プロジェクトマネジメントとは?
プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの進行を管理し、計画的に進めることで成功へと導くマネジメント手法のことです。一定規模のプロジェクトにおいては、多くのメンバーや多職種・多部門での連携が必須となるため、個々の役割に応じた作業が必要になります。その際、プロジェクトマネジメントを行う責任者がいなければ、各メンバーや部門間の進捗状況が把握できず、プロジェクトの進行に支障をきたす可能性が高くなります。そこでプロジェクトマネジメントの担当者がプロジェクト全体の管理を行うことで、目標達成に向けた計画の決定、進捗管理を行う必要があります。プロジェクトマネジメントの担当者はプロジェクトマネージャーやPMOと呼ばれ、高いコミュニケーション能力や管理能力を発揮することが求められます。
プロジェクトマネジメントはなぜ必要か?
プロジェクトマネジメントの必要性が注目される理由は、プロジェクト成功率が高まり、コストと時間の削減につながるという点にあります。プロジェクトマネジメントなしでプロジェクトを進行すると、各メンバーや部署の役割と区分が曖昧になり、仕事内容の重複やリソースの偏りが生まれます。例えば違う部署で重複する仕事をする場合、無駄が生じて作業効率が低下するでしょう。またプロジェクトマネージャーという責任者がいないことで、部署間のコミュニケーションも阻害され、情報共有や進捗状況の把握も難しくなります。こうした問題を解決する重要なマネジメント手法として、プロジェクトマネジメントの存在が重要視されるようになりました。プロジェクトマネジメントによって、役割や作業に応じて人員やリソースの配分、目標達成までの工数も明確化しやすくなります。
プロジェクトマネジメントを行う上での注意点
プロジェクトマネジメントを行う際は、以下のような点に注意が必要です。
目的・ゴールの明確化
プロジェクトマネジメントでは、さまざまな職種やスキルを持つ人材がチームを組み、ゴールに向けて協力していきます。 プロジェクトの初期段階で最も重要かつ注意すべき点が、プロジェクトの目的とゴールの明確化です。プロジェクトを進行する前に各メンバーと目的・ゴールを共有することで、メンバーの役割が明確になるとともに、全員で同じゴールを目指して連携できます。プロジェクトの成否は、最初に目的・ゴールを明確化できているかどうかにかかっているといってもよいでしょう。
具体的な計画・タスクの決定
目的・ゴールをチーム内で明確にできたら、次は具体的な計画とタスク、マイルストーンなどの決定です。ゴールが明確なら計画やタスクなども策定しやすくなり、どこにリソースを割くべきかを判断しやすくなります。また計画進行中に遅れが生じた場合は、リソースの再配分で対応できるでしょう。ただし計画やタスクはうまくいった場合だけでなく、予定通りに進まない状況も予測して考えることが重要です。
チーム内での情報共有
プロジェクトマネジメントを行う際は、チームメンバーや部署のリーダーとの緊密なコミュニケーション、情報共有も不可欠です。大規模なプロジェクトでは複数の部署を横断してメンバーが集まるため、関係者との頻繁な情報共有なくして成功はありません。そしてプロジェクトマネージャーは、どのメンバーとも意思疎通できるようコミュニケーションをとり、全体の進捗状況やタスクの達成状況などを把握しておく必要があります。
プロジェクトリスクの把握・評価・対策
プロジェクトの進行において、内的・外的要因で進捗を阻害されることもあります。これを「プロジェクトリスク」と呼びますリソース不足や運用上のトラブル、高コスト、時間不足など7つのプロジェクトリスクがあるとされ、プロジェクトマネージャーは常に把握・評価・対策を行う必要があります。計画段階で予測されるプロジェクトリスクを洗い出しておくことで、発生前に対策を打てるでしょう。
メンバーや職種毎の役割の明確化
プロジェクトに招集されるメンバーは、それぞれが何らかのスキルを持って集まり、その中で役割が生まれます。その際メンバー個々の役割を明確にしなければ、仕事内容の重複が起こったり本来の業務が疎かになったりするため、プロジェクトマネージャーが役割を割り振る必要があります。役割や責任の所在が曖昧になると、チーム内での連携もうまくいかなくなり、プロジェクトの失敗につながりやすいためです。メンバーが最大限のパフォーマンスを発揮するためにも、役割分担は必要な工程です。
