• 更新日:2024/08/27

働き方改革の影響もあり、需要が増え続けると見込まれている社労士の仕事。キャリアアップにも人気の資格ですが、年収や業務内容など、あまり詳しく知られていない職業でもあります。

この記事では、社労士の資格取得を考えている人に向け、年収や業務内容などの実態を詳しく解説します。今後の資格取得の参考にしてみてください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 社労士の年収は、働き方などによって大きく変動。勤務型社労士の平均的な年収は400万円~500万円。
  • 働き方や頑張り次第で、独立開業型なら1,000万円超の年収を目指すことも。
  • 社労士は、女性の比率が他の士業よりも10%ほど高く、女性にも人気の資格。
  • 働き方改革や雇用の見直しなどで就労環境が変化する中、社会保険や労働関係の専門家である社労士への需要は高まり続け、将来性のある資格といえる。

社労士(社会保険労務士)とは?

社労士とは、労働法や社会保険に精通する国家資格の1つです。資格試験年に1度だけ行われており、幅広い出題科目と低い合格率から難関国家資格であると言われています。社労士の業務は「1号、2号、3号業務」と呼ばれ、労働・社会保険に関する書類作成・提出代行などをおこなう1号業務と、帳簿書類の作成である2号業務は社労士の独占業務です。

社労士の多くは一般企業の総務部や社労士事務所などに勤める「勤務型」と、経験を積んでから独り立ちする「独立開業型」の2つに分かれます。勤務型では幅広い業務を扱い、安定した収入が得られます。一方の独立開業型は、仕事量や顧客を自分で選ぶことができるため、平均以上の年収を目指すことも可能です。

それぞれにメリットやデメリットがありますので、自分の将来性に合う働き方を考えましょう。

社労士の平均年収は約500万円

社労士の平均年収は500万円程度とされています。社労士の年収は、働き方などによって大きく変動し、勤務型社労士の場合、平均的な年収は400万円~500万円であるのに対し、独立開業型は年収1,000万円以上を目指すこともできます。

厚生労働省の調査ではおよそ500万円

厚生労働省が実施した賃金構造基本統計調査によると、社労士の平均年収はおよそ500万円ほどという結果が出ています。これはあくまで平均であり、もちろんもっと稼いでいる人や、少ない人もいます。

会社勤務の社労士の場合、昇給やボーナス、役職などにより個人の年収が変わります。しかし、社労士の年収は男女による大きな差が出ないのも特徴で、女性でも500万円以上の年収を目指せます。

頑張り次第で年収を増やせるという点では、特に独立開業型が当てはまります。勤務型では事務所や会社の経営次第である程度の年収が決まってしまいますが、独立開業型ではすべてが自分の腕次第です。

勤務型か独立開業型では大きく異なる場合も

社労士事務所や民間企業に務める勤務型社労士の場合、平均的な年収は400万円~500万円であるのに対し、独立開業型は年収1,000万円以上を目指すこともできます。独立開業型の年収は特に個人差が大きく、独立したての社労士の場合、最初の1~2年は年収100万円ほどになることもあります。

定期的に決まった給与が支払われる勤務型と違い、独立開業型は自分で顧客を探さなければなりません。多くの場合、企業や事務所などに勤務し、経験を積んでから独立を決心するでしょう。そこから顧客を探し、信頼を積み重ねていかなければならないため、顧客と売り上げが増えるまでは年収もなかなか伸びません。

しかし、顧客からの信頼を勝ち取り続けて契約を増やすことができれば、年収1,000万円も夢ではないのです。

安定した収入が魅力の勤務型と、大きな年収が目指せる独立開業型。個人差が大きいため、自分がどう働きたいかというビジョンをしっかり定めておきましょう。

女性でも高収入は可能!

「士業」と聞くと、何となく男性の方が多そう、というイメージかもしれません。しかし、社労士は他の士業に比べ、女性比率がとても高いのも特徴です。試験の合格者の内訳を見ても、社労士の女性比率は他の士業よりも10%ほど高く、女性にも人気の資格であることがわかります。さらに、厚生労働省の賃金構造基本統計調査を見ると、女性の年収がわずかに高い年があります。

  • 【参考】賃金構造基本統計調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_a.html)

社労士は一般企業からも需要が高く、勤務型として働き続けられることも人気の要因の1つでしょう。女性が資格を取った場合、将来的に独立開業を目指す人は比較的多くありません。勤務型を続ける理由の中には、復帰のしやすさや安定性だけではなく、仕事の内容が女性に向いている、ということもあります。こちらについては、次の段落で詳しく解説します。

実は女性に向いている?

社労士の資格があれば、産休育休明けでブランクがあっても、社労士としての仕事を続けやすくなります。また、業務内容も書類の作成や計算、社会保険の手続きなど、緻密さと正確さを求められる業務は女性に向いています。3号業務である「相談・指導」に関しても、女性ならではの気配りや対応が求められる場面も多く、女性社労士の必要性は高いのです。

さらに、社労士が扱う労働法や社会保険に関しては、女性の方が高い関心をもっていると言われています。こうした背景から、社労士を目指す女性が増え続けていると考えられます。

社労士の主な仕事は3つ

労働法や社会保険のプロである社労士。具体的にどのような仕事をしているのでしょうか。勤務先により業務内容は変わりますが、社労士としての業務は主に以下の3つに分けられます。

各種保険の手続きや給与計算

社員の入退社に応じた保険の加入・喪失手続き、就業規則の作成、労働者に関する名簿・賃金台帳の作成、各種助成金などの申請をおこないます。こうした業務に付随する給与計算なども、あわせて社労士へ依頼することがあります。これらの業務は社労士の独占業務の1つであり、社外に依頼する場合は社労士の資格がなければ依頼を受けることができません。

