サバティカル休暇とは?注目される背景、効果、デメリット、成功事例を紹介

  • サバティカル休暇とは?注目される背景、効果、デメリット、成功事例を紹介

    公開日:2024.05.31

    更新日:2024.05.31

    サバティカル休暇とは、企業で一定期間勤務した従業員に対して、1ヵ月以上の長期休暇を与える制度で、欧米、ヨーロッパ諸国で活用されています。日本の大手企業でも導入され、キャリアアップやワークバランスの見直し、働き方改革を促す施策の1つとして注目されています。この記事ではサバティカル休暇の概要や注目される背景、期待される効果、デメリット、成功事例などを解説しています。

サバティカル休暇とは?

サバティカル休暇とは、一定期間継続勤務した従業員に対し、会社から与えられる長期休暇のことです。一般的には、使い方に制限がなく1ヵ月以上の長期休暇にしている企業が多いようです。 休暇期間について明確なルールはないため、それぞれの企業で自由に決定できます。日本企業では、導入がそれほど進んでいませんが、近年、日本でも導入する企業が出てきています。

サバティカル休暇が注目されている理由

サバティカル休暇は、19世紀の米国導入されたのがルーツと言われ、ヨーロッパ諸国を中心に取り入れられた歴史があります。日本企業でサバティカル休暇が注目される理由には、仕事だけでなく家族や自分自身の生活も重要視するワークライフバランスへの意識の変化が挙げられます。また、日本企業の多くは人材不足に悩まされており、人材の流出を防ぐ方法としてワークライフバランスの改善があります。ワークライフバランスの改善には、サバティカル休暇制度のような仕事から完全に離れられる長期休暇が必要というわけです。1ヵ月以上の長期休暇制度を活用できれば、従業員は気持ちをリフレッシュさせ、仕事へのモチベーションも高められるでしょう。仕事へのモチベーションが高まれば、業務効率が改善するだけでなく、職場への定着率向上も期待できます。

サバティカル休暇を導入する効果

サバティカル休暇には、通常の休暇とは違ったさまざまな効果が期待できます。
どのような効果が期待できるのか、6つのメリットを紹介します。

留学や海外旅行などの経験が積める

サバティカル休暇は1ヵ月以上の長期休暇になるため、海外留学や海外旅行、海外でのボランティア活動などにも参加できます。日本では海外と比べて長期休暇がとりにくいという背景があり、従来の長期休暇では、長くても10日程度が限度でした。しかし、サバティカル休暇では留学するのにも十分な期間があるため、学びや自己成長の機会としても活用できます。企業によってはサバティカル休暇を利用したキャリアアップや、留学を支援していることもあり、仕事を気にせず学ぶ機会を得られるでしょう。中にはサバティカル休暇を活用した留学や学習に対し、手当を支給しているケースもあります。

新たな視点や価値観が身に付く

留学や海外旅行の経験を通して、これまでにはなかった新しい視点や価値観が身に付くのもサバティカル休暇の効果です。日本ではできない経験をすることにより、視野を広げ、多様な価値観を生まれる機会になるでしょう。また サバティカル休暇中の経験を活かし、新しい資格取得や取り組みに挑戦する意欲が高まる可能性もあります。

企業イメージの向上

サバティカル休暇の導入は、従業員だけでなく企業にもメリットがあります。日本におけるホワイト企業は年間休日120日以上が基準とされています。つまり、年間休日が120日以上の企業は社会的なイメージが良く、多くの人材が集まりやすいということです。特にサバティカル休暇という先進的な取り組みは、企業イメージの向上に大きな効果が期待できます。また従業員にとっては、働きやすい環境を整えて自分達を大切にしてくれていると感じられるでしょう。

離職率の低下

サバティカル休暇で従業員が働きやすい環境を整えれば、離職率低下にもつながります。日本企業は海外に比べて休日が少なく、昔から長時間労働は良いものと捉えられてきました。しかし長時間労働に反比例して生産性は低くなっており、ワークライフバランスの重要性が最近になって認識されるようになりました。そこでサバティカル休暇を利用すると、生産性を高めると同時に離職率低下にもつながることが期待されています。従業員は海外留学や旅行、育児、療養など自由な時間を取れるようになり、仕事を退職せずにすみます。

リフレッシュによって発想の柔軟性が増す

仕事の疲れを解消するために、休日は家でゆっくり休む方も多いのではないでしょうか。

しかし、休むだけでは心の疲れまでは取れず、新しい発想やアイディアはなかなか生まれてきません。サバティカル休暇を利用すれば、仕事のことを忘れて休日を楽しむことができ、心身ともにリフレッシュできます。ストレスや疲れが解消されれば、仕事に対する気持ちが前向きになり、新しい発想やひらめきが生まれるかもしれません。長期間の休暇を取ることで、従業員がパフォーマンスを最大限に発揮する手助けになるでしょう。