プロジェクトマネジメントに必要・求められるスキル
プロジェクトマネジメントを行うために、必要とされるスキルがいくつも存在します。どのようなスキルが求められるのか、代表的なものを紹介します。
プロジェクトマネジメントへの理解
プロジェクトマネジメントは、プロジェクトという一連の計画と流れを把握し、業務管理・品質管理・進捗管理・リスク管理などを行うマネジメント手法です。マネジメントを行うには、単に部下や業務を管理するだけでなく、さまざまな視点から情報収集を行い、新しい知見を取り入れることも重要です。そのためには、プロジェクトマネジメントそのものへの理解を深め、マネジメントスキルを高める必要があります。プロジェクトマネジメントを理解するには、日々の学習も不可欠です。プロジェクトマネージャーを目指す人材や将来のキャリアプランに入れている人など、会社として研修や学習費用の助成といった支援を行うのがおすすめです。
コミュニケーション能力
プロジェクトを成功させるには、責任者やメンバーといった関係者の綿密なコミュニケーションが必須です。プロジェクトチームはさまざまな個性を持つ人材が集まり、同じ目標へ向かって仕事をするものです。それぞれの個性を生かすには、メンバーがどんな性格、特性、強み・弱みを持っているかを細かく理解することが求められます。ほとんどのプロジェクトチームでは、最初は初対面のメンバーが多く、一緒に動く中で人となりを掴んでいきます。 プロジェクトマネージャーは、メンバー同士をつなぐ役割を持つと同時に、スムーズにプロジェクトが進むように分け隔てなく関係性を築かなければなりません。 そのため、プロジェクトマネジメントを行うにはコミュニケーション能力が必須であり、立場や認識の違いによる意見の違いも乗り越える必要があります。
課題分析・解決能力
プロジェクトを進めていくと、思わぬ課題や想定外のトラブルに見舞われることがあります。課題やトラブルに対してその場で適切に対応する能力がなければ、プロジェクトマネジメントは成功しません。課題やトラブルの根本原因について分析する能力と、分析結果から課題解決へと導く能力の両方が求められます。何より、課題分析能力が高いプロジェクトマネージャーは事前に問題の発生を予想して、解決策を講じることもできるでしょう。プロジェクトは常に思い通りに進むわけではなく、進捗の遅れや外的要因などで困難に遭遇することがあります。課題分析・解決能力が高ければ、そうした問題を迅速に究明・解決し、プロジェクト成功へとスムーズに導けます。
柔軟な思考力
ビジネスの環境は常に変化を続けており、プロジェクト進行中も同様です。環境が変化したら新しい情報に基づいて、プロジェクトの目標や計画もその都度修正する必要があります。そこでプロジェクトマネージャーに求められるのが、柔軟な思考力です。環境の変化に対しても柔軟に適応し、新しい知見に則ってプロジェクトを進める能力といえるでしょう。どれほど素晴らしい目標を立てても、環境が変われば時代遅れになることがあります。プロジェクトマネージャーは常に最新の情報を取り入れ、その情報をどうやってプロジェクトに生かすかという視点で取り組むことが求められます。
ビジネスとしての視点
どのようなプロジェクトであっても、企業が進める以上はビジネスとしての視点が欠かせません。 特にプロジェクトにおいてはQCD(品質・コスト・納期)を意識することが重要であり、ビジネスマンとして常に念頭に置くべきです。 プロジェクトマネジメントでは、規模が大きくなるほどリソースの配分が細かくなり、QCDの管理能力が問われます。ビジネスの視点でコストと効果、将来見込まれる利益のバランスを考え、組織の利益になるよう行動する必要があります。ただしビジネスの視点を重視しすぎると、チームメンバーの不満や不協和を招く可能性もあります。限られた条件で最大限の成果を出すと同時に、チームのモチベーション管理にも気を配りましょう。
プロジェクトマネジメントの手法
プロジェクトマネジメントの手法にはさまざまなものがあり、状況に合わせて活用していくのが成功のポイントです。プロジェクトマネジメントの代表的な4つの手法について紹介します。
ガントチャート
