ロールプレイングとは?
研修参加者が役割を担ってシナリオを演じる「ロールプレイング研修」は、実務の中で起きる場面を想定して行うため、実践的なスキルを磨くのに効果的とされています。ではロールプレイング研修の定義とは何か、研修自体の目的はどこにあるのかなどを紹介します。
ロールプレイングの定義
ロールプレイング研修のロール(role)は「役割」、プレイング(playing)は「演じる」ことを意味します。つまりロールプレイング研修は、指定された役割を演じてシナリオを進める研修となります。指定された役割を自分なりの考えや行動で演じ、スキルを身につけ、正しい対応方法を理解することがロールプレイング研修と捉えればよいでしょう。
ロールプレイング研修の目的
ロールプレイング研修で役割を演じる目的は、実践的なスキルや実力を身につけることにあります。
例えば接客業ならお客様への接客やクレーム対応、医療現場なら突然目の前で人が倒れたときの正しい処置、面談を行うときのコミュニケーションなど、実践を想定してスキルを磨きます。座学によるインプット学習だけでは実践力には結びつきにくいことから、ロールプレイングによるアウトプット学習が実践力の強化には重要です。テスト勉強で暗記した内容が、テストになったら上手く答えられないことと同じで、アウトプット学習は即座に最適解をはじき出すために必要な学習といえます。頭の中に留まっている知識を実践的なスキルとして定着させるために、ロールプレイング研修でスキルを磨く必要があります。
ロールプレイング研修を行うメリット
ロールプレイング研修は、実務の中で起きる場面を想定して役割を担当することから、効果的なアウトプット学習方法です。ロールプレイング研修のメリットについて、代表的なものを3点紹介します。
実践的なスキルが養える
ロールプレイング研修では、実際の業務顧客対応の進め方を想定し模擬的な体験を行うため、座学だけでは習得できない実践的なスキルを養えます。例えば接客業でのクレーム対応や営業での取引先へのプレゼンテーション、会議でのファシリテーションなど、実務で発生しうる場面で必要なスキルを学べる点がメリットです。またリアルなシーンを再現することで、業務上のプレッシャーや顧客対応のコツを事前に体感でき、実務で似た場面に遭遇しても緊張することなく対応できるようになるでしょう。ロールプレイング研修を通して、柔軟な対応力を身に着けられ、実務における即戦力としての成長が期待できます。
コミュニケーションスキルが向上する
ロールプレイング研修では、他者とのコミュニケーションやその場に合わせた配慮が重要な要素になります。例えば顧客対応や上司・部下のコミュニケーションを再現することで、場面毎の適切な言葉の選び方や態度、非言語的な表現力を磨くことができます。また他者の視点からの意見やアドバイスを積極的に受け止めることで、自分の課題を客観的に理解でき、より相手に伝わりやすい表現方法を学べる点もメリットです。そのためロールプレイングを繰り返すことで、自分の視点と他者からの視点が理解できるようになり、仲間とのコミュニケーションも活性化するでしょう。コミュニケーションスキルが向上すると、チーム内での意思疎通や顧客対応力が改善され、組織全体の業務効率化にもつながります。
振り返りとフィードバックで成長につながる
ロールプレイング研修は、実践してスキル向上につながるだけでなく、その後のフィードバックや振り返りを通して、新しい改善点をみつけることができる点もメリットです。
他の参加者や講師から具体的な評価や改善の提案を受けることで、客観的な視点から自己の課題を明確にすることができます。他の参加者の実演を見ることで、自分との違いを比較でき、さらなる学びが得られることもロールプレイング研修ならではの特徴です。またロールプレイング研修では他の参加者や講師が細かく観察してくれるため、自分では気づきにくい癖や改善点を指摘してもらえます。そのため研修を通じて課題の認識と改善につながり、即戦力となる人材育成にも効果的です。
ロールプレイング研修の注意点
ロールプレイング研修を行う際は、実施方法やフォローアップに気をつけなければなりません。どのような注意点があるのか2点紹介します。
現実に即したシナリオ設定にする
ロールプレイング研修を行う際は、実務に即した内容にすることが重要です。現実にはまず起こりえない状況や、現実から乖離した内容では、受講者がシナリオをイメージしにくくなることに加え、研修後に学びを実務に活かすことが難しくなります。そこでシナリオ作成時には業務上の具体的な課題や状況を考慮し、参加者が現場で遭遇する可能性のある場面を再現することが重要です。過去に社内であったトラブルや実例を参考に、シナリオを作成するのもよいでしょう。
