健康経営とは?取り組みや成功事例をご紹介

  • 健康経営とは?取り組みや成功事例をご紹介

    公開日:2024.12.13

    更新日:

    健康経営とは、社員の健康管理を経営課題の1つと捉え、組織のマネジメントで改善を目指すことです。社員の健康を会社が守ることで、社員のモチベーションアップや生産性向上、人材の定着率向上といった効果が期待できます。この記事では健康経営について、設けられている制度、メリット・デメリット、実際の企業の事例などを詳しく解説します。

健康経営とは?

健康経営とは、社員の健康管理を経営課題の1つと捉え、組織のマネジメントで改善を目指すことです。社員の健康を増進することは、企業の生産性や業務効率、組織の雰囲気を改善する効果があります。 経済産業省の定義では「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」とされています。国としても健康経営を支援しており、日本企業が成長していくには欠かせない経営戦略になっていることは間違いないでしょう。

健康経営が注目される背景

日本で健康経営が注目されている背景には、日本の残業時間の長さとブラック企業問題、行政による認定制度などが関係しています。昭和から平成にかけての日本では「24時間働けますか」のキャッチフレーズに代表されるように、長時間勤務が当然とされてきました。その結果、サラリーマンの自殺者数が増加し、メンタルヘルスの不調などさまざまな社会問題を引き起こしました。加えて、日本ではブラック企業と呼ばれる劣悪な労働環境の企業も多く、社会から注目されています。こうした社会環境の中で、経済産業省は健康経営優良法人認定制度を開始し、健康経営を実践している優良企業への認定とインセンティブなどを用意しました。行政による支援の影響もあり、労働環境の是正へと本格的に取り組む企業も増加しています。またインターネットやSNSの普及により、企業の評判や口コミが瞬く間に広がりやすくなったことも、健康経営の追い風になっています。

政府による健康経営の推進事項

経済産業省は大企業・中小企業の健康経営を促進するため、健康経営優良法人認定制度・日本健康会議・健康経営銘柄などの施策を行っています。それぞれの施策の目的や特徴について解説します。

健康経営優良法人認定制度

健康経営優良法人認定制度とは、優良な健康経営を実践している大企業と中小企業を見える化し、社会的に高い評価を受けられる環境の整備を進めることを目的にした制度です。大企業を対象にした大規模法人部門と、中小企業を対象とした中小規模法人部門の2部門があります。認定を受けるとロゴマークの使用や金融機関からの低金利融資、企業名公表などさまざまなインセンティブが受けられます。さらにそれぞれの部門の上位500位以内の企業は、大規模法人部門なら「ホワイト500」、中小規模法人部門なら「ブライト500」として、さらに特別なロゴの使用も可能です。健康経営優良法人に認定されることでインセンティブだけでなく、企業イメージの向上やブランディングにもなるため、企業広報としての活用法もあります。また認定条件はさまざまですが、その中には各自治体で行っている「健康宣言事業」に参加することが必須条件とされています。名称は都道府県で異なるため、事前に地域を管轄する保険者に問い合わせるのがよいでしょう。健康経営優良法人認定は毎年3月に経済産業省が発表しており、制度を利用するには経済産業省の公式サイトから申請ページに遷移することで申請可能です。

日本健康会議

日本健康会議は、少子高齢化が進む日本で国民の健康寿命を延ばし、適正な医療を行うために民間組織同士が連携し、行政の全面支援によって実効的な活動を行うために組織された活動体です。民間組織とは経済団体、医療団体、保険者のほか、各自治体の企業、地縁団体なども含みます。活動方針として8つの宣言を公表しており、地域ぐるみの予防医療や生活習慣病の改善、健康経営の推進、ICTを活用した医療情報の活用、医療・医薬品の品質確保と安定供給などを掲げています。健康経営優良法人認定制度における企業の認定も日本健康会議が行っており、日本の健康経営の中心となる活動体といえるでしょう。

