アセスメントとは?ビジネスシーンにおける種類や活用するメリットを解説!

アセスメントとは?

アセスメント(assessment)とは、日本語に訳すと客観的に評価や査定をするという意味になります。言葉の意味の通り、評価者の主観ではなく数値や事実に基づいて評価するため、正確性が高いのが特徴です。



ビジネスシーンにおけるアセスメントは、特定の人物の能力やスキルなどを客観的に評価したいときに使われます。
また、ビジネス以外の様々な業界で使われています。例えば、医療の現場で看護師が患者の抱えている問題を把握・分析する看護アセスメントや、建築や開発の現場で、大規模な土地開発が環境に及ぼす影響を分析する環境アセスメントなどが代表例です。

アセスメントの進め方

アセスメントの進め方は大きく分けて6つの段階があり、情報の収集から始まって、最終的には最適な選択や行動に移せるようにします。手順と内容は以下の通りです。

手順1:情報を収集する
手順2:出来事の原因を分析する
手順3:今後起こる事象を予測する
手順4:情報を解釈する
手順5:仮説の正誤を判断する
手順6:最適な選テクやとるべき行動を選択する。

ここからは、それぞれの手順の詳細を具体例を交えて解説します。

情報を収集する

アセスメントの進め方として最初に来るのが、情報を収集することです。 現在の時間軸だけではなく、過去にも焦点を当てて情報を集めるのが大切であり、下記のような情報が収集するべき情報として当てはまります。

・現在置かれている状況
・関係者や集団、組織や社会環境など影響を受けている環境
・過去に周辺で起こった出来事

具体的な例として、遊園地で迷子になっている子ども(対象者)を見かけたとします。この場合は、アセスメントの第一歩として、子ども(対象者)や周りの人に状況を聞いてみたり、子ども(対象者)に怪我などの異常がないか確認します。

出来事の原因を分析する

子ども(対象者)や周囲からの情報収集が完了したら行うべきなのが、出来事の原因の分析です。原因を分析する際は、集めた情報を基に仮説ベースで考える、子ども(対象者)が置かれている環境や心理状態を加味するなどがポイントです。 迷子になっている子ども(対象者)の近くにベビーカーや親の物と思われる荷物があれば、1人ではなく親と一緒に遊園地に来ていた、子ども(対象者)が泣いていて不安そうな様子なら意図せずにはぐれてしまったなどと分析できます。

今後起こる事象を予測する

アセスメントの進め方として、今後起こる事象を予測することが挙げられます。これまでの分析や解釈などを踏まえるほか、対象者が発する情報や周辺情報、環境とも再び照らし合わせるなど、過去と現在の情報を基に未来に起こることを予測します。 親の荷物やベビーカーがあり、周囲の人からの証言で母親が近くにいることが推測できていた場合、近いうちに戻ってくる可能性が高いなどです。

情報を解釈する

主観や客観以外にも、対象者側から情報を解釈するのもアセスメントの進め方として重要なポイントです。再び対象者にヒアリングしたり、周囲の情報を集めたりして、意味を解き明かしていきます。 対象からの信頼を得られて距離感などが変化した場合、それまで伝えられていなかった新たな情報を得られる可能性もあるからです。 迷子になった原因は、実は子ども(対象者)が勝手に動き回って母親の元から離れてしまったなど、それまでの前提が変わるような情報があれば、改めてヒアリングをしたり周囲の観察を行ったりして、仮説を立て直しましょう。

仮説の正誤を判断する

信頼性の高い情報を集めたと判断できたら、次は仮説の正誤の判断に移ります。ここまで集めてきた情報や置かれている状況、分析や解釈などを踏まえて、適切な判断を心掛けます。 具体的な例を交えると、聞き込みや周囲の状況から、迷子の子ども(対象者)の母親が近くにいると判断できた場合と、近くに母親がいないと判断した場合に取るべき行動は異なるため、仮説の正誤は大切です。

最適な選択や行動をとる

アセスメントの最後の手順は、情報収集や推測などから導き出した仮説を基に、最適な選択や行動をとることです。情報収集をできるだけ多くの側面から行い、さまざまな手段を考えたのちに取るべき行動を選択すれば、対象にとって最も適切な介入が実現しやすいです。 例えば、迷子の子ども(対象者)の母親が遠くにいると仮定した場合、迷子センターなど適切な場所にまで連れていくなどが挙げられます。

