入社前研修とは?主な目的や実施タイミング、具体例を紹介

  • 入社前研修とは?主な目的や実施タイミング、具体例を紹介

    公開日:2024.02.14

    更新日:2024.02.14

    入社前研修は内定者向けに教育を行い、新卒入社後の職場環境への適応を促すとともに、活躍できる人材を育成するために実施されます。本記事では入社前研修の目的と効果、実施時期、成功のポイント、研修方法などを解説しています。入社前研修のカリキュラムの構築に悩んでいる人事ご担当者様は、本記事を参考になさってください。

入社前研修とは何か?

入社前研修とは、新卒採用において内定者がスムーズに社会人として働けるように、ビジネスに必須なスキルや企業イメージを学んでもらう研修を指します。主な目的は社会人に必要な知識の定着と、企業の理念や活動への理解を促進することです。入社前研修を受けることで、以下の効果があるとされています。

・入社後の理想と現実のギャップを感じにくくなる
・社会人生活へスムーズに移行できる
・社会人生活への不安を軽減し、内定辞退を防止する

入社前研修は内定者はもちろん、企業にとっても実施するメリットが大きいと言えるでしょう。
関連リンク:研修とは? 意味・目的や種類、実施する手順や成功のポイントまで解説

入社前研修を実施するタイミング

入社前研修については、明確にいつ実施すべきという決まりはなく、企業によっては実施しないこともあります。ただし一般的には以下のスケジュールで行われることが多いです。

・入社6か月前(10月頃):同期入社や先輩社員との交流、人脈の構築
・入社4か月前(12月頃):ビジネスマナーなど社会人の基本スキルを学び、社会人意識の醸成を促す
・入社1か月前(3月頃):業務に必要なスキルの習得、企業活動の説明を含め実践的な研修を行う
入社前研修を通して基本的なスキル習得を促し、人間関係を構築することで、内定辞退や早期離職を防止する意図があります。 また時期に合わせて段階的に研修を行うことで、社会人になる実感を持ってもらう意味もあります。

入社前研修の主な目的とは

入社前研修には5つの主な目的があります。具体的な目的とその内容についてご紹介します。

・入社後の人材育成をスムーズにする
・内定者の不安を払拭する
・内定辞退を防ぐ
・入社前と後のギャップを防ぐ
・同期や先輩と交流する

入社後の人材育成をスムーズにする

入社前研修は内定の段階で、入社予定の学生にスキルを身に付けさせ、社会人意識を持ってもらう意味があります。 入社前研修である程度のスキルを習得できれば、入社後の人材育成もスムーズに進められます。会社に必要な人材を育成するために、入社前研修で土台を固められるからです。また、入社後に研修を行っていたのでは、研修を担当する社員と新入社員への負担も大きくなります。社員全体への負担を軽減し、効率的に人材育成をするためにも入社前研修には重要な意味があります。

内定者の不安を払拭する

学生から社会人への移行期間にいるのが内定者です。しかし学生にとって社会人になるのは少なからず不安があり、仕事をやっていけるかどうか心配しながら過ごしています。そこで入社前研修では、内定者の不安を解消するために、先輩社員との交流、必要なビジネススキルの習得、企業活動への理解を深めることに重点を置いています。実際に現場で働く社員から話を聞ければ、社会人になってからの姿もイメージしやすくなるでしょう。また知識やスキルの習得は自信につながり、社会人になるための心構えも変わってきます。

入社前研修では内定者の不安な心情も理解し、スムーズに社会人へと移行するのを手助けする目的もあります。

内定辞退を防ぐ

入社前研修には、内定者の辞退を防ぐ目的もあります。入社に内定してから、実際に入社するまでの期間が空いているため、内定者が別の企業を選択するケースは珍しくありません。入社前研修を行うことで内定者の不安解消やモチベーションアップを図り、内定辞退を防止する効果があります。

また入社前研修を実施することで、内定者が会社への帰属意識を持つようになり、エンゲージメントの観点からも離職防止効果が期待できます。内定辞退は再度の採用活動をしなければならず、企業にとって大きな痛手です。入社前研修を活用して、内定者の確実な入社につなげましょう。

入社前と後のギャップを防ぐ

新入社員は理想を抱いて社会人になり、その後現実とのギャップに苦しめられることも珍しくありません。厚生労働省の発表によると、就職後3年以内の離職率は令和2年3月卒業の大学卒就職者が32.3%(同0.8ポイント上昇)となりました。 内定者が新入社員として就職してからもギャップで苦しまないためには、入社前研修が非常に重要です。離職理由は賃金や人間関係、イメージと仕事内容の違いなどさまざまですが、そうしたギャップを埋めるためにも入社前研修の果たす役割は大きいです。 内定者に自社について深く理解してもらい、早期離職を防ぐことも入社前研修の目的の1つと言えるでしょう。
※参考:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します