業務効率・生産性の向上

サバティカル休暇で新たな学びを得て、心身ともにリフレッシュした従業員は、仕事に対して熱意をもって取り組んでくれるでしょう。これまで漫然とこなしてきた業務であっても、新しい視点を取り入れることで、効率化する余地が見つかることもあります。サバティカル休暇は従業員が新たな視点を取り入れ、企業がより良い形に変化するきっかけも与えてくれるはずです。

サバティカル休暇を導入するデメリット

サバティカル休暇にはメリットは多い一方で、デメリットもあります。どのようなデメリットがあるのか紹介します。

復帰直後は仕事についていけない

サバティカル休暇を取得し、職場に復帰してすぐは、たとえ勤続年数が長い人であっても、1ヵ月以上仕事から離れているため、業務内容や職場環境の変化への適応が難しい可能性があります。そのため、サバティカル休暇から復帰する従業員がいる場合、企業としても復帰に向けたサポートを行うのがよいでしょう。

休暇中の収入減少

日本の企業では、サバティカル休暇が広まり始めてまだ間がありません。

そのためサバティカル休暇制度はあっても、正式な決まりがなく、給与の有無、支給額は企業によって異なります。海外企業ではサバティカル休暇が定着しており、休暇中も手当を支給している企業はあります。休暇期間中の収入がゼロになることもあるため、生活をどう設計していくか考える必要があるでしょう。また、企業は従業員が休暇中も給与が支給されると勘違いしないように、制度の具体的な内容を周知することが重要です。

現場の負担が大きくなる

サバティカル休暇制度を利用できるのは、一定の勤続年数を経験した従業員です。経験年数に比例して経験と知識、スキルを持っているため、現場を離れると他の従業員の業務量が増え、負担が大きくなります。たとえば情報共有がうまくいかなくなったり、業務効率が著しく低下したりするなど、何らかの問題が生じるかもしれません。サバティカル休暇を利用する場合は、休暇前に他の従業員への業務の引き継ぎを行い、業務量と内容を調整しておくことが重要です。

従業員が離職することがある

サバティカル休暇を利用したことで、従業員が離職する可能性もあります。キャリアアップや留学を目的とした休暇を経験したことにより、新しい価値観が生まれ、別の企業や業種に転職することがあるからです。サバティカル休暇が逆効果になるケースですが、このような場合も企業が新しいキャリアプランを提示できるようにすれば、離職を防げるでしょう。

サバティカル休暇を導入する際のポイント

サバティカル休暇を導入する際は、次のポイントを押さえることが重要です。

・制度を利用しやすい環境整備
・休暇中の給与等の有無
・制度の具体的な内容を周知
・制度利用の目的を明確化
・復帰しない従業員への対策
・復帰する従業員向けの支援

制度を利用しやすい環境整備

サバティカル休暇は日本では珍しい長期休暇の制度であり、長期休暇を取得することに慣れていない日本人にとっては扱いが難しいものです。特に現場が多忙な状況にあるとき、周囲に気を遣って休暇を申請できない人もいるでしょう。長期休暇を取得するには、休暇を取得する人の業務を他の従業員がカバーしなければなりません。 制度だけが存在しても、制度の普及を支援する制度や環境整備が追いついていなければ、利用できる人は限られてしまいます。 そこで企業がすべきなのは、業務をスムーズに引き継けるよう環境を整える、制度が利用しやすい社内の雰囲気作りを率先して行うことです。企業がサバティカル休暇の利用を後押ししなければ、制度は有名無実になってしまうことを理解しましょう。

休暇中の給与等の有無

日本企業ではサバティカル休暇期間中、給与や手当の支給がないところがほとんどです。サバティカル休暇を導入しても、収入がなければ利用をためらう人も出てくるでしょう。そこで企業として行うべきなのは、休暇中の給与の有無を明確化すること、休暇中に一定の補償を行うことです。たとえば給与や手当の支給がない場合は、旅行券の支給や留学先の紹介を行うことで従業員のモチベーションにつながります。また手当の支給を行う場合は、毎月の給与から1,000~2,000円程度の積み立てを行う方法があります。休暇中の生活費は非常に重要な問題ですから、企業は従業員が安心して制度を利用できる仕組みを作ることが大切です。