健康経営銘柄

健康経営銘柄は東京証券取引所の上場企業の中から優れた健康経営企業を選定し、長期的に企業価値の向上が期待できる企業を投資家に紹介すると同時に、企業の健康経営を促進することを目的にした取り組みです。上場企業に対し、健康経営への取り組み状況、優良な健康経営取り組み事例の収集・分析、社員の健康に関する取り組みなどの調査を行い、健康経営銘柄を決定します。毎年健康経営銘柄として発表され、50社前後の企業が選定企業として掲載されます。健康経営銘柄に選定された企業は社員の健康改善への取り組みが高く評価され、社会的にも高い評価を受けられるため、企業のブランディングにも効果的です。ただし健康経営銘柄に選定されるための条件はやや厳しく、前提として健康経営優良法人の大規模法人部門で上位500位以内に入っている必要があります。認定された企業を表彰する制度を設ける自治体もあり、地域で働く社員や住民の健康を考える企業としてイメージアップにつながるでしょう。

健康経営のメリット

健康経営を推進することで企業にどのようなメリットがあるのか、4つのポイントを紹介します。

生産性・業務効率の向上

健康経営の推進は、社員の健康状態を改善し、仕事のパフォーマンスを引き出す効果が期待できます。パフォーマンスが高まれば、社員1人当たりの労働生産性は向上し、業務効率も改善するでしょう。逆に劣悪な労働環境や性慢的な人手不足、長時間労働が続けば社員の健康は後回しになり、パフォーマンスは低下してしまいます。実際に人手不足や長時間労働の多い企業では、社員の健康不安やストレスが強く、仕事の生産性は低いです。また人手不足の状態で社員の病欠や休職が重なれば、他の健康な社員への業務負担が大きくなります。結果として他の社員の健康状態も悪化させるリスクがあり、健全な状態とはいえません。健康経営が成功すれば、社員が意欲をもって働きやすく、組織の生産性や業務効率の向上に貢献してくれるでしょう。

離職率の低下

健康経営の推進は、社員の健康状態を改善し、仕事のパフォーマンスを引き出す効果が期待できます。パフォーマンスが高まれば、社員1人当たりの労働生産性は向上し、業務効率も改善するでしょう。逆に劣悪な労働環境や性慢的な人手不足、長時間労働が続けば社員の健康は後回しになり、パフォーマンスは低下してしまいます。実際に人手不足や長時間労働の多い企業では、社員の健康不安やストレスが強く、仕事の生産性は低いです。また人手不足の状態で社員の病欠や休職が重なれば、他の健康な社員への業務負担が大きくなります。結果として他の社員の健康状態も悪化させるリスクがあり、健全な状態とはいえません。健康経営が成功すれば、社員が意欲をもって働きやすく、組織の生産性や業務効率の向上に貢献してくれるでしょう。

企業イメージの向上

健康経営は、企業イメージの向上にも一定の効果があります。会社が健康経営を打ち出して健康経営優良法人認定を受けたり、公式ホームページに掲載したりすることで、対外的に健康経営をアピールできます。経済産業省では毎年、健康経営優良法人を公表しているため、信頼性の高い制度である点も魅力です。加えて健康経営に取り組む企業は、近年注目されているSDGsの観点でも、取引先企業から高い評価を得られるでしょう。継続的に取り組む必要はありますが、企業のブランディングとして効果的な施策となります。

認定制度によるインセンティブ

健康経営に取り組む企業には、健康経営優良法人や健康宣言事業、自治体独自の健康経営優良法人などの認定制度があります。これらの制度で認定を受けると、企業には次のようなインセンティブがあります。

・健康経営優良法人のロゴマークの使用許可
・経済産業省や自治体での企業名公表
・公共事業入札時の加点
・自治体の融資優待や奨励金
・金融機関による低金利融資制度
・従業員向けローン金利優遇制度
・保険会社の保険料割引

自治体によって一部適応していないインセンティブはあるものの、認定を受けることで企業にとっても、社員にとってもさまざまなメリットがあります。低金利融資制度が受けられれば、企業の資金繰りがしやすくなり、経営を安定させることもできます。インセンティブを受けるためにも、経営課題として取り組む姿勢が大切です。

健康経営のデメリット

健康経営を行うには、いくつかのデメリットも存在します。どのようなデメリットが考えられるのか、代表的なものを4つ紹介します。

健康状態の把握に時間がかかる

健康とは目に見えにくいもので、健康診断やストレスチェックなどの形で行う必要があります。一見すると健康そうな社員であっても、実は健康状態が悪かったというケースは少なくありません。そのため会社が社員全員の健康状態を把握するには多くの時間が必要であり、ある程度の人員と時間をかけなければ、組織全体のデータを管理するのは難しいでしょう。また健康経営のために業務時間の調整を行ったり、業務外の時間を使ったりするのは、社員の不満につながる可能性もあります。スムーズに社員の健康状態を把握するには、健康経営を目指す目的や取り組みの内容を説明し、社員から理解を得ることが何よりも重要です。