ビジネスシーンでのアセスメントの種類

ビジネスシーンでのアセスメントは、状況や目的に合わせてさまざまな種類があります。ここからは、ビジネスシーンで用いられやすいアセスメントを7つ紹介します。

人材アセスメント

人材アセスメントとは企業外の第三者機関によって、企業における採用や配属、昇進や昇給を決定するために従業員を客観的に評価するためのツールです。具体的には、採用や昇格・昇進の対象となる社員に、心理テストやシミュレーション、適性検査などを行って判断をします。さらに、 人材アセスメントを導入すれば、客観的な採用活動が可能になり、会社や組織などで求める人材と、実際に採用・配属する人材のズレが少なくなり、採用コストの削減や離職率の改善を期待できます。

組織アセスメント

組織アセスメントとは、会社全体や社内組織の特徴や現状を評価することです。主観ではなく、数値や事実に基づいた客観的な評価により把握し、風土改革や組織改革、業務設計や教育制度、人事制度などに反映させます。
組織アセスメントは主に組織の問題点を把握し、改善策を講じることによって業績を向上させることを目的に行われます。自社がどのような組織で、どのような人材が適しているかを分析して把握できると、人材アセスメントによって得られた客観的なデータを有効的に活用できるのも利点です。

ITアセスメント

ITアセスメントとは、企業などが運営している情報システムの現状の運用環境や、利用状況などを調査・診断することです。IT環境、運用、セキュリティなどを調査することで現状を可視化し、潜在的なリスクを把握できるようにします。ほかにも、システム開発やシステム運用などに際し、将来想定されるリスクに備えるために行われるリスクの特定・分析・評価などもあります。

リスクアセスメント

リスクアセスメントとは、職場における事故やトラブルなどの危険を事前に評価することで、適切な対策や予防を行えるようにするのが目的とされます。また、リスクの重篤度や発生頻度を分析することで優先順位を明確にすると水準が決まるので、より危険性や有害性の高い事象を事前に防ぐことができます。リスクアセスメントの実施は従業員の安全性という側面以外にも、労働災害が減少し、結果的に労働災害によるコストを削減できるため、収益や業績の改善にも繋がります。

テクノロジーアセスメント

テクノロジーアセスメントは、技術再点検制度、技術革新の再調整とも訳され、新しい科学技術を普及させる前に社会的影響や安全性、経済性や倫理性などを評価して、社会にとって望ましい科学技術の方向性を見出すことです。新しい科学技術の発展によって社会にもたらされる利益だけでなく、政策的な課題や発生する不利益など、さまざまな側面から総合的に評価することで、潜在的な問題を可視化して対策や予防に繋げます。企業や一部の人にとっての利益のために、その他大勢の人や社会全体の健全な生活が脅かされてはならないという考えが根底にあり、長期的な展望も含めて科学的根拠に基づいた研究や調査が必要とされます。
さらに、新たな科学技術によって何か問題や社会的な影響が起きて、損失が起こる可能性を減らせるのも利点です。

ライフサイクルアセスメント

ライフサイクルアセスメントとは、製品やサービスのライフサイクル全体、またはその特定段階における環境負荷を、定量的に評価する手法です。環境への悪影響が発生すると、公害による賠償で損失が出る、SDGsに反しているとして企業のイメージダウンに繋がるなどの不利益が発生してしまいます。 ライフサイクルアセスメントによって新製品だけでなく既存製品の製造過程を見直し、環境への負荷をより軽減させることで、それらの損失や不利益を予防するのが目的です。

環境アセスメント

環境アセスメントとは、開発事業が環境に与える影響を評価するもので、環境影響評価とも呼ばれます。環境アセスメントの手続きは5つの段階に分かれており、下記のような手順になっています。

手順1:配慮書の手続き
手順2:方法書の手続き
手順3:準備書の手続き
手順4:評価書の手続き
手順5:報告書の手続き

環境アセスメントは、対象事業が周辺の自然環境、地域生活環境などに与える影響について、一般の方々や地域の特性をよく知っている住民の方々、地方公共団体などの意見を取り入れながら行われます。これらの手続きは、高速道路や新幹線、原子力発電所などの建設の際に実施が義務付けられており、自然破壊や公害などの環境問題が起きないようにします。

