セルフコーチングとは何か?
セルフコーチングとは、自分で自分をコーチングすることを意味します。
コーチングはコーチとなる人が対象者をコーチングし、一定の目標に向けて成長を手助けすることです。コーチングは単純に教えることだけでなく、対象者のやりたいことや考えを引き出し、目標達成のプロセスに活かすことを指します。
そして、セルフコーチングは本来指導者が行うべきコーチングを、自分自身で行うことです。 セルフコーチングでは自分の内面と向き合い、自分のやりたいことや考え方、根底にある問題に自ら気付き、改善策を打ち出すことを大切にします。
セルフコーチングとコーチングの違い
セルフコーチングと通常のコーチングは、効果という面ではほぼ同じですが、セルフコーチングには専門知識が必要ない点が大きな違いです。
通常、コーチングは自分の専門領域を持ち、一定の専門知識とコーチングスキル、人間心理への理解が求められます。また、コーチングでは指導者と対象者が信頼関係を構築し、コミュニケーションを取りながら進める必要があります。
一方、セルフコーチングは自分自身との対話になるため、高度な専門知識は不要で、短期間でも成長につながる可能性があります。セルフコーチングを社員全員が身に付ければ、社員の自発的な成長を促せる点も違いです。
社員が自発的に行動し、意識を変容させられる点がセルフコーチング最大の特徴といえるでしょう。
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セルフコーチングを実施する効果・メリット
セルフコーチングを実践することで、次の効果・メリットが得られます。
・目標達成までのスピードが向上する
・客観的な視点が身に付く
・日々成長できる
それぞれの効果・メリットについて紹介します。
目標達成までのスピードが向上する
セルフコーチングは自分自身の内面にある問題や課題に気付き、改善策を講じていくことです。コーチングと同じく目標を達成するために必要となる能力や行動を引き出し、自分に必要な知識やスキル、考え方を身に付けていくことになります。そのため、 セルフコーチングがうまく実施できれば、目標達成までのスピードが向上する効果が期待できます。 自分でコーチングを行うことから、コストもかからず、時間と場所も問いません。特に自分がセルフコーチングをしようと思った時にできることから、通常のコーチング以上に効果を発揮できる可能性があります。
客観的な視点が身に付く
セルフコーチングを実施することで、自分を客観視する能力が身に付く点もメリットです。通常のコーチングは指導者から改善点の指摘を受け、その指示に従ってより良い方向性に軌道修正していきます。
セルフコーチングの場合は指導者視点のアドバイスがないため、自分自身を客観視する必要があります。そして他者から自分はどう見えるのか、自分に対する評価を論理的かつ公平に判断することで、それまで見えていなかった課題が見えてくるでしょう。
自分自身の良い点・悪い点に気づいて見直すのは難しいですが、うまくできるようになれば大きな成長につながります。
日々成長できる
セルフコーチングを実践することにより、日々成長している感覚を掴める点も大きなメリットです。セルフコーチングは自分を客観視して評価し、課題に対する改善策を実践していく思考法です。自分で考えて改善に取り組むことで、自主性や自律性が身に付き、成長スピードも高まるでしょう。また、 自分を客観視すると、他者に対する理解も深まりやすくなるメリットがあります。相手の立場や心情を論理的に考察し、人の気持ちに寄り添える人物に成長できます。
セルフコーチングの方法・手順
セルフコーチングは誰でもすぐ取り入れられますが、正しい方法を知らないと、コーチングの効果を十分に発揮できません。
効果的なセルフコーチングの方法・手順を4つの段階に分けて紹介します。
・目標設定
・現状把握
・行動計画
・PDCAサイクルの実践 PDCAサイクル実践講座はこちら
目標設定
セルフコーチングで最初に行うのは、目標の設定です。セルフコーチングを行うには、自分が目指す目標を設定しなければ成功しません。
例えば「業務上の書類を1日50枚処理する」「営業で売上を10%アップする」など、自分の行動の目標になるものを設定しましょう。
大事なのは、できるだけ具体的な数字を設定することです。具体的な数字の目標があることで、そこに向けてどう行動すればよいか、足りない時は何が悪かったのかがわかりやすくなります。セルフコーチングでは漠然とした目標ではなく、具体的かつ努力によって達成可能な目標設定が大切です。
現状把握
