IT人材育成の課題と対策│必要スキルや育成メリットも徹底解説

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    公開日:2024.04.01

    更新日:2024.04.01

    IT人材の役割は、ITシステムやIoT、DXを推進するために各企業のデジタル化を支援することです。多くの企業でIT・DX化を急速に進めている現状があり、どの企業もIT人材の育成と確保に力を入れています。この記事ではIT人材とはどのような存在か、必要な知識・スキル、なぜ注目を集めているのかなどのポイントを解説します。

IT人材とは誰を指すのか

IT人材とは誰を指すのか、主な種類やデジタル人材との違いについて解説します。

IT人材の主な種類

IT人材はIT分野の専門知識を持ち、ITスキルを活かして働く人材を指します。
IT人材が多く在籍するのは、情報サービス業やIT企業、通信事業者などです。
そしてIT人材という枠組みの中には、主に3つの種類があります。
・従来型IT人材
・高度IT人材
・先端IT人材
従来型IT人材とは、既存のIT・システム・サービスの運用・保守などを行う人材です。
いわゆるエンジニアと呼ばれる人材であり、インフラやネットワークを支えています。
高度IT人材とは単一の業界ではなく、複数の業界または産業と連携し、新しいサービスの構築を行う人材です。今までにない商品でイノベーションを起こし、モノに新しい価値を付加する人材を指します。
先端IT人材とはIoTやAIを駆使して、ビッグデータ解析やDXを推進する人材です。先端IT人材は今後の社会を担う人材であり、新しい価値の創出や企業の生産性向上、地方創生に貢献できる人材として注目されています。

デジタル人材との違い

IT人材と混同されやすいのがデジタル人材です。IT人材とデジタル人材は似ている部分もありますが、役割が違います。経済産業省によると、IT人材は「情報技術(IT)分野で活躍する人材」です。一方、デジタル人材はデジタル技術で企業や社会に新しい価値を創造する人材を指します。
IIT人材はIT分野で活躍する人材という限定的な対象であるのに対し、デジタル人材はデジタル技術を駆使する人材すべてが対象です。
例えばデジタル技術を駆使するのであれば、営業職や医療職、製造業でもデジタル人材の対象になります。
そして、IT人材もデジタル人材の定義の中に入ります。意味が近いことから間違われやすい2つの言葉ですが、対象範囲の違いを認識して使用しましょう。
参考:経済産業省 IT人材受給に関する調査

IT人材に必要な知識・スキル

IT人材に必要な知識・スキルとは、次のようなものです。
・クラウドサービスの知識
・セキュリティ知識
・AIスキル
・IoTの知識・スキル
4つの知識・スキルの具体的な内容を紹介します。

クラウドサービスの知識

クラウドとはインターネットを経由してユーザーにサービスを提供する仕組みです。
IT人材として働くには、クラウドサービスの知識は必要不可欠になっています。
世界的な潮流として、インターネットを活用したマーケティングが展開されており、クラウドサービスを利用する企業も増えています。
クラウドサービスは低コストで高いマーケティング効果が期待できることから、今後も利用率は増加していくでしょう。
IT人材は、クラウドサービスの利用が続くことを見越して、クラウドサーバーの構築から、安定したシステムの運用・保守ができる知識を身に付ける必要があります。

セキュリティ知識

IT人材にはセキュリティ知識も求められます。
現代は企業情報から個人情報まで、インターネットを通じて双方向のやりとりが行われています。しかしインターネット上には悪意を持つ人物も多く、企業情報と個人情報を保護するにはセキュリティ対策は必須です。不正アクセスによる情報漏洩は後を絶たず、問題の発生によって企業の信頼は大きく低下します。企業を守るためにも、IT人材にはセキュリティ知識が必要とされています。

AIスキル

今後の経済や産業を支えていくには、AIに関連したスキルも重要です。
AIの用途は広がりを見せており、農業や漁業、建設業、物流、医療まであらゆる産業で活用されています。AIによって労働者不足の解消や業務効率化にも役立っており、AIは産業はもちろん、私生活にも欠かせない存在にまで昇華しました。
今後はより高度なAIの開発も進められることが予測され、AIを活用したデータ分析など高度なAIスキルが求められるでしょう。

IoTの知識・スキル

IT人材とIoTの知識・スキルには、密接な関係があります。
IoTはモノがインターネットと接続することであり、PCやスマホ、冷蔵庫などの家電、自動車に至るまで、あらゆるものがネットワークとつながることを意味します。
IT人材はIoTに欠かせない組み込みシステムや、プログラミングなどのスキルを持つことから、さまざまな産業にとって必要な人材となるでしょう。