フィードバックの質を意識する
ロールプレイング研修後のフィードバックは、学びを深めるうえで重要です。しかし振り返りのやり方やフィードバックの質によっては、参加者のモチベーションを低下させるだけでなく、効果的なスキルアップにつながらない可能性があります。そのため振り返りを行う指導者には、建設的な改善案を出すためのトレーニングが必要です。指導者の立場にある人には、参加者が自主的に意見を発表する際にも、相手の考えを尊重する姿勢が求められます。 研修の効果を高めるためにフィードバックスキルの習得と環境を整え、有意義な学習体験を提供することが大切です。
ロールプレイング研修の実施方法
ロールプレイング研修を行う際は、研修前の準備が非常に重要です。準備段階では、次の内容を細かく決定しましょう。
1.役割設定
・ロールプレイングで登場する役割(営業役・販売員役・顧客役・オブザーバーなど)
・役割の人物設定
2.場面設定
・時間や場所
・シナリオ
・役割の人にどのような目的を与えるのか
3.ゴール設定
・ロールプレイングのゴールは何か
これらを設定したうえで、ロールプレイング研修を実施しましょう。そして、ロールプレイングを実施する際は、次のような手順で進めます。
1.研修の目的を説明する
2.シナリオや場面設定を説明する
3.所要時間や実施方法、注意点を説明する
4.グループ分けを行う
5.グループ内で参加者がそれぞれの役割を1回以上担当する
6.振り返り・フィードバックを行う
ロールプレイング研修を実施する際に重要となるのは、1~3までの目的・シナリオ・実施方法・注意点の説明です。ロールプレイング研修では役割毎に決められた要素があるため、要素をきちんと組み込んで演じてもらうことが大切です。さらに参加者が必ず1回以上違う役割を担うようにすることで、従業員や顧客などさまざまな視点が身につけられます。最後に振り返りとフィードバックを行う際も、参加者が自分で気付いたこと、指導者からのアドバイスを受け取ることを意識しましょう。チェックシートを渡して評価することで、良い点・悪い点・どう改善すればよいかが明確化できます。
ロールプレイング研修の種類
ロールプレイング研修にはさまざまな種類があります。研修の内容や習得できるスキルによって適した種類があるため、4つのロールプレイング研修について紹介します。
ケース型
ケース型のロールプレイング研修は、特定の場面や状況を想定したロールプレイングです。例えば営業での取引先との交渉場面、クレーム対応、火災訓練や犯罪対策の訓練などもケース型に当たります。特定の場面でどのように動けばよいかが身につく研修として、さまざまな企業で実施されています。 ケース型では細かな状況設定が重要であり、参加者が具体的に場面をイメージしやすく、実践ですぐに活用できる内容にすることが重要です。
グループ型
グループ型のロールプレイング研修は、1グループ5人以下の少人数に分けて行うロールプレイングです。グループ内の全員が役割を担当できるように、1回数分程度のロールプレイを複数回行います。例えば上司と部下に分かれて面談を行うシーンや、トラブル発生時に報連相を行うシーンなど、それぞれの視点からのコミュニケーションや正しい対応方法などを学びます。グループ型のロールプレイングによって、他者視点に立った物事の考え方や伝え方が身につきやすくなり、職場内でのコミュニケーションが円滑化できるでしょう。
問題解決型
問題解決型のロールプレイング研修は、過去に発生した問題や今後発生しうるトラブル、すでに抱えている課題などを想定して行うロールプレイングです。問題解決型のロールプレイングでは、参加者が直面する問題に対してどうアプローチしていくのか、さまざまな視点から考えられるのが特徴です。明確な正解が用意されているケースもあれば、研修で提案された解決策を実際に採用するケースもあり、問題の原因が可視化できている企業で実施すると効果的です。
モデリング型
モデリング型のロールプレイング研修は、講師や参加者の代表者が実施したロールプレイングを他の参加者が模倣するロールプレイングです。模倣することで対応やスキルを定型化し、同じように実践できるようになることが目的です。例えばビジネスマナーや業務の中で定型化したスキルなど、決まった形のあるものを理解してもらうときに利用します。基礎を固めたい新入社員の研修で用いられることが多いロールプレイングです。
効果を高めるフィードバックの方法とは?