目標設定の次は、自分の現状把握を行います。自分の現在の能力、不足しているスキル、目標達成に必要な行動などを正確に把握しましょう。大事なことは客観的に現状を把握し、自分に何が不足しているのか、障害になるものは何かなどを分析することです。
例えば書類作成の速度が遅いという課題がある場合、タイピングの速度や無駄な手順がないかなどを考えます。そして不足しているものに思い当ったら、その根本原因を探っていきます。正確に現状把握できていれば、次の行動計画も立てやすくなるでしょう。
行動計画
目標設定と現状把握が完了したら、次は具体的な行動計画に移行します。
行動計画はあまり長すぎる期間は設定せず、マイルストーンも設定しながら短~中期で計画しましょう。
例えば、1か月を目標達成までの期間とした場合、1週間毎にどこまでを中間目標にするかマイルストーンを設定します。1か月という期間だけを設定してしまうと、進捗状況の管理が曖昧になりやすいからです。行動計画では定期的に達成状況を振り返ることで、セルフコーチングにおけるモチベーションアップにもなります。
PDCAサイクルの実践
最後に計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルを回しましょう。
セルフコーチングは1回行って終わりではなく、何度も繰り返す中で磨かれていくものです。通常のコーチングとは違って他者からの働きかけはないため、PDCAサイクルが疎かになりがちです。行動計画でマイルストーンを設定したのは、PDCAサイクルのモチベーションを維持する目的もあります。中間目標を達成することでモチベーションを維持しつつ、PDCAサイクルで改善策を打ち出しましょう。
セルフコーチングではモチベーションを維持し、自分に自信を持つことが何よりも大切です。
セルフコーチングを実施する際のポイントや注意点
セルフコーチングを実施する際、次のポイントを意識して行動しましょう。
・「なぜそう考えたのか?」と自分に問いかける
・ネガティブな感情や行動も受け止め、考える
・ノートに書き起こす
・時間をかけて意識的に取り組む
「なぜそう考えたのか?」と自分に問いかける
セルフコーチングは自問自答をすることで気づきを生み、改善へとつなげていくのが基本的なサイクルです。そのうえでセルフコーチングする際に大事なことは、自分が「なぜそう考えたのか?」を常に問いかけていくことです。
単に目標達成を目指すだけなら、自分以外の他者の協力を求めたり、上司や先輩社員からアドバイスを受けたりすればよいでしょう。しかし、セルフコーチングは自分の成長を促すものであり、初めから答えを求めるのでは成長につながりません。
良い点、悪い点も含めて「なぜ自分はその時にその行動を取ったのか」「なぜ自分はそう考えたのか」を問いかけることが重要です。
一つひとつの疑問を自分に問いかけ続けることで、深く考える習慣が身に付き、自分の成長へとつながっていきます。
ネガティブな感情や行動も受け止め、考える
セルフコーチングでは自分の内面にある価値観、考え方とも向き合うため、上達するほどネガティブな感情や行動、課題と向き合う機会が増えます。その際、ネガティブな部分に蓋をして見ないようにするのではなく、自分の一部として受け止め、改善策を考えることが大切です。
例えば、仕事へのやる気が起きないことを課題に感じているなら、なぜやる気が出ないのかを考えます。やる気の出ない原因がやりがいのなさにあるとしても、「だから自分はダメなんだ」という考えに支配されないことです。
誰しも仕事への不満や悩みを抱えていますから、ネガティブな感情も自分のものとして受けとめましょう。
そして、無理にモチベーションを高めようとする、ポジティブな感情を持とうとする必要はありません。なぜそうなっているのか、そう感じているのかを分析することこそセルフコーチングの目的だからです。
ノートに書き起こす
セルフコーチングを行う際は、考えをノートに書き起こすことも大切なポイントです。
セルフコーチングでありがちなこととして、まとめた内容を頭の中で完結させてしまい、記録を取らないことががあります。しかし、セルフコーチングではその時の考え方をまとめておかないと、後で自分の考えを正当化しやすい傾向があります。疑問に感じたことや自分の取った行動について、すぐにノートに書き起こすことで、後で振り返った時に原因が把握しやすくなるでしょう。また時間が経って考えを忘れてしまった時も、ノートを読めばすぐに思い出しやすくなります。セルフコーチングは繰り返し問いかけ、実践していくことで答えを導いていく技術です。その時の自分の考えをノートに保存し、未来の自分が成長するきっかけにしましょう。