同期や先輩との交流の機会になる

入社前研修は単にスキルを高め、企業への理解を深めてもらうだけでなく、同期や先輩社員と交流してもらうことも重要な目的です。内定者にとって、同期は同じ立場で会話ができ、お互いに悩みや不安を相談できる大切な存在です。また先輩社員との交流を通じて、社会人になってからお互いに顔見知りになり、職場に馴染みやすくなるでしょう。
学生から社会人になることは、すべての学生にとって初めての経験です。初めての経験であっても、顔見知りの存在や仲間の存在があれば、仕事へのモチベーションも高める機会になります。内定者の不安を軽減してスムーズに社会人になれるように、入社前研修では多くの人と交流できる場を設けることが大切です。

入社前研修で意識するべきこと

入社前研修は企業が内定者と直接関わり、内定者は入社前に先輩社員と交流できる貴重な機会です。そのため企業の研修担当者は入社前研修で、フォロー・課題として意識していることとして、以下の表の内容を知っておく必要があります。

企業調査、学生調査(2022年2月)

※出典:株式会社ディスコ|調査データで⾒る「内定者フォロー」-2022年卒調査-

表からもわかる通り、企業側の意識と学生側の意識には違いがあり、学生は入社意欲やコミュニケーションに重きを置いていません。一方で、資格やITリテラシーなどの企業が重点を置いていない部分については、学生のほうが高い意識を持っています。企業が考える新入社員に必要な研修だけでなく、内定者目線での研修を組み込むことも入社前研修では重要になるでしょう。

入社前研修を成功に導くポイントとは

入社前研修を成功へ導くには、以下のポイントを意識することが重要です。

・入社前研修の目的と目標を共有する
・新入社員に必要なスキルを現場からヒアリングする
・段階的に目標を立てる

入社前研修の目的と目標を共有する

入社前研修も社員向けの研修と同様に、目的と目標があり、内定者も含めて関係者全員と共有しましょう。例えば、何のために研修を行うのか、研修を終了する時にはどのような成長を遂げていてほしいのかなどです。社員と内定者それぞれの意見も反映しつつ、目的と適した目標を共有することが大切です。目的と目標がどちらも具体化できていれば、受講する内定者も目的意識を持ってプログラムに取り組めます。

新入社員に必要なスキルを現場からヒアリングする

入社前研修を行うにあたっては、とにかくスキルを身に付けさせればよいというものではありません。現場では新入社員に何を求めているのか、習得しておいてほしいスキルがあるかなど、現場のニーズをヒアリングしましょう。
例えば事務職ならMicrosoft Officeの扱い、営業職なら基本となるビジネスマナーなど、必要なスキルは業務内容によっても異なります。入社して早い段階でスムーズに業務をこなせるように、入社前研修で学んでほしい内容を各部署に確認することが大事です。

段階的に目標を立てる

入社前研修では通常の研修と同じく目標を設定し、いつまでに、どれだけのスキルを身に付けてもらうかスケジュールを計画しましょう。 入社前研修を受講する内定者は、社会人としての下地がない状態です。その状態でスキルを詰め込んで教育しても、思うような効果は得られません。そのため入社半年前に交流と信頼関係の構築、年末頃に企業理念や活動の理解、入社までに必須スキルの習得など、大まかに段階的な目標設定を行うと効果的です。

入社前研修の具体的な実施方法

入社前研修には、一般的な研修スタイル以外にもさまざまな実施方法があります。入社前研修で活用できる8つの実施方法についてご紹介します。

座学・集合研修

研修で大多数の方がイメージするのが座学・集合研修です。実施方法としては標準的なもので、1箇所に内定者を集めて講師からの話を聴く授業スタイルの研修です。基本スキルの学習や企業についての説明を受けるなど、多くの参加者に同水準の教育を行いたい時に用いられます。参加者は基本的に受け身で受講するため、インプットが中心になります。

eラーニング

eラーニングはパソコンやスマホ、タブレットを使用し、オンラインで動画を視聴したり、ビデオ通話をしたりして学ぶ方法です。内定者が遠方で参加しにくい人がいる、授業の関係で直接出席できない人が多いなど、座学での研修が難しい場合に用いられることがあります。eラーニングは参加者がいつでも内容を振り返り、好きな時に学べる点が特徴です。また内容はビジネスマナーやOSスキル、PCスキル、コンプライアンスなど多岐にわたります。そのため学ぶ内容が多く、集合研修では時間を確保しにくい場合にもeラーニングは有効な方法です。

書籍・資料配布

企業の業務内容や業界について、書籍や資料を配布して学習してもらう方法もあります。研修の時間が確保できない、研修担当者のマンパワーが不足しているなどの状況でも利用できる方法です。ただし内定者の学習状況と進捗が把握しにくく、人によって理解度に差が生じやすいデメリットもあります。そのため書籍や資料を配布する場合は、座学研修やeラーニングとも併用し、学習効率を高めるのが一般的です。

内定者アルバイト

内定者アルバイトは入社前に内定者をアルバイトとして雇用し、企業の仕事への理解を促進するとともに、社会人意識を高めるものです。研修とはやや異なりますが、実践的なスキルを身に付けやすく、入社後もスムーズに環境に適応できます。ただし内定者とはいえ、その時点では学生です。学業に影響するほどの労働量や、責任を持たせるのは避けましょう。あくまでもアルバイトとして働いてもらい、社会人経験を積んでもらうことが目的です。学業と仕事とのバランスの取り方は難しいですが、内定者とも相談しながら働き方を検討しましょう。

