせた内容となり、高い研修効果が期待できます。自社のみの研修は回を増すごとに従業員が慣れてしまう傾向にあるため、初回以降は研修会社に頼むケースが多いようです。

外部の研修へ参加する

パワハラ研修には、民間の事業者を利用し、公開研修に参加する方法があります。外部のセミナーを利用すると研修準備の必要がないため、コストや手間が大幅に軽減されるメリットがあります。一度に大人数を相手にする研修であるため、画一的または限定的な内容になる傾向にありますが、自社で研修を実施する際の参考として参加しても 良いでしょう。

オンラインのパワハラ研修を受ける

オンライン研修は、パソコンやタブレットなどを使用して受講する方法です。Web会議ツールを使用するか、eラーニング・LMSシステムで学ぶ方法があります。オンライン研修は、個人の意識によって効果に差が出ることが特徴です。やる気があれば十分な効果が得られますが、無理やり参加させられている意識だと効果が低い傾向にあります。

パワハラ研修で学べる内容

企業のパワハラ研修で学べる内容は以下の3つです。

  • ・パワハラについての正しい知識を学ぶ
  • ・職場の現状環境を振り返る
  • ・パワハラが発覚した際の対処法を学ぶ

それぞれについて解説します。

パワハラについての正しい知識を学ぶ

パワハラに関する世間の価値観は常に変化しているため、研修では現状に合ったパワハラの知識を学ぶことが大切です。世代の違いによる無自覚なパワハラも少なくないため、問題となる言動の共通認識が不可欠です。効果的な研修を実施するにはパワハラの定義だけでなく、どんな言動や行動をすべきかといったように、ポジティブな内容も含めると効果的です。

職場の現状環境を振り返る

パワハラ研修では、職場の現状や職場環境、各従業員が自身の言動・価値観について振り返り、パワハラにつながる問題や原因を検証します。上司が部下を叱るのは、部下の成長のためであることを認識しましょう。ただし、お互いが良好なコミュニケーションをとれるように、必要なスキルを習得する必要もあります。意見交流を図り、1人ひとりの価値観の違いを体感しましょう。

パワハラが発覚した際の対処法を学ぶ

パワハラ研修では、パワハラが発覚した場合の対処法も学びます。パワハラは、自分が加害者や第三者の立場になる可能性もあるため、それぞれの立場になったときの対処法について考えましょう。第三者になった場合、他の上司や人事関連の部署などに相談し、パワハラが常態化しないよう迅速かつ適切な行動をとる必要があります。

パワハラ研修を実施するメリット

パワハラ研修を実施するとパワハラに対する関心が高まり、職場環境を整える効果が期待できます。パワハラ問題がない企業は働きやすいため、従業員のモチベーションが高まり生産性の向上につながります。パワハラ研修を通じて共通認識を持つことは、効果的なパワハラ対策になります。第三者が意見や指摘できる環境になることで、さまざまなリスク回避につながります。

まとめ

パワハラ防止措置が義務化となり、企業におけるパワハラ研修の重要性が高まりました。職場環境の整備や人材確保など多くのメリットがあるので、パワハラ研修の実施を検討してみてはいかがでしょうか。

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