数値化しにくい

健康経営を推進するには、見えにくい内容もデータ化し、数値の増減を可視化する必要があります。健康診断やストレスチェックなどは健康状態を数値化してくれますが、モチベーションの高さや業務効率・生産性などは数値化しにくい情報です。しかし健康経営の効果を測定するには、数値化しにくいデータも数値化し、経時的に増減率や原因の分析をしなければなりません。 健康経営の成果をデータで分析して成功へと導くには、中長期的な視点で計画を立てていく必要があるでしょう。 また健康経営の指標となる数値が悪化した場合も、その背景が一過性の理由なのか、会社の環境に問題があるのかなどをデータから読み取らなければなりません。健康経営は数値化しにくい部分も多いですから、他社の事例も参考にしながら、施策を打っていくのが効率的です。

労働環境改善には時間を要する<

健康経営を目指すには、労働環境全体の見直しを進めることが必須です。しかし労働環境を大きく変化させるには、コストだけでなく社員の意識も変革しなければならず、長い時間をかけることになるでしょう。「明日から残業ゼロを目指す」と会社から指示されても、長時間労働が当たり前の会社では社員から受け入れられません。ですから社員の理解を得るために説明会を開いたり、文書を配布したりするなど、長い時間をかけて意識改革を進めることが重要です。加えて健康経営の成果はすぐには目に見えませんから、その点も社員に周知していくことが欠かせません。健康経営の成功には長い時間がかかることを予測し、どのような手順で進めていくか計画を立てておきましょう。

社員の反発を招くおそれがある

健康経営の施策が社員の行動を制限する内容である場合は、社員の反発を招く可能性が高くなります。例えば禁煙や食事内容、体重、一日の目標歩数などを決めると、社員の私生活にも制限が出てくるため反発を招いてしまいます。社員から前向きに受け入れられるには、社員にとってもメリットがあることを理解してもらうことが重要です。例えば健康改善に取り組んだ社員への表彰制度、人事評価制度の項目に組み込むなど、モチベーションにもつながる内容にすると効果的です。やり方は企業の業種や組織形態に合わせる必要がありますが、社員の協力を得なければ健康経営は成り立たないことを意識し、組織全体で取り組める施策を打ち出しましょう。

健康経営に取り組むべき企業は?

健康経営はすべての企業が取り組むべき経営課題ですが、その中でも特に力を入れて取り組む必要がある企業の特徴とは次のようなものです。

・社員の健康状態が事故に直結しやすい
・ストレスチェックで引っかかる社員が多い
・中高年の社員の割合が高い
・慢性的な人手不足が続いている
・長時間労働が常態化している

上記の特徴に当てはまる企業は、早急に健康経営へと舵を切る必要があるでしょう。特に工場作業のように、社員の健康状態が命にも関わる重大な事故を誘発する危険がある場合、健康経営を優先的な経営課題とすべきです。またそれ以外の特徴に当てはまる場合でも、健康経営は推進していく必要があります。長時間労働や人手不足が長期間続けば、社員の健康リスクも高まります。「経営に影響が出ていないから大丈夫」ではなく、すぐに影響が出るおそれがあることを認識して行動することが重要です。

健康経営の導入手順

健康経営を導入する際の、正しい導入手順について解説します。

組織内での周知

健康経営を始める前の段階として、社員に健康経営を行うことを周知する必要があります。事前に伝えておくことで社員も心の準備ができ、実際に運用が開始されてからもスムーズに適応できるからです。また社員への周知は1回だけではなく繰り返し行うとともに、具体的にどんな方法で行い、どんな変化・メリットが予想されるのかを社内報や個別のメールで公表しましょう。社員の理解を得ることで健康経営に取り組みやすくなり、生産性や業務効率の向上が期待できます。