社内でおこなう場合であれば資格がなくてもよいのですが、こうした業務には深い専門知識が必要とされます。そのため、該当部署に精通した人材がいない場合、外部へ依頼することになります。

人事・労務問題のコンサルティング

社労士には、労働法や社会保険に関する幅広い専門知識が備わっています。そのため、企業から人事や労務問題に関する相談を受け、解決へと導くコンサルティング業務も仕事の1つです。各種ハラスメントやブラック企業問題など、会社では日々多くの悩みや問題が生まれます。雇用形態も多様化しているため、それらに合わせた就業規則の作成や、人材育成・採用もおこないます。

こうしたコンサルティングは社労士の独占業務ではありませんが、賃金制度や福利厚生に関する専門性の高い相談は、社労士にお願いしたいという需要が多くあります。

年金関係の手続き業務

「消えた年金問題」が騒がれて以来、個人・企業問わず年金に対する関心が高くなってきました。社会保険を扱う社労士は、公的年金に関わる唯一の国家資格です。年金受給の手続き、受給資格や支払状況の確認、相談などを年金相談センターでおこなっている社労士も多くいます。

なお、前述した2点の業務内容は企業向けですが、年金関係の手続き業務はほぼ個人向けとなります。

社労士の将来性は?

働き方改革や雇用の見直しなど、働き方に関する考えが変わり続けています。そうなれば企業は雇用条件などを見直さなければならず、コンサルティング業務なども含め、専門家である社労士への需要も高まり続けるでしょう。書類作成・代行などの業務に関しても需要があるため、中長期的に見れば安定していると言えます。

「稼げない」「仕事がない」は本当?

クラウドやAIが進化したことにより、士業全体の業務は減少傾向にあります。しかし、働き方改革の影響もあり、社労士の需要は年々増加が見込まれているのです。社労士がおこなう業務は、日々新しく増え続けるハラスメントや人間に対する問題であり、簡単に機械化することはできません。

転職市場においても資格取得者は優遇される傾向にあり、「仕事がない」というのは個人の問題にすぎず、社労士全体の話ではありません。また、働き方の変化により、頻繁な法改正がおこなわれています。そうした細かな対応は、AIでは難しいでしょう。

独立するなら営業力が必要

独立開業をすれば、高い年収を目指すことができます。しかし、企業へ勤務していたときのように、勝手に仕事が舞い込んでくるわけではありません。

独立して最初に問われるのは営業力であり、地道な努力を求められるでしょう。大企業は既に社内で社労士を雇っていることが多いので、独立型の顧客は中小企業がメインになります。書類作成や給与計算などの依頼を受け、少しずつコンサルティング業務や相談などに広げていきます。

その場限りの依頼で終わらせないためには、顧客満足度を上げなければなりません。依頼されたことだけをおこなうのではなく、プラスアルファの提案をするなど、少しずつ工夫して継続的な売り上げを伸ばしていきましょう。

社労士になるには?

社労士になるためには、年に1回おこなわれる資格試験に合格しなければなりません。社労士の資格試験は、毎年4万人ほどが受験しています。しかしその合格率は平均6~7%であり、なかなかの難関資格であることがうかがえます。

また、そもそも試験を受けるためにも、受験資格が求められます。「学歴・実務経験・国家資格」のいずれかを満たす必要があり、事前にしっかり確認しておきましょう。

まとめ

働き方や頑張り次第で、高い年収が目指せる人気の社労士。需要も高まり続けており、将来性のある資格のひとつです。合格率は低く難関国家資格ではありますが、計画的に、効率よく勉強すれば合格も夢ではありません。

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この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

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近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。

よくある質問

社労士試験は難しいですか?

社労士試験の合格率は5~7%前後と低く、試験内容を見ても難易度が高いことでも有名です。
合格率が低い理由は、試験範囲が非常に広いこと、科目合格制度がないこと、法改正の頻度が高く都度対応が必要なことなどがあげられます。
計画的なスケジュールで着実な対策が必要です。

社労士試験の合格基準点は?

社労士資格の合格基準点は、毎年の採点結果が出てから決まります。
合格ラインは各科目最低で40%、全体で60~70%以上の正解率が目安です。
1科目でも合格基準点に満たない場合は、総合点数が合格ラインにあっても不合格となりますが、合格定員が決められている試験ではないので、合格基準点以上を取れば、順位に関係なく合格となります。

高卒でも社労士になれますか?

社労士には学歴などの受験資格があり、高卒で社労士を目指す場合、「学歴」「実務経験」「国家試験合格者」などの要件をクリアすることで受験が可能になります。
受験資格を得るために「行政書士の資格を取る」「通信制の短大に通う」「実務経験を3年積む」といった方法もおすすめです。

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社会保険労務士(社労士)は、労働問題や年金問題、社会保険のエキスパート。社労士試験には、受験資格があります。次の代表的な受験資格(学歴・実務経験・試験合格・過去受験)のいずれかを満たす必要があります。まずは「学歴」です。1)大学、短大、高専(高等専門学校)等を卒業した方、2)4年制大学で、62単位以上を修得した方又は一般教養科目36単位以上かつ専門教育科目等の単位を加えて合計48単位以上を修得した方、3)修業年限が2年以上、かつ、課程修了に必要とされる総授業時間数が1,700時間(62単位)以上の専修学校の専門課程を修了した方などと定められています。次に「実務経験」における主な要件は、「法人の役員または従業員(いずれも常勤)として、通算3年以上事務に従事した方」などです。また、「試験合格」「過去受験」における主な要件として、行政書士試験や厚生労働大臣が認める国家試験の合格者及び直近の過去3回のいずれかの社労士試験の受験票又は成績(結果)通知書を所持している方などにも受験資格が与えられます。