ガントチャートはプロジェクトのスケジュールを横軸、タスクと完了日を縦軸に記入し、ツリー構造または帯状のグラフで表すプロジェクト管理ツールです。ガントチャートではプロジェクト開始日から終了日までが時間軸で上部に記載されており、そこに各タスクの内容や予定日などを記載します。ガントチャートを用いることで、どのタスクがいつから開始となり、いつまでに終了すべきかが可視化できます。またタスクに担当者の名前を記載しておけば、現時点で誰がどのタスクを担当しているか、今後どんなタスクを行うべきかも容易に把握できる点が強みです。同じようにスケジュールとタスクを管理する手法として、WBSもありますが、ガントチャートはプロジェクト始動後に活用する点が違います。ガントチャートはプロジェクトの細部までタスクとして列挙するため、進捗状況を把握しやすいマネジメント手法といえるでしょう。
PERT
PERTは「Program Evaluation and Review Technique」の頭文字を取った略語で、プロジェクトのタスクを分解して項目化し、マッピングするフローチャート式のプロジェクトマネジメント手法です。PERTを用いるとプロジェクトのタスクと工期が図の形で視認しやすく、プロジェクトのタスクを整理しやすいという強みがあります。PERTはプロジェクト開始前の時点で、プロジェクトのタスクを把握し、タスク同士の関係性をマッピングできるツールです。プロジェクトではタスク同士が関係しており、タスクを完了するには前提となる別のタスクの完了を求められるケースがあります。そしてタスク同士をつなぐことで、どの順番でタスクを進めればよいか、スケジュールはどのようにするかを決定するのかを考えていくのがPERTの使い方です。プロジェクトを稼働する前に情報を整理し、マネジメントの方向性を決定する際に活用しましょう。
WBS
WBSは「Work Breakdown Structure」の頭文字を取った略語で、日本語では「作業分解構成図」といいます。形式はガントチャートと同様に、横軸にスケジュール、縦軸にタスクを表示します。ガントチャートとの違いは、プロジェクトの計画段階でタスクの全容を把握するのに使われることです。WBSでは大まかなスケジュールを設定し、大きな項目のタスクと、さらに細分化したタスクで分類します。それぞれのタスクをいつ、どの段階で実施し、完了するかを記載することで、プロジェクト内のタスク全体を可視化できます。またプロジェクトの大目標に向けて、どんなタスクがあるか細かく分解できるため、どのタスクにどのくらい時間がかかるかも把握でき、工数の見積もりもしやすくなる点が大きなメリットです。そしてWBSで作成した構成図をガントチャートに反映すれば、リアルタイムで誰が、どのタスクを進行中か簡単に把握できます。WBSでは、最初に目標に向けてプロセスとタスクの洗い出しを行い、次のタスクの優先度や順序を決定すれば、プロジェクト管理がスムーズになるでしょう。
CCPM
CCPMは「Critical Chain Project Management」の頭文字を取った略語で、プロジェクトのリソースを把握・監視し、タスクの優先度を決定するマネジメント手法です。プロジェクトを遂行するには人材・資金・時間など、さまざまなリソースが必要です。CCPMではタスクの完了が次のタスクの開始となるような依存関係になっているタスクをすべて特定し、リソースをまとめて調整して、効率的なプロジェクト運営を目指します。CCPMはクリティカルパス、合流チェーン、バッファの3つの要素で構成されます。大まかに説明すると、プロジェクトに不可欠なタスクがクリティカルパス、依存関係にある副次的なタスクが合流チェーン、計画通りにプロジェクトが進まないときに調整可能な余地を設けるのがバッファです。CCPMはスケジュールの可視化、タスクの優先順位付け、トラブル対応などのバランスに優れており、円滑なプロジェクト進行に役立つマネジメント手法です。
まとめ
プロジェクトマネジメントは、業種や業界を問わず、さまざまな企業で活用できるマネジメント手法です。プロジェクトの進行には人材、資金、時間などのリソースが必要になります。プロジェクトマネジメントの能力を高めることで、リソースを適切に配分し、効率的にプロジェクトを進められるでしょう。マネジメント手法も1つとは限りませんから、チームや成果物、計画に応じて適切な手法を選択することが重要です。プロジェクトマネジメントの手法を学ぶことで、会社の生産性や創造性を活性化しましょう。