働きがいとは?企業側のメリット、構成要素、高める方法を紹介

  • 働きがいとは?企業側のメリット、構成要素、高める方法を紹介

    公開日:2024.05.31

    更新日:2024.05.31

    働きがいのある職場には、モチベーションが高く意欲的に仕事に取り組む社員が多くいます。この記事では、働きがいのある環境が企業に与えるメリットや要素、従業員のモチベーションを引き出す方法について詳しく解説します。

働きがいとは何か?

働きがいとは、仕事をすることで得られる充実度や満足度などの、働くことに対してのやりがいです。国際経済労働研究所では「働きがい」をワーク・モチベーション(仕事に対する動機づけ)と定義しています。従業員は仕事に対し楽しさや興味を見つけ、それがモチベーションを向上させ働きがいにつながると考えているのです。従業員にとっての「働きがい」は目標や働く意味によってそれぞれ異なるため、画一的に定義するものではありません。 働きがいのある職場は従業員が自発的に仕事に取り組むため、業績の向上にもつながります。
参考:公益社団法人 国際経済労働研究所

働きがいのある会社の定義

「働きがいのある会社」について、30年以上にわたる調査・研究を重ねているGreat Place To Work®(GPTW)では、経営者と従業員の間に信頼関係があり、一人ひとりの能力が最大限に引き出される会社と定義しています。つまり組織がもつ優れた理念や価値観が全社員に共有され、リーダーシップが最大限に発揮されることで、売上や利益の成長につながっている会社といえます。「働きがい」という言葉は、「働きやすさ」と「やりがい」にわけられます。ここでいう「働きやすさ」とは、たとえば職場の対人関係や給与面などといった、従業員が快適に働き続けられるような労働条件のことです。これは実際に目に見える分かりやすい部分であるため、整っていないと従業員の不満につながります。また「やりがい」とは、仕事へのモチベーションのことです。達成感や昇進、上司に褒められるなど、あればあるほどやる気につながる満足感のことです。しかし、どんなことでやりがいを感じるかについては、個人の価値観によって異なるため、従業員全員にやりがいを感じさせることは難しいといえます。
参考:全員型「働きがいのある会社」モデル

「働きやすさ」と「やりがい」の違いとは

「働きがい」のある会社を目指すためには、「働きやすさ」と「やりがい」の2つの要素を兼ね備える必要があります。似ているようで全く意味の異なるこの2つの言葉について、さらに詳しくみていきましょう。

「働きやすさ」とは

従業員にとっての「働きやすさ」とは、福利厚生や給与・職場内の人間関係や施設環境などの労働環境が、自分の求める条件にあっていることです。たとえば残業が少なく休みも取りやすい、異動などは従業員の意思を尊重し、働く場所は自宅から通える範囲で、職場内の風通しもよい、そんな環境は働きやすいといえるでしょう。逆に残業が多く、まとまった休日は取れず、急な転勤を余儀なくされるような従業員のプライベートを尊重しない職場は、従業員の不満につながり離職率がアップしてしまいます。近年、国を挙げて推進されている「働き方改革」は、「働きやすさ」を改善していくことに着目しています。

「やりがい」とは

「やりがい」とは、仕事に対する満足感です。たとえばひとつのプロジェクトが成功した、努力が認められ昇進できたといった経験で得られる達成感や、生まれる責任のことを意味します。「やりがい」を感じている従業員は、業務に前向きに取り組むため、上司から評価され昇進する可能性も高いでしょう。それがさらにモチベーションへとつながり、従業員は「やりがい」を感じます。しかし どんなに「やりがい」があったとしても、働きやすい環境でなければ従業員は疲労などの要因からモチベーションを保つことができず、意欲が低下してしまう可能性があります。「働きがい」とは、「働きやすさ」「やりがい」のどちから一方が不足しても成立しないのです。
参考:「働きがい」とは?

