企業研修とは何か?
企業研修は、社会人になったばかりの新人、成長途上の若手、専門性が求められる中堅やベテランまで幅広い人に学ぶ機会を与えるものです。 対象によって学習内容、手法、スケジュールもさまざまであり、必要に応じて社外で研修を行う場合もあります。従来は社内での研修が中心でしたが、社外研修やオンラインなどの方法も登場しました。
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企業研修の目的とは
①人材開発
企業研修の目的の1つは、既存の人材を教育し、スキルアップを支援することです。企業で働いていくには一定のスキルが求められ、社員の階層によって求められる知識、スキルのレベルも変わります。
例えば、新入社員を早期に戦力として活躍できるように教育し、実務能力を高める研修・講座などが代表的です。また、新人だけでなく中堅やベテランにもレベルに応じた研修を行い、専門性を深めたり、リスキリングを促したりすることもあります。優秀な能力を持つ人材には管理職や経営者向けのマネジメント研修も行い、スキル向上につなげることもできます。
②組織開発
企業研修のもう1つの目的は、研修を通して企業の経営や社員の成長に必要な学習を行い、組織全体の生産性・経営効率を高めることです。 新入社員や若手、中堅、管理職などキャリアプランに合わせた研修を用意し、社員がキャリアビジョンを明確にする必要があります。
個人の目標や将来就きたい役職に合わせてスキル研修を実施することで、組織内での競争やスキルの底上げを促せます。また研修を通して社員の得意・不得意が明確化しやすく、人員配置を決定する際の参考にもなるでしょう。
「トレンド」の意味
「トレンド」という言葉を聞いたことのある方も多いでしょう。トレンドは日本語にすると「流行」に近い意味になり、ファッションのトレンドやトレンドワードなどの使い方がされています。トレンドは使用場面によって意味が異なるため、ネット上と経済界での意味の違いをみていきましょう。
ネット上で使用される場合
ネット上で使用されるトレンドとは、SNSや掲示板などで人気の言葉や商品、楽曲、人物などを指します。 企業のマーケティングにもトレンドが活用されており、人気に乗って自社の製品の販売につなげているケースも多いです。ネットにおけるトレンドは移り変わりが激しく、早ければ数日、長くても数週間のうちにトレンドは変化します。本来の意味に近いのが、ネット上で使用される「トレンド」という言葉です。
経済界で使用される場合
経済界におけるトレンドは、株価や為替、先物市場などの価格の動向を指します。 例えば、株価が上昇を続けているなら上昇トレンド、株価が下落を続けているなら下降トレンドと呼びます。また株価や為替が一定のラインを超えるか、割るかによって「トレンドラインが変化した」といわれることが一般的です。この場合のトレンドは、価格などの数値が一定の方向に向かう流れを意味しています。
人材育成の変遷
日本において人材育成の考え方が知られるようになったのは1960年代以降です。しかし年代とともに、人材育成のトレンドも変化してきました。どのような経過をたどってきたのか、時代による変遷をご紹介します。
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1960年頃
1960年代は戦後復興が一段落し、人材育成や能力開発などの潮流が日本にも入ってきた時期です。当時はブレインストーミングやKJ法などが主流で、新入社員や管理者教育も1960年代頃から行われるようになりました。しかし能力開発や人材育成の考え方は一般化せず、一部の企業で取り入れられているに過ぎませんでした。
1980年頃
1973年に発生した第一次オイルショックを機に、日本では戦後初のマイナス成長となる企業が多く生まれました。その後は経営のスリム化を進める企業も増えましたが、1980年代からはバブル経済による新卒大量採用も始まります。加えて1986年には男女雇用機会均等法が施行され、男女問わず多くの人材が採用されたことから計画的な人材育成が重視されるようになりました。
1990年代前半