専門部署の設置と人員配置


健康経営を行う際は、他の業務と兼業で行うのではなく、健康経営の専門部署と人員配置を行うことも重要です。専門部署があれば経営層との健康経営の提案・相談がしやすくなり、社員の視点でも相談窓口が明確になります。社内に詳しい知識を持つ人材が不足している場合は、外部の専門家に体制構築や計画の立案を依頼するのもよいでしょう。
例えば、新規事業やプロジェクトのリーダーを公募制にしたり、一定の予算を用意して社員にアイデアを募ったりする方法があります。会社側が挑戦しやすい状況を提供することで、社員が挑戦しやすい土台ができあがります。また挑戦した結果失敗したとしても、失敗を受け入れる組織風土にすることも大切です。失敗したらキャリアアップできなくなり、評価も下がるようなら、社員は足踏みするでしょう。社員の挑戦を後押しできる制度を整えるだけでも、組織風土改革は大きく前進します。

健康調査と計画の立案

健康経営を行うために、社員の健康状態やストレスチェックを行い、どんな健康課題があるか調査、分析することも不可欠です。健康不安を持つ社員はどのくらいの割合か、どんな改善策が効果的かを検討し、具体的な計画を立案しましょう。ただし計画を立てる際は、社員にとって負担やストレスにならないように考慮すべきです。仕事以外の面で社員に負担をかけてしまうと、健康経営への反発を招くおそれがあるため注意してください。

健康経営の開始

健康経営を開始する日を組織全体に周知し、実際に運用を開始します。実際に稼働する際は、少数の部署に限定してテストを行い、シミュレーションを行ってから開始するのが理想です。いきなり開始すると組織全体が混乱するだけでなく、社員の理解度によってはうまくいかないケースもあるからです。そして健康経営開始後はモニタリングを行い、定期的に変化があるか確認し、内容を調整しながら最適な方法を模索しましょう。

健康経営の導入事例

健康経営に取り組んで成功した企業の事例について2社紹介します。

化学・工業薬品メーカーA

A社は元々ワークライフバランスが社風として定着していましたが、さらに健康経営の考え方を会社全体に浸透させるために取り組みを開始しました。取り組みの重要ポイントは「健康の意識付け」と「運動同好会」です。まず健康への意識付けとして問診と血圧、体重等のデータを入力することで、健康状態とアドバイスが出力されるセルフチェックシステムを導入しました。運動同好会ではマラソン好きな社員がランナーズサークルを設立し、会社として大会への参加費やユニフォーム作成費などを全額補助しています。取り組みの結果として、10年間の離職率は寿退社や介護などの理由を含めて0.5%となり、非常に低い水準となっています。加えて、入社希望者がワークライフバランスや健康経営を理由に応募するケースも増え、健康経営で魅力の増す会社となった好例といえるでしょう。

参考:経済産業省 健康経営優良法人 取り組み事例集 令和2年3月https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin_jireisyu200327.pdf

ヘルスケア機器メーカーB

B社では社員が心身ともに健康で生き生きと働くことを目的とし「Bグループ健康宣言」を宣言しました。具体的な取り組みとしては「全員参加型のコーポレイトウェルネスサービス」や「卒煙支援」です。歩数・血圧・体重を社員全員参加で行い、社員全員が各家庭で血圧測定を習慣化し、生活習慣の適正化を目指すこととしました。測定データを管理栄養士が分析し、最新の情報に基づいて個人の生活習慣指導を実施することで、社員の行動変容へとつなげました。また卒煙支援ではチーム制で卒煙チャレンジを行い、達成時にはインセンティブも用意することで喫煙率ゼロを目指しています。社内の喫煙率は2017年度には17.9%だったものが、2022年度には6.4%まで減少しています。個人のデータのプライバシーをどう確保するか、施策参加への任意性をどう担保するかといった課題の改善を目指しつつ、今後も健康経営で社員の生活習慣改善を続けていく方針です。

参考:健康長寿産業連合会 健康経営 先進企業事例 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_s05_00.pdf

まとめ

健康経営は社員の健康を守るだけでなく、会社の生産性を高め、企業イメージの向上にもつながる経営戦略の1つです。日本では生産年齢人口の減少、離職率の増加、ブラック企業の多さなどが社会課題となっています。こうした社会課題を解決する手段の1つとしても、健康経営は注目されています。健康経営は会社の離職率減少や定着率向上にも貢献するため、人手不足の企業ほど取り組む価値は高いです。企業が長く成長を続けていくためにも、社員ファーストの健康経営で労働環境の改善を目指しましょう。

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