人事部の役割とは?仕事内容や求められる役割の変化、スキルを解説

  • 人事部の役割とは?仕事内容や求められる役割の変化、スキルを解説

    公開日:2024.10.08

    更新日:

    人事部の役割は企業の経営戦略や目標に基づき、その達成に必要な人材の採用、配置、育成などを行うとともに、組織開発や制度設計を行うことです。社員の評価制度や報酬制度の策定も人事部の業務範囲であり、組織を運営するうえで欠かせない部署です。この記事では人事部の仕事内容や総務部との違い、社会から求められる役割の変化、必要なスキルなどについて解説します。

人事部の役割と機能とは?

人事部の役割は、企業の目指す目標や戦略人事の達成に必要な人材を採用・育成すると同時に、人材が能力を発揮できるように組織構造や制度、環境を整備することです。 範囲は広く人材の採用から退職まで、組織の人材に関するすべてが人事の役割といえます。
人事部に求められる機能には、次の4点があります。

・人材の採用
・人材の育成
・組織開発
・組織のコンサルタント

人材の採用

人事部は、自社にマッチする優秀な人材の採用から従業員一人ひとりが高いモチベーションを持って働けるような人員配置を行います。企業の経営目標達成に必要な人材要件を考慮し、活躍できる人材を採用することが重要です。人材採用はどんな人材を採用するか、採用手法はどうするかによっても成否が決まるため、自社に合った戦略を立てる必要があります。

人材の育成

人材を採用したら、自社で活躍できるように適切な育成を行う必要があります。人材育成も、企業が成長していくうえで欠かせない人事機能の1つです。各部署にどのような人材が必要か、求められるスキルは何かなど、経営者と同じ視点で育成プランを立てなければなりません。優秀な人材を育成できれば、次の人材育成でも自身の経験を生かした教育や指導を行ってくれるでしょう。

組織開発

人事には、組織開発の機能も求められます。組織開発とは、組織の活性化を目指すことで、上司と社員、社員同士の関係性に着目した取り組みを指します。関係性を見直し、同じ目的のため協力することで組織内の改善ができます。

組織のコンサルタント

人事には一般の部署とは違い、経営者に近い視点で人事を管理する機能が必要です。その時点での組織に必要な人材採用、組織開発、人材育成などを行うコンサルタントが期待されます。経営者の意向を汲み取りながら、組織風土に合わせた人事管理が求められるでしょう。

人事部と総務部の役割の違い

人事部と総務部は、役割の近さから、企業によっては兼任していることもあります。 人事部は人事に関する業務全般が担当であり、採用、配属、評価のほか、従業員の勤怠管理や給与計算、社会保険などの福利厚生手続き、安全衛生や健康管理などの労務管理を行います。一方の総務部は組織の運営に関する業務が担当であり、組織全体をスムーズに動かすため、回覧書類の作成、社内イベントの企画運営、備品の購入と管理など幅広く行います。どちらも企業の根幹を支える点には変わりないものの、社員すべての働き方に関わる点で人事部の存在は大きいといえるでしょう。

人事部の主な仕事内容詳細

人事部での主な仕事内容について7点説明します。

人材採用

人材採用は新卒採用や中途採用など、新たな人材を雇用するためにさまざまな施策を打ち出し、ニーズに合った人材を雇用することです。一般的な人材採用の施策には、次のものがあります。

・ハローワークや求人サイトでの募集
・広告やチラシでの求人
・企業サイトでの応募フォーム設置
・インターネットやSNS等を活用した求人広告
・企業説明会への参加

こうした求人広告を打ち出すほか、上層部、部署ごとに相談しながら求める人材やスキルを定義し、採用できるように活動します。人材採用は企業を支える人材の確保のために欠かせない業務であり、人事部としての能力の見せどころです。

人材育成

採用した人材の育成計画策定と実施も、人事部の大切な業務です。企業にはさまざまな部署や社員の年代・階層があり、それぞれに求められるスキルも異なります。 それぞれの部署・社員に必要な研修や教育方法を検討し、実行・評価・改善を繰り返すことが大切です。 研修方法には集合研修、eラーニング、OJT・Off-JT、オンライン研修、ワークショップなどがあります。それぞれに長所・短所があるため、自社の方針や目的に合わせて選ぶ必要があります。

人事評価

組織で働く社員を評価するための人事評価制度の設計および運用も、人事部の重要な業務内容です。人事評価は社員一人ひとりの給与や昇進、人事配置などに関わる重要な制度です。日本ではこれまで年功序列・終身雇用制が一般的だったため、人事制度についてあまり意識していない企業もありました。しかし近年は社員の意欲をいかに引き出し、組織運営の効率化と生産性向上を進めるかが重要視されています。そのため人事部の設計・運用する人事評価制度にも、公平公正でわかりやすく、社員の働きが評価に反映されることが求められます。組織全体のモチベーションを高めるためには、人事部が人事評価制度を改善していかなければなりません。