IT人材のスキル証明におすすめの資格

IT人材として自分のスキルを証明するには、資格取得が重要です。
・情報処理技術者試験
・情報処理安全確保支援士
2つのおすすめ資格について紹介します。

情報処理技術者試験

情報処理技術者試験とは、独立行政法人情報処理推進機構が開催するIT関連資格です。
情報処理技術者試験には、次のものがあります。

ITパスポート試験
・情報セキュリティマネジメント試験
・基本・応用情報技術者試験
・ITストラテジスト試験
・システムアーキテクト試験
・プロジェクトマネージャ試験
・ネットワークスペシャリスト試験
・データベーススペシャリスト試験
・エンベデッドシステムスペシャリスト試験
・ITサービスマネージャ試験
・システム監査技術者試験

基本的なIT知識を問うものから、高度な専門知識とスキルが求められるものまで、さまざまな資格があります。
その分、取得できればITスキルの証明になるため、IT人材として高く評価されるでしょう。

情報処理安全確保支援士

「情報処理安全確保支援士」は独立行政法人情報処理推進機構が主催する国家資格です。
最新のセキュリティに関する知識・技能を備えた、高度かつ実践的人材に関する国家資格で合格すれば、国家資格の「情報処理安全確保支援士(通称名:登録セキスぺ)」が取得できます。
サイバーセキュリティの専門知識と、安全な情報システムの企画・設計・開発・運用の支援を行う資格とされています。合格率は20%前後で、試験は年2回開催されるため、比較的取得しやすい資格といえるでしょう。

なぜ足りない?IT人材の育成が重要視されている背景

なぜIT人材が不足し、IT人材育成が重要とされているのでしょうか。
その背景には日本社会における次の理由があるとされています。

・デジタル競争力が低い
・DX推進に伴い業務効率化が求められている
・育成の重要性が認知されていない

3つの背景について具体的に紹介します。

デジタル競争力が低い

IT人材の育成が注目される背景には、日本のデジタル競争力の低さがあります。
総務省の公表した令和4年の情報通信白書によると、日本企業のおよそ3分の2が「人材不足によってデジタル化を進められていない」との結果が出ています。
またスイスの国際経営開発研究所(IMD)の調査結果では、2023年の世界デジタル競争力ランキングで日本は64か国中32位となりました。
前回調査が29位だったことから、3つ順位を落としたことになります。
日本のデジタル競争力が低いとされる原因としては知識水準もありますが、「技術」「将来への準備」「ビッグデータ」といった項目で大きく順位を落としました。
日本ではこうした結果を受けて、高校教育でプログラミング教育の義務化などを進めています。今後、日本でもデジタル競争力を高めていくには、IT人材の育成と教育水準の向上が不可欠です。政府としてもIT人材の教育やリスキリングに力を入れていることから、今後のデジタル競争力には注目すべきです。

参考:総務省 「国内外における最新の情報通信技術の研究開発およびデジタル活用の動向に関する調査研究」
参考:JETRO 「世界デジタル競争力ランキング、スイス5位、日本は32位へ後退」

DX推進に伴い業務効率化が求められている

IT人材の育成が重要視される理由には、DX推進と業務効率化が求められている点もあります。日本では少子高齢化が進み、労働人口不足によってあらゆる業界で人材が不足しています。このような状況でも業務効率を維持・改善し、生産性を高めるにはDXを推進するのが必須です。人間とAI・ロボットで業務を分担することにより、人手不足の状態でも生産性を維持できます。
しかしDXを推進するには自社でIT人材を雇用するだけでなく、IT企業とのつながりも欠かせません。IT人材がいなければDXの推進はもちろん、社内でDXやIoTを普及させることも難しいでしょう。実際に、独立行政法人情報処理推進機構の発表したDX白書2021によると、国内企業の約9割がIT人材が質・量ともに不足していると回答しています。
こうした日本企業の抱える問題を解決するには、IT人材の育成と確保が重要な課題です。
外部からのIT人材雇用、社内での人材育成などさまざまな施策で人材不足の解消を目指しているのが現状です。
参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA) 「DX白書2021 第3部 デジタル時代の人材」

育成の重要性が認知されていない

日本でIT人材の育成が重要視される背景には、これまで育成の重要性が認知されてこなかったことがあります。日本のデジタル競争力の低さは、IT人材育成の重要性を多くの企業が認識できておらず、従来の人材育成しかしていなかったことに起因しています。
近年になってIT人材育成への注目度が高まり、リスキリングも政府の方針となりましたが、それまでは施策として行っている企業は一握りでした。
日本は年功序列・終身雇用制を導入していたからこそ、人材育成の意識が育たなかった点も影響しているでしょう。
デジタル競争力を高め、IT人材の育成を力強く進めていくには、企業の経営層が育成の重要性を認識することがスタートラインになります。

関連リンク:IT教育のメリットや日本の現状とは? 海外の事例やICTとの違いも解説

IT人材を自社で育成するメリット

社内でIT人材を育成する場合、次のメリットがあります。

・教育コストが少ない
・社員の知識が深まる
・モチベーションとエンゲージメントが高まる
・生産性・業務効率の向上

自社で IT人材を育成する場合、教育コストや環境整備の費用はかかりますが、新たな人件費を抑えることができます。社員の知識が深まれば、IT技術を駆使して生産性と業務効率の向上に貢献してくれるでしょう。
またIT人材育成は社員のモチベーションを高め、エンゲージメントの高まりで離職率低下の効果も期待できます。社員の成長意欲を引き出し、自社でのIT人材の育成を進めましょう。