1990年代前半はバブルが崩壊し、経営の効率化を迫られる企業が増加し、成果主義を重視する企業が大幅に増加しました。この頃からリストラ制度も普及し、企業の求める成果を出せない人材は解雇されることも珍しくありませんでした。1990年代の研修は個人のキャリアや責任に基づいた自己選択型研修、幹部育成を目指したコア人材育成研修、CDPベースのキャリア開発などが中心でした。
2000年代
2000年代はITが普及し、グローバル化、ダイバーシティも大きく進歩した時期です。日本企業も世界で活躍できる人材育成を進めるため、ダイバーシティ研修や多様な価値観に対する教育を進めました。 また、大学では次世代のリーダーを育成することを理念に掲げるところも登場し、人材育成も短期間で効率的な学習が求められるようになりました。
人材育成の新たなトレンド
人材育成は2020年代に入ってからもトレンドが変化しており、時代に合わせて重視されるポイントが変わっています。新たなトレンドについて、学びの方法の最適化、実践の繰り返し、組織力の観点でご紹介します。
学びの方法の最適化
従来の人材育成では、ビジネススキルや企業で必要なスキルなどの汎用性が意識されてきました。しかし近年は人材確保の難しさが増しており、企業の人材の専門性を深めたり、JOB型雇用を推進したりする企業も多いです。また AI技術の進歩に伴う人件費の削減も行われている中で、人材育成も学びの方法の最適化が求められています。
そのため従来の集合研修に加えて、個別のスキルアップにe-ラーニングや社外研修などを導入し、社員個人の価値観やライフスタイルに合わせた学習方法が一般化しつつあります。
長期的に現場での実践を繰り返す
企業にとって即戦力となる人材がほしいというのは事実ですが、即戦力とはいかずとも、学びを実務で生かしてくれることも重要なポイントです。研修での学びを実践で何度も繰り返し、そこからできることの幅を広げ、スキルを高めていくことが重要だからです。
特に新入社員や若手の場合、業務での経験の少なさから課題を発見し、解決へと導く力が不足していることがあります。研修で専門性の高いスキルを学ぶことも重要ですが、学びを現場レベルまで落とし込むには時間がかかるでしょう。人材育成の新しいトレンドでは、学びが実践に生かせるレベルまで定着し、企業の文化まで昇華していくことを狙っています。
組織力を上げていく
人材育成は個別で見れば社員の成長を促すものですが、大きな目的は企業の生産性を高め、組織力を高める点にあります。個別の社員のスキルが高まったとしても、チームの仕事で力を発揮できなければスキルを生かしきれません。チームスポーツと同じように、個別のプレーヤーの能力が高くても、チーム自体が弱ければ勝利にはつながらないでしょう。そのため企業は社員個人のスキルアップとは別に、チームとしての団結力や交流を促進する施策が求められています。
現在の企業研修のトレンド
現在の企業研修はどのようなトレンドなのか、人気の高い研修について目的やフロー、メリットをご紹介します。
ロジカルコミュニケーション研修
ロジカルコミュニケーションとは、コミュニケーションにロジカルシンキング(論理的思考)を取り入れる研修です。以前からロジカルシンキングはトレンドになっています。
ロジカルコミュニケーション研修は、その中でも相手のコンテキスト(文脈)から状況に合わせて、最適なコミュニケーションを行う力を養うことが目的です。相手に対する思い込みを排除することにより、客観的な視点から仕事を進めやすくなります。
ロジカルコミュニケーション研修のフロー
ロジカルコミュニケーション研修は次のように進めます。
- 1.研修の意義・目的・必要性の説明
- 2.会話を通したインプット力の強化
- 3.わかりやすい内容を意識したアウトプット力の強化
- 4.ロジカルシンキングの習得
- 5.ケーススタディ
メリット
ロジカルコミュニケーション研修で得られる具体的な効果・メリットは次の通りです。
- ・伝わりやすい話し方ができる
- ・営業の交渉力が高くなる
- ・プレゼンテーションの効果が上がる
- ・論理的な考え方が身に付く
- ・社員同士のコミュニケーションが良好になる
- ・コミュニケーションへの自信につながる
インスピレーションポート
