ミドルシニアとは?
ミドルシニアは、ミドル世代からシニア世代全般を指す言葉です。年齢についての明確な定義はありませんが、ミドル世代の始まりとされる30代以上からシニア世代までを指すとされています。30代以上のミドル世代は社会人として一定の経験を積んでおり、管理職になる方も少なくありません。中には各分野のエキスパートとして、最前線で働く人材もいます。そのような理由から、ミドルシニアは転職市場で高い評価を受けやすく、企業からは即戦力として期待されることも多いです。ミドルシニアの中でも、40代以降は定年後の再雇用まで考え、キャリアの見直しや転職を検討する方も珍しくありません。ミドルシニアはキャリアプランを考える最後のチャンスともいえるでしょう。
ミドルシニアの採用が重要な背景
なぜミドルシニアの採用が転職市場で注目され、重要視されているのでしょうか。その背景には、企業が若手人材を獲得しにくいこと、人材育成に多くの時間とコストがかかること、若い人材の離職率が高いことが関係しています。近年、日本では経済成長が停滞するとともに、国民の平均給与もほぼ変わらない状況が続いています。そのような社会情勢においては、若い世代は安定を求めて大企業への就職・転職を目指す傾向が強く、業績が不安定な中小企業にとっては不利な状況です。また若手はキャリアアップのために転職をすることも当たり前になっており、せっかく育てた人材が流出してしまうことで、会社にとって大きな損失となることも見逃せません。そのため人材を獲得するためにより範囲を広げた結果、即戦力としても活躍が期待できるミドルシニアが注目され始めました。新人の育成には膨大な時間とコストが必要ですが、ミドルシニアは既に一定の経験とスキルがあります。入社後も大きな時間とコストをかけることなく、即戦力として活躍してくれる可能性が高いです。こうした背景から、ミドルシニアは転職市場でも注目され、企業の大小を問わず求められるようになりました。
ミドルシニアの採用のメリット
ミドルシニアの採用は、企業にとってどんなメリットがあるのか紹介します。
即戦力となる人材の確保
ミドルシニアを採用するメリットであり、大きな目的の1つが即戦力となる人材の確保です。 新人の採用は長期的には会社の利益につながりますが、活躍できる人材に成長するまではかなりの時間が必要です。一方ミドルシニアには多くの知識と経験があるため、即戦力としての活躍が期待できます。また他の業界での経験が豊富な人材であっても、別の業界で経験を生かせることも意外と多いです。企業内に新たな視点を取り入れるという観点でも、ミドルシニアの採用はメリットになります。
専門知識の多い人材を確保しやすい
社会人として多くの経験を持つミドルシニアは、多くの専門知識を持っていることが期待できます。社会人としての基本マナーはもちろん、効率的な仕事の進め方や人材育成、マネジメントなどのスキルを持つ人材もいるでしょう。こうした経験は新人や若手にはないもので、ミドル世代以上だからこその経験の蓄積で得た知見・知識があります。専門知識を持つ人材を確保できれば、自社製品の開発や性能向上、販路の拡大など新しい可能性を見出せるでしょう。
育成コストと時間の削減
新人や若手社員は教育によって伸びしろがありますが、成長するまでに長い時間がかかります。一方ミドルシニアであれば、会社の業務内容やルールの説明などは必要ですが、育成コストと時間は大幅に削減できます。代わりに本来人材育成に使うはずのコストは別のリソースとして配分でき、会社にとってミドルシニアの存在が大きなメリットになるでしょう。加えて、ミドルシニアに人材育成を担当してもらえば、専門知識を持つ人材を確保しつつ、新人教育も進められます。
前職の人脈の活用
ミドルシニアには長い社会人経験で培った人脈もあり、転職後も人脈を生かした働きをしてくれることに期待できます。特に営業職やマネジメント経験のある人材は、広い人脈を持っている人も多く、自社の販路拡大や事業提携、新製品開発などに役立つことがあります。広い人脈を持つミドルシニアを採用し、前職の人脈と経験を存分に発揮できる環境を用意しましょう。
ミドルシニアの採用の際の注意点
ミドルシニアの採用は優秀な人材と即戦力の確保、人材育成の効率化といった観点から多くのメリットがあります。一方でミドルシニアには若手とは違った注意点もあるため、気を付けるべきポイントを紹介します。
キャリアデザインの支援を行う
ミドルシニアは若手に比べ、現役で働ける期間が短いです。そのためミドルシニアは「いつまで仕事を続けられるか」「定年後も働けるのか」など、キャリアデザインの悩みも多くなります。また安定を求める思考が働き、若手に比べて挑戦する意欲が低くなりやすい点も課題です。そこで 会社としてミドルシニアを支援するには、キャリアデザインを考えやすい環境や制度を用意することが大切です。 新たな環境でキャリアアップを目指すだけでなく、ライフプランまで支援できる仕組みがあれば、ミドルシニアも全力で能力を発揮できます。キャリアデザインに迷っている人がいる場合は、会社側からキャリアパスを提示するのもよいでしょう。
新しい環境への適応を支援する
ミドルシニアにはこれまでの経験や知識が蓄えられている反面、新しい環境への適応力は若い世代に比べて低いです。前職での経験やプライドが障害となり、自分から環境に適応するのが難しいためです。特に若手社員との価値観やコミュニケーションで戸惑いが生じ、企業風土に慣れるまで時間がかかるでしょう。具体的な取り組みとしてできることは、社員に会社の理念や価値観、企業風土などを説明し理解してもらうことです。社員はそれぞれ価値観も人生経験も違いますから、他社との違いを認識して適応できるように支援することが大切です。またさまざまな部署の社員と交流会やイベントを開き、人間関係構築を支援するのも効果が期待できます。