働きがいを高める会社側のメリット

厚生労働省が発表したデータによると、従業員の働きがいを高めることで以下のようなメリットがあることが明らかになりました。

・離職率の低下の可能性
・業績向上の可能性
・従業員の能力の向上による可能性
・会社の新しいビジネスチャンスの可能性

離職率の低下の可能性

厚生労働省発表の「令和5年 労働経済の分析」によると、高い求人賃金や完全週休2日制、ボーナスあり、時間外労働なしなどの条件が加わると、求人紹介確率が上昇することが明らかになっています。また賃金の値上げは、従業員のやる気向上や離職率の低下に効果があり、増加率が高いほど仕事への満足度の向上やいきいきと働ける効果があるという結果も出ています。このように働きがいのある会社で働く従業員は、仕事をすることで満足感を感じているため、会社のためにがんばりたいという気持ちが強く、それが離職率の低下へとつながるのです。

参考:厚生労働省 令和5年 労働経済の分析

業績向上の可能性

仕事に対して働きがいを感じている従業員が多い企業は、一人ひとりが意欲的に仕事に取り組むため、必然的に目標達成がしやすく業績が向上していきます。なぜなら毎日の仕事に対して誇りと自信をもち、前向きに仕事に取り組むからです。この姿勢は、ほかの従業員にも刺激を与えます。それが仕事に対する集中力や意欲の向上につながり、職場内にもいい影響を与えることでしょう。また、モチベーションが高い従業員が多い職場ではコミュニケーションが円滑に行われるため、いざという時には助け合える人間関係が良好な職場となります。

従業員の能力の向上による可能性

働きがいのある会社は、従業員の職場経験のギャップを埋める努力をすることを推奨しています。従業員の働きを会社はしっかり見守って正当に評価するため、それが従業員のモチベーションへとつながり、次の目標を目指してさらなる努力を重ねることでしょう。この繰り返しが、売り上げの増加、株価の上昇、従業員の定着といった経営の向上につながっていくのです。

会社の新しいビジネスチャンスの可能性

働きがいのある職場は風通しがよく、従業員の「挑戦してみたい」という意見が通りやすいため、新しいビジネスチャンスが生まれやすい傾向にあります。また従業員は意欲的に業務に取り組むため、失敗や挫折におびえることなく、従業員が一丸となり、協力しながら未知のことにも挑戦していきます。このように試行錯誤を重ねていくことがプロジェクトを成功へと導き、革新的なビジネスが生まれていくことになるのです。

働きがいを構成する要素

従業員が働きがいを感じながら仕事をすすめていくためには、5つの要素が必要だとGPTW(働きがいのある会社研究所)は定義しています。

・信用
・尊重
・公正
・誇り
・連帯感

信用

これは従業員と経営者との「信頼感」のことです。たとえば日ごろからコミュニケーションがとれているか、従業員のことをしっかりと見て正当な評価をしているか、といった点です。また従業員から見た経営者の能力や誠実さなども、信頼関係を築いていくうえで大切な要素となります。

尊重

従業員が経営者から「どれくらい尊重されているか」と感じているかも、大切な要素のひとつです。たとえば研修制度の充実や資格取得のサポート制度、プライベートの時間を尊重してくれるかといった個人の価値観を、いかに尊重できるかが重要になります。

公正

「従業員の仕事量に見合った給料を与えているか」「昇進の機会は公平に行われているか」といったことも大切な要素です。特に給与面は仕事をしていくうえでモチベーションにつながる部分のため、ここを疎かにすると従業員の意欲の低下につながりやすくなります。

誇り

どれだけ会社の経営理念に共感して、提供するサービスや商品に対して自信をもっているかも大切な要素です。会社のことが本当に好きで、取り扱う商材に対して誇りをもっている従業員は、自分の仕事に責任をもちながら意欲的に仕事に取り組み、働きがいを感じています。

連帯感

会社全体の連帯感も大切です。所属部署だけではなく、ほかの部署などとも円滑なコミュニケーションがとれる環境であるかも重要な要素となります。会社全体の連帯感が強いと、目標を達成するための方向性が統一されるため、会社全体の目標達成や業績拡大へとつながっていきます。

働きがいを高める方法5選

働きがいを感じる理由は個人の価値観によって異なるため、誰もが簡単に高められるわけではありません。ここからは、従業員の働きがいを高めるための方法について詳しく説明していきます。

・円滑なコミュニケーション
・経営理念の浸透
・平等な人事評価
・福利厚生が整った労働環境
・従業員に目標やチャンスを与える

円滑なコミュニケーション

・上司との面談の実施
定期的に、上司と部下が1対1で面談する機会を設けましょう。面談を実施することで、従業員の業務の進捗状況や必要としているサポートといった業務に関する話から、今後の目標や会社に対する意見といった、普段はなかなか話せないことも聞き出せ、信頼関係の構築につながります。

・メンター制度を導入する
経歴が長く豊富な知識をもつ先輩社員が、若手社員に対して行う個別支援のことです。
具体的には、仕事に対するアドバイスや現在地の確認といった業務に対する悩みを聞く以外にも、職場内で困っていることやキャリアに対しての不安などにもアドバイスします。
そうすることで後輩社員にとって相談できる存在ができ、離職率の低下にもつながります。