インスピレーションポートは、自社だけでなく他社も巻き込んで、地域の課題に対する解決策や新しい価値の想像に取り組む研修です。異なる価値観、強みを持つ会社同士がチームを組むことで、新しい発想を生む効果が期待されています。また インスピレーションポートの特徴として、受講者が自ら答えを導き出す必要があり、導いた答えに正解もありません。正解がわからないからこそ自由な発想ができ、イノベーションにつながりやすいとされる研修です。
インスピレーションポートのフロー
インスピレーションポートは以下の流れで進められます。
- 1.研修の意義・目的・必要性の説明
- 2.地域課題の情報収集(インタビューやアンケートなど)
- 3.複数回のグループワーク
- 4.アイデアのアウトプット
- 5.プレゼンテーション
情報収集、グループワーク、アウトプットまではグループワークになり、新たな価値創造に何が必要か自ら考える能力を身に付けてもらうのに最適です。ただし研修の際は間違った方向に進むのを防ぐために、適宜報告や相談をしてもらうことも重要です。
メリット
インスピレーションポートを実施するメリットは次の通りです。
- ・情報に対するアンテナの立て方が理解できる
- ・地域と自社のつながりが感じられる
- ・新しい顧客の獲得につながる
- ・他企業との交流でイノベーションが活性化しやすい
- ・自社の新しい経営戦略や市場の開拓になる
OJTリーダー研修
OJTリーダー研修はOJTとリーダーシップ研修を組み合わせ、実務を通してリーダーシップを磨く研修です。一般的なOJT研修は新入社員向けに行うもので、先輩社員が指導者としてマンツーマンで指導を行います。OJTリーダー研修の場合、チームリーダーや管理職、キャリアアップを目指す社員が対象です。社内の先輩管理職やリーダーが行う場合もありますが、オンラインで専門の講師の指導の下でマネジメント能力を磨く方法もあります。
OJTリーダー研修のフロー
OJTリーダー研修は次の流れで進みます。
- 1.研修の意義・目的・必要性の説明
- 2.受講者同士のグループワーク
- 3.チェックシートなどを用いた自己分析
- 4.指導者も交えてケーススタディ
- 5.ロールプレイング研修
- 6.指導計画の作成
メリット
OJTリーダー研修のメリットは以下の通りです。
- ・管理職の人材育成がしやすい
- ・キャリアビジョンが明確になる
- ・部下の育成計画が具体化しやすい
- ・各部署で即戦力となる人材を育成できる
- ・キャリアアップにつながる
マネジメント研修
マネジメント研修は管理職や部下の業務を管理するマネジメント層、経営者向けの研修です。職場の業務効率化やリーダーシップの取り方、社員のモチベーションを高める働きかけなどを学ぶことを目的にしていまマネジメント研修は以前から多くの企業で行われていますが、近年はオンラインを活用したマネジメントも注目を集めています。
マネジメント研修のフロー
マネジメント研修は次の流れで進めます。
- 1.研修の意義・目的・必要性の説明
- 2.管理職に必要なスキル・役割の理解
- 3.マネジメント能力の把握
- 4.マネジメント層向けの課題発見・解決手段などの学習
- 5.ケーススタディ
- 6.適したマネジメントスタイルの分析
- 7.部署のゴールと評価基準の設定
メリット
マネジメント研修には、次のメリットがあります。
- ・社員の仕事への意識が変わる
- ・管理職としての責任と自覚が芽生える
- ・管理職としての専門スキルが身に付く
- ・エンゲージメントが高まる
- ・企業経営に長く貢献してくれる人材が育成できる
トレンドを押さえた企業研修で組織力強化
企業研修のトレンドや変遷、近年注目されている企業研修の一部をご紹介しました。
企業研修はどの企業でも行われていますが、2020年代はITやAIの進歩も著しく、社会の流れがこれまで以上に加速し、時代に合わない研修を行っている企業も少なくありません。
時代に合わない研修を行っても、社員のスキルアップにはつながりにくく、研修自体がモチベーションを低下させる要因にもなります。
まとめ
今回紹介した研修のようなトレンドに合わせたカリキュラムを用意することで、社員に必要な知識・スキルを効果的に学習してもらうことが可能です。企業研修に頭を悩ませている担当者の方のために、課題解決のための最適な研修プログラムをご提案いたします。ぜひ貴社の課題をお聞かせください。