ビジネスゲーム

ビジネスゲームは研修にゲーム形式を取り入れ、内定者同士の交流、チームとしての動き方などを学んでもらう研修方法です。ビジネスゲームの特徴は、個人では解決できない課題を仲間と協力しながら、解決へと導いていく点です。個人のパフォーマンスよりもチームに貢献することを意識し、人間関係の構築に役立つとされています。ビジネスゲームの種類は数十種類あるため、研修の参加人数や業種に応じて、最適なものを選ぶ必要があります。また体を動かすものや頭を使うものなど、ゲームの種類は多種多様です。全員の活躍は難しいとしても、参加者が平等に活躍する機会を与えられるようなゲーム選びもポイントです。

資格取得支援


業務上必要な資格、キャリアアップに関連する検定がある場合、資格取得支援も研修の一部になります。例えば資格取得に必要な情報の提供、試験の出題傾向、実務的な知識の習得など、現場を知るからこそできるさまざまな支援方法があります。 内定者は入社前研修で資格や検定への意識が高いことから、資格取得支援はモチベーションアップにも効果的です。 ただし内定者の自主性に任せる面もあるため、自発的に学ぶ意欲の高い人材に対して支援を行うのが基本です。内定者には支援制度について周知し、学ぶ意欲のある人には積極的に支援をおこないましょう。

グループワーク


グループワークは内定者で少人数のグループを複数作ってもらい、グループ内でさまざまな議題について議論し、結論を出す研修方法です。グループワークでは司会、ファシリテーター、書記などの役割をそれぞれのメンバーが担当します。そして、最終的にグループで出た結論を発表するまでが一連の流れです。会社では異なる意見を持つ人同士でも、お互いの意見を調整したり、尊重したりする形で最終的な結論を出します。グループワークは社会性の育成に加え、チームワークや絆を強める意味でも効果的な研修方法です。

座談会・交流会


入社前研修は同期や現役社員と交流し、お互いへの理解を深めることも大事な目的です。座談会・交流会は、スキルアップに直結するものではありませんが、早期離職を防止し、モチベーションを高める意味では優れた研修です。同期との結束力を高め、現役社員から仕事の面白さや苦労を聞くことで、社会人に向けて意識を育むこともできます。軽食やおやつなども用意しておくと、よりリラックスした雰囲気で交流しやすくなるでしょう。

よくある質問

入社前研修について、研修担当者が疑問を持ちやすいものとその回答をご紹介します。

入社前研修を義務付けてもよい?

入社前研修の段階では、内定者との労働契約は締結されていません。そのため、基本的には受講を義務付けることはできません。そもそも入社前研修は内定者の同意を得たうえで実施するものであり、学生に対して企業側から強制力を働かせることができないという点もあります。

入社前研修に賃金は発生する?

入社前研修に関しては、研修内容によって支払うケースと支払わないケースがあります。
例えば内定者アルバイトのように実際に現場で働く場合、雇用契約を結んで働くことから賃金が発生します。また入社前研修の受講を義務付けた場合も、労務の提供と同じく扱われるため、企業側に賃金の支払い義務が発生する点に留意しましょう。加えて、賃金の支払い義務があるということは、内定者も労災保険の適用対象になる可能性が高いです。そのため、企業によっては日割り計算でアルバイトとして雇用するケースや、入社後に研修分の賃金を支払うケースがあります。

研修は複数回行うべき?

研修の回数について、明確な決まりはありません。交流会を一度だけ開催する企業もあれば、1~2か月に1回のペースで複数回実施する企業もあります。また合宿のような形で数日間まとめて実施するケースもあり、実施方法は企業の自由です。ただし、 実施する際は内定者の負担にならないよう配慮する必要があり、基本的に強制参加させることはできません。

入社前研修はお任せください

入社前研修は内定者に社会人としての基本スキルを指導し、同期や社員との関係性を深めてもらう重要な機会です。しかし正しい知識を身に付けられなければ、時間をかけても効果が薄くなります。また研修を行う社員にとっても、スケジュール調整やプログラムの用意は大きな負担になり、業務が停滞することが考えられます。そこでおすすめしたいのが、弊社の内定者向けプログラムです。ビジネスマナーやOAスキル、企業への理解を促進でき、実施形態も集合研修からeラーニングまでさまざまなものを用意しております。内定者向けプログラムにお悩みなら、ぜひユーキャンにご相談ください。

まとめ

今回は入社前研修の目的、成功へのポイント、主な種類などを解説しました。入社前研修は多くの企業で実施されており、新入社員の育成に成果を上げています。内定者の立場から見ても、入社前に学ぶべきことが明確化され、同期や現役社員と交流できる良い機会です。 入社前研修を活用すれば、早期離職を防止しつつ、即戦力となる社員も確保できます。 効果的な入社前研修を実施するためにも、豊富なプログラムを用意しているユーキャンをご利用ください。貴社の目的・目標に合わせて、最適なカリキュラムを提案させていただきます。

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