給与・待遇面に配慮する
ミドルシニアの多くは、前職の給与をベースに考えて転職を決めます。しかし転職してすぐに年収アップにつながることは難しく、給与に関する認識を確認することから始めるべきです。また待遇面についても聞いた話や想像していたものと違う可能性がありますから、採用面接の段階でお互いに話し合っておく必要があります。給与・待遇は不満を抱える原因になりやすいため、採用するミドルシニアの人材が何を重視しているか把握しておきましょう。残業時間、有給取得率、転勤の有無などを優先で重視するのであれば、可能な範囲で調整していくと仕事へのモチベーションになります。
役割・業務を限定する
中高年の世代になると、若い世代のように働くことが難しく、新しい仕事を覚える力も落ちてきます。体力的にも対応力でもエネルギッシュな若い世代のようにはいかないため、あまり多くの仕事を任せるとミスも増える可能性があります。そのためある程度任せる役割や業務を限定し、持っているスキルや知識を発揮してもらうのがミドルシニア世代の活用術です。特に有資格者の場合、特定の分野で力を発揮することが多いですから、業務に集中できる環境を用意しましょう。ただし持っている能力に対して容易な業務を任せると、プライドを傷つけることにもなりかねません。ミドルシニアの持つ技術や経験を発揮しやすい場所を考え、適材適所の配置をすることが大切です。
ミドルシニアのキャリア自立を促すポイント
ミドルシニアのキャリア自立を促すためのポイントについて紹介します。
ジョブ型雇用の導入
ミドルシニアのキャリア自立を促すには、ジョブ型雇用の導入が有効な対策になります。ジョブ型雇用とは、就業する業務内容と職種を明確にして採用し、特定の分野で能力を発揮してもらう雇用形態です。 ジョブ型雇用を導入するミドルシニア側のメリットは、採用後に担当する仕事と役割が明確で、業務内容が明確にイメージしやすいことです。あらかじめ仕事へのイメージが持てるため、自分の持つスキルや経験を生かせることがわかり、応募しやすくなります。会社側のメリットは、高度な専門知識とスキルを持つ人材を採用でき、会社の生産性向上が期待できる点です。任せる業務も限定しているため、採用後の実績を評価しやすいこともメリットになるでしょう。ジョブ型雇用は採用される側にも企業にもメリットがあり、社員のモチベーションも保ちやすくなります。特定の業務経験を積む中で新たなキャリアを形成し、ミドルシニア世代のキャリア自立につながりやすいです。
キャリアカウンセリングの実施
ミドルシニア世代の中にはキャリアアップよりも安定を重視し、将来のキャリアを望まないケースもあります。そこでキャリア自立を促すために、キャリアカウンセリングの場を設け、1on1の面談をセッティングするのがよいでしょう。キャリアカウンセリングを行うことでキャリアに対する考え方が明確になり、理想のキャリアプランを作成しやすくなります。社内でキャリアアップを目指すなら上司や管理職が面談を行い、具体的なプランを一緒に相談していくのがおすすめです。逆に会社の業務以外でもキャリアを積みたいと考えている人の場合、社外の専門家やコンサルタントに任せたほうがよいこともあります。ミドルシニア世代は家庭を持つ人や親の介護を行う人もおり、それぞれのキャリアデザインやライフプランがあります。まずはキャリアカウンセリングを実施し、キャリアについての考え方、理想の将来像、どんな仕事をしたいのかなどを把握していくことがキャリア自立の促進には重要です。
アンラーニング・リスキリングの支援
キャリア自立を促すには、アンラーニング(学習棄却)とリスキリング(技術の再習得)が不可欠です。アンラーニングとはそれまでの仕事や人生で得てきたスキルや価値観から、現状において不要なものを捨てていくことです。仕事に求められるスキルは時代とともに変化しており、時代に合わないスキルをいつまでも活用し続けるのは現実的ではありません。リスキリングはこれまで培ってきたスキルとは別に、新たなスキルを学び、習得していくことです。元々はデジタルスキルを指す言葉でしたが、現在は新たなスキルを習得すること全般を意味します。つまりキャリア自立を促すために、会社はアンラーニングとリスキリングを支援し、ミドルシニア世代が活躍できるようにすることが重要です。ミドルシニア世代は若い世代に比べて、知識の吸収力が低くなっています。そのため新しい知識やスキルの習得を避け、現状を維持しようとする人が一定数います。アンラーニングとリスキリングを会社が支援することで、ミドルシニア世代がこれから先の時代でも活躍できるようにすることが、会社にとっても利益になるでしょう。
まとめ
ミドルシニア世代は経験・知識ともに豊富な人材が多く、現在働く企業でも、転職先の企業でも必要とされる能力を持っています。ただし若い世代にはない知識やスキルを持つ一方で、その能力を発揮するには会社側が適切な環境と体制を構築し、能力を最大限に発揮できるよう支援する必要があります。日本では終身雇用制が崩壊し、ベテラン社員にも高い能力や成果が求められる時代になりました。 ミドルシニアのキャリアを活用することが、企業が継続的に成長できるポイントになるでしょう。