IT人材を自社で育成するデメリット

IT人材を自社で育成した場合、次のデメリットがあります。

・教育に時間がかかる
・社内に教育ノウハウのある人材がいない

デメリットとして、知識がない状態から学び始める社員も多く、IT人材として活躍するまでにある程度の時間を要します。また社内に教育のノウハウを持つIT人材がいなければ、そもそも教育自体が難しいという問題もあります。そのため指導者となるIT人材の準備が困難な場合、外部の専門家に依頼するほうがスムーズに進むこともあるでしょう。

IT人材育成で発生する課題の対策

IT人材育成を推進すると、多くの企業で課題が発生します。

・離職率が増加
・育成の長期化
・ラインケアの重要性
・異業種との交流
・スキルマップの導入

それぞれの課題と対策について紹介します。

離職率が増加

IT人材育成を進めると、離職率の増加を招く場合があります。
退職率が増加しやすい理由は2つあります。

・IT技術は転職に活用しやすい
・ベテラン社員が離職しやすい

まず深刻な人材不足のため、IT技術を持つ人材は自社だけでなく、他社でも求められる可能性が高いです。自社でITスキルを学び、より条件の良い他社に転職する社員も出てくるかもしれません。特に若手は転職に対する抵抗感も少ないため、IT人材として別のキャリアを構築することもあるでしょう。
一方、ベテラン社員はIT技術の習得に抵抗感を抱きやすく、技術に追いつけずに退職するケースがあります。どちらも企業にとっては損失になるため、 IT人材になることで得られるメリットを周知し、キャリアプランを提示していくことが対策になります。

育成の長期化

IT人材の育成を進めても、1~2か月では実務レベルのスキルは身に付けられません。
半年~1年という長期のスパンで育成しなければ、十分な知識とスキルは得られないでしょう。特に情報系や理数系以外の学部を卒業した社員は、IT知識をほとんど持っていないことがあります。その場合、ITの基礎知識から学習する必要があり、より長期の育成計画を策定すべきです。
またITスキルを身に付けてからも、社内ルールと業界内でのルールの把握、商品とIT技術をどう紐づけていくのかなどの課題があります。IT人材が育つまでには多くの工程が必要なことを理解し、社員のレベルに合わせてステップアップするカリキュラムを検討しましょう。

ラインケアの重要性

ラインケアの重要性を認識することも重要な課題です。
ラインケアとは上司や先輩などの上の立場の社員が、若手や新人を支援することです。
IT人材の育成ではITの最新知識が学べる一方で、通常業務もこなさなれけばならず、育成を受ける社員には一定の負担がかかります。
社員の負担が大きい状態でサポート体制がなければ、社員は育成過程で潰れてしまうでしょう。そのため各部署でラインケアを行い、業務負担の軽減をはじめ、心理面でのサポートを行うことが大切です。

異業種との交流

社内でIT人材の育成を行う場合、異業種との交流が深めにくい点も課題に挙がります。
IT人材の育成において、スキルを磨くこと自体は研修を受ければ問題ありません。
しかしIT人材は自社の業界だけではなく、さまざまな業界と連携することで活躍の幅が広がります。そのため社内でのIT人材育成を進めると共に、異業種との交流会や公開の研修会参加を促すことも重要です。異業種との交流が生まれることで新しい視点ができ、社内のイノベーションにつながる可能性があります。

スキルマップの導入

IT人材を育成する際は、社員のモチベーションアップと主体性を持った行動の促進のため、スキルマップの導入がおすすめです。スキルマップには情報処理推進機構(IPA)のITSSを用いるのがよいでしょう。
ITSSはITスキルの習熟度を7段階に分けたもので、11職種38分野の分類があります。
レベル3以上でプロフェッショナルとして独力での開発が可能であり、IT人材のレベル評価ではわかりやすい指標といえます。
レベルが上がるほど社員のモチベーションアップにつながりやすく、スキルマップから得られた情報を共有することで、個々の社員だけではなく部門、部署ごとの問題や目標が具体的に見えてきます。

関連リンク: DX人材の育成方法とは?ロードマップや課題点・DX人材育成に取り組む企業の事例解説!

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まとめ

今回はIT人材の育成について、IT人材とは何か、種類や資格、育成のポイントなどを解説しました。日本では雇用制度や社会的な認知度の低さといった問題から、IT人材の育成が進んでいませんでした。
しかし近年は急速なIT化とAIの発達、IoTが生活に結びついてきたことで、IT人材育成の重要性が改めて認識されています。 今後は社内でもIT人材育成を進める重要性がさらに高まりを見せ、自社で複数名のエンジニアを雇用するのが当たり前の世の中になっていくでしょう。 人材育成担当者やIT化・デジタル化担当者の方は、外部の専門家も活用してIT人材の育成を進めましょう。

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