ロールプレイング研修の効果をより高めるには、フィードバックを行うことも重要です。しかしフィードバックの適切な方法を押さえずに行っても、十分な効果を得られません。効果的なフィードバックを行うために押さえておきたいポイントについて紹介します。
ポイントを押さえてフィードバックする
ロールプレイング研修でフィードバックの質を高めるには、どの部分を軸にするか、最初に決めてから行うと効果的です。
例えば声のかけ方、表情、態度、言葉遣い、相手への配慮、クロージングの仕方などを項目として設定し、それぞれに点数をつけましょう。さらにその中で重要な項目も設定し、フィードバックで良い点・悪い点として伝えるとわかりやすくなります。ポイントを押さえてフィードバックすることで、参加者は客観的な視点での評価がわかるとともに、建設的な改善策を検討する機会にもなります。またフィードバックを行う際は、参加者に「なぜこうしたのか」「このときはどのように判断したのか」も問いかけると、自分自身の思考プロセスの理解につながるでしょう。
ロールプレイングの様子を撮影する
ロールプレイング中の様子を撮影し、振り返ることも効果的な学習につながります。振り返りで講師やオブザーバーから評価をもらっても、どの部分を指しているのかを具体的に思い出せないこともあるからです。ロールプレイング中は演じることに集中し、緊張感を持って臨んでいるため、その瞬間のことを忘れていることがあります。そこでロールプレイングの様子を撮影しておけば、自分がどのような対応をしていたのか客観的に振り返ることができ、他の参加者とも共有できます。また映像の中で良い点・悪い点を一緒に振り返ることで、自分と他者との比較がしやすくなり、参加者自身が足りない部分を意識できるようになるでしょう。
ロールプレイング研修の実例
ロールプレイング研修の例を紹介します。
コミュニケーションマネジメント研修
コミュニケーションマネジメント研修は、集合研修またはオンライン研修を主体として実施します。対象者は課長・部長といった管理職で、6時間程度でコミュニケーションの基本から応用までを一貫して学べる内容となっています。コミュニケーションマネジメント研修は、管理職がビジネスで必要な「質問」「傾聴」「フィードバック」のスキルをロールプレイングを通して習得することが目的です。研修は「傾聴」から始まり、続いて「質問」や「フィードバック」を段階的に学ぶことで、スキルを体系的に身に付けられるカリキュラムとなっています。またロールプレイングでは「話す」「聴く」「オブザーバー」といった異なる立場を経験し、相手の話を実際に聴く能力や効果的な質問をする技術の習得を目指します。また実践的な演習を行い、上司2割・部下8割という理想的な会話比率を意識しながら、テーマに沿ったアクションへ導く力や論理的思考力を養います。
実践力を定着させるならユーキャン
ユーキャンの研修では、ビジネスシーンで必要なスキルや知識を基礎から応用まで幅広く提供しています。集合研修やオンライン、eラーニングまで企業のニーズに合わせた実施形式を用意しており、受講後のサポート体制まで完備しています。またロールプレイング研修ではコミュニケーションやビジネスマナーなど、さまざまな研修カリキュラムに対応しており、企業に合わせたカスタマイズの相談も可能です。実務での実践力を高めるには、知識・スキルのアウトプットと経験の蓄積が重要です。ユーキャンならヒアリングを通して企業課題を明確化し、担当者との綿密な相談のうえで最適な研修カリキュラムを提案させていただきます。
まとめ
ロールプレイング研修では、目的に合わせた種類の選択やシナリオの設定、フィードバックの方法が重要となることを解説しました。ロールプレイング研修は新入社員ならビジネスマナー、若手・中堅社員ならコミュニケーションや実務での対応力など、階層や経験に応じて内容を変えられる点も魅力です。知識をインプットするだけでなく、ロールプレイングを通してアウトプットすることで、実務でもすぐに活用できる実践力を身につけられます。自社の課題や過去の事例、将来起こりうる問題などをロールプレイングに盛り込み、効果的な研修を実施しましょう。