人事制度設計と運用

人事評価と対になる制度として、人事制度設計と運用も人事部の仕事になります。評価結果を基準に、社員のそれぞれの能力や評価、業務態度、貢献度などに基づいて社員の配属などを決定します。人事制度設計においては、社員の等級と給与なども人事部が設計し、役職や勤続年数に見合った待遇を決定すべきです。適切な人事制度は社員のモチベーションアップにつながり、組織の生産性が上がります。

人事配置

企業の戦略人事に基づいて、社員の適性や経験、スキル、現場で求められる人物像などを総合的に勘案し、適切な人事配置を行うことが人事部の重要な業務です。社員が能力を最大限発揮できる環境を用意することで、組織の生産性向上になるだけでなく、社員のモチベーションアップも期待できます。逆に社員の適性に合わない部署に配属した場合、成果を出せないばかりか、離職率上昇につながるリスクもあります。

組織開発


変化を続けるビジネスの世界では、常に組織の最適化を行う組織開発も重要です。人事部は人材全般を管理する立場にあるため、先頭に立って組織開発を進める必要があります。組織内で足りない部分や必要な人材、どんな人材を育成するのかなどを上層部と相談し、適切な制度設計や育成を進めなければなりません。また組織開発では社員の協力も不可欠ですから、社員のやる気を引き出す施策も併せて考えるべきです。

労務管理


労務管理とは労働時間や給与計算、有給日数の管理などの労務に関する全般です。人事部は社員全員の労務管理を行い、適切な給与が支払われているか、残業時間は順守されているかなどを確認しなければなりません。法律に抵触する内容があれば、企業イメージの低下にもつながるため、人事部の果たす役割は非常に重要です。

人事部における役割の変化

日本では年功序列・終身雇用制度が一般的でした。しかし 近年、労働人口の減少や働き方改革の推進により、成果主義や能力主義が普及し、人事部に求められる役割も変化しつつあります。 人事部が働き方改革などの社会変化に伴い、どのような役割を求められているかみていきましょう。

"戦略人事"の役割

戦略人事は経営戦略に基づいて、人的資源である「ヒト」を活用し、企業の経営・人事戦略と連動した施策を打ち出すことです。戦略人事では社員一人ひとりが最大限の能力を発揮できるように、人事異動や人材採用、教育システムの設計・導入などを行います。従来の人事では社員の適性に関係なく、経験年数や評価に応じて人事異動や採用が行われてきました。教育についても画一的な内容が多く、部署や階層に応じたカリキュラムは行われませんでした。戦略人事においては、人事部は経営者のビジネスパートナーであり、組織をオペレーションする中心的な役割を持ちます。将来の予測が困難な時代とされる「VUCA時代」を乗り越えるには、ヒトという人的資源をどれだけ効果的に活用するかが重要です。そのため、戦略人事の観点から人事部の求められる役割は非常に重要であり、経営を支える根幹といえます。

"働き方改革"を推進する役割

日本では働き方改革の推進が注目されており、残業時間の削減、ワークライフバランスの改善、自由な働き方などに国全体で取り組んでいます。これまで日本では、残業時間の長さやブラック企業の存在により、従業員の過労や精神的負担の増加が社会問題となっていました。しかし、コロナ禍を通してリモートワークやワークライフバランスが意識されるようになり、社会全体で働き方改革への取り組みが進んでいます。労働時間の順守やフレックス制導入のほか、社員が働きやすい環境を作ることが求められるようになりました。人事部はこのような新しい働き方に対応した施策を導入し、組織内の働き方改革を推進していくべき役割があります。経営者とも相談しながら、時代に合わない制度やシステムは改め、社員一人ひとりの意思、能力、個々の事情に応じ、多様で柔軟な働き方を選択可能な組織と制度を作ることが重要です。働き方改革は、積極的に推進することにより、労働力の確保と生産性の向上と企業にとっても良い結果をもたらします。

採用活動の変化

コロナ禍での企業の変化として、採用活動にも従来との違いがみられています。従来の採用活動は1つの会場でまとめて面接や説明会を行い、その中から自社に必要な人材を選定するのが一般的でした。しかし現在はオンライン面接やリファレンスチェック、逆求人などさまざまな取り組みが行われています。感染対策を考慮したオンライン面接、面接や書類審査以外も評価に加えるリファレンスチェックなど、人事部は時代の変化に合わせた対応が求められています。また近年は企業から人材に声をかける逆求人も広まりつつあります。採用方法の変化により、人事部に求められる役割も年々変化していることを念頭に置き、自社に最適な採用活動を行っていくことが重要です。

