漢検1級はどれくらい難しい?準1級との違いや合格率・具体的な問題を紹介
- 更新日:2023/05/16
漢検(日本漢字能力検定)は、有名な資格の1つで、受験条件が特にないことから誰でも受検できる人気の資格です。この記事では、漢字検定の中でも最も難易度が高い漢検1級について、試験概要や準1級との違い、1級取得のメリットなどを詳しく解説します。漢検1級の受検に向け、ぜひ役立ててください。
漢検1級の概要
漢字検定は、1級、準1級、2級、準2級と3〜10級までの12段階に分かれており、漢字検定1級は最も難易度の高い試験です。
次の表は、漢検1級の検定概要です。
主催 | 公益財団法人日本漢字能力検定協会 |
---|---|
検定日程 | 年3回(例年6月/10月/2月) |
受検会場 | 全国47都道府県の主要都市約180か所 |
検定時間 | 60分 |
合格基準 | 200点満点で80%程度 |
検定料 | 6,000円 |
コンピューターを使った漢検CBT受検は、漢字検定1級と準1級にはなく、公開会場でのペーパーテストのみです。
漢検1級の受検方法
漢検1級の試験は年に3回実施されます。試験日の約2か月前から受付が開始され、Webでの申込みのほか、コンビニエンスストア店頭での申込みも可能です。以前にはあった、書店や新聞社での申込み受付は現在は廃止されています。
申込み後、受検日の約1週間前に手元に届く受検票で、受検会場の確認ができます。受検会場については、受検地区の希望は出せますが、会場の指定はできない点に注意が必要です。
漢検1級の主な出題内容
漢検1級で出題される主な内容は以下の通りです。
- 漢字の読み
- 漢字の書き取り
- 故事・諺(ことわざ)
- 対義語・類義語
- 同音・同訓異字
- 誤字訂正
- 四字熟語
ただし、上記は出題分野の一例であり、毎回すべての分野から出題されるとは限りません。上記で挙げた分野とは異なる分野から出題される可能性もあります。
- 参考:日本漢字能力検定審査基準(2020年度~)|日本漢字能力検定(https://www.kanken.or.jp/kanken/topics/data/newstandardforscreening2020.pdf)
漢検1級の審査基準
漢検1級の審査基準は、日本漢字能力検定協会によると以下の通りです。
レベル・対象漢字数 | 大学・一般程度(約6,000字) |
---|---|
審査基準 | ・程度 常用漢字を含めて、約6,000字の漢字(JIS第一・第二水準を目安とする)の音・訓を理解し、文章の中で適切に使える ・領域・内容 常用漢字の音・訓を含めて、約6,000字の漢字の読み書きに慣れ、文章の中で適切に使える |
「領域・内容」は、以下の3つに分かれます。
読むことと書くこと | 熟字訓、当て字を理解していること 対義語、類義語、同音・同訓異字などを理解していること 国字を理解していること(怺える、毟るなど) 地名・国名などの漢字表記(当て字の一種)を知っていること 複数の漢字表記について理解していること(鹽―塩、颱風―台風など) |
---|---|
四字熟語・故事・諺 | 典拠のある四字熟語、故事成語・諺を正しく理解している |
古典的文章 | 古典的文章の中での漢字・漢語を理解している |
- 参考:各級の出題内容と審査基準 | 漢検の概要 | 日本漢字能力検定(https://www.kanken.or.jp/kanken/outline/degree.html)
漢検1級の受検者数と合格率
漢検準1級は毎年900人前後の受検者がいますが、合格者は多くても80人程度です。過去5回分の合格率の平均は8.4%です。
次の表に、漢検1級の過去5回分における受検者数と合格者数をまとめました。
受検者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|
2021年度第1回 | 916 | 85 | 9.3 |
2021年度第2回 | 797 | 51 | 6.4 |
2021年度第3回 | 873 | 87 | 10 |
2022年度第1回 | 847 | 81 | 9.6 |
2022年度第2回 | 921 | 62 | 6.7 |
- 参考:年度・回ごとの級別志願者数・合格者数 | 調査・データ | 日本漢字能力検定(https://www.kanken.or.jp/kanken/investigation/result.html)