・傾聴を心がける
従業員の意見に耳を傾け、お互いの理解を深めることも大切です。相手がどんな性格でどんなよさがあるかを理解できれば、会社に居場所を感じ働きがいが高まっていきます。またお互いの性格を深く理解するためにMBTIなどの性格診断を活用することで、お互いの思考や行動に納得できます。

・フリーアドレス制度の導入
フリーアドレス制度とは、従業員の座席を指定せず好きな席で働ける制度です。毎回違う席に座ることになるため、さまざまな従業員と会話をするきっかけになります。

経営理念の浸透

就職活動の際、仕事を選ぶ理由のひとつに「経営理念に共感したから」があげられます。

共感した理念を叶えるために仕事をすること、それがやりがいへとつながっていくのです。また、同じ理念に共感した従業員同士には一体感が生まれます。しかし、経営理念を覚えているだけでは意味がありません。従業員が日々の仕事の中で実践していく必要があるため、常に同じ理念をもとに仕事に取り組めるよう、経営者がメンバーに伝えていかなくてはなりません。

平等な人事評価

公平な方法で、従業員が納得のいく評価をすることが大切です。そうすることで従業員の今後の目標が明確になり、モチベーションの向上へとつながっていきます。評価者の主観だけで評価すると、従業員のモチベーションは一気に下がり、働きがいは確実に感じられなくなるでしょう。このような行動は、従業員の離職率を上げるきっかけにもつながります。評価する際は、客観的でかつ納得のいく公正な評価をする必要があります。

福利厚生が整った労働環境

仕事を選ぶ上で、福利厚生も重要なポイントです。たとえば家賃補助などの住宅手当、スキルアップをサポートする資格支援サポート、特別休暇などの福利厚生が充実していると、従業員は会社に対して「自分たちのことを考えてくれている」という安心感を得て、仕事へのモチベーションの向上につながります。

従業員に目標やチャンスを与える

定期的に従業員に目標設定をさせる機会をつくることで「目標を達成しよう」というやる気につながります。また仕事のチャンスを与えることで、期待されていると感じた従業員は「成功させよう」と意欲的に仕事に取り組みます。継続的に新しい挑戦の機会を与えることが、従業員の働きがいへとつながっていくのです。

また目標を達成した際にはフィードバックを忘れずに行いサポートすることで、従業員のさらなる成長が期待できるでしょう。

成功事例

ここからは、実際に働きがいを高めるために取り組み成功した以下企業の事例をもとに紹介していきます。

グループウェア開発会社A

A社はもともと人材の定着率について課題がありました。2005年に28%だった離職率が、現在では5%以下となりました。働き方を見直すうえで「100人いたら100通りの働き方があっていい」と考え、従業員それぞれが望む働き方を叶えるために以下の対策を考えました。

・働き方宣言制度(2007年~)
育児・介護だけではなく個人の事情を尊重し、勤務時間や場所を選べる制度です。
これにより、従業員個人が「自分の働き方」を自由に決めて勤務しています。

・副業(2012年~)
2012年より、従業員が自分らしく働けるようにという観点から副(複)業を可能にしています。副業に関して会社の承認の必要がないため、個人の自由で行うことができます。

民間学童保育施設運営会社B

従業員が「この仕事を選んでよかった」と充実感を抱きながら働ける仕組みをつくることが一番大切と考える、B社の施策は以下の通りです。

・3年に1回のクレドカードの見直し
クレドカードとは「企業の信条・行動指針を簡潔に示した言葉を書いたカード」のこと。その内容を定期的に見直すことで、会社全体の一体感を強める取り組みです。自分たちで考えた目標だからこそ「自分事」になり、しっかり定着し、行動に表れます。

・部活動で連帯感を強める
従業員が自ら立ち上げた部活動があり、グループ内の大会に出場しながら従業員間の親睦を深めるきっかけになっています。

・表彰やサンクスカードを用いて従業員を称える
従業員の他薦で一番活躍した人を選ぶ表彰制度、施設の取り組みを表彰する「サードプレイスコレクション」などのイベントを開催して、お互いを褒め合う場所を作っています。また褒められてうれしいのはコーチも同じだと考え、お互いの良いところや行動に対する感謝を伝えるサンクスカードのやり取りを実施しています。このような数々の施策が、従業員の「この会社を選んでよかった」につながっているのです。