人事部の役割をこなすために必要なスキル

人事部としての役割をこなすために必要な、6つのスキルについて紹介します。

コミュニケーションスキル

人事部は取引先や就職希望者などさまざまな人と話す機会の多い部署です。時には経営者と社員の間を取り持ち、意見交換や集会の日程調整なども行わなければなりません。 立場上多くの人と接する機会があることから、人事はコミュニケーションスキルが欠かせない仕事です。 また新卒採用・中途採用では面接官を担当することもあり、コミュニケーションスキルを活かして、自社に必要な人材を見抜くスキルも求められます。人事部は就職希望者にとって会社の顔であり、人事担当者の印象が会社のイメージにつながりやすいため、気軽に話せる雰囲気を持つことが大切です。話す力と聞く力、質問する力を磨くことで、人事部にとって必要不可欠な人材となるでしょう。

倫理観

人事部は社内・社外の個人情報を多く扱うことから、極めて厳密な倫理観が求められます。企業の情報や個人情報が人事部から流出すれば、企業のイメージを大きく損なうでしょう。そのため、人事部には高いコンプライアンス意識と、法令順守の意識が欠かせません。また、人事部は人材採用や人材育成でも責任を持つ立場です。人材を採用する際に相手の人間性を見極め、会社に貢献できる人かどうかを判断するには、自分自身の倫理観が大切になります。人材育成でも社員教育を行う立場上、社員の見本となることが重要です。社会通念上正しい倫理観を身につけることで、誰からも信頼される人事部および社員になるはずです。

文章作成スキル

人事部には社内資料や求人票、外部向けの文書などの資料作成の機会が多いため、文章作成スキルも欠かせません。特に求人においては、人事担当者に自社の魅力を伝えるために表現力や文章作成スキルが求められます。求人内容は、応募する際の重要な決め手となるため、自社の魅力をわかりやすく簡潔に伝えられる文章作成が必要です。 また社内向けの資料では全社員に対し、的確に情報を伝えることが求められます。そのため、要点をまとめつつ伝わりやすい文章を作成するスキルが必要になるでしょう。

法律知識


人事部には労働条件や社会保障など、法律知識への理解も求められます。例えば労働基準法・労働組合法・労働関係調整法などの労働三法は基本として、労働契約法や雇用保険法などの知識も契約書作成では必須レベルです。また法律は定期的に改正も行われるため、常に法改正に関する情報を収集し、法律への理解を深めることも大切です。

情報収集・処理能力

人事部は社内外の情報にアンテナを張り、新しい情報の収集と処理能力も求められます。 特に新法や法改正の情報は、遅れれば会社に大きな損害を出す可能性もあります。自社に必要な情報を主体的に収集し、情報を独自に分析・処理すれば、自社の改善に役立ちます。また社内の情報や会社の方針などもいち早く必要な部署・社員に提供するといったことも人事部の役割となります。社内の情報を集めることで適切な人員配置ができます。

戦略的思考


人事部は経営戦略に基づいて組織内の人事を管理するため、戦略的思考も必要なスキルです。経営者と近い視点で組織を俯瞰し、社会情勢も判断材料として適切な人事を考える役割があります。人事部は人事制度や人事評価なども管理することから、組織開発・組織活性化の戦略も打ち出しやすい立場にあります。自社の課題を的確に分析し、企業の目標達成に向けて戦略的に人材採用・育成を行う能力が求められるでしょう。

人事部の育成はユーキャンへ

企業の人事研修はユーキャンへご相談ください。経営戦略を深く理解し、戦略的な人材採用・育成・組織開発ができる社員を育成します。人事部は企業を支える根幹であり、企業が成長していくうえでの柱です。社会情勢が激しく変化する中で、強い組織を作るには人事部の育成が欠かせません。企業における人事部の重要性を再認識し、社員の成長を後押ししましょう。

まとめ


今回は人事部の役割について、仕事の内容や今後求められる役割の変化、必要なスキルをまとめました。 人事部は、企業の目標達成の実現、業績を左右する人材の管理を担う重要な役割を持ち、必要な人材、優秀な人材の採用は、人事部の手腕にかかっているといえます。だからこそ経営陣は人事部の重要性を正しく理解し、人的資源を有効活用する方法を一緒に模索していくことが重要です。法改正についても最新情報を入手し、人材育成・組織開発を成功させましょう。

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