漢検1級の難易度
漢検1級は、他の資格試験と比べても難易度の高い検定です。直近5回の平均合格率は8.4%と、10%に届きません。合格者には「リピーター」とよばれる、1級に合格した後もくり返し受検する人も含まれるため、新規合格者の合格率はさらに減って数%程度といえます。
漢検1級は、仏教用語や歴史用語などさまざまな分野の勉強や、四字熟語辞典、故事ことわざ辞典などを活用した勉強などが必要とされます。どの問題集にも掲載されていない四字熟語や故事ことわざも出題されるため、公式テキストや問題集、過去問題の対策だけでは、合格点に届きません。出題範囲の広さと合格率の低さから、漢検1級は難関資格といえます。
漢検1級と漢検準1級との違い
漢検の1級と準1級の違いは、対象とされる漢字の数です。準1級の出題範囲は「常用漢字を含めて、約3,000字の漢字の音・訓を理解し、文章の中で適切に使えること」ですが、約3,000字のうち2,136字は常用漢字のため、新たに勉強する漢字は実質900字弱となります。
一方で、1級の出題範囲は約6,000字です。準1級から3,000字増え、範囲の漢字を活用した熟語や用語も出題されることを考えると、準1級と比べ、勉強量は膨大だといえます。
漢検1級の勉強時間の目安
漢検1級合格に必要とされる勉強時間は、約500時間です。ただし、この勉強時間の目安は、漢検準1級の出題範囲をすでにマスターしている人の場合です。約500時間とは、毎日2時間勉強しても、8か月ほどかかることになります。現時点で漢検準1級のレベルに到達していない人は、少しずつステップアップしながら勉強を続けましょう。
漢検1級を目指すメリット
漢検1級合格を目指すメリットは次の3つです。
- 入試で有利になる
- 就活で評価される
- 趣味として漢字を楽しめる
以下で、それぞれ解説します。
入試で有利になる
漢検の勉強は、漢字の知識や語彙力が向上する上、取得した級が入試の直接的な評価につながることがあります。たとえば、高校や大学の入試を学校推薦で受ける場合、点数加算や合否判定の参考にされます。高校であれば3級以上、大学は2級や準2級以上を条件とすることが多いようです。
漢検の取得級が直接、評価の対象ではなくても、面接時の自己PRにも活用できます。特に、難易度の高い漢検1級に合格していることは、プラスに働くでしょう。
就活で評価される
漢検が、就職活動における評価対象になることもあります。新卒採用の書類選考や面接の際、評価指標の1つとして、漢検を活用している企業は少なくありません。漢検の勉強を通して身につけた「語彙力」はもちろんですが、着実に勉強に励み、合格を勝ち取ることを目指す「意欲」の面で、評価につながります。
趣味として漢字を楽しめる
漢検を、誰かに評価されるためではなく、ライフワークとして楽しんでいる人も多くいます。漢字を学びながら、定期的に漢検を受検することで自分のレベルアップが確認できます。熟語や用語を多く知ることで、読書の理解も深まり、新たな知識を得る喜びにもつながります。
日本漢字能力検定協会には、「漢検生涯学習ネットワーク」という漢検1級・準1級に合格した人だけが入れる会員組織があり、漢字や日本語の勉強に励む人の交流の場となっています。同じ趣味を持つ人とのコミュニケーションにより、自身の世界を広げるきっかけにもなります。
漢検1級の勉強方法
出題範囲が広い漢検1級の勉強は、日々の積み重ねが大切です。公式テキストや過去問題集を解きながら、わからない漢字は辞典で調べ、自分だけの辞書を作るのもおすすめです。漢字そのもの以外でも、故事・ことわざ・四字熟語なども、辞典で調べながら意味も覚えていきます。
わからなかった問題を自分でノートにまとめて、くり返し復習するようにすれば、オリジナルの弱点強化のテキストになります。
漢検1級の問題例
2021年度第1回漢検1級の検定で出題された問題のなかから、抜粋して紹介します。
問題1【読み】次の傍線部分の読みをひらがなで記せ。
鑰匙は監獄官吏が保管する。
問題2【書き取り】次の傍線部分のカタカナを漢字で記せ。
病気にシャコウして会合に出ない。
問題3【熟字訓・当て字】次の熟字訓・当て字の読みを記せ。
水綿
問題4【故事・諺】次の故事・成語・諺のカタカナの部分を漢字で記せ。
生は寄なり死はキなり。
