特定行政書士とは?行政書士との違い
- 更新日:2024/08/29
特定行政書士とは、官公署に提出する書類に係る許認可等に関する行政不服申し立ての手続きの代理業務を行えるようになる行政書士のことです。この記事では、特定行政書士の概要や不服申し立て手続きの代理業務、想定される事例、なるための方法などについて解説しています。
このページを簡潔にまとめると・・・
- 特定行政書士は、法行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する行政不服申し立ての手続きの代理業務を行える
- 特定行政書士になるには、まず行政書士となり、そのうえで研修を受講し、考査試験に合格する必要。
- 特定行政書士のメリットは「不服申し立てに関する知識が身につく」「業務領域を拡大でき、案件獲得が期待できる」「向上心の強い行政書士とのつながりが生まれる」
特定行政書士とは?
「特定行政書士」とは、法定の研修の課程を修了することにより、行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する行政不服申し立ての手続きの代理業務を行えるようになる行政書士のことです。概要や制度が創設された背景など、具体的に解説します。
特定行政書士の概要
平成27年12月27日に施行された改正行政書士法により、特定行政書士制度が創設されました。日本行政書士会連合会が定期的に実施する特定行政書士法定研修の課程を修了した行政書士のことを指します。特定行政書士になるには行政書士名簿に登録し、法定研修を受けた後に考査(試験)に合格しなければなりません。
特定行政書士制度が創立された背景
特定行政書士制度が創立されるまで、不服申し立ての手続きの代理は弁護士にしかできない独占業務でした。訴訟手続きに準ずると位置付けられる準司法手続きであるため、担当している行政書士から弁護士へと交代する必要がありました。
現場から行政書士に継続して担当してほしいという声が多く寄せられていたこともあり、法定の研修を受けて試験に合格した(研修を修了した)行政書士に限って、取り扱えることとなりました。
特定行政書士と行政書士の違い
特定行政書士は通常の行政書士としての業務に加え、行政庁の許認可等に関する「不服申し立て手続き」の代理業務ができます。もともと不服申し立て手続きの代理は弁護士の独占業務で、行政書士の業務領域ではありませんでした。特定行政書士の資格があれば、「許認可等の申請」から「不服の申し立て手続き」の代理業務までを一貫して行えます。
特定行政書士にできる不服申し立て手続きの代理業務とは
特定行政書士ができるのは、行政不服審査法に基づいた不服申し立て手続きの代理業務となっています。具体的には「審査請求」「再調査請求」「再審査請求」の3つです。どのようなものか解説します。
1.審査請求
行政庁の処分に不服があったり、処分についての申請をしたにもかかわらず、行政庁が何らの処分もしないことに不服を感じる者が、審査請求できます。期限は原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内です。当該処分を見直すよう、最上級行政庁か、上級行政庁がない場合には当該処分を行った行政庁に求めることができます。
2.再調査請求
法律で定められたケースに限って、審査請求の前に、上級行政庁ではなく処分を行った行政庁に対し、て直接再調査を請求できます。再調査の請求をせずに、直接審査請求することも可能です。
3.再審査請求
審査請求しても棄却と裁決された際には、原則として訴訟により処分の効力を争うしかありません。このケースでは訴訟手続きに移行するため、弁護士と交代することになります。ただし、法に特別の定めがある場合には、裁決があったことを知った日の翌日から起算して、1ヵ月以内に再審査請求できます。再審査請求については、特定行政書士が手続きすることが可能です。
日本行政書士会連合会が想定するおもな事例
日本行政書士会連合会では、どのようなケースが考えられるか想定しています。3つの事例について解説します。
難民不認定
申請者は本国において民主化運動指導者らと社会活動し、本邦においても反本国政府団体に加入し活動をしています。帰国すれば本国政府による迫害を受ける可能性があるとして、難民認定申請を行いました。 しかし、申請者の供述を前提にしてもデモ参加程度にとどまり、難民条約上の迫害のおそれがあるとは認められず不認定になりました。申請者は不服として、異議を申し立てることが考えられます。
建設業許可申請の不許可処分
建設業許可申請を行ったものの、経営業務の管理責任者としての経験年数が要件を満たしていないことや、経営業務の管理責任者の常勤性に疑義があることを理由に不許可になるケースです。経営業務管理責任者としての経験年数や常勤性について、判断を見直す余地がある場合に不服を申し立てることが考えられます。
産業廃棄物処理施設の設置許可申請の不許可