※参考:環境省 環境影響評価情報支援ネットワーク

企業におけるアセスメントを活用するメリット

企業におけるアセスメントを活用するメリットは複数あるため、積極的に活用するのがおすすめです。下記でメリットを3つ取り上げ、それぞれの詳細を解説します。

採用におけるミスマッチの防止

企業がアセスメントを活用するメリットとして、採用におけるミスマッチの防止が挙げられます。アセスメントによって、採用候補となっている人のスキルや意向を把握、分析ができれば、自社に合う人材かどうかを判断しやすいためです。
面接では面接官による主観で合いそうな人材と感じても、業務を開始したら予想と合わず早々に退職されてしまうなどの事態を防げるほか、アセスメントにより採用段階の時点から、採用後にどの部署に配置するか、どのようなポジションで活躍してもらいたいかなども考慮可能で、業務開始までのプロセスをスムーズに進めやすいです。

人材の採用においてミスマッチが起きてしまうと、コストと時間の両方の側面で損失が大きいですが、アセスメントを活用すれば適正のある人材を見極めて採用し長期間活躍してもらったり、将来的にリーダーや管理職などを任せられる者を採用して利益を最大限大きくすることが狙えます。

最適な人材配置に繋がる

主観的な評価ではなく客観的な視点で従業員それぞれのスキルや潜在能力の把握、分析ができるため、各部署やプロジェクトの特性に合った人材を選定できるのが、企業におけるアセスメントを活用するメリットの1つです。

管理職などの個人が従業員を評価して選定しようとすると、どうしても主観や先入観が混じって適切な評価が出せない場合があります。結果として、部署やプロジェクトの業務内容や目的と、従業員のスキルや志向が合っていない状態になってしまい、業務の非効率や生産性の低下を招いたり、企業の経営にまで悪影響が出たりするなどの事態に陥りかねません。

対して、アセスメントを活用すれば、主観や先入観ではなく客観的に従業員のスキルや志向を測れるため、最適な部署やプロジェクトに配置できる可能性が上がります。

また、人員が不足している部署に新たに人を異動させたり、新規部署や新プロジェクトの立ち上げによって、各所から人員を集めたりする際にも、適正があり活躍が見込めそうな人材を選定するのに役立ちます。

適切な管理職候補者の選出

企業におけるアセスメントを活用するメリットとして挙げられるのが、適切な管理職候補者の選出です。
実務能力や判断力が高いとされる人材が、リーダーシップやマネジメント能力を持っているとは限りません。そのため、上記のような高い実力を持った人材をリーダーや管理職のポジションに据えても、本人や周囲の従業員の負担が大きくなってしまい、業務の効率や生産性も下がってしまう可能性があります。

しかし、アセスメントを活用すれば数値や事実に基づいて、人材の能力を客観的に評価することが可能なので、リーダーや管理職に向く人材を見極められます。

適切な人材を管理職に置ければ本人や周囲の従業員のモチベーション向上、さらには企業の業績向上にもつながることが期待できるため、アセスメントによる適切な管理職候補者の選出は重要です。

人材アセスメントの方法

人材アセスメントは、主にアセスメント研修・適性検査・360度評価という3つの方法で行われます。ここからは、それぞれの方法の詳細を解説します。

アセスメント研修

状況を実際に業務を行うのと同じように設定し、その状況の中で対象者をどのように動くかを見る方法がアセスメント研修です。

グループディスカッションやプレゼンテーションなど、さまざまな状況下で対象者がどのような行動を取るかを、特別な訓練を受けたアセッサーと呼ばれる人物が観察し、それぞれの判定項目を評価していきます。なお、判定項目は一律ではなく、企業が求める人物像によって内容が変わります。

アセスメント研修の特徴は、実際の業務と似た状況下で観察や評価を行うため、対象者の実践的なスキルや業務への姿勢を把握できることです。

似たような概念として人事研修がありますが、 人事研修が従業員それぞれの知識やスキルを高めて業務に貢献できるように教育するのに対して、アセスメント研修は第三者の視点から対象者の行動を見て、適正を見極めるという点で差異があります。

適性検査

適性検査はテスト形式の手法で、対象者の知的な能力や性格、興味や関心を確認するのに用いられます。

検査項目は2種類に分かれており、ノーマティブ方式と呼ばれる、問いに対して「はい」か「いいえ」で回答するものと、イプサティブ方式という選択肢の中から最適と思われる回答を選ぶものです。

テスト形式であることによって、対象者の能力や性格などを数値で測定できる点が適性検査の特徴であり、昇格や人材配置、早期退職の原因分析など、企業の活動におけるさまざまな場面で活用できます。