制度の具体的な内容を周知

サバティカル休暇制度の導入を発表しても、従業員が自分のこととして考えられなければ、利用は進みません。企業は制度を導入するにあたって、制度の趣旨や内容、対象者などを従業員に周知する必要があります。制度への理解が進んでいないと、誤解が生じ、長期休暇を取得する従業員への風当たりが強くなる可能性もあります。従業員同士の関係が悪くなれば、チームワークが乱れ、結果的に生産性が低下してしまいます。そのような事態を避けるには、 企業が全従業員に制度への理解を促し、サバティカル休暇を取得しやすくなるよう意識を変えていく必要があります。

制度利用の目的を明確化

従業員がサバティカル休暇制度を利用する際は、どのような目的で利用するのか明確にする必要があります。目的はスキルアップや留学、介護・育児、リフレッシュなど何でも構いません。ただし、サバティカル休暇中に向上したスキル、得た技術が業務に活かされることも制度導入の目的であるため、ただ休暇だけを取ろうとするのは禁止にしましょう。 企業によっては復帰後にレポート提出を求められる場合もあるため、目的意識をもった制度利用が重要になります。

復帰しない従業員への対策

稀なケースですが、サバティカル休暇が終わっても、仕事に復帰しようとしない従業員もいます。特に理由もなく欠勤を続ける場合、企業にとって損失になるだけでなく、現場で働く従業員のモチベーション低下も招く恐れがあります。復帰しない従業員がいる場合も想定し、あらかじめ就業規則に復帰しないケースの規定を定めておくことが重要です。例えば、一定期間欠勤が続く場合は給与の減額や戒告、業務への悪影響や企業の損失につながる場合は解雇などです。

復帰する従業員向けの支援

サバティカル休暇から復帰する従業員にとって、復帰直後の業務は状況把握からスタートします。長い休みの間に社内の状況も大きく変わることがあるため、状況の変化に適応しなければなりません。復帰直後は従業員にも負担が大きいことを理解したうえで、サバティカル休暇取得後はなるべく取得前と同じ条件で職場に復帰することができるなどの支援を行いましょう。復帰前に現場の担当者から状況を確認し、引き継ぎ作業がスムーズに進むように環境を整備することが大切です。

成功事例を紹介

サバティカル休暇の導入が成功した企業の例を3社紹介します。

国内IT大手社A

国内IT大手A社では、2013年という日本ではかなり早い時期からサバティカル休暇を導入しています。A社でサバティカル休暇を利用できるのは、勤続年数10年以上の正社員となっています。休暇期間は短ければ2か月、最大で3か月ほど取得可能で、制度利用者には支援金も支給されるため非常に利用しやすいです。A社がサバティカル休暇を導入した目的は、従業員のキャリアデザイン、働き方の見直しを図るためです。有給休暇や積立有給休暇との併用も可能なため、目的を持って休暇を取りたい人に便利な制度となっています。

日本総合電機メーカーB

日本の総合電機メーカーB社はで、2015年からフレキシブルキャリア休職制度という名称のサバティカル休暇制度を導入しています。この制度の最大の特徴は、休暇期間の長さです。目的は留学などに限定されますが、私費留学なら最長2年、配偶者の海外赴任や留学に同行して知見や語学・コミュニケーション能力の向上を図るためであれば、最長5年の休職が可能です。給与の支給はありませんが、社会保険の本人負担分を会社が負担、私費留学の初期費用が一部支給されるなど、復帰後の支援にも力を入れています。2017年には休職キャリアプラス制度も導入され、育児や介護で休職中でも希望があれば在宅勤務が可能、研修費用の補助を行い、休職後も引き続き働けるように制度が拡充されました。

アメリカ大手医薬品メーカーC

アメリカの大手医療用医薬品の開発・製造・販売などを行うC社では、2018年からディスカバリー休暇という名称のサバティカル休暇に近い制度を導入しています。ディスカバリー休暇では、年間40日まで連続的または断続的に休暇を取得できます。自身の経験および働き方を見つめ直す機会をつくることで、本人のさらなる成長につなげるほか、休暇期間中で得た経験を社内に還元することを目的としています。制度の趣旨に合致していれば、留学や研究機関への進学、海外ボランティア、育児、副業など自由に利用できます。また、ディスカバリー休暇の副次的効果として、休暇中の従業員の不在を埋めるため、業務の効率化や見直しも進められました。

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まとめ

今回はサバティカル休暇について、注目される背景や期待される効果、導入のポイントなどを解説しました。日本では、10年以上前からサバティカル休暇制度を導入する企業も出始めていますが、それほど進んでいません。働き方改革とキャリアアップ、従業員のリフレッシュ、離職防止まで兼ねた有効な施策ですが、制度導入時にはデメリットを見据え、各企業に合わせた制度設計を行うことが重要です。サバティカル休暇について従業員に広く理解を促したい企業担当者の方は、ぜひユーキャンまでご相談ください。

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