- 参考:2021年度第1回日本漢字能力検定 試験問題(https://www.kanken.or.jp/kanken/outline/data/outline_degree_example_1m.pdf)
- 参考:2021年度第1回日本漢字能力検定 標準解答(https://www.kanken.or.jp/kanken/outline/data/outline_degree_example_1k.pdf)
標準解答
以下は、上記問題の標準解答です。
標準解答 | |
---|---|
問題1 | やくし |
問題2 | 藉口 |
問題3 | あおみどろ |
問題4 | 帰 |
漢検1級の勉強におすすめの辞典
漢検1級の勉強におすすめの辞典は次の3つです。
- 漢検 漢字辞典
- 漢検 四字熟語辞典
- 新明解故事ことわざ辞典
それぞれ解説します。
漢検 漢字辞典
「漢検 漢字辞典」は、日本漢字能力検定協会から出版されている漢字辞典です。漢検用の漢字辞典ともいえ、それぞれの漢字には検定級も記されています。五十音順に配列されていて、音訓索引のほか、7種類の索引が便利な辞典です。
漢検 四字熟語辞典
「漢検 四字熟語辞典」は、日本漢字能力検定協会から出版されている四字熟語辞典です。見出しの熟語は4,000語収録され、類義語や対義語も記されています。熟語の意味や由来などが解説されていて、6種類の索引が便利な辞典です。
新明解故事ことわざ辞典
「新明解故事ことわざ辞典」は、三省堂から出版されていることわざ辞典です。類書中最大規模の7,700項目が収録されています。ことわざのほか、慣用句や故事成語、格言・名言などを、簡潔な意味、詳しい補説などとともに勉強できます。
漢検1級の受検対策におすすめの参考書・問題集
日本漢字能力検定協会から出版されている、漢検1級対策におすすめの参考書や問題集は、以下の3つです。
- 漢検 過去問題集
- 漢検 分野別 精選演習
- 漢検要覧
それぞれ紹介します。
漢検 過去問題集
「漢検 過去問題集」は、最新版が毎年出版され、前年度に実施された3回分の検定問題がすべて収録されています。別冊の標準解答では、各分野における合格者の平均得点も確認できます。答案用紙の実物大見本つきです。
漢検 分野別 精選演習
「漢検 分野別 精選演習」は、過去の検定で出題された問題から精選された問題を、分野別に整理した問題集です。近年の出題傾向に沿って、基礎から応用まで網羅されています。1級の勉強には必需品といえる一冊です。
漢検要覧
「漢検要覧」は、幅広く使える、漢検受検に向けた基本の参考書です。1/準1級対応と、それ以外の級対応で分かれています。
少しずつレベルアップしたい人にはユーキャンの漢字検定講座
ユーキャンの漢字検定講座は、漢検に向けた積み重ねの勉強に最適な講座です。漢検は、いきなり1級を目指すのではなく、基本の4級から着実にステップアップしていくことが大切です。ユーキャンの漢字検定講座は4〜2級に対応していて、1日30分の勉強時間で、6か月後には2級合格レベルを目指せます。
まとめ
漢字検定1級は、難易度の高い検定です。準1級レベルをマスターした人でも、500時間の勉強時間を要するといわれています。しかし、漢検の勉強は、日常でも役立ちます。将来的な1級合格を目指し、少しずつステップアップしていくことを楽しめる検定です。
ユーキャンの漢字検定講座は、本試験の傾向を徹底的に調査・分析し、出題確率の高い問題を優先的に勉強することで効率的に合格を目指せる講座です。デジタル学習サイトは、スマートフォンやパソコンから手軽に学べます。まずは4〜2級の勉強から始めてみるのは、いかがでしょうか。
- この記事の監修者は生涯学習のユーキャン
-
1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。
あなたに向いている講座か相性診断でチェック!
漢字の奥深い世界を味わいながら、検定対策もできる、ユーキャンの「漢字検定」講座。1日30分のレッスンは、新しい発見と知る喜びの連続! 検定のレベルに応じたカリキュラムで、着実に力がつけられる充実の内容です。
漢字に関する知識や教養が身につくのはもちろんのこと、今まで知らなかった言葉の意味を知ることで、教養が高まり、あなたの魅力もアップ!
実用性の高い検定として社会的に認められているので、入試優遇や単位認定、さらには事務系企業や官公庁といった就職試験でも好印象を与えられます。