次世代リーダーとは?必要なスキルや育成方法、研修のポイントを解説

  • 次世代リーダーとは?必要なスキルや育成方法、研修のポイントを解説

    公開日:2024.08.26

    更新日:2024.08.26

    次世代リーダーとは将来的に経営の一端を担い、企業を支えるリーダーとなる人材やその候補者を指します。次世代リーダーを育成するには、会社が体制や評価制度を構築し、各部署でバックアップしなければ成功は難しいでしょう。この記事では次世代リーダーとは何か、なぜ重要とされているのか、求められる資質・スキルなどを解説します。

次世代リーダーとは何か

次世代リーダーとは将来的に企業を支え、経営を担う人材や候補者のことを指します。マネージャーや課長、部長などのマネジメント経験を持つ人材の中から選抜するのが一般的です。

次世代リーダー育成とは何か

次世代リーダー育成は将来的に経営を担う人材を早期に選抜し、中長期的かつ段階的に育成・支援する取り組みのことです。人材育成研修や実力に見合ったポジションを与えることで、将来的に経営幹部として手腕を発揮できるように育成することが重要です。ただし、次世代リーダー育成では焦りは禁物です。一般的に人材育成には多くの時間を要します。次世代リーダー育成においても同じで、数年単位で取り組んでいく必要があります。またリーダー育成にもステップがあり、階層別に実施することがポイントです。
例えば一般社員の時代からいきなり部長クラスの教育を行うのではなく、リーダーや係長クラスの教育を施します。そこから徐々にステップアップして、課長や部長、役員クラスに必要な教育を行うのが基本です。階層別のリーダー育成を進めることで、各階層で求められる役割や考え方、責任などを自覚できます。
※関連リンク:人材育成とは?【基礎知識】考え方や課題、実践方法、成功ポイントを徹底解説

次世代リーダー育成が重要視されている背景

なぜ、多くの企業で次世代リーダー育成が重要視されるようになったのでしょうか。
その背景には次の3つがあるとされています。

・グローバル化による競争の激化
・多様な価値観・ダイバーシティの推進
・キャリアアップや働き方改革による人材の流動性の高まり

多くの企業は国内での競争に留まらず、世界の企業との勝負を求められる時代になりました。オンラインやIT技術などが確立されたことで、今後はさらなる競争激化が予想されます。競争が激しくなれば市場の変化も激しくなり、古い経営戦略やマネジメント手法では競合他社に置いて行かれることになるでしょう。またグローバル化により、ダイバーシティ(多様性)が進み、さまざまな価値観を持つ人材が所属するようになりました。 従来のように単一の価値観ではなく、さまざまな価値観や人種と共存することで、企業も生き残りをかけなければなりません。さらに外資系企業が日本にも多く進出したことで、日本人の間にも転職によるキャリアアップの意識が高まってきました。国を挙げて働き方改革が推進されていることもあり、人材の流動性の高まりが顕著になっています。 社員のワークライフバランスや人生における幸福も重視され、企業には変化にも柔軟に対応できるリーダーが求められるようになりました。こうした社会の変化が、次世代リーダー育成の重要性を高めたと考えられます。

次世代リーダーに必要なスキル・資質

次世代リーダーを選抜するには、リーダーとしての必要な知識・経験・スキルが欠かせません。変化の激しい時代を生き抜くために、次世代リーダーに求められる資質・スキルを紹介します。

ビジョンを創造する力

次世代リーダーを育成するうえで、欠かせない資質の1つがビジョンを創造する力です。「コンセプチュアルスキル」と呼ばれるリーダーに必要な包括的なスキルの1つで、経営ビジョンを理解し、組織に経営ビジョンを浸透させる力ともいえます。社員に信頼され、ともに働きたいと思えるリーダーには、会社を率いていく明確な経営ビジョンが必要です。近年は予測困難な時代といわれており、どの経営者も予測できない未来に備えて会社を経営しています。組織全体にリーダーの創造したビジョンを浸透させることは、社員が1つの価値観の下で連携する意識につながるでしょう。また時代が変化しても組織として一貫した行動を追求するには、会社が独自に魅力的なビジョンを持つ必要があります。次世代リーダーには、全社員が会社で働く意義を強く感じられるように、人を惹きつける魅力的なビジョンを打ち出す資質が求められます。

決断力と実行力


リーダーは組織を率いる役割があり、常に多くの決断に迫られます。会社の運命を左右する大きな選択をすべきときが来て、決断を求められることもあるでしょう。時代の変化にも柔軟に対応し、的確な判断を下すには、リーダーとしての決断力と成功へと導く実行力が必要です。自分自身の経験や知識、価値観、周囲の人の意見などから情報を分析し、リーダーとしての軸を持って決断しなければなりません。
現代は変化が激しく、経営者として正しい判断を下すのは容易ではありません。そのような状況にあっても、長期的な経営戦略を立案し、時期を見て実行していく力は次世代リーダーに欠かせない資質といえます。