▼セルフコーチングノートの書き方
セルフコーチングノートを書く際は、大きく3つのステップに分けるとわかりやすくなります。
1. 強い感情の変化・重大だと感じた行動を書く
2. なぜそうなったのか問いかける
3. 自分はどうしたいのか答えを出す
まず、自分の感情が大きく揺さぶられた出来事、重大だと感じた行動をノートに書きます。書く内容は仕事のこと、日常生活のこと、友人関係のことなど何でも構いません。次になぜ感情が揺さぶられたのか、なぜ重大だと感じたのかを書きます。例えば仕事中にイライラする出来事があった場合、なぜイライラしたのか、そのイライラの根底には自分のどんな気持ちがあったのかなどを思考します。自分の中に問いかけていくことで、最終的に自分がどうしたいのかが見えてくるでしょう。そして、最後にここまでの内容から「自分はどうしたいのか」「どう行動したらよいのか」を考えます。このように段階に分けてノートを書いていくことで、答えに至るまでの過程が目に見える形で残ります。時間を置いて再度考えてみると違う答えになることもありますから、形として残すことが重要です。
時間をかけて意識的に取り組む
最後のポイントは、セルフコーチングには時間をかけて意識的に取り組むことです。
セルフコーチングは深く考えを巡らせることから、ある程度時間がかかります。
また1回だけでなく、繰り返し行うことでコーチングスキルも磨かれていきます。
意識的に時間をかけなければできないため、自分で時間を作って習慣的に行うようにしましょう。
セルフコーチングにおすすめの質問例
セルフコーチングを実践する際、より答えを導きやすくするには質問も重要なポイントです。どのような質問が効果的なのか、質問例を紹介します。
目標設定の場合
目標設定の場合、おすすめの質問例は以下のようなものです。
・自分は将来どうなりたいのか
・自分は今何がしたいのか
・たくさんのお金を得るために何をする
・自分はどんな成果を出したいのか
自分の行動を決める場合
自分の行動を決める場合、おすすめの質問例は以下のようなものです。
・目標を達成するためにはどんなスキルが必要か
・目標達成で障害になるものは何か
・協力してくれる人はいるか
・どうすれば協力を得られそうか
・目標を達成するために自分に足りないものは何か
考えを深める場合
考えを深める場合、おすすめの質問例は以下のようなものです。
・良い成果を挙げるには何が必要か
・うまくいかなったのは何が原因だったのか
・次に同じことをするならどう行動するのがよいか
・失敗から何がわかったか
・なぜ自分の中で納得ができなかったのか
内面に問いかける場合
自分の内面に問いかける場合、おすすめの質問例は以下のようなものです。
・今回の経験から何を学んだのか
・行動してみて感じたことは何か
・過去の自分と現在の自分でどう変化があったのか
・今の自分にとって本当にやりたいことは何か
壁を乗り越える場合
自分にとっての壁を乗り越える場合、おすすめの質問例は以下のようなものです。
・この壁を乗り越えるとどんな自分になっているだろうか
・自由な時間が得られるなら何をしたいか
・自分の尊敬する人ならどう行動するか
・行き詰っている理由は何か
・自分の前にある壁は乗り越える必要があるのか
自分のすべきことを明確化する場合
自分のすべきことを明確化する場合、おすすめの質問例は以下のようなものです。
・自分が得たいものは何か
・なぜ自分はそれを得たいのか
・どうしたら夢を実現できるのか
・自分の行動は将来にとってどんな意味があるか
・今の自分にしかできないことは何か
セルフコーチングの研修はユーキャン
社員のセルフコーチング習得を促すなら、ユーキャンにご相談ください。
ユーキャンでは若手から管理職まで、幅広い階層に合わせたセルフコーチング研修をご提供いたします。VUCA時代だからこそ、社員一人ひとりの自律した成長が企業経営の鍵になります。 社員のパフォーマンスを向上させ、最大限の能力を発揮させるためにも、セルフコーチング研修で成長を支援しましょう。
研修後のフォローアップも含め、セルフコーチング研修のご依頼はユーキャンまでお問い合わせください。
まとめ
今回はセルフコーチングについて、コーチングとの違いや効果、実施の手順、質問例などを解説しました。セルフコーチングは誰でも日常に取り入れられる思考法です。日々の悩みや疑問、課題に対して自分なりの考えを持ち、解決策を見出していく重要な成長手段の1つでもあります。 自社の社員にセルフコーチングを実践してもらうことで、企業の生産性や社員のモチベーションアップも期待できます。 社員の自律性・自発性を促すなら、セルフコーチングを取り入れましょう。