産業廃棄物処理施設の設置許可申請をしたものの、不許可処分になるケースです。申請先の自治体では、条例により周辺住民の同意書提出が許可要件となっており、その要件を満たしていないことが理由です。周辺住民の同意書提出が許可要件となっていることに疑義がある場合に、不服を申し立てることが考えられます。
特定行政書士になるための方法
特定行政書士になるには、まず行政書士であることが前提条件です。そのうえで研修を受講し、考査試験に合格しなければなりません。特定行政書士になるまでの、具体的な流れを解説しま
特定行政書士法定研修を受講する
1コマ1時間、全18時間の研修を受講します。受講料は、テキスト代を含めて8万円です。平日4日間、もしくは土曜日の4週間で受講します。具体的な内容は以下のとおりです。
- 行政法総論:1時間
- 行政手続制度概説:1時間
- 行政手続法の論点:2時間
- 行政不服審査制度概説:2時間
- 行政不服審査法の論点:2時間
- 行政事件訴訟法の論点:2時間
- 要件事実・事実認定論:4時間
- 特定行政書士の倫理:2時間
- 総まとめ:2時間
考査(試験)を受ける
全18時間の研修を修了すると、毎年10月に実施される考査(試験)が受けられます。考査は30問の択一式問題です。合格ラインは正答率6割程度といわれており、合格率は約7割というデータもあります。結果は12月に事務所宛てに届きます。
研修を修了できなかった場合
研修には再受講制度があり、初回受講年度を含む3年間は再受講が可能であり、4年目以降は新規受講となります。3年間は受講料の減免措置があり、2年目に研修を再受講・再受験する場合は4万円で、受験のみの場合は無料で受けられます。
2年目も研修を修了できなかった場合、2年目に4万円を支払っていれば、3年目の受講と受験は無料となります。2年目に4万円を支払わなかった場合は、3年目に4万円支払うことで、受験と受講が可能となります(いずれの場合も、再受講が義務)。
特定行政書士登録手続き
考査(試験)に合格した場合、結果通知書に同封された案内に従って指定された日までに特定行政書士登録手続きをしましょう。
「特定行政書士の付記に伴う行政書士証票記載事項変更手続書」と「3cm×2.5cmの写真1枚」を、各都道府県行政書士会(単位会)の担当に提出しなければなりません。新たな行政書士証票が完成すると単位会から連絡があり、所持する行政書士証票と引き換えで受け取れます。
特定行政書士に登録されたことの確認
インターネット上で、日本行政書士会連合会の会員名簿を閲覧できます。検索ページの「特定行政書士 修了者」という欄にチェックを入れると、特定行政書士の有資格者のみが表示されます。会員の詳細欄を開くと、特定行政書士に登録された年月日を見ることも可能です。
登録完了後に受け取れる行政書士証票にも特定行政書士である旨が記載されます。一般的な行政書士は銀色、特定行政書士は金色という違いがあります。
特定行政書士のメリット
特定行政書士の資格を取得するメリットは、おもに3つあります。1つ目は不服申し立てに関する知識が身につくことです。2つ目は業務領域を拡大でき、案件獲得が期待できることです。3つ目としては研修に参加するなかで向上心の強い行政書士とのつながりが生まれることが挙げられます。
まとめ
特定の研修を受けることにより、行政不服申し立てに係る手続きの代理を行える行政書士を特定行政書士といいます。具体的には「審査請求」「再調査請求」「再審査請求」の3つです。特定行政書士を取得することで知識が身につき、業務領域を拡大できます。研修への参加により、向上心の強い行政書士とのつながりが生まれることもメリットといえるでしょう。
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- この記事の監修者は海野 高弘(うみの たかひろ)
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東京都出身
東京都行政書士会文京支部理事
趣味は、資格試験短期合格法の研究、野球、釣り、旅(判例現場巡り&寅さんロケ地巡り)
2000年 行政書士試験受験、翌年合格
2004年 ユーキャン行政書士講座 講師
2012年 ユーキャン行政書士講座 主任講師
モットーは、「夢なき者に成功なし」「短期合格は第一歩がすべて」「法律は暗記ではなく思考力」
★ユーキャン行政書士講座 公式YouTubeチャンネル
ユーキャンで目指せる国家資格の中で人気の「行政書士」。市民と官公署とをつなぐ法務と実務のスペシャリストです。
資格取得後は、法律関連の業務全般について、書類作成業務や官公署への書類提出手続き代理業務、契約書等代理作成業務など、気軽に市民の目線で相談できる「頼れる法律家」に。扱える書類は数千種類もあり、業務範囲の広い国家資格です。独立・開業して社会に役立つことはもちろん、企業への就職・転職にも有利になります! また近年は、行政書士法改正で「代理権」が付与され職域が拡大したこと、行政書士法人の設立が可能となる改正法の施行など、時代の流れはまさに追い風となっています。
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