管理能力

次世代リーダーに求められる管理能力とは、自己管理能力に限らず、人材や組織などのあらゆる資源を把握・管理する力です。例えば、人材育成では新人からベテランまで、各年代・階層が自律した人材になるためのサポートやマネジメントを行うことが求められます。また離職率や生産性の低下が経営課題になっている場合、社員のモチベーションアップやエンゲージメントの向上に力を入れる必要があるでしょう。
次世代リーダーは自分自身を管理するだけでなく、組織全体の利益を考えた管理能力を身につけなければなりません。 組織と社員のつながりを理解し、組織の抱える課題の本質を見抜く力を養うことで、ーダーにふさわしい管理能力が培われます。
社員一人ひとりが前向きに働ける組織を作るためにも、次世代リーダーには高い管理能力が必要です。

柔軟な対応力

現代は未来の予測が難しいVUCA時代に突入しており、組織が成功するのに従来のやり方や考え方は通用しないことが多いです。 会社が厳しい社会情勢を生き抜くには、組織としての柔軟性はもちろん、各部署や個々の社員に至るまで柔軟性が必要です。 例えば人事戦略の柔軟性を高め、活躍の可能性がある人材を見抜いた配属を行ったり、研修を通して部署・社員の自律を促したりする方法があります。また時代の変化に合わせて経営方針を柔軟に変更し、制度や仕組みを変えていく対応力も欠かせません。AIやIT技術の進歩によって、ビジネスの世界でそれまで当たり前だったことが通用しなくなるケースも多くなっています。常に新しい学びを得て、組織の運営に活かしていく柔軟性こそ、これからの次世代リーダーに求められる資質といえるでしょう

学習を続ける継続力

次世代リーダーは育成して終わりではなく、リーダーになってからも多くのことを学び、組織運営に活かしていく必要があります。学習を続ける力を持ったリーダーは、常に進化を続け、広い視野と高い情報収集能力を持ちます。新しい知識や価値観をアップデートすることで、意思決定が迅速になり、対応の柔軟性も高められるでしょう。次世代リーダーには古い習慣や既存の知識、技術だけにこだわるのではなく、時代に適した方法へと変えていく力が求められます。 リーダーが先頭に立って学び続ける姿勢を見せることで、他の社員の学ぶ意欲も向上する効果が期待できます。

次世代リーダー育成が難しい

次世代リーダーにはさまざまなスキル・資質が求められるため多くの時間を要します。なぜそれほど難易度が高く、時間もかかるのか、3つの理由を解説します

最終的な資質は本人の精神性に委ねられる

次世代リーダーを育成するには、まず育成対象者が前向きに取り組み、新たな学びやキャリアアップに積極性を持つ必要があります。しかし若手・中堅社員の中には責任のある仕事を避け、リーダーになることに消極的な人も少なくありません。若手・中堅社員がリーダーになりたくない理由には、次のようなものがあります。

・責任を負いたくない
・プライベートの時間を大事にしたい
・目立つことはしたくない
・キャリアアップに関心がない
・キャリアと給与が見合わない

こうした理由から、次世代リーダー育成を推進しても、最終的には本人の精神性に委ねられてしまうのが現実です。そのため、会社は社員が前向きにキャリアアップできるようにメリットを伝え、ネガティブなイメージを抱かせないことが重要になります。会社の制度や構造自体も良い方向へ改革し、リーダーになることに対して多くのメリットを提供しましょう。

手放したくないがために埋もれてしまうことがある

次世代リーダー育成の対象者は、各現場で活躍している社員や管理職として必要な人材が中心です。そのためリーダー育成を進めようとしても、現場は重要な人材を手放したくないと考えるでしょう。すると次世代リーダーになるべき優秀な人材が現場に埋もれてしまい、リーダーが育たないという問題が生まれます。次世代リーダー育成では同じ現場で働かせるのではなく、異なる部署への異動や出張、転勤などを経験させることもあります。優秀な人材が現場から抜けてしまえば、当該部署の生産性は低下し、他の社員の負担も大きくなります。次世代リーダーを育てるために現場にしわ寄せがいけば、他の社員の離職につながるリスクが高いです。 会社として次世代リーダーを育成するのであれば、対象者がいなくなった場合の補償も考えなければなりません。 一方的に負担を強いるのではなく、現場に負担をかける分、それに見合うメリットもあると理解してもらう必要があります。