請求管理クラウドベンダーC

創業時は情報の共有がなく、従業員同士が協力しあわないどころか、陰で悪口を言い合う状況がありました。C社はこの状況を打破するために「高めあう文化」を目指しました。

・Drive Everythingの実施
ゴール設定力と実行力を使い、周りと一緒に物事を推進しものごとを良くしていこうというミーティングです。通常の業務から離れ、会社の現在の課題を全員で考えます。ゴールの再認識や目標の理解のすり合わせを行い、現状を明確にしています。

・タコめぐり
タコというのは「他部門コミュニケーション」のことです。

これは他の部署のマネージャーと新入社員が、15分程度の会話をする機会をつくるものです。会社への理解が深まり他部署との関わりが生まれるため、新入社員は相談できる先輩が増えます。このようなコミュニケーションの機会を定期的に設けることで、C社は6働きがいのある会社No.1を受賞し続けています。

外資系高級ホテルブランドD

ホテル業界の中でも抜群の知名度を誇るD社は、高品質なサービスを提供し続けています。従業員のホスピタリティとモチベーションの維持のために行っている施策を紹介します。
・従業員一人につき、一日2,000ドルの決裁権を与える
目を疑うような数字ですが、この多額な決裁権は「お客様に対してこれが実現したらもっといいサービスができるのに」という従業員のアイデアを無駄にしないためにはじまりました。これが従業員にとって「自分は期待されている」という緊張感と仕事に対する責任感を持つきっかけとなり、サービス向上につながっているのです。

働きがいのある企業トップ3

GPTW Japanは毎年、働きがい認定企業の中でも特に水準の高い企業上位100社を「働きがいのある会社ランキングベスト100として、年に1回発表しています。ここからは2024年版日本における働きがいのある会社ランキングの、ベスト3にランクインした企業をご紹介します。

大規模企業

1.シスコシステムズ
2.DHLジャパン
3.アメリカンエキスプレス

「仕事に行くことが楽しみ」と多くの従業員が感じていることが評価され1位を受賞したシスコシステムズは、1年を通じて開催されるイベントや傾聴スキルやフィードバックのトレーニングを通じて、従業員間のコミュニケーションに力を入れています。また働き方について従業員の自律を尊重し、自由に選択できるのも評価の理由です。

中規模企業

1.コンカー
2.アチーブメント
3.BOX JAPAN

中規模企業の1位は、先ほどご紹介したコンカーです。 2位のアチーブメントは、従業員をまるで家族のように大切にする「実力主義的大家族経営」という概念のもと、妥協なく関わる社風が高く評価されています。また目標達成のためのプログラムがあり、従業員のキャリアや人生設計を考え直すきっかけとなるような学習プランも魅力です。

小規模企業

1.あつまる
2.ミクセル
3.All Ads

従業員の理想と会社の働き方を連動させ、全員が会社の経営理念に共感し、チーム一丸となって目標達成を目指しチャレンジすることで、従業員の働きがいを高めている「あつまる」が、小規模企業の1位となりました。冊子にまとめて価値観を共有し、会社としての理想の姿や価値観は、従業員のみではなく採用候補者にまでも共有しています。その徹底ぶりが従業員の意識向上へとつながり、働きがいのある環境をつくり出しています。

SDGsで掲げられた8番目の目標について

SDGsの8番目の目標は「働きがいも経済成長も」です。これは全ての人が、働きがいのある人間らしい仕事ができ、あらゆる権利が守られ、安定した暮らしができること(ディーセント・ワーク)を指します。これにより失業率や貧富の差がなくなり、人々が仕事とプライベートどちらも充実したバランスのとれた生活が実現します。

人材育成ならユーキャン

従業員のモチベーションを向上させるためには、職場環境づくりが大切です。そのために大切な「働きやすさ」「やりがい」の双方を達成するために必要な要素を学べる「人財育成(環境整備)講座」では、短期間で従業員が意欲的に仕事に取り組むようになり、働きやすい環境を作りあげるノウハウを学ぶことができます。従業員のモチベーションを向上させる方法を学び、一人ひとりが働きがいを感じられるような職場環境を目指しましょう。

まとめ

働きがいのある会社には、業績の向上だけではなく、従業員の離職率の低下などさまざまなメリットがあります。快適な職場環境を整えることが従業員のモチベーションを向上させ、会社全体の成長へと繋がっていくのです。政府の推奨する働き方改革や、SDGsでも目標として掲げられている「働きがいのある会社」は、今後ますます多くの会社が重視していくことになるでしょう。従業員と会社の未来のために、小さなことから働きがいについて考えていきましょう。

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