また、採用試験に用いることによって、企業が求めている要素にマッチしている人材かどうかを、客観的かつ正確性の高い状態で調べることが可能です。

適正検査による評価は、面接官による主観が入りにくい分、ミスマッチが起こりにくく、人材側は入社してから予想していた業務や働き方と違った、企業側は求めていた人物像と異なり、適切な配置や運用が難しいなどの事態を防げます。

360度評価

多面評価とも呼ばれ、対象者と普段から関わりが深い複数の人に、対象者の職務能力や人物像などを評価してもらう方法が360度評価です。評価する人は対象者の上司を筆頭に、同僚や部下、取引先の相手など、対象者に近しい人が設定されます。そのため、対象者にとって評価を受け止めやすいのが特徴です。

自己評価と多面評価の結果を照らし合わせ、それぞれの評価の違いを確認することで、自分では気付けなかった強みを確認できたり、逆に改善すべき課題を認識しやすくなります。

しかし、対象者と関わりが深い人が分析や評価を行う性質上、どうしても主観や好みが交じりやすく客観的な結果になりにくいのが欠点です。また、相手に悪く評価されるのを恐れて適切な関係を築きにくくなる、関係性の悪化を恐れて問題点を指摘できないなども懸念点として挙げられます。

企業におけるアセスメントを導入する際の注意点

企業におけるアセスメントを導入する際には、気をつけたり注意したりするべきことが複数あります。中でも、特に注意したいとされるのが以下の3つです。

能力ではなく適正を評価・分析する

企業におけるアセスメントを導入する際の注意点として、能力ではなく適正を評価・分析するというのを意識するべきなのが挙げられます。

なぜなら、自身の能力や実力を評価されるという風にアセスメントを捉えられてしまうと、対象者が必要以上に緊張する、評価を気にして本来の考えとは異なることを言ってしまうなど、その人本来の姿やスキルが見えなくなる可能性があるからです。

アセスメントは客観的に見た適正を評価したり分析できるのであり、能力や実力を測っている訳ではない ことをあらかじめ周知しておけば、対象者の緊張を和らげたり必要以上に評価を気にして、本来の姿やスキルが見えなくなる事態を避けられます。

また、能力ではなく適正を評価・分析するという考え方は、評価される側だけではなく評価する側も意識するべきであり、あくまで企業が求める適正に合わせて作られた評価項目に沿えるように取り組むのが大切です。

対象者へのフィードバックを怠らない

対象者へのフィードバックを怠らないようにするのも、企業におけるアセスメントを導入する際の注意点の1つです。

フィードバックはアセスメントの結果の伝達だけではなく、その結果を活かして対象者が自身の課題や改善点を発見するのにも繋がるので、可能であれば上司が対象者それぞれと個別に面談する時間を設けて、結果を共に見ながら今後の展望などを議論するのが理想です。

なお、アセスメントは客観的な評価であり適正の検査が目的のため、結果を良い悪いといった上司の主観が含まれたニュアンスで伝えるのではなく、あくまで調べたことで得られたデータであることを強調し、実力や能力を測るといった間違った捉え方を対象者にされないように注意しましょう。

さらに、アセスメントは通常の業務の合間を縫って行われることが多く、せっかく実施したのに伝え方が悪く、結果的に効果があまり発揮できなかったという事態を防ぐためにもフィードバックは大切です。

継続的な実施とノウハウの蓄積をする

企業におけるアセスメントを導入する際の注意点として挙げられるのが、継続的な実施とノウハウの蓄積です。
アセスメントによって得られるメリットや効果は、1度行うだけでは充分と言えない場合が多く、結果を振り返り改善点や課題を把握した上で複数回実施することが重要です。

また、実施する前にアセスメントの結果を予測すれば、得られた結果と照らし合わせて異なっていた点が分かるようになります。そうすれば、相違点をまとめて検証したり改善したりするなどして、企業の業績向上や従業員の成長に繋げやすくなります。

アセスメントは継続的な実施や測定によって、より精度や効果が高まっていきますが、アセスメントは改善や成長という目的のために取る手段であり、アセスメントの実施が目的にならないように注意が必要です。

まとめ

アセスメントの概要や進め方、ビジネスシーンで用いられるアセスメントの種類、企業におけるアセスメントを活用するメリットや、導入する際の注意点などについて解説してきました。 業務の効率や生産性を上げるためには、従業員のスキルや適性を適切に評価して、従業員ひとりひとりが力を発揮できるように環境や働き方を整えるのが大切です。

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