経営の難易度や働き方が変化している

社会は、予測が困難なVUCA時代にあるとされています。IT技術の進歩にAIの急速な発達、DXの推進によって、企業の構造も大きな変化が訪れています。このような大きな時代の変化に対応するには、未来を予測するだけでなく、変化に柔軟に対応するリーダーが必要です。しかし業界構造自体が変化していく中で、経営の難易度もこれまでより飛躍的に上がっています。社員の働き方もオフィス中心からテレワークとの混合型に移行し、仕事への価値観も時代とともに変化しています。社会全体が変化していることで、次世代リーダーに求められる資質は複雑化し、育成自体も容易ではありません。またせっかく次世代リーダーを育成しても、知識やノウハウを持ったまま転職したり、起業されたりするおそれもあります。人材の流動性が高まっているからこそ、次世代リーダーの育成も難易度が上がっているのです。

次世代リーダーを育成する方法・手順

組織内で次世代リーダーを育成するには、次の手順で進める必要があります。

1.社内の人材を細かく把握する
2.次世代リーダーに求める人物像・資質・スキルを明確にする
3.具体的な育成プラン・カリキュラムを決定する
4.育成対象者・候補者を選抜する
5.育成計画を実施する
6.結果の分析・フィードバックを行う

上記の手順で行うことにより、社員一人ひとりの特性を把握しつつ、自社に必要な次世代リーダー像も見えてきます。育成プラン・カリキュラムは次世代リーダーを育成する目的や求める人物像、スキルによっても異なります。

・集合研修(Off-JT)
・実務を通して行う研修(OJT)
・グループワーク
・外部研修

上記の研修方法を採用するのが一般的です。
また育成計画の決定・実施をして終わりではなく、成果の検証と対象者へのフィードバックも重要です。研修を行う際は、自社の経営戦略との整合性も意識したうえで、将来的に必要となるスキル、リーダーに必須の知識などを学んでもらいましょう。

次世代リーダー育成研修を実施する際のポイント

次世代リーダー育成を実施する際は、どんなリーダーになってほしいかを明確にしたうえで、次のポイントを押さえましょう。

・次世代リーダー育成研修の目的を明確にする
・リーダーに必要な役割・スキルを明確にする
・組織全体でリーダー育成の支援体制を整備する
・幅広いスキルを習得する
・複数の現場で経験を積む
次世代リーダー育成研修を実施するには、まず研修でどんなリーダーを育成したいのか目的を明確にすることがポイントです。

育成方針が明確になっていないと、汎用的なリーダー研修になってしまい、次世代リーダー育成としての効果が薄くなります。リーダーにどんな役割・スキルを求めるかも重要です。組織を率いていくためのリーダーシップ、時代に適応する柔軟性、組織の人事・労務を管理するマネジメント能力など、求めるスキルや役割を明確にしましょう。そして組織内でリーダー育成を支援する体制を構築し、さまざまな経験を積めるように準備することも重要です。優秀なリーダーを育成するには、組織全体で連携する仕組みを作り、広い視野と経験を持つ人材を選ぶことが大切です。

次世代リーダー育成の成功事例

次世代リーダー育成の成功例として広く知られているのが、清涼飲料水やビールの製造メーカーであるA社です。A社では、次世代リーダー育成研修として、次の人材育成プログラムを行っています。

・大学
・リーダーシップ・コンピテンシー
・タレントレビューメカニズム

A社大学はグローバルに活躍できる人材を育成する目的で、2015年に開始した制度です。アメリカの大学と協力してプログラムを開発し、さまざまなケーススタディができるようになっています。またリーダーシップ・コンピテンシーでは「サントリーらしさ」をコンセプトに、自社の風土・カルチャーを最大限発揮できる人材育成を進めています。タレントレビューメカニズムは、次世代リーダーの発掘を目的とした取り組みです。 グループ内で人材情報を共有し、次世代リーダーにふさわしい人材の選抜と育成計画の策定、人事などを話し合っています。サントリーは「やってみなはれ」と「利益三分主義」という創業時の精神を大事にしており、その精神が次世代リーダー育成でも受け継がれています。

人材育成のことならユーキャンへ

変化の激しいVUCA時代を迎えた現代では、各社の属する業界や会社の特性を深く理解し、的確な施策を打ち出せるリーダーが求められています。「せっかく育てた人材が離職してしまう」「後継者育成が進まない」「優秀な人材に長く働いてもらいたい」このようなお悩みのある企業・人事担当者は、ぜひユーキャンの人材育成サービスをご活用ください。課題に応じて最適な提案をいたします。優秀な次世代リーダーを育成し、企業の成長と発展を実現しましょう。

まとめ

今回は次世代リーダーについて、育成が重要視されている背景やリーダーに求められる資質・スキル、育成研修のポイントなどを解説しました。現代は技術の進歩やグローバル化により、これまでの当たり前や常識が崩れつつあります。企業が10年・20年先も安定した経営を続けるためには、次世代リーダーが必要です。各企業によって求めるリーダー像・役割は異なりますから、経営幹部や人事担当者が協議し、リーダーにふさわしい人材を選抜しましょう。 優秀な次世代リーダーの育成には長期的な取り組みが必要になるため、1日も早